Sep 11 〜 Sep 17 2023
ファッション・ウィークが危機、、虐め被害者遺族へ巨額賠償金!?、米国性不況?, Etc.
今週のアメリカはレイバー・デイの休暇から1週間が経過し、いよいよビジネス界が2023年最終四半期に本腰を入れたタイミング。
そのためビジネス絡みの大きなニュースが多かったけれど、主だったところとしては9月12日火曜日にアップルがアイフォン15を発表。USB-Cケーブルによるチャージ、A17 Pro半導体を搭載した従来より10倍パワフルかつ高画像、高性能化したカメラ、チタン素材を用いた軽量化等を賞賛する声が聞かれたものの、中国が政府職員にアイフォン使用を禁じたことで、アップルにとって最も重要な市場である中国でのコアの客層を失ったことが危惧され、市場はミックス・リアクション。
同じ日には司法省がグーグルを相手取って起こしていた 独占禁止法違反の裁判がスタート。司法省は過去にIBM、マイクロソフト等IT大手を相手取って同様の裁判を起こし、その都度敗れはしているものの、訴えられた企業は一時的にも業績を落として減速するのが常。今回も検索とオンライン広告で独占状態が続くグーグルをスローダウンさせるのが目的と見られているのだった。
そして9月15日深夜に大方の予測通りストライキ入りしたのがUAW(ユナイテッド・オート・ワーカー:アメリカ自動車業界ビッグ3の労働組合)。46%の賃金引上げを求めるUAWに対して、ビッグ3は20%前後しか歩み寄っていないことから、
長期化を予測する声が聞かれるけれど、このストライキは来年大統領再選を目指すバイデン大統領にとっては、勝敗を分けかねない重要な問題。
UAWは長きに渡って大統領選挙で民主党候補者を支持してきた歴史があるけれど、次回の選挙に関してはUAWはあえてその支持表明を保留にしており、
UAWの15万人の組合員票が欲しいバイデン大統領がビッグ3との間に入って調整をせざるを得ない状況をクリエイトしているのが現在。
そのバイデン氏に対しては、今週共和党ケヴィン・マッカーシー下院議長が、”副大統領時代に息子ハンター・バイデンの海外事業から利益を得ていた容疑”で弾劾調査の開始を指示。
しかし共和党議員でさえ「疑惑はあっても、証拠が無い」と指摘する段階での弾劾調査。それでも踏み切る理由は来年の大統領選挙に向けてのバイデン氏のイメージダウンを狙っているというよりも、
今年1月にマッカーシー議長就任選挙の際に投票を渋り、事実上 彼の首を握っている保守強行右派(トランプ派)からの圧力に屈してのもの。
そのため下院議長と言いながらマッカーシー自身も苦しい立場にある様子を感じさせていたのだった。
ファッション・ウィークは生き残れるか?
先週末から今週にかけてNYで開催されていたのがファッション・ウィーク。今回のファッション・ウィーク期間中にランウェイ・ショーを行ったブランドは約100で、これはピーク時である2014年の500に比べると
80%減。その要因の1つは、ランウェイ・ショーを開催するコストがどんどんアップしているためで、その高額コストを支払ってまでランウェイ・ショーを行うだけの
メリットがどんどん希薄になってきているのが現在。
すなわち毎シーズンのトレンドを生み出すはずのファッション・ウィーク自体がアウト・オブ・トレンドになってきているのだった。
ファッション・ウィークが廃れて来た原因はコストだけでなく、Eコマースとソーシャル・メディアの影響も大。新たなブランドが誕生し易くなり、しかもブランドが小売店やメディアの力を借りずに
消費者に直接アプローチをして、売り上げが伸ばせる時代になったのは大きな変化。
これはYouTubeを始めとするビデオ・プラットフォームやストリーミング・サービスで様々なコンテンツが発信されるようになったことから、TVが廃れてきたことにも通じる状況。
その結果、従来のような 大きなトレンドの流れをメディアとブランドを含めたファッション業界がクリエイトし、それを世の中がフォローするというビジネスモデルが完全に時代遅れになり、
代わりに若い世代を中心に 共通の趣味やライフスタイル、ファンダム(一定分野のファン集団)等によって形成されたマイクロ・コミュニティの中で生まれる
