Aug 28 〜 Sep 3 2023
新学期カオス、AIでウェブ閲覧が有料に?、意外な満員御礼スポーツ, Etc.
先週には1939年以来初めてカリフォルニアをハリケーン(上陸時はトロピカル・ストーム)が襲い、僅か6時間に半年分の降水量を記録すると同時に大被害をもたらしていたけれど、
その数日後に1950年以来初めてハワイを襲ったのが別のハリケーン。こちらも上陸時はトロピカル・ストームであったけれど、歴史上第4位の降水量を記録。強風の影響で
マウイとオアフでは、電柱がなぎ倒されて停電が起こったのに加えて、ちぎれた電線の火花から引火した火災も発生しているのだった。
その被害報道も終わらないうちに、今週最も報道時間が割かれていたのがフロリダを直撃したハリケーン”イダリア”と、その大被害のニュース。
この夏の猛暑の影響でフロリダ半島周辺海域の水温は、37.8度と入浴温度に達していたことから、危惧されていたのが海水の大量の蒸気が大型ハリケーンをもたらすこと。
イダリアは8月30日に迎えた今月2度目のスーパームーンの影響と重なって、5メートルもの高潮を記録。
加えてここでも強風でなぎ倒された電柱の影響で500万人が電力を失ったと同時に、電線から引火した火災の被害が出ており、
住人達が「水害には備えていたけれど、まさか火災に見舞われるとは…」と途方に暮れる様子が観られていたのだった。
この規模の自然災害が続くと、忘れ去られてしまいそうなマウイの山火事のニュースであるけれど、新たなトロピカル・ストームの被害に見舞われたことから 遂に住民の間で
旅行者締め出しの動きが始まったとのこと。
その一方で、イダリアを皮切りにまだまだハリケーンやトロピカル・ストームの被害に見舞われる見込みのフロリダであるけれど、
州知事で大統領候補のロン・ディサンティスは、NYがハリケーン・サンディの大被害に見舞われた2013年、下院議員として連邦補助金支給に猛反対をした歴史があり、
加えて未だに気象変動を否定する保守右派の立場を貫いていることから、バイデン政権が州政府に支給したインフレーション・リダクション法案の補助金用途に環境対策が含まれているという理由で
3億5000万ドルの受け取りを拒んだばかり。それでも昨年の大型ハリケーン被害は連邦補助金で乗り切り、今年も同じように国の補助を当てにしているという一貫性の無い姿勢を見せており、
党派を超えた反発を招いているのだった。
Back To School カオス
アメリカでは一部の州が8月末から迎えるのがバック・トゥ・スクール・シーズン、すなわち新学期。アメリカは夏休み明けが新年度のスタートでもあるけれど、
全米各地の学校で伝えられているのが人手不足。以前から教師不足は指摘されていたけれど、いざ新学期がスタートして
まず困っているのがスクールバス・ドライバーが大幅に不足していること。仕方なく親達が近隣家庭と連携して自家用車で送迎するケースが全米各地で見られているけれど、
どうしてもスクール・バスに頼らなければならないエリアでは子供の帰宅が夜になるのも全く珍しくない状態。
イリノイ州シカゴの学区域ではスクールバス・ドライバーが約2000人必要にも関わらず、抱えて居るのは僅か681人。それより遥かに小さなヴァージニア州シャーロットヴィルの学区域では、
160人必要なスクールバス・ドライバーが僅か12人しかいないことがレポートされているのだった。
教員不足はパンデミック中から顕著で、マスク着用や教育カリキュラムに至るまで父母の干渉が激しく、「安い給与なのに、教師どころか人間として扱われていない」という理由で
教員が辞めるケースもあれば、ロン・ディサンティス知事がフロリダで進めた黒人奴隷制を歴史教育から外し、LGBTQの存在認識を学校で禁止する超右派政策の影響で、
特に共和党支持者が多いレッド・ステーツで、白人至上主義的教育が行われ始めたことに嫌気が差した教員が辞めてしまうケースもあり、現時点で埋まらない教員ポスト数は全米で約5万5000。
