Mar 24 〜 Mar 30 2024

Diddy, MAGA Makeover, Sleep Tourism
セックストラフィッキング疑惑, MAGAメイクオーバー, 快眠追求の旅, Etc.


今週のアメリカでは先週から引き続き、メインストリーム・メディアでも、ソーシャル・メディアでも毎日のように大きく取り沙汰されていたのが 大谷選手の元通訳、水原一平氏のギャンブル疑惑。今週には大谷選手が自らが会見を行い、身の潔白を証言したけれど、 そのリアクションの大半は大谷選手を信じる意見。それでも根強かったのが、大谷選手が野球を続けるために水原氏に全責任を負わせたという憶測で、 ブックメーカーへの振込が大谷選手の口座から複数回行われたことを不審がる声が聞かれたけれど、実際にはアメリカではアスリートやセレブリティのビジネス用銀行口座を 代理人が管理するのは珍しくないどころかほぼ当たり前。それよりもメディアにとって腑に落ちなかったのが、大谷選手の弁護士事務所が「水原氏による窃盗容疑に関しては捜査当局の手に委ねた」と 言いながら、その捜査局がどの機関であることを明らかにしない点。 既にMLBが独自に捜査を行う一方で、今週にはホームランド・セキュリティとIRS(国税局)が合同で水原氏の捜査に入っているけれど、 大谷選手の弁護士が語る捜査当局が昨年から違法ブックメーカーの捜査を続けて来たFBIなのか、それとも窃盗ということで州警察なのか、メディアからの問い合わせに明言を避けている点が疑問視されていたのだった。
でも今週のアメリカでそれ以上の大ニュースだったのが、3月26日午前1時に巨大なコンテナ船”ダリ”がメリーランド州ボルティモアのフランシス・スコット・キー橋に激突し、 橋が崩落する事故。橋で作業をしていた6人が犠牲になった事故は、激突当時ダリの船内が停電していたことがブラックボックスの内容のダウンロードで明らかになっているけれど、 ボルティモアと言えばアメリカで最もトラフィックが多い港で、サプライチェーンの鍵を握る存在。2023年には木材、石炭、建設機械を含む800億ドル以上の積荷が ボルティモア港を通じて流通しており、フォード、ゼネラルモーターズ、フォルクスワーゲンも乗用車や小型トラックの輸送を同港に大きく依存している状況。 そのためこの事故が、深刻な物流問題、十億ドル単位の保険金請求、重大な経済的ダメージをもたらすと見込まれ、 港の仕事に従事する8000人も仕事を失うリスクに直面しているのが現在。 サプライチェーンの乱れと、膨らむ財政赤字の中から多額の復旧予算を捻出することで、更なるインフレを招く懸念も聞かれるのだった。



ラッパー、ショーン・コムのセックストラフィッキング容疑


今週、芸能メディアだけでなくメインストリート・メディアでも大きく報じられたのが、ラッパー&ミュージック・プロデューサーで、”パフ・ダディ”、”Pディディ”、”ディディ”と名乗ってきた ショーン・コムのロサンジェルス、マイアミの私邸が、セックス・トラフィッキングの容疑でFBIによって家宅捜索されたニュース。
音楽の世界で成功を収めた後、リカー会社、Ciroc/シロックとのビジネスで、ほぼビリオネアと言われる個人資産を持つショーン・コムであるけれど、 彼の長年のガールフレンドで、キャシーというファーストネームだけでデビューしたキャシー・ヴェンチューラが、彼に対して虐待、レイプ、セックストラフィッキング等の複数の容疑で訴訟を起こしたのが2023年11月のこと。 その訴状によれば、ショーン・コムはティーンエイジ時代の彼女にアルコールやドラッグを与え、性的&暴力的、及び口頭での虐待、脅迫行為を繰り返し、他の男性との性交渉もを強要したとのこと。 この訴えは申請2日後には示談が成立したけれど、その直後から更に4人の女性達が同様の容疑でショーン・コムを訴追。 今週行われた彼の私邸の家宅捜索は、それらの被害者が訴えていたセックストラフィッキングの容疑絡みと報じられていたのだった。
ショーン・コムは、今回の一連の捜査を「魔女狩り」と批判し、自らの無罪を主張しているものの、彼に対する捜査は ドラッグ関連の容疑でも進んでいるようで、実際に彼のミュール(ドラッグの運び屋)は既に警察に身柄を拘束されているという。
ショーン・コムは頻繁にVIPやセレブリティを招いたパーティーを行うことで知られ、今回 彼を訴えた中には、そのパーティーでゲスト達に性行為を提供する若い女性達をリクルートする 役割を担っていたレコード・プロデューサーのロドニー・ジョーンズも含まれているのだった。 ジョーンズは 性的虐待を含むショーン・コムの数多くの違法行為を彼の指示を受けて撮影したビデオを多数所持していると語っており、 訴状ではショーン・コム以外にも、複数のVIPの名前が被告人として名を連ねているとのこと。
またロドニー・ジョーンズは、ショーン・コムがハリー王子を含む、政界、エンターテイメント界のVIPやセレブリティと親しく、 彼らを頻繁にパーティーに招くことで、パーティーがまるで合法であるかのように演出していたとも語っており、 パーティー・ゲストとして恩恵を受けていたVIPやセレブリティに対しても批判を展開しているのだった。
この容疑が全て真実である場合、ショーン・コムが行って来たことは、セックス・トラフィッキングの容疑で拘留中に自殺を図ったとされている ジェフリー・エプスティーンのケースと酷似しているけれど、 女性達の証言が事実であれば、ショーン・コムの犯罪にはドラッグや暴力が絡むという点で更に悪質な印象。 ショーン・コムもエプスティーン同様、#MeTooムーブメント以前は被害者が訴訟を起こすなど、不可能と思われていた存在なのだった。
現時点ではショーン・コムに対して逮捕状や渡航禁止令等は出ていないものの、 彼のようなセレブリティに対する家宅捜査は、捜査当局側によほどの勝算が無ければ行われないもの。 それだけに、「彼の立件は時間の問題」という声は多く、その場合、セックス・トラフィキング、性的虐待、ドラッグ・トラフィッキング等、 複数の深刻な容疑での訴追となる見込みなのだった。