マイクロ・トレンドをフォローする傾向が顕著になり、ニッチな多様性が出て来たのが昨今。
この夏のバービー・ブームやテイラー・スウィフトのツアー・ファッションのようにトレンドの出所がカルチャーにシフトする一方で、
ファッションをクリエイトするのがファッション・ブランドだけではなくなり、今やフード・ブランドもアパレルを手掛けるご時世。
パンデミック以降、社会全体が大きくドレスダウン&カジュアルに動いた上に、ファッションの今を担うジェネレーションZはブランドには全く無頓着。
一般人にとってはデザイナー・ファッションを着用するオケージョンも激減していることから、どんどん市場が小さくなっているのがデザイナー・ファッション。
そんな小さくなる市場で利益を上げるために、既に高額だったデザイナー物が益々高額になってきたのは誰もが実感する事実。
その価格高騰のせいで、トップブランドが購入できるのは世の中のほんの一握りの人々。
とは言っても、これがメンズ市場になると若干ながら見通しが明るいのもまた事実。
いずれにしても今回のNYファッション・ウィークは、メディアのフィーチャーが近年に無く控えめで、
徐々に消え行く方向性を感じさせたことは否定できないのだった。
学校虐め被害者遺族に2700万ドルの賠償金!?
今週アメリカで報じられたのが、学校での虐めが原因で死亡した13歳のディエゴ・ソルツ少年の遺族が 学区域を相手取って起こしていた訴訟で、2700万ドルという
史上最高額の賠償金の支払いで示談が成立したニュース。
少年が死亡したのは2019年9月のことで、現場となったのはカリフォルニア州モレノバレーのランドマーク中学校。
事件当時、ディエゴ少年は14歳の少年2人に殴られており、そのうちの1人がディエゴ少年の後頭部を殴り、その衝撃でコンクリートの柱に衝突して頭を打ち、
気を失って倒れた少年に対し 2人は暴力を続けたとのこと。結局ディエゴ少年は病院に運び込まれたものの、意識が戻ることは無く、数日後に死亡しているのだった。
ディエゴ少年は事件前日にも少年達に殴られており、それを家族がレポートした際には、女性教頭が少年達の翌日からの停学処分を約束。
ところが その教頭は虐めについて別の教師や、学校上層部に報告することは無く、事態を放置したまま、事件当日は学校に不在。
逆に本来停学処分になって学校に来ない筈の少年達が起こしたのが ディエゴ少年を死に追い込む暴力事件。
こんな不祥事が起こっても学校教師をクビに出来ないのは日本もアメリカも同様で、この教師はランドマーク中学校からは去ったものの、同じ学区域内で今も教鞭をとり続けているのだった。
暴力を振るった少年2人は未成年であることから身元非公開のまま、2021年に過失致死罪を認めたものの、懲役刑を免れて執行猶予判決。
アンガーマネジメントのセラピーを受けることが命じられただけで、事実上のお咎めなし。
要するに否がある人間が 誰1人として処罰を受けなかったのがこの事件であるだけに、史上最高額の賠償金による示談成立はディエゴ少年の遺族にとって、失われた命は戻らないとは言え、ようやく勝ち取った勝利。
ディエゴ少年は 実の両親ではなく、叔父夫婦が後見人として育てていたことから、
「未成年の加害者による死亡事故で、民事訴訟が起こせるのは実の親だけ」というカリフォルニアの州法がネックになって、
加害者少年達に民事責任を問うことさえ出来ない状況となっていたのだった。
でも2020年9月には、この事件を受けてカリフォルニア州議会が 法廷後見人でも未成年の殺人加害者に対して民事訴訟を起こすことが出来るように法を改正。
ディエゴ少年の死がカリフォルニアの法律にも影響をもたらしたけれど、それよりも大きなインパクトになると見込まれるのが今回の示談成立。
これによって虐め対策を怠った学校側には 巨額の賠償金支払いの責任が生じることが全米に示された形になったのだった。
米国のSexリセッション 性不況
先週アメリカで報じられたのが、アメリカが日本をフォローする形でセックス・リセッションに陥る可能性が高いというニュース。
セックス・リセッション(性不況)というのはメディアがクリエイトした言葉で、簡単な解釈はセックスレスの増加。