しかも埋まっているポジションのうちの約16万がアンダー・クォリファイ、すなわち きちんとした教員資格を持っていない人材で賄われており、
子供達が毎日のように異なる派遣教師の授業を受けるのは今や当たり前。それが学力低下に繋がるのは生徒たちも自覚しているのだった。
加えてアメリカでは今年に入って起こった学校での銃撃事件は221件。
昨年2022年に起こったスクール・シューティングは305件で、2012年の34件と比較すると10年間に9倍に膨れ上がった計算。
そのため現時点で27の学区域が禁止しているのがバックパックでの登校。これはもちろん銃持ち込みのリスクを防ぐためで、一部の学区域では透明のバックパックを
生徒に全員に支給。それ以外の荷物持ち込みを禁止しているのだった。
ちなみに今年起こったスクール・シューティングで 最もアメリカを震撼させたのは、1月にヴァージニア州ニューポートで起こった6歳の少年による発砲事件。
教師殺害の目的で母親の銃を学校に持ち込んだ少年を目撃した生徒や教師が学校側に訴えたものの、それが無視された結果、
女性教員(25歳)が複数の銃弾を受けており、殺意を認めた少年は年齢が考慮されて無罪放免。
銃の管理を怠った母親のみが訴追されたこの事件の影響で、同学区域では当然の事ながら新学期から透明のバックパックでの通学が義務付けられているのだった。
それ以外にもテキサス州では、民主党支持者が多い学区域の教育委員会が 共和党州政府の差し金で保守右派に乗っ取られてしまい、
10以上の学校で図書館が閉鎖される事態が発生。これはフロリダ州でディサンティス知事が行っている、奴隷制の歴史やLGBTQを含むマイノリティ人種に関連する書籍を学校図書館から追放するポリシーを
世論の波風を立てずに行おうとする画策で、民主党支持者やリベラル派の親達が猛反発している問題。要するに子供の教育が政治や社会問題の犠牲になるという情けない事態に陥っているのだった。
インターネットの無料コンテンツがAIのせいで有料になる日?
今週報じられたのが、オハイオ州の地元紙のスポーツ記事がソーシャル・メディアでヴァイラルになったことから、その新聞社がAIによる記事執筆を一時停止したニュース。
このスポーツ記事は地元ハイスクールのフットボールの試合に関するもので、その不自然な論調やプレーヤーの名前を挙げずに試合を説明しようとする文体に加えて、
致命的なミスとなっていたのは、チーム名を出さずにチーム・マスコット名で対戦カードを説明したこと。
このようにAIは未だ人間のライターのようには執筆が出来ないけれど、毎日膨大な量で増え続けているのが
AIが蓄える情報量。
数週間前に作家やジャーナリスト3000人がAI企業へのオープン・レターで、自分達の作品をAIトレーニングに使用する場合は、その使用料を支払うようにと通達した今、
AIにとって恰好の無料教材となっているのがウェブ・コンテンツ。
そのウェブ・コンテンツは、通称 ”ボット・クローラー”と呼ばれるロボットで情報が収集され、これまでのボット・クローラーの役割と言えば、
検索エンジンが適切な検索結果を提示できるように、サイト情報を収集しては、その情報にインデックスを付けること。
これによってクローラー側はネット上の様々な情報を無料で集めながらデータを構築・商品化することが可能になり、
情報が採取されるウェブサイト側は 検索結果によって新たなサイト閲覧者が増えることから、持ちつ持たれつの協調関係を維持してきたのは周知の事実。
もしロボットによる追跡を嫌う場合は、ウェブサイト側がHTMLのタグにコードを埋め込むだけで回避出来ると思われてきたのがこれまで。
ところが実際には、かなり以前からコードの埋め込み程度では情報収集を防ぐことが出来なくなっており、しかも
今やボット・クローラーがウェブ上で行っているのは AIのトレーニング教材にするための広範囲かつ詳細なデータの収集。
AI教材収集用ボット・クローラーで最も有名なのは、チャットGPTのクリエーター、オープンAI社の ”GPT Bot”。
