July 4 〜 July 10, 2022

"Trending After… & White Colar Layoffs"
花火がドローンになる日、銃撃犯の親も罪に問われるか?、ヴィーガン両親に殺人罪、Etc.


建国記念日のパレードを狙った銃撃事件のニュースに最も報道時間が割かれていた今週のアメリカで、ショッキングに報じられたのが 日本の安倍元首相の暗殺事件。 アメリカではインターネット・ニュースが事件直後、元総理が病院に搬送された段階で重体の様子が報じられ、 米国東部時間金曜午前5時17分にNYタイムズが「Shinzo Abe, Japan’s longest-serving prime minister, was assassinated during a public speech. He was 67. A suspect was arrested.」 というヘッドラインのアラートで安倍氏死去のニュースを発信していたのだった。 そんな中、バイデン大統領は追悼メッセージの中で この事件を ”Problem of gun violence”と、まるでに日本も銃犯罪に満ちているような内容を語り 顰蹙を買っていたけれど、 私のアメリカの友人のリアクションが集中していたのは「世界一安全な日本で銃による暗殺が起こるなんて」という驚きと、「いくら現役総理ではなく、犯罪率が低い日本とは言え、 スピーチの環境があまりに無防備だったのでは?」という2点。
通常、アメリカの大統領、元大統領がスピーチをするとなれば、複数のヴァンテージ・ポイント(イベントの全景が見渡せる位置、通常は建物の屋上等)にセキュリティが配置され、 少しでも不審な動きや近寄ろうとする人物が居れば、地上のセキュリティに無線連絡が行くというのはミニマム・セキュリティでも行われるレベル。 そもそも最長任期を務め、未だ政界に大きな影響力を持っていた元総理が、AR-15のような1分間45発を発砲する殺傷力の高い銃ではなく、 ダクトテープを巻いた自家製の銃であっさり射殺されるということ自体が考え難いこと。 日本はアメリカのような銃社会ではないとはいえ、事件当時を捉えたビデオでは この犯行がクロスボウでも可能であったように見えてしまうだけに、明らかにセキュリテイに問題があった印象を海外に広く与えていたのだった。



ドローンが花火に代わるこれだけの理由


今年はいろいろ意味で例年と異なっていたのが建国記念日のセレブレーション。
ジェシカ・チャステイン、キム・カダーシアン、ケイティ・ペリーといったセレブリティや女性有識者たちが、こぞってソーシャル・メディアを通じて展開したのが 「妊娠した女性に出産を強要するアメリカは、もはや国歌に謳われるようなthe land of the freeではない」といった内容の抗議。 それ以外にもオハイオ州アクロンでは、前の週に交通違反の黒人男性が60発の銃弾を受けて警官8人に射殺される事件が起こり、 その抗議活動が非常事態宣言発令に発展したことから、建国記念日の祝典がキャンセルされていたのだった。
それ以外にも今年は小規模な地方自治体を中心に毎年恒例の花火大会をキャンセルする傾向が顕著。その理由の1つは インフレとサプライ・チェーンの問題で 花火のコストが約35%跳ね上がったことから 予算不足を理由に断念せざるを得なかったこと。そうなってしまうのは1コンテナ分の花火の中国からの輸送費がかつての4000〜6000ドルから、今では3万5000〜4万ドルに跳ね上がったため。 加えて2021年のグレート・レジグネーション(大量辞職)の影響で 今年は花火職人が不足しており、職人を見つけた場合でもフィーが高額で予算オーバーになるケースも多かったという。
その一方で中西部の州を中心に今年から急ピッチで導入されたのが、花火の代わりのドローンを使ったセレブレーション。 というのも米国西半分は干ばつが極めて激しく、1月、2月といった冬の間も山火事が起こっていたことから 独立記念日の花火を禁じる地方自治体が続出。 実際に年間で群を抜いて山火事の発生件数が多いのが7月4日で、その原因が花火によるもの。 それに代わる夜空のセレブレーションとして 突如ニーズがアップしたのがドローンで、コロラド州デンバーにあるUAV Proには州内のみならず 他州からも申し込みが殺到。多い時は1000機のドローンによるショーを行っているけれど、ドローン自体はコンピューターでプログラミングされているので、 人手がさほど掛からないのも大きな利点。 ドローンのショーは未だ珍しいとあって、低予算のシンプルなプレゼンテーションでも観客は大喜びすることが伝えられるのが現在。
UAV Proは今後の需要拡大に向けて ドローンを買い足すとのことで、これまでもっぱら航空撮影やデリバリー手段に使われてきたドローンが 今後 花火に取って替わる日は近いと言われるのだった。



独立記念日銃乱射の責任は親にある?


