30代女性オーナーを7年で億ドル長者にした、
セレブもインヴェスターの冷凍食デリバリー、”デイリー・ハーヴェスト”
Published on 7/1/2022
6月3週目の週末に報じられたのが、冷凍ミール・キット・デリバリーのデイリー・ハーヴェストの最新メニュー、「フレンチ・レンティル・クランブル」を食べた人々が
体調不良に陥っているというニュース。その中には TikTokのインフルエンサーや、
「肝臓にダメージが起こっている」と診断されたされた人々が含まれ、デイリー・ハーヴェストはこの商品を送付した全ての顧客に対して 商品破棄を呼び掛ける対応をしたことが報じられたのだった。
通常、こうした不名誉な報道がビジネスの救けになることは無いけれど、
デイリー・ハーヴェストの場合、その報道によって同社にセレブリティが何人も投資していることを初めて認識した人々、
未だ「駆け出しのビジネス」というイメージがあった同社が 実は大成長を遂げていたことを知った人々は多く、
好調なビジネスを続ける同社の現状が 皮肉な形でナショナル・メディアで報じられる機会を得ていたのだった。
デイリー・ハーヴェストは、2015年にスムージーの冷凍デリバリー・サーヴィスからスタートしたビジネス。
創業者のレイチェル・ドローリは名門、コロンビア大学ビジネス・スクールを卒業後、デザイナー・グッズのオンライン・ディスカウント、Giltグループのマーケティング・エグゼクティブとして働いた経歴の持ち主。
ニューヨークのクイーンズ出身のレイチェルが Giltグループの仕事に没頭していた31歳の時、ヘルシーな食事を作る時間もゆっくり味わう時間も無かったことから、
纏めて作っては それを冷凍して毎日飲んでいたのがスムージー。
やがて そのスムージーを家族や友人のためにも作るようになった彼女は、ギルト・グループに勤める傍ら、当時の貯金2万5000ドルを叩いて 週末に業務用キッチンを借り、トレーダー・ジョーズで仕入れた材料を使って
スムージーを大量に作り、それを甥っ子に配達させるビジネスをスタート。
「一般の人々のオーダーの数が 家族や友人のオーダーの5倍になるまで、ギルト・グループを退社しない」と公言していた彼女であるけれど、
その目標は約2ヵ月で達成されているのだった。
やがて1人目の子供を出産し、2日目の子供が生まれる前の2016年にレイチェルはデイリー・ハーヴェストのファンド・レイジングをスタート。
しかしインヴェスターからは「幼い子供2人を抱えた女性に新しいビジネスが出来るのか?」といった疑心暗鬼の目で見られることもしばしばであったという。
それでも2018年までには5000万ドルの資金を調達。インヴェスターによる投資総額は2021年末の時点で1億8000万ドルにまで膨れ上がっているのだった。
前述のようにデイリー・ハーヴェストには、何人ものセレブリティが投資をしており、
その顔ぶれはプロ・テニスのセリーナ・ウィリアムス、NBA ロサンジェルス・レイカーズのカーメル・アンソニー、NYニックスのケンバ・ウォーカー、ブルックリン・ネッツのブレーク・グリフィン、
NFL デトロイト・ライオンズのジャレッド・ゴフといったプロ・アスリートに加えて、女優のグウィネス・パルトロー、アメリカ版鉄人シェフのボビー・フレイ等。
こうしたセレブ達が ソーシャル・メディアを通じてデイリー・ハーヴェスト絡みのチャレンジやプロモーションを行っているのも 同社が短期間に利用者を大きく増やした要因になっているのだった。
資金力を得たデイリー・ハーヴェストは、当初スムージーだけだったメニューを、スナック、サラダ等を含む食事全般に拡大。
中間業者を通さず、地元の農場とダイレクトで契約を交わし、新鮮な食材のみを使用するポリシーを掲げるデイリー・ハーヴェストは、今ではカリフォルニアとニューヨークの400の農家と契約。
野菜は収穫から24時間以内に冷凍。フルーツは熟す前に収獲してウェアハウスで完熟を待ってから冷凍し、デイリー・ハーヴェストの施設に運び込むシステムを確立。