AI用のクローラーはウェブサイトから得た情報を活用して 競合するコンテンツを製作するものの、
そのオリジナル情報がフィーチャーされたウェブサイトに検索者を導くことはしないため、オリジナルのクリエーターは コンテンツが奪われる損を強いられるだけ。
この事実が広まってからというもの、ニューヨーク・タイムズ、ロイター、CNN、AP等、大手ニュース・サイトが 次々と GPTBotのブロックを開始。
今ではアクセス数が世界上位1000位以内のウェブサイトの20%以上が GPT Botを含む AIデータ収集のクローラーをブロックしているのだった。
現時点ではAIの進化が早過ぎて、その教材コンテンツの著作権、及び教材を利用してAIがリクリエイトしたコンテンツの著作権使用料等についての規定が無いことから、
多くのウェブサイトにとって 最も手軽かつ 有益な形でAIクローラーをブロックする方法となるのがウェブサイト閲覧の有料化。
ウェブ・コンテンツ制作者の中には、「いずれ自分の仕事を奪っていくAIのために、無料の教材を提供するなんて馬鹿げている」、「いずれAIに取られてしまう仕事なら、
有料でコンテンツが売れるうちに利益を上げておくべき」 という意見が急速に増えていることが伝えられているのだった。
9月半ばには、米国議会がイーロン・マスク、メタのマーク・ザッカーバーグ、グーグルのサンダー・ピチャイ、オープンAIのサム・アルトマン、エヌビディアのジェンスン・フアン、ビル・ゲイツ等、
IT業界の重鎮を一堂に招いて、AI開発規制に関するミーティングを行う予定であるけれど、AI教材のコピー・ライトについては
米国著作権局がようやく調査に乗り出したところ。
「規制を待つ間にAIにコンテンツを全て奪われる」と危惧するウェブサイトは多いだけに、
ソーシャル・メディアやウェブ閲覧が有料になる可能性は大いにあるのだった。
以外な満員御礼スポーツ
8月30日水曜夜に、ネブラスカ大学フットボール・スタジアムに9万2003人の観客を集めて行われたのが、同大学女子バレーボールチームの試合。
コーンハスカーズのチーム名で呼ばれるネブラスカ大学のバレー部は、既に5回ナショナル・チャンピオンシップに輝いているエリート・チーム。
昨年もネブラスカ VS.ウィスコンシンの女子バレー決勝戦が1万8755人の観客を集め、NCAA(全米大学体育協会)女子バレーの観客動員記録を打ち立てていたとのこと。
そのためネブラスカ大学側は 「今年も2万人程度の観客が集まるのでは?」程度に構えていたところ、集まったのは9万2003人。
日頃は縦110メートル、横48.76メートルのフットボール・フィールドの試合を観戦するスタジアムで、
プレーヤーのサイズこそは大差が無いとは言え、縦18メートル、横9メートルのバレー・ボール・コートの試合を大観衆が観戦するのはダイナミックでありながらも、少々不思議な光景。
同試合は、昨年スペイン・バルセロナで行われた女子サッカー・チャンピオン・リーグ戦が集めた9万1648人という 女子スポーツ最多観客動員記録を更新。
アメリカ国内においても、1999年にカリフォルニア州パサディナのローズ・ボウルで行われた 女子ワールドカップ・サッカー決勝 アメリカ VS.中国戦が記録した9万185人の観客動員記録を
塗り替える快挙で、メジャーリーグ・サッカーやメジャーリーグ・ベースボールが羨むような観客数。
アメリカはこのようにカレッジ・スポーツがドル箱ビジネスで、長きに渡って選手達の尽力が大学側の利益やコーチへの億円単位のサラリーになるだけという不公平が続いたけれど、
2021年にNCAAがルールを改定し、学生アスリートにその名前やイメージを使った収益が許されるようになってからは、何人もの学生ミリオネア・アスリートが誕生しているのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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