シェア争いが過熱するスニーカー市場、ナイキのAIデザインA.I.Rスニーカーは、
2大ハイテク超人気ブランドに勝てるか!?
Published on 4/25/2024
ナイキが4月2週目にパリで400人のジャーナリスト、ヴェンチャー・キャピタリスト、プロダクト・パートナー、スポーツ界のスーパースターらを招いて開催したのが、
パリ五輪ユニフォームと、AIデザインによる新スニーカー・ラインのお披露目イベント。
開催に数億円を賭けたこのイベントは、今やスニーカーのテクノロジーですっかり遅れを取ってしまった
ナイキが、AI導入による復活を賭けたもの。
同時にナイキのメガブランドとしてのパワーを改めて世に示す目的であったけれど、
発表された女子陸上ユニフォームがハイカット過ぎたことで、ソーシャル・メディア上で聞かれたのが 「女子スポーツにセックス・アピールを持ち込もうとしている」というバッシング。
実際にはナイキは女子陸上ユニフォームのボトムに3種類のデザインを用意しており、それをアピールする前に批判だけが先走り。
そのため必ずしもナイキが意図した通りのイベントにはならなかったのだった。
同イベントでは、ナイキのエア・ジョーダンを含む Airシリーズの歴史を遡る展示が、様々なブランドやアーティストのコラボと共に
展示されたていたけれど、中でも話題が集中していたのが "A.I.R”という新表示でデビューした、AIデザインの新ライン。
果たしてナイキが現在水を開けられつつあるランニング・シューズ市場で、ライバルに追いつけるかが注目されていたのだった。
現在スニーカー、それもランニング・スニーカー市場を独占しているのは、ナイキでも、アディダスでも、ニューバランスでもなく、
”HOKA / ホカ” と ”On / オン” という比較的新しいブランド。
HOKAは、まずマラソン・ランナーに代表されるウルトラ・ランナーの間で人気を博したブランドで、Onは最初はトライアスロンの愛好家の間で人気が定着。
両社ともその後、一般のランナーの間で急速に広まったブランド。
今や新しくランニング・シューズを買おうとする人々が 頭を悩ませるのは HOKAにするか、Onにするか。
それを決めた後で悩むのは HOKAとOnのどのモデルを選ぶか。
YouTubeからTikTokまで、ソーシャル・メディア上では、「HOKAか? Onか?」の論争や比較特集が溢れ、
ナイキやアディダスは完全に蚊帳の外。
アメリカ国内だけで、定期的にジョギングやランニングを行う人口は約5000万人。マラソン参加者が毎年のように最多記録を更新しているアメリカでは、
ランニング・スニーカーを牛耳るブランドが スニーカー市場の主導権を握るという認識。
そのため口コミやソーシャル・メディアでのバズに乗せられて、多くの人々がナイキやニューバランスから HOKAやOnに移行しつつあるのが現在。
そして一度履いてみると、その評判通りの履き心地で魅了するのがこの2ブランドで、履いて走ってみれば誰もがその人気の理由を納得するとさえ言われるのだった。
HOKAとOnは価格帯はほぼ同じで、最も人気があるモデルの価格は150ドル前後。
HOKAは安定性とスムーズな履き心地を実現する大き目のソールが特徴で、それでいて重量を感じさせず、マシュマロのようなクッション性が魅力のスニーカー。
Onは独自のCloud Tecソールががウリで、ソールに空いた穴が地面からの衝撃を吸収するので、筋肉疲労を軽減し、膝への負担を掛けないデザイン。Cloudという名前通り、
雲の上を走っているような感触で、軽快なフットワークを実現することから、走行スピードが速まると評判。
耐久性はどちらもほぼ同じで、Onは500〜750キロを走った段階で新しいシューズへの履き替えを奨励しているけれど、もちろんこれは体重、走る地面の種類、走るスピードなどによって異なるとのこと。
どちらも、快適さ、サポート、安定性、クッション性に優れていることから、アマチュア・ランナー、ウルトラ・ランナーにまで同じように評価され、
「優劣がつけられない」と言われているのだった。
以下は主要なスニーカー・ブランドのソール比較。
一見大差が無いように見えるミッドソール、アウター・ソールのデザインで大きく変わるのが履き心地、走り心地。
オレンジの星が付いているHOKAとOnのテクノロジーが抜き出ていると言われ、ナイキはこれら2ブランドに押されて
ウェアハウスに山積みになった不良在庫の処分を、直営店やウェブサイトだけは売り切ることが出来ないため、
かつて小売りパートナーになっていた業者に依頼し始めたことが伝えられるのだった。
そして上のビジュアルが、ナイキが市場シェア巻き返しを賭けて開発した、新たなA.I.R ライン。
13のモデルを、13分野のスポーツのスーパースターのアドバイスをもとにAIにデザインさせたモデル。
一般消費者用のAIデザインは、2025年に発売を予定しているペガサスというネーミングのモデル。
今年発表された13のシリアスなアスリート・モデルから詳細なデータを得て、それを反映した改良を加えて
一般消費者向けにリリースすることが伝えられているのだった。
13のモデル開発に携わったのは、キリアン・エムバペやセリーナ・ウィリアムス等の各界の一流アスリート。
とは言っても、昨今は一流アスリートが徐々に自らのブランドを立ち上げる時代になっていて、
Onはスイスのブランドとあって、かつてのナイキ・テニスの契約プレーヤー、ロジャー・フェデラーが経営パートナー。
今年に入ってからはナイキとプロデュー以来の契約関係にあったタイガー・ウッズも、テイラーメイドとのパートナーシップで、
自らのブランド、Sun Day Red を手掛けているなど、徐々にプロ・アスリートたちが目覚め始めて来たのが、ナイキのようなメガ・ブランドと契約している限りは、
広告出演料しか得られないという現実。
それに対して革新的なテクノロジーを持つ小さなブランドと組んで、経営に加わると、利益がパーセンテージで転がり込んでくることから、著名アスリートのライフスタイル・ブランドであれば、
ビリオネアになれるのは時間の問題。
このことはアスリートでなくてもキム・カーダシアンが自らのボディウェア、SKIMのビジネスで立証している動かない事実で、
今後のナイキにとって避けられないのが、著名アスリートがどんどんナイキとの契約から離れて行く事態。
果たしてAIによる商品開発が、それを補うかは今後が見守られるのだった。
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