May 31 ~ June 6 2026

Messed & Riggged
250周年を間近に控えて、からくりがバレて行くアメリカ


 アメリカ建国250周年を控える首都ワシントンDCであるけれど、ホワイトハウスのイースト・ウィングは議会承認無しにトランプ氏が進めるボールルーム、及び地下6階の軍事施設兼バンカー建設で巨大な工事現場と化し、 ホワイトハウス・サウスローンはトランプ氏の誕生日に行われるUSCの格闘アリーナが建設中で見る影もない状態。しかも今週トランプ氏はUFCアリーナを暫くキープする可能性を示唆していたのだった。
 リンカーン・メモリアルを取り囲む4つの馬の銅像には、500万ドルを投じて成金趣味な23.5カラットの金箔を貼り付けられる作業が行われ、リンカーン・メモリアル前のリフレクティング・プールは 現在水が抜かれて、塗装作業の真っ最中。このプロジェクトはトランプ氏が4月に約150万ドルから180万ドルの費用と謳って提案。 建国250周年を控え、スピードが要求されることを理由にコントラクターの入札無しに、トランプ氏の知人の企業に依頼されており、その段階の契約金は見積りの約4倍の690万ドル。  作業内容は水面を美しく見せるためにプールの底をブルーで塗装し、防水工事、コンクリートの漏水補修という屋外プールのリノベーションと同等のもの。にもかかわらず現時点の公式予算は契約金の2倍の1310万ドルに膨れ上がり、先週トランプ氏は追加の外装改修工事を含め、総額が最大2000万ドルに達する見込みを発表。このうちトランプ氏の知人企業が受け取る利益は20%で、利益率は妥当であっても、 プロジェクトの費用が高過ぎるとの指摘が文化景観財団から上がっているのだった。



金はトランプに流れる?


 少し前に公開されたのが、米国政府倫理局に提出されたトランプ氏の株式取引を報告する書類。トランプ氏は2026年第1四半期だけで3711回の株式取引を行い、1日平均40回取引のペース。
 2025年の段階では地方債と社債のみを所有し、利益相反の懸念は無いと判断されていたトランプ氏が一転して、個別株の取引を高頻度で行うようになったのは今年1月から。 しかもトランプ氏が取引していたのは、連邦政府と直接的な関りを持つ企業の株が殆どで、取引のタイミングはトランプ政権による企業への優遇措置や政府コントラクト、企業間の提携等が発表される直前。
 例えばトランプ政権に強い影響力を持つピーター・ティール率いるパランティア・テクノロジーズは、国防総省との13億ドルの契約を含む数十億ドル規模のコントラクトをトランプ政権と結んでおり、 1月以降、トランプ氏はパランティア株68万ドル相当を9回に分けて購入。4月初旬に株価が約15%下落した際には、自らのSNSで「パランティアは優れた戦闘能力と装備を持っていることが証明されている。敵に聞いてみればいい」と投稿。その後約10日で、株価は下落分を遥かに上回る水準に回復したのだった。
 またトランプ氏は1月初旬、商務省がエヌビディア製半導体の中国への輸出を承認する決断を下したタイミングでエヌビディア株を購入。 2月にはエヌビディアがMeta社との大規模な契約を発表する数日前に、100万ドルから500万ドル相当のエヌビディア株を追加購入しているのだった。
 政界では長年下院議長を務めた民主党ナンシー・ペロシも「ウォーレン・バフェットより優秀な投資家」と皮肉られるほど、インサイダー取引まがいの 株式売買を行っていたけれど、大統領としてここまで露骨に利益を上げているのは歴史上トランプ氏が唯一の存在。
 トランプ氏は、ホワイトハウスでのUFCイベント開催を発表した2週間後に UFCの親会社、TKOグループ・ホールディングスの株式を購入。以来、イベントのプロモートを SNSを通じて行っていることから、ここでも利益相反を指摘されているけれど、それより問題視されているのが UFCイベントのチケットが1枚150万ドルで販売されていること。 イベントの観客数は4000人で、TKOグループのゲスト400人、トランプ氏のゲスト1000人以外は米軍兵士。 ゲストは試合前後のレセプションやパーティーにも招待されるので、国内外のビリオネアやオリガーク(英語発音のオリガルヒ)にとって、 このイベントに参加することは自分とトランプ政権とのパイプの太さを立証するもの。 そのため150万ドルを喜んで支払うゲストは多いけれど、売り上げが何処に計上されるのかは全く不透明。 UFCイベントには日を追うごとにUFCポッドキャスター、他のUFCファイター、UFCファンからも反発の声が寄せられ始めているのだった。



