Mar 17 〜 Mar 23 2024

Dating Trend, Birkin Law Suit, New Yorker's Age Etc.
デート市場の変化, バーキン訴訟, ニューヨーカーの平均年齢, Etc.


今週のアメリカは”マーチ・マッドネス”こと、全米大学バスケットボール選手権がスタートし、メジャーリーグも韓国で行われたLAドジャースVS.サンディエゴ・パドレスの 三連戦で開幕したけれど、同じタイミングで報じられたのがドジャースに今年から移籍した大谷翔平選手の通訳、水原一平氏のギャンブル疑惑。 ドジャースはスキャンダルが報じられた直後に水原氏を解雇したけれど、スキャンダルの発端は 今もスポーツ・ギャンブルが違法のカリフォルニアで 以前から連邦捜査局による広範な違法賭博の捜査対象になっていたブックメーカー、マシュー・バウワー。ブックメーカーとはこの場合、私設の賭博屋を指す言葉で、 バウワーは昨年、連邦捜査局によって自宅が家宅捜索を受けており、捜査線上に大谷選手の名前が浮上したのは、彼の銀行口座から2023年9月と10月にそれぞれ50万ドルの 電信振込がバウワーの代理人に対して記録されていたため。これについて当初、大谷選手の広報は「水原氏のギャンブル負債を大谷選手が肩代わりした」と 説明したけれど、水原氏がスポーツ・メディア ESPNとの90分のインタビューに応じ、その内容が報じられる直前になって、 大谷選手の法律事務所 バーク・ブレトラーが出した声明は「翔平は窃盗の被害者で、当局にこの問題を引き渡すことにした」という、当初の声明を翻すもの。
水原氏はヨーロッパのサッカー・リーグ、NBA、NFL、カレッジ・フットボールなどに賭けており、最低でも450万ドルのギャンブル負債を抱えており、 ESPNとのインタビューでは「自分はMLBのギャンブリング・ポリシーを理解しているので、メジャーリーグには一切賭けていない」と明言。 そのメジャーリーグは、かつてのスーパースター、ピート・ローズの賭博問題が全米規模の大スキャンダルになった過去も手伝って、 全チームのロッカールームにギャンブリング・ポリシーが掲示されており、それによれば 「選手とチーム職員はたとえ合法であっても野球に賭けることは禁止」。違法のブックメーカー、オフショア・ブックメーカーを通じた他のスポーツへの賭けも禁止しており、 野球賭博の場合、1年間の競技禁止がその罰則。他のスポーツへの違法賭博はコミッショナーの裁量で罰則が決まるとのこと。 金曜にはMLBが正式に大谷選手と水原氏の捜査に入ったことを発表。水原氏に対してはギャンブルもさることながら、今後は窃盗容疑が捜査のメインフォーカスになるのだった。