前述のように今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのが独立記念日の日にシカゴ郊外のハイランド・パークで起こった 7人が殺害され40人近くが怪我を負う銃乱射事件。女装をして顔とタトゥーを隠して犯行に及んだロバート・クリム(21歳)は、 銃乱射事件を題材にした楽曲をストリーミングで発表していたラッパー。過去には セックス・ドールがクローゼットで首を吊っている様子を撮影し 「ソフィーが理由も分からないまま自殺した」とソーシャル・メディアにポストしたかと思えば、 本人も2015年、2016年にドラッグ・オーバードースによる自殺をほのめかし、2019年にも2度に渡ってナイフによる自殺未遂をしており、そのうちの1回は警察沙汰。 その数か月後にも「家族を殺そうとしている」という通報で駆け付けた警察が、クリムが所有する16のナイフと短剣を押収していたのだった。

事件が起こったイリノイ州はNYと並んで極めて銃規制が厳しい州。レッドフラッグ法といって精神疾患がある人物に武器を持たせない法律があり、 銃購入に際してもライセンス取得が求められるシステム。 普通なら自殺未遂と武器没収の翌年に 今回犯行に使われた殺傷能力の高い銃の購入は不可能。 にも関わらずクリムが2020年に 5丁の半自動小銃の購入が出来たのは父親がライセンスのスポンサーになっていたためで、 今週アメリカで浮上していたのが 「銃乱射事件の容疑者の親に対して責任が問えるか」という疑問。
アメリカではジョージ・W・ブッシュ政権時代に 銃メーカーには銃乱射事件の責任を問うことが出来ない法律が制定されてからというもの、 市場に出回る武器の殺傷能力が大きく高まっているけれど、同時に銃乱射事件の犯人の精神疾患を放置しても 決して責任を問われることが無かったのがその親達。 しかしクリムの父親の場合、ソーシャル・メディア・ポスト、自殺未遂歴など、 銃を持たせるには不適切という赤信号が灯り続ける中でそれを容認したとあって、銃乱射事件容疑者の親として初めて訴追される可能性が出て来たのが現時点。
メディアはクリムの母親についても 彼が2歳の時に炎天下の車内に彼を置き去りにして逮捕され、 その後 夫をスクリュー・ドライバーとハイヒールで殴るというドメスティック・ヴァイオレンスでも逮捕された前科があることを報じていたけれど、母親は銃購入には無関係とあって 訴追は無いと見られるのだった。

ところで今週の同事件の報道で大バッシングを受けたのが陰謀説の吹聴で知られるFOXニュースの人気アンカー、タッカー・カールソン。 彼が多発する銃乱射事件の要因として挙げたのが合法化されたマリファナと現代の女性達。 女性がこれまでの男性社会に反発し始めたのがロバート・クリムのような若い男性をセックス・ドールの購入やヴァイオレンスに走らせるというのがその主張。 一部ではロバート・クリムが熱烈なトランプ支持者であったことから、カールソンが彼をかばう動機を保守派の見地からでっち上げただけと いう擁護の指摘も聞かれたけれど、この事件は2022年のアメリカ国内で起こった309回目の銃乱射事件。 もはや こじつけの動機憶測を政治目的で利用するようなレベルではないのだった。



栄養失調で死亡した乳児のヴィーガン母に殺人罪


先週フロリダ州の裁判所で有罪判決が下されたのが、2019年に生後18か月の息子、エズラを栄養失調で死に追いやったヴィーガンの母親、シェイラ・オレアリー(39歳)に対する殺人罪。 夫のライアン(30歳)も同様に殺人罪に問われていたものの、2人の裁判は別々に行われていたのだった。
ハードコア・ヴェジタリアンであったシェイラと夫はエズラに野菜、果物のジュースと僅かな母乳のみを与えており、生後18か月の乳児の平均体重が11キロであるところ、 死亡時のエズラは7.7キロしかなかったとのこと。 夫妻は日ごろから空腹で泣き続けるエズラに腹を立てて 放置する習慣がついており、 エズラが死亡した日も、彼が食事を与えられている最中に呼吸困難に陥ったことを無視して眠りにつき、 翌朝エズラが呼吸をしていなかったことから 警察に通報。
駆け付けた警察は やせ細ったエズラの姿に加えて、夫妻の3歳、5歳の子供達も肌が黄色く、歯がボロボロという栄養失調状態であったことから 死因解明と立件に動いているのだった。 夫妻にはもう1人、シェイラと離婚した前夫との間に生まれた11歳の娘がいたけれど、 彼女は実父の家を訪ねた際にハンバーガーやピザ等のタンパク質の摂取が出来ていたことから、比較的まともな健康状態であったとのこと。
この裁判は、夫妻が 子供達にヴィーガンの食生活を押し付けただけでなく、エズラの体調不良を放置し、 彼を救おうとしなかったことを理由に過失致死ではなく殺人罪が適用された珍しいケース。 夫妻は「有罪を認め、30年の服役刑」という司法取引を拒否して裁判に臨んでおり、 妻シェイラの殺人罪が確定したことで 夫婦共々見込まれるのが終身刑。
事件が起こった2019年と言えば、ヴィーガンの若きインフルエンサー達が 生理不順や頭髪の抜け落ち等を経験した恐怖から、 こっそり魚を食べたり、脱ヴィーガンを宣言してはフォロワーから大バッシングを浴びていた時期。 ヴィーガンの最も