今週のアメリカではスペースX、オープンAIという期待のIPO申請が行われた一方で、全米各地で大規模な山火事、洪水、ベースボール・サイズの雹が降ったり、
竜巻の被害で多数の家屋が崩壊する等、連日報じられたのが自然災害のニュース。
しかし今週、根強い共和党支持者さえ眉を吊り上げたのが トランプ氏が自分の政権の国税局、司法省を訴え、その訴追を取り下げる条件として、
バイデン政権下で不当に訴追されたトランプ支持者に対する18億ドルの賠償金基金を設けること、そしてトランプ氏とその家族には生涯に渡って 国税局が一切査察を行わないという
あり得ない内容を提示したこと。
そもそも大統領が”自分の政権=自分の配下”を訴えるのは前代未聞で、賠償金と称して国民の血税を搾取する行為。しかも18億ドルの賠償基金は
2021年1月6日に米国議会に乱入し、現在はICEのエージェントに就職して高給を受け取っているプラウドボーイズ、オースキーパーといった武装保守右派メンバーにも
支払われ、プラウドボーイズのリーダーが500万ドルを請求すると言われた中、さすがに共和党上院議員の20人以上がこれに反発。同法案を含めた予算案の投票は
メモリアルデイの休暇以降の6月に先送りされたのだった。
トランプ氏はそれに加えて国税を使わずに建設すると宣言し、約4億ドルの寄付を集めたホワイトハウス・ボールルーム建設のセキュリティ強化費用として議会に10億ドルの予算を請求。
こちらは共和党上層部の反対多数で法案から削除されたけれど、ただでさえ不必要な戦争で米国債務が増え続ける中で
トランプ紙幣発行、トランプ・パスポート発行、リンカーン・メモリアル前の巨大アーチ建設といった税金無駄遣いにより 連邦政府債務総額は現在39兆ドル。
継続的な国債大量発行は限界に迫っており、経済専門家やIMF(国際通貨基金)が米国債の需要急減の可能性を警告し始めたのが現状。
「倒産王トランプ氏がアメリカを倒産させる」というのは今やジョークではなく、経済シナリオの1つになりつつあるのだった。
SNSコンテンツ・クリエーターの数は全世界で5000万人、その半分以上の約2700万人を擁するのがアメリカ。
米国でフルタイム・ジョブとしてSNSに投稿しているのは150万人以上で、
そのうちの45.6%が年間 1~10万ドルの収益を上げており、年間25万ドル以上を稼ぎ出すのはトップ2%程度。
著名なインフルエンサーになれなくても、本業収入と合わせればミドルクラスの生活が出来るケースが多いとあって、
クリエーター・エコノミーはこれまで ”ミドルクラス・メーカー” とも呼ばれてきたのだった。
昨今そのクリエーター・エコノミーに異変が生じていて、YouTubeからピンタレストまで、SNS上で
意味不明な規約違反で投稿を削除されたり、人間が作ったコンテンツなのに生成AIコンテンツの扱いを受けて収益権を奪われるケース等が多発。
運営側に抗議をしても埒が明かず、中には不当にアカウントを削除される事態も発生。
そのため経済的打撃を受けるコンテンツ・クリエーターが増えており、
そんな危機感をつのらせるインフルエンサー、YouTubeチャンネル、クリエイター・マーケティング・エージェンシーを
次々と買収しているのがプライベート・エクイティ(以下PE)。PEはこれらを300万ドル~1億5000万ドルで買収し、
オーディエンスを統合、スポンサーシップを増やし、収入源を多様化することで更なる収益拡大を掲げており、
買い取られる側は収入が安定し、チームの増員が可能になり、SNS側とのトラブルに対応する
資金と後ろ盾が得られるというメリットがあるのだった。
とは言っても2000年以降のアメリカで PEが買収を続けた結果、倒産、もしくはプロパガンダ発信道具に格下げされてしまったのが
ローカル新聞、TV&ラジオのローカル局を含む地方メディア。
PEは買収後に地方メディアが持つ不動産等の資産を売却し、程なく倒産させることで莫大な利益を得る一方で、経営を続けるメディアからは
有能なジャーナリストを解雇して、報道内容も超保守寄りに変更させてきた存在。
それにより、これまで地元権力者の汚職や不正を報じ、地元民意を反映させてきた地方メディアが一気に衰退したことは、
現在のアメリカの封建社会構築の動きに寄与したのだった。
そのためSNSのコンテンツ・クリエーターの買収も、利益を上げながらインフルエンサーを通じて世論をコントロールするのが目的と見られているのだった。
第二期トランプ政権ではリベラル・メディア叩きが容赦ないレベルで行われているけれど、今年に入ってからはYouTubeで リベラル系インフルエンサーのコンテンツが
オートフィードで出て来なくなったことが問題視されており、TikTokも 超トランプ派のシオニストCEO、ラリー・エルソンのオラクルとプライベート・エクイティ・ファンドがアメリカ部門を買収して以来、
エプスティーンという言葉を出しただけで投稿が削除され、アンチ・トランプ派のアカウント停止処分が相次ぐ状況。