Tired of Matching App


昨年からユーザー離れが顕著になってきたと言われるのがマッチング・アプリ、デート・アプリ。 2010年代に入ってソーシャル・メディアが普及してから、デート・アプリを通じた交際相手、結婚相手探しは、 徐々に一般的になり、それに伴って社会的偏見も無くなってきたのは世界共通の状況。 アメリカで デート・アプリの人気がピークをつけたのはパンデミック中で、”Tinder/ティンダー”、”Hinge/ヒンジ” といったデート・アプリを傘下に収めるマッチ・グループ社、 それと並ぶ人気を誇った Bumble/バンブルは、2020年のロックダウンを機にユーザーを拡大。その急成長は2021年も継続し、 数百万人の新規ユーザーを獲得し、株価も急上昇。 ところがそれをピークに2社の株価は 現在80%下落。ユーザー数もそれを反映して減少の一途を辿っているのだった。
ピュー・リサーチのアンケート調査によれば、マッチメーキング・アプリでポジティブな経験をしたというユーザーは53%、逆にネガティブ意見は46%。 ネガティブ意見に多いのは「メッセージのやり取りでは相手のことは分からない」、「メッセージのやり取りだけで、結局会わずに終わることが多く、 時間を無駄にした」といった声。またどのアプリでも新規登録者であるうちに相手を見つけないと、登録期間が長いというだけで「何か問題がある」という偏見を持たれること、 「プロフィールを閲覧するのに飽きた、疲れた」というシステム上の問題も指摘されて久しかったのだった。
デート・アプリに替わって、昨年から人気を集めているのはデート・イベント。 アメリカのデート・イベント参加者は2022年から2023年にかけて42%増加し、今やパンデミック前を上回る人数。 年間でデート・イベントが最も企画されるのはヴァレンタイン・デーで、今年のイベント数は前年比で41%アップ。 ヴァレンタイン・デーにデート・イベントが多い理由は、デート相手が居ないシングルの予定が空いているのに加えて、相手探しのモチベーションが最も高まる日であるため。 加えて伴侶や本命の恋愛相手が居るような、浮気目的の参加者が排除される日であるのも開催数が多い理由。
アメリカのデート・イベントは、日本の婚活パーティーとは異なるもので、アクティビティ・ベースの企画が中心。 その中には、約20年前に流行った”スピード・デート”も含まれており、これは参加者全員と1人ずつ、時間制限で5分程度の会話をして、 お互いに好印象を抱いた場合のみ主宰側が連絡先を知らせるシステム。
でも現在急速に増えているのはエクササイズやフィジカル・チャレンジを含むアスレチック系、ボード・ゲームのプレイナイト、ブラインド・フォールドといった企画。 アスレチック系はシングル・オンリーのエクササイズ・クラスやピックル・ボールが人気で、イベント通達のプラットフォーム ”Eventbrite/イベントフライト”では 2023年にアスレティック系デート・イベントが135%アップ。 ボードゲームを含む、ゲーム・ナイトのイベントも2023年に163%アップ。 ブラインド・フォールドは比較的新しい試みで、目隠しをして 相手が見えない状態で、手だけが触れ合う中で会話をするスピード・デート。 それまでデート・アプリを通じて写真だけを見て相手を選んできた反動とも言える企画。 ルックスに自信が無い人が応募するように思われがちであるけれど、相手との相性がマッチした場合は、フェイス・トゥ・フェイスでデートをすることになるので、 応募者のルックスは通常のデート・イベントと全く変わらないレベル。それよりも「今までと異なる出会い方をしてみたい」という好奇心や、 英語でケミストリー(化学反応)と呼ばれる 外観や会話とは異なるレベルの相性をチェックしたいと考えて申し込む人々が多いようなのだった。
デート・イベントの企画会社は、ロックダウン中は営業が出来ず、その後も厳しい経営が続いたものの、昨年からすっかり意気を吹き返していて、 今ではデート・アプリ会社までもが、シングル・イベントを企画し始めたところ。 前述のデート・アプリの大手バンブルでは、 新サービス”バンブルIRL”を立ち上げ、シングルを対象にしたスポーツ・クラスやチャリティ、ボランティア活動のイベントを 発信し始めてたところ。同じく前述のマッチ・グループでは、ユーザーがメッセージのやり取りだけで時間を無駄にしないようにと、オンラインで相手と出会ってから 3日以内にデートが出来るようにデザインされた”72アワーズ”というプログラムをスタート。 そのマッチ・グループの調べによれば、ジェネレーションZ世代は、デート相手をオンラインで探した人と、 友人の紹介で出会った人はほぼ同数とのこと。 これからはメッセージをマメに返す人よりも、フェイス・トゥ・フェイスのソーシャル・スキルがある人の方が恋愛で遥かに有利になるのだった。



