6月7日でイラン戦争開戦から100日を迎えたけれど、その間トランプ大統領による終戦間近を匂わせる発言は37回。実は進んでいなかった交渉が遂に決別し、
地上戦を匂わせたトランプ氏は、今週38回目の「平和協議合意間近」を宣言。イラン側のリアクションはこれまで同様であったものの、
株式市場は大きく反応し、翌日のスペースXのIPOのお膳立てが整った印象。そんな今週発表された米国5月物価指数はインフレが4.3%進み、過去3年で最大の数字。
ガソリン代は戦争前に比べて全米平均で40%高騰し、記者にインフレ率について尋ねられたトランプ氏は「I Love Inflation」とネジが外れたような回答をしていたのだった。
木曜に遂に開幕を迎えたワールドカップは、海外からの観戦者が来なくても埋まる筈のチームUSA戦チケットさえ売れ残っているようで、その理由はチケット代が高過ぎるため。
今回FIFAは、スポーツ・イベントに高額を払う米国消費者からがっぽり利益を巻き上げようと、史上初めてチケット再販にも関与。前大会の2倍のチケット売上を得るために変動価格制を導入。
意図的に価格を吊り上げた疑いに加えて、ウェブ上での誤解を招く座席表示の悪質性については、複数の州で司法省が捜査に入っているところ。
今週日曜6月14日のトランプ氏の80歳の誕生日に行われるUFCファイトについては、中止を求める裁判が起こされ、ようやくGOサインが出たのは金曜午後。しかし蒸し暑いワシントンDCで、
悪天候が予想される中の屋外特設会場のイベントには UFC関係者さえリスクを訴えており、ドゥウェイン・ジョンソン、アダム・サンドラー、トム・ブレイディといったセレブリティ招待者は
ことごとく欠席を表明。トランプ氏が主宰しようとしたフリーダム250コンサート同様、予定通り運ばない可能性が見込まれるのだった。
さらに今週には、昨年夏にエプスティーン・ファイル公開を控えて、ヴァンス副大統領、ボンディ司法長官、スージー・ワイルズ大統領首席補佐官らがホワイトハウスの戦略室で
トランプ氏を守るための対策会議を行い、その内容がNYタイムズ紙で報じられたことを受けて、与党共和党議員が「国の利益に反する結託した違法行為」として、会議に関わった全員に議会証言を求める事態に発展。
トランプ氏本人は、今週もNBAファイナル観戦中やホワイトハウスのカンファレンス中に居眠りをし、直進歩行が難しくなっている筋力低下が指摘されており、その体調と体力の衰えを
歴代最多の22人の専門医師団が支える舞台裏が明らかになっているのだった。
6月12日に史上最大の株式公開を果たしたのがイーロン・マスク率いる宇宙開発会社、スペースX。時価総額1兆7700億ドルと査定された同社株式の売り出し価格は1株当たり135ドル。
それが公開直後にあっという間に一時175ドル台に達し、160.95の終値で引けたけれど、このIPOで現在54歳のイーロン・マスクは 世界初のトリリオネア(一兆ドル長者)となり、マスクの友人、シリコンバレーのベンチャーキャピタル、
民間投資会社を含む同社に出資した人々も数十億ドル規模の利益を手にした計算。 さらにスペースXの現社員、元社員の4400人が新たにミリオネアとなり、
そのうちの約400人は1億ドル以上を得ており、過去に類を見ない莫大な富がこのIPOから生み出されたのだった。
NYタイムズ紙では、スペースXに2012年からエンジニアとして働き、入社時に8万ドルの年俸と当時13.8ドルだった株式を数千株付与され、
その後もボーナスを持ち株で受け取り続けた男性の例が紹介されていたけれど、当初イーロン・マスクはスペースの株式公開はしないと言われ、
社員の中には 未公開株を第三者に売却できる年2回のイベントで手放していた人も多かったとのこと。そのためこのIPOで一生後悔する人と、一生安泰な人に明暗が分かれていたよう。
今週のメディア、SNS上ではそのスペースX株に投資すべきかが話題になっていたけれど、
私がチェックした限り、その多くは「絶対に乗せられるな」という見解。そして異口同音に指摘していたのがスペースXの株価が完全にオーバーヴァリューであること。
IPO後にスペースXと合併すると言われるテスラ株式にしても、未だ実現していないロボタクシーへの期待値に頼って 業績の14倍の水準で取引されているけれど、
スペースXの場合、売上高の90倍という通常あり得ない水準での取引。
イーロン・マスクは日頃から「オーバープロミス&アンダー・デリバー」、すなわち言っていることは大きいけれど、一向にそれが実現しない経営者であることも手伝って、