新鮮かつハイクォリティの材料確保を実現しているのだった。
野菜や果物は冷凍しても栄養素や新鮮さが変わらないという利点を生かして開発されたデイリー・ハーヴェストのメニュー・レシピは、
アイスクリームやシェイクならば材料にミルクを加えてブレンダーに入れるだけ。それ以外のディッシュは電子レンジや鍋、もしくはオーブンで温めるだけという
調理の必要が無いミール・キット。そして食材や料理が収められているのはシンプルでスタイリッシュなパッケージ。
全てのメニューにおいて 野菜や果物の鮮やかなカラーが食欲をそそるようにデザインされており、スーパーマーケットの冷凍食品セクションに並んでいる
冷凍食とは異なり、身体に良い物を食べているという実感が沸くプレゼンテーション。
オフィスなど、人目に触れるところで味わっても 容器を含む見た目のプレゼンテーションとヘルシーさが、
ある種のステータス・シンボルを感じさせており、そんなこともヘルス・コンシャスな富裕層を中心に 多くの顧客を取り込んだ理由。
そんなデイリー・ハーヴェストのビジネスに弾みがついたのは、パンデミック中のロックダウンの際。
外食が出来なかったこの時期には 特定レシピの食材を人数分届ける ”ブルー・エプロン”のような ミール・キット・サービスのトライアルをした人が増えたけれど、
いざキットが届くと「レシピを読みながらの料理が面倒」、「その日に食べる気になれない料理が届いた」というリアクションが少なくなかったようで、
その結果、手つかずのまま無駄になってしまったのが届けられた食材。
しかしデイリー・ハーヴェストの場合、
調理の手間が殆ど掛からず、届けられたミール・キットは冷凍保存が効くので 顧客側が一定期間以内に食べる必要が無いのは 他社と大きく異なる点、
しかも ほぼ全てのメニューがオーガニックでヴィーガンなので、通常のミール・キットより遥かにヘルシーな印象。
そのため他のミール・キットに見切りをつけた人々にも大きくアピールしており、
さらには注文増加に迅速に対応できる体制が整っていたことも ビジネス躍進に繋がった理由。
加えて冷凍のミールキットは、生の食材のミールキットよりもコンパクトで輸送費も安く、
そのことがコスト削減の大きな要因になっているのだった。
冷凍食品のイメージをヘルス・フードに変えることに成功したデイリー・ハーヴェストは ビジネス好調の中、様々な分野に投資をしており、その主要なエリアがデータ解析とテクノロジー。
今後は個々の顧客の好みを分析したパーソナライズド・オプションを導入する予定とのこと。
また従来とは異なる客層にアピールするために、デイリー・ハーヴェストのテイスティング・ルームをシカゴにオープンし、
店頭で商品を味わってもらうインパーソン・プロモーションもスタートするという。
CEOのレイチェルを個人的に知る人々が指摘する彼女のサクセスの秘訣は、ハードワークもさることながら、プランを実行するスピードとそれをやり抜く意志の強さ。
特にビジネス・スタート当初、オーガニック以外の食材を使っていたデイリー・ハーヴェストが、3年の月日を掛けて 農家を説得し、資金援助をしてまで
95%以上のオーガニック食材を実現したことは企業イメージ、企業価値がアップしただけでなく、新たなインヴェスターを獲得し、売上も伸びるという
同社にとっての大きなステップ・アップに繋がっているのだった。
そのレイチェルは現在39歳。デイリー・ハーヴェストは 2022年に11億ドルの企業価値が査定されたことから ユニコーン起業(株式公開前に企業ヴァリューが10億ドルを超えた会社)の仲間入りを果たしており、
その株式の35%を所有するレイチェルの個人資産は 約3億5000万ドル。フォーブス誌の米国セルフメイド女性長者ランキングで第8位にランクインするサクセスぶりで、
デイリー・ハーヴェストIPOも時間の問題と言われるのだった。
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