バーキン違法販売で訴えられたエルメス


エルメスと言えば、バーキンのコピーライトを巡って、これまでは頻繁に訴訟を起こす側であったけれど、そのエルメスがバーキンの販売を巡って訴えられたのが今週。
バーキン・バッグが店頭では販売されず、コネを使うか、エルメスの上顧客になるしか入手できないのは周知の事実。 コネクションもセレブリティ・ステータスも無い人がバーキンを買おうとした場合、 唯一の手段は大金を叩いて エルメス・ブティック内で売られている老けたイメージの高額品を買い続け、 在庫処分に貢献すること。そうすることによって徐々に、Aリスト顧客がカスタムメイドしたバーキンが気に入らず、購入に至らなかった場合に その引き取りをオファーされるようになり、やがて複数シーズンに渡る在庫処分の功績が認められた場合に、何とかオーダーが出来るのがバーキン。 要するにエルメスは バーキンに関しては 売れるのは分かっていても、希少価値が薄れる事態を防ぐために 生産数をタイトにコントロールしており、 それ自体は違法でも悪徳ビジネスでもないのは事実。 しかしエルメス直営店全店で長年に渡って行われてきたのが、 「バーキンが欲しければ、上顧客になるまで店の売り上げに貢献しろ」的な経営で、 これはもはや公然の秘密どころか、エルメスの裏経営方針として認識されて久しいのだった。
小売りの世界では 人気が無い商品と人気商品のセット販売を ”抱き合わせ”商法、英語では ”tie-in sales” と呼んでいるけれど、 これは消費者が買いたくないものを強制的に売りつける行為として、米国では公正取引委員会の取り締まりの対象になる商法。 しかもエルメスの場合、悪質なのは高額不良在庫を購入したところでバーキンが抱き合わせで確実について来る訳ではなく、 どれだけ在庫を買い取れば バーキン購入に辿り着けるかは定かでないのだった。
この状況を受けて今週のカリフォルニア州で、エルメス社を相手取って起こされたのが集団訴訟。 訴状では 「エルメス社は顧客に対して、慢性的に入手不可能になっているバーキンの購入機会を得るために 靴、スカーフ、ベルト、宝飾品、家庭用品といった、 余分な商品を購入するよう要求した」と説明。 「バーキン購入を許可するには、顧客側に”十分な購入履歴の蓄積”が必要であり、それが達成された上で 価値ある顧客と判断された場合のみ、 個室にて非公開のバーキン購入の機会が与えられる」としており、 被告であるエルメス社が、常軌を逸した市場支配力を行使するビジネス・モデルを構築し、バーキンの価格をつり上げて利益を増やしたと非難。 さらに、原告は販売員の報酬構造にも言及し、販売員はバーキンに関しては売り上げのコミッションを受け取っていないものの、 バーキン欲しさに余分な高額商品を購入する人々の売り上げから、高額コミッションを給与として得ていることを指摘しているのだった。
原告の女性の1人は、「バーキンを買うためには、他の商品を最低数万ドルは購入するように店員に強要された」と主張。 また別の原告は、バーキン購入のために別の商品を購入し、バーキン入手の可能性について問い合わせたところ、 「バーキンはエルメス社のビジネスを一貫して支援し続ける顧客にのみ販売される」とあしらわれた様子を語っているのだった。
エルメス側は 原告による主張を否定しており、同社CEO、アクセル・デュマは 以前にもメディアとのインタビューで、 「エルメスは、特定商品を購入する条件として、他の製品を販売する行為を厳しく禁止している」とコメントしており、 全面対決になると見込まれるのだった。
しかしエルメス社は、バーキン、ケリーといった一部の目玉商品の人気は高いものの、それ以外の高額商品がさほどアピールしていないことは、 バーキンやケリーを幾つも持つ女性達が、エルメスのアパレルを全く着用しないことからも明らか。 その目玉商品の生産数を抑えながらも、ブランド経営が安泰なのは、目玉商品欲しさに 不良在庫を買い続ける人々が居るためで、今回の訴訟は その判決の行方はさておき、 エルメスというブランドのビジネス・モデルのからくりが、一般に広く知れ渡るきっかけにはなると思うのだった。





ニューヨーカーの平均年齢は…?


全米各地の様々なデータを集計すると、ベストでもワーストでもNo.1が極めて多いのがニューヨーク。 少し前には全米271の都市圏のCOLI(Cost OF Living Index/生活費インデックス)で、ダントツのNo.1になっていたのがNYのマンハッタン。 全米の生活費の平均値を100とした場合、マンハッタンの生活費は222で、生活費指数が200を超えた唯一の都市。 ちなみに2位はホノルル(179)、3位はサンフランシスコ(170)、4位はブルックリン(159)、そして5位のカリフォルニアのオレンジ・カウンティ(150)がトップ5。 最も低かったのはテキサス州のハーリンジェンで76ポイント。生活費が安いトップ10のうち9都市がテキサス、オクラホマ、アーカンサス、ミズーリといった南部、中西部で、 共和党支持者が多いレッド・ステーツ。
レントを含む生活費があまりに高額であるため、ニューヨークは「別の州に移住したい」と望む人が全米50州中5番目に多い州。 NYの世帯収入の中央値は約7万4694ドルで、41.4%が大卒以上の学歴を持っていて、NYはそのイメージ通りビジネス中心の街。 しかしながらニューヨーク市の5ボロー(マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタッテンアイランド)内には、120以上の高等教育機関が存在しているので、 大学生の数も多いのがNY。 彼らが平均年齢を下げてくれているのか、ニューヨーカーの平均年齢は2022年の段階で約38歳。2020年が36.9歳、2021年が37.3歳であったので、若干の上昇傾向。 38歳は2023年の全米の平均年齢と同じ数字で、ニューヨークが全米のアベレージというのは珍しい状況。 ちなみにニューヨーカーと言えば NY市の5ボローの住人のことで、NY州全体の平均年齢は2歳アップして40歳。
州別に高齢者が多いのはメイン州(平均年齢44.8歳)、ニューハンプシャー州 (43.3歳)で、逆に最も若いのはユタ州で、平均年齢は31.9歳。 若い州でありながら、ユタ州はモルモン教徒が多いとあって超保守政権。しかし、それも今後の世帯交代が進むにしたがって変わる可能性があるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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