副大統領候補のMAGAメイクオーバー


11月の大統領選挙に民主党を離脱して無所属で出馬するロバート・ケネディ・ジュニアが、今週発表したのが彼と共に選挙戦を闘う副大統領候補。 彼が選んだのは、シリコンヴァレーの弁護士で慈善事業家のニコル・シャナハン(38歳)。グーグルの共同設立者、セルゲイ・ブリンの元妻として知られる人物。
トランプ氏も、副大統領候補を絞り込む段階に入っており、その有力候補の1人で、ここへきて物議を醸しているのがサウスダコタ州のクリスティ・ノエム知事(写真左側2枚)。 その物議とは、彼女がソーシャル・メディアにテキサス州の審美歯科診療所 ”スマイル・テキサス”を絶賛するビデオを投稿したこと。 ノエム知事は、ビデオの中で「数年前の自転車事故で前歯が折れてしまい、矯正の必要を感じていた。 1000マイルも離れたテキサス州の ”スマイル・テキサス”と Zoomを通じたカウンセリングを受けてから現地に向かった。 最高のチームによって前歯を治してもらい、美しい歯と美しいスマイルを取り戻した」とその経緯を説明。 「自分の州では決して得られないクォリティのサービスだった」と、サウスダコタ州知事とは思えない発言を含んだ手放しの賞賛を繰り広げたことから、 ビデオのコメント欄には 「これは州知事による歯科医の宣伝か?」という批判が殺到していたという。
そしてビデオ公開の翌週に報じられたのが、ノエム知事が 超党派の消費者擁護団体に 「広告活動であることをフォロワーに知らせずに、テキサス州の歯科医院の広告ビデオをポストした」 容疑で告発されたニュース。団体はノエム知事の行為が「欺瞞的な商行為を禁じる消費者保護法に違反している」と批判。 これまでのノエム知事の全ての投稿で、製品やサービスについて語っているものに関し、訂正開示を行う強制措置を命じたのだった。
さらには民主党サウスダコタ州上院議員は、「歯科治療の宣伝と、浮かれた観光ビデオを撮影した知事のテキサス州訪問に、 公的資金や公的交通手段が使われていなかったか、及び職権を利用した恩恵を受けていなかったか」の調査を要求。 ノエム知事の意図とは異なるリアクションが起こっていたのだった。
でもこのことが知事の職権乱用以上の物議として メインストリート・メディアで取り上げられた理由は、 ノエム氏の審美歯科の高額治療が、副大統領候補を狙う彼女の MAGA(トランプ氏のスローガン、Make America Great Againの略)メイクオーバーの一環であったため。 共和党の中でも熱烈なトランプ派で知られるノエム氏は、過去2年ほどでそのルックスが 俗に言う”MAGAウーマン”、すなわちメラニアやイヴァンカのコピー・バージョンになりつつあり、 長く伸ばしたボリュームのあるヘア、身体にフィットした服装、それを着用するためにダイエットにも気を遣っているようで、全てはルックスが悪い女性を毛嫌いするトランプ氏に気に入られて、 副大統領候補指名を勝ち取るための手段であることは共和党関係者も認める事実。
前回のトランプ政権の広報を含む女性職員、現在トランプ氏の裁判を担当する弁護団の女性弁護士、息子達の妻に至るまで、トランプ氏の周囲の女性達が こぞって同じようなルックスと服装、グロスが効いたヌード・カラーのリップをつける”MAGAウーマン”になって行く様子は傍からは滑稽とも言われる現象。 写真右2枚は、現在ドナルド・トランプ・ジュニアのパートナーであるキンバリー・ギルフォイルであるけれど、彼女は 現在のカリフォルニア州知事、ガヴィン・ニューソン(民主党)が サンフランシスコ市長であった時代の妻。ニューソン夫人時代(写真右から2番目)は至ってノーマルなルックスであった彼女も ドナルド・ジュニアとの交際がスタートしてからというもの、 服はボディコン、睫毛とヘアはエクステンション、唇はグロスでベトベトというMEGAメイクオーバーが行われているのだった。
今回の選挙ではトランプ氏が女性副大統領候補を擁立するという噂が高まっているだけに、 クリスティ・ノエムがMEGAメイクオーバーをして、そのチャンスを狙うのは共和党支持者の視点からは理に叶った行動。 しかし民主党、リベラル派、及び無党派層の目からは、MAGAウーマンは 2004年公開の映画「ステップフォード・ワイブス」の中に登場した、 ”無個性のマネキン・ルックスで、夫の言いなりになる良妻賢母”と重なるイメージがあるだけに、かなり不気味な印象に映っているのだった。





眠りが”旅行”の概念を変える!?


アメリカはハイブリッド勤務がニューノーマルになって、旅行がし易くなったことも手伝って、パンデミック終了後から空前の旅行ブーム。 それと同時に過去に無いほどにその重要性が見直されているのが睡眠。CUBE New Yorkの記事でもつい最近AI機能を搭載した インテリジェント・ベッド、”Bryte/ブライト”を取り上げたけれど、 快眠の追求にまでAIが参入してきたのは驚くばかり。 そんな2つの社会的背景も手伝って、「眠り」を軸にしたビジネス戦略に益々拍車が掛かったのがホテル業界。
これまでにもホテル業界では、何種類もの枕を用意したり、高級寝具、高額ベッドで眠りの環境を整えたり、アロマセラピーを取り入れるなど、 かなり真剣な快眠追及の取り組みが見られたけれど、パークハイアット・ホテルは、いち早く 6000ドル以上もするブライトのAIベッドを導入。 ”Bryte Restorative Sleep Suites / ブライト回復的睡眠スウィート”を開設して、快眠パッケージをクリエイト。
また一流ホテル・チェーンを中心に増えて来たのが”スリープ・コンシアージュ(コンシェルジュ)”の存在。 これは通常のコンシアージュが滞在中の観光や観劇、レストラン予約のサポートをするのと同様に、 宿泊客の快眠のサポートをするポジション。宿泊客の好み通りの寝室環境をセッティングし、快眠に導くための就寝前のマッサージ、ノンカフェイン・ドリンクのオファー、 心地好い目覚めのためのカスタム・アラーム等、至れり尽くせりの快眠追及を手助けしてくれる存在。
都市部のホテルでは 日中の空室時間に快眠プログラムを用いた昼寝セッションもスタートしているけれど、 今後益々盛り上がって行くと目されるのが 眠りをアトラクションにした旅行。
これは慢性的な不眠症に悩んでいる人々や、仕事に追われて「とにかくゆっくり眠りたい」と考える人々をターゲットに、 眠りをメイン・フォーカスにデザインした旅行。 これならば、観光名所やアトラクションが無いエリアでも集客が図れる一方で、眠りが目的の旅行者にとっては 観光名所など無い方が眠りに集中出来ると言われるのだった。
そうなると、これまで旅行地として全く魅力も需要も無かったエリアでも、”快眠が得られる滞在”をコンセプトにドル箱ホテルの経営が可能になる訳で、 既にスウェーデンのベッドメーカー、ハステンズは2021年にポルトガルのコインブラ市に世界初のスリープ・スパ・ホテルをオープン。 僅か15室のブティック・ホテルであるけれど、今後増えて行くのが同様のホテル。 自宅以外の場所での質の高い快眠を求めるのは、日頃は家庭料理で満足する人でも、「記念日や誕生日には高級フレンチ・ディナーを味わいたい」と考える心理と同様と言われ、 エアB&Bのオーナーの中には前述のブライト・インテリジェント・ベッドを導入して、高額料金を設定する動きもスタート。 現代人にとって”最高の眠り”は、誰もがお金を払って獲得したがる ”憧れの対象”になりつつあるのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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