「スペースX株で1000Xのリターンが得られる」と断言するマスクへの疑心暗鬼の声、このIPOを「ミドルクラスから投資資金を奪い取る罠」と見る声は多く、
暫しの間はご祝儀相場で盛り上がったとしても、その後はスペースX株価が急降下するとの予測が圧倒的。
もしそうなった場合、ペーパーミリオネアになった従業員達は売り時を見極めなければ、あっという間にミリオネア・ステータスを失うことになるのだった。
オーバーヴァリュー以外に、多くの投資アドバイザーや金融系のインフルエンサーがスペースXのIPOに警鐘を鳴らす理由は、
同社売り上げに対するコストが非常に大きいためで、同様のことは 今後IPOを控えているオープンAI社にも言えること。
部門別にスペースXを見てみると、今年2月にスペースXと統合されたxAIはライバルのチャットGPTが年間250億ドル、アンソロピックのクロードが300億ドル、グーグルのジェミニが150億ドルを稼ぎ出す中、
売り上げが32億ドルと大きく水を開けられ、12人の共同設立メンバーのうち半数のエンジニアが今年2月に退職。それがきっかけで社内で退職ラッシュが起こり、
問題発言が多いxAIのチャットボット、グロックも機能面で他社のAIに大きく立ち遅れている状況。
でもxAIのデータ・センターは、アンソロピックから毎月12.5億ドルの使用料を2029年まで受け取る契約で、グーグルも同様の契約で毎月9億2000万ドルを支払うとのこと。
メイン・ビジネスであるロケットは、売り上げ41億ドルに対して、宇宙船開発を含む費用が150億ドルで、暫しというより「永遠に利益が上がらない」とさえ言われる部門。
唯一利益を上げている稼ぎ頭のスターリンクは、ネット環境が無いエリアを中心にサテライトでインターネットを提供し、そのユーザー数は2030年には7500万人に達する見込み。
問題は利用者の多くがGDPキャピタ(1人当たりの国内総生産)が低い貧困国の人々で、利用者数の割には利益が望めないのは以前から指摘されていること。
スターリンクの今後の目玉プロジェクトになるのは、太陽同期軌道上にAIサテライトを設け、宇宙空間に地上より低コストで大規模運用が可能なデータセンターを作ること。
これには1000億ドル以上の費用と、非常に高度な技術を要することから、マスクお得意の”オーバープロミス”に終わっても不思議ではないと言われるのだった。
更にイーロン・マスクを嫌う人々が非常に多いこともスペースX株が抱える不確実性要素。2024年の大統領選挙選挙以来トランプ氏に3億ドルの資金を提供し、
一時はトランプ政権内でDOGE(政府効率化省)を率いて政府職員を大量解雇したマスクであるけれど、実際には必要部門の解雇と雇い直しで、逆にコストが大きく膨らんだのは周知の事実。
現在、感染拡大が伝えられるエボラ・ウィルスにしても、その対応が遅れたのはマスクが現地の感染対策部門を「誤って解体したけれど、直ぐに戻した」とTV放映された閣僚会議で
笑顔で語りながら、実は閉鎖を野放しにしていたため。さらに5月末からはテキサス州で牛を体の内側から食い尽くす寄生虫バエが10年ぶりに検出され、政府対応の遅れが責められているけれど、
マスクはこの対策部門も不必要と判断して解体。
加えてマスクはエプスティーン・ファイルで、25歳以下の美女が集まるパーティーへの誘いをエプスティーン本人からカジュアルなEメールで受け取る仲であったことも明らかになっており、
現在活動を広げているアンチ・ビリオネア・グループの名前は ”エブリバディ・ヘイツ・イーロン”。
そんな状態なので、たとえ儲かると言われても「イーロン・マスクの企業だけは投資したくない」という人々は多く、アメリカの個人投資家の大半、すなわち投資資金を持つ中流以上は
民主党支持のアンチ・トランプ&アンチ・マスク派。
今週には、イランが「イーロン・マスク傘下の企業施設を攻撃ターゲットにする」と宣言しており、スターリンク施設が狙われるという声も聞かれるけれど、
ウォールストリートはスペースX、オープンAI、アンソロピックという3大IPOで多額の資金を集め、AIバブル崩壊説を払拭しなければならない状況。
なので少なくとも暫くの間は、誰もが便乗したくなる相場展開を継続するはずなのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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