その一方で、かつて言論統制とは無縁の存在と言われた書き込みサイト、Redditも GoogleとOpenAIが
そのコンテンツをAI学習に使用する権利を買い取った結果、溢れ始めたのがAIによるプロパガンダ的書き込み。
同様のことはゲーマーが中心のコミュニティ・スタイルのSNS、Discordでも起こり始めており、
メディアと名のつく全ての媒体で、様々な言論統制が着々と進んでいるのだった。
先月にはブロンド美女のMAGAインフルエンサー、エミリー・ハートが、実はインド人男性が収益目的でクリエイトした生成AIキャラクターであったことが明らかになったけれど、
この男性はリベラル派を含む複数のキャラクターでトライした結果、エミリーが最も収益性が高かったので彼女を使って投稿を続けたとのこと。
実際に彼女のルックスとキリスト教右派の差別的発言は 保守派男性が飛びつくもの。
SNSの世界では、AIキャラクターではない生身のインフルエンサーも 保守コンテンツの方が稼げるという商業目的の投稿をするケースが非常に多く、
AIを駆使した量産コンテンツも引き続き溢れているけれど、何がヴァイラルになるかを決めるはSNSのアルゴリズム。
例えばイーロン・マスク買収後のX(旧Twitter)は、 ユーザーの感情、特に怒りを煽る投稿を優先表示するアルゴリズムに設計されているのはアメリカでは周知の事実。
怒りの感情はツイート、リツイートのリアクションを最も誘発し、プラットフォームに居座る時間を長引かせるもの。
XのAIチャットボット「Grok」が誤解を招くコンテンツを頻繁に表示するのも、そうした物議狙いと言われるけれど、マスク買収後にリベラル派がX離れをした結果、
現在アメリカで Grokをリサーチに使用し、Xに頻繁にアクセスするのは圧倒的に保守層。 Xのアルゴリズムは”Rage Bait/怒りの釣り”と呼ばれ、
現在のインフレ、戦争によるガソリン代高騰で益々困窮する保守派の怒りの矛先が、トランプ政権ではなく
リベラル派や民主党に向かうようにデザインされているのは言うまでもないこと。 すなわち投稿内容ではなく、アルゴリズムがプロパガンダになっているのが現在。
SNSのアルゴリズムは、AIサーチやサーチエンジンの結果にも影響を及ぼすため、様々な機関や企業のリサーチやレポート内容をコントロールする存在にもなりつつあるのだった。
ところで欧米コンテンツ・クリエーターの間で、ここ数年有益な収入源になっているのが「外国人が見た日本」系のコンテンツ。
日本はXユーザー数がアメリカに次ぐ世界2位で、全世界のXユーザーの12.5%を占め、日本国民の3人に2人がXのアクティブ・アカウントを持つ計算。
YouTubeは世界的なユーザーがずっと多いので グローバル・シェアは3.1%に過ぎないけれど、人口の65%に当たる7870万~8120万人が定期的に視聴しており、
日本は国民の興味の対象が集中し易い社会であるため、そもそも「バズリネタ」で効率良く稼げる市場。
「外国人が見た日本」系のコンテンツは まさにその「バズリネタ」で、特にYouTubeには「Content ID」という著作権管理システムがあるので、
日本の翻訳チャンネルが勝手に使用しても元動画側に収益が行くケースが多く、外国人発信の日本コンテンツは 日本語圏で非常に拡散され易いのは
今やコンテンツ・クリエーターの間では基礎知識。
そのため日本旅行をして日本人のマナーや国民性、日本食などを絶賛するコンテンツを発信し、帰国した後は「日本が良かった」、「また行きたい!」という
「ジャパン・ロス・コンテンツ」で更に稼ぐフォーミュラを実践するのが一般的。
日本のコンテンツ・クリエーターの中には、その投稿内容だけパクッてAIの生成画像を使うことで収益シェアをしないケースも
増えているようだけれど、かつて日本を旅行した外国人と言えば、日本の一風変わった文化、街中で見かける間違った英語看板等を欧米向けに発信し、収益とは無関係の自己満足に終わっていたのが実情。
それが 近年こぞって”日本人向けの日本上げビデオ”に転じたのはその方が遥かに収益が上がるためで、それについては
「失われた30年で自信喪失気味の日本人が、外国人旅行者からの賞賛によって自己肯定感を高めたがっている」という分析までされているとのこと。
そうした収益目的の日本ネタに限らず、SNS投稿は政治&選挙絡みから、特定の危機感の煽り、逆に深刻な問題の軽視など、目標に応じた
心理分析、社会分析に従って民意をコントロールするために利用されているもの。
無料の娯楽として楽しんでいるうちに、思考や精神、価値感に多大な影響を及ぼすだけでなく、
時間、気力、睡眠時間を奪いながら、人間をコントロールし易い存在に替えて行くパワーを持つのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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