遂に始まったMAGA離脱運動


 今週にはトランプ氏の国境を超えた裏取引も物議を醸しており、昨年9月にカザフスタンの大統領がトランプ氏に電話をして、同国のタングステンの採掘権をアメリカ企業に与えたいと打診。 翌月にはトランプ氏の2人の息子がアメリカの採掘会社の株式を大量に取得。その6日後にカザフスタン政府が、「地球上最大の未開発資源採掘をアメリカ企業に委ねる」と発表し、数週間後にトランプ政権が発表したのが、息子達が多額の投資をした採掘プロジェクトに16億ドルの政府予算を投じる意向。これによってカザフスタン政府関係者もトランプ・ファミリーも大儲けをしたのは言うまでもないこと。
 昨年4月にはトランプ・オーガニゼーションがカタール政府から土地を提供されゴルフ&ビーチ・リゾートを建設するプロジェクトが報じられ、2~4億ドルのボーイング747-8型機がトランプ氏に贈呈されたけれど、同年10月に報じられたのが、何故かアメリカのアイダホ州にカタール空軍基地が建設されるニュース。トランプ第二期政権発足以降の僅か1年半で、トランプ・オーガニゼーションが手掛ける海外プロジェクトは22件で、 現地政府のサポートを得ていないオーストラリアのトランプ・タワー建設は2週間前に計画倒れになっているのだった。
 最新の批判を浴びているのは、イヴァンカ・トランプが「現在夫と取り組んでいる最もエキサイティングな不動産プロジェクト」とメディアのインタビューで語った 地中海に浮かぶアルバニア領の無人島開発計画。 イヴァンカが夫のジャレッド・クシュナーと、ロスチャイルドのヨットで地中海をクルーズする最中に「偶然見つけて、泳いで辿り着き、丘の上まで裸足でハイキングして、その場で惚れ込んでしまった」と語るこの島は、 1400ヘクタールの面積。偶然見つけるような小さな島ではなく、地図にも載っているアルバニアの保存区域。 アメリカのSNS上では、「クシュナー夫妻がラグジュアリー・リゾートと称して、新たなエプスティーン・アイランドを作ろうとしている」という見方が多いけれど、 この島をクシュナー率いるプライベート・エクイティ・ファンドが買収出来るように法律を改正したのがアルバニアのエディ・ラマ首相。 それに激怒した現地では大々的な抗議活動が連日行われ、ラマの私邸に火が放たれる事態に発展。 怒りの矛先はラマだけでなく、トランプ氏にも向けられているのだった。

 昨今のアメリカでは、ここまでのやりたい放題を見せつけられてトランプ支持を翻す人々が増えており、 元MAGA勢力がスタートしたのが ”Leaving MAGA”、すなわち”MAGA離脱”というムーブメント兼サポート組織。
 熱烈なトランプ支持者を意味するMAGAを自称するのは 共和党支持者のほぼ半数、国民の15~24%程度。 MAGAは政治派閥というよりも、トランプ氏をアメリカの救世主と仰ぐキリスト教右派、白人保守のコミュニティであり、 生活と社会への不満や怒りを対立勢力に向けることで結束してきた共同体。 MAGAの多くは2016年の大統領選挙で初めて投票し、それまでは政治に全く関心が無かった南部、中西部の貧困層。 政治や社会問題をトランプ氏の言葉通りに理解している人々。そんな中でのMAGA離脱はトランプ支持を覆すだけでの話はなく、 信じて来た世界観を否定し、自分が所属するコミュニティとの決別を意味するもの。
 トランプ政権の予算案によって健康保険も住宅補助も失い、生活が成り立たないMAGAがそれでもトランプ氏を支持するのは、 今さら考えを変えられない意地に加えて、トランプ支持を取り下げることで村八分のような孤立を味わいたくないという気持ちが強いという。
   Leaving MAGAを含むMAGA離脱支援グループが掲げるのは、「個人が自由に政治的思考を選択し、周囲からの圧力を受けない社会生活の再構築とそのサポート」。 見方を変えればサポート組織が結成されるほどに 離脱しようとして初めてMAGAのカルト教団的な側面に気付く人々が多いようなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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