もう少し深い解釈になると、日本のように30代男性の10人に1人がヴァージンで、
女性の出生率が2020年の段階で1.34人に低下しているデータが示す通り、セックスレスが増加し、出生率が下がり、国力と経済を左右する人口減少に
歯止めが掛からない状況を指す言葉。
日本はセックス・リセッションにより経済が失速し、経済大国としての地位が徐々に揺らぎ始めていると言われ、
しかも世界屈指の長寿国であることから、急速な高齢化、労働人口と納税者の減少、年金受給者の増加という
日本人なら既に誰もが熟知する問題が指摘されていたのだった。
少子高齢化については、アメリカより先に日本をフォローし、日本を抜く勢いで問題が悪化しているのが中国であるけれど、
WHOによれば「世界の生殖年齢の男女の6人に1人が不妊」とのこと。ナイジェリア(2020年 出生率5.31人)を含むアフリカ諸国等は別として、特に先進諸国では
出生率低下は共通かつ深刻な問題。
日本では経済の低迷が少子化の要因となり、少ない子供にお金を掛ける傾向が「子育てインフレ」を招いて、「産んでも育てられない状況を益々悪化させた」と指摘されるけれど、
アメリカでは景気動向と出生率は無関係で、出生率低下の原因としてやり玉に挙げられるのは女性の社会進出。実際に女性の社会進出が著しく進んだ1970年代からアメリカの出生率は下がっており、
初めて出生率が2人以下になったのは1973年。
それでも1998年から2010年まで再び2人以上の出生率を維持。現在の1.64にまで低下するトレンドが始まったのは2010年のこと。
当時のアメリカはリーマン・ショック後のリセッションであったものの、その後の空前の好景気の中でも下がり続けたのが出生率。
加えて顕著になったのがセックスレスの傾向で、1995年〜1999年のアメリカの既婚、もしくは同居カップルのセックスの回数は現在の9倍というデータが得られているのだった。
アメリカほどの規模の国になると、少子化を含む世の中の大きな流れが数値として表れるまでには約8〜10年が掛かることから、
現在の少子化の原因は2000年前後に遡って検証する必要があると言われ、
その結果 アメリカのセックス・リセッションの原因と指摘されるのがインターネットの普及。
1990年代後半から世の中に普及したしたインターネットは、当時はダイヤルアップ接続で、映画のダウンロードに2〜4時間もかかるという
人畜無害な存在。しかしその後、仕事や娯楽のツールとして劇的な進化を遂げた結果、便利になった一方で ライフスタイルがスピードアップし、
仕事に関わる時間が増え、ストレス・レベルがアップして、セックスのための時間的、体力的、精神的余裕が無くなったのは周知の事実。
その一方で アダルト映像が簡単にダウンロード出来、個人の生活がソーシャル・メディアで公開されるようになったことから増えたのがポルノ中毒、異常な性癖、そしてストーカー。
そしてマッチング・サイトやデート・アプリが普及するにしたがって、恋愛に閉鎖的、懐疑的になる若い世代が増え、
同時に増えていったのがLGBTQ+コミュニティ。
今やジェネレーションZ世代は20%以上が生まれた性別以外で自分を認識すると回答しているのだった。
加えて増えたのが男女共に精神疾患を持つ人々と肥満人口で、特に男性の肥満はテストステロンとエストロゲンのバランスが崩れ、生殖機能、性欲に問題が生じる原因と見なされるもの。
肥満はさておき、LGBTQ+とメンタル・イルネスの増加には少なからずインターネットが関わっているのだった。
さらには環境問題、虐め問題、ヴァイオレンス等、子供をこの世に生んだところで幸せになれないというビジョンから子供を持たない考えの生殖年齢層も増えているとのこと。
要するにセックス・リセッションは原因が広範囲で、根深い様子が分析がされていたけれど、
それでもアメリカは 移民の数が他国よりも多いとあって、たとえ出生率が増えなくても 2100年まで現在と同レベルの人口が維持出来る唯一の先進国と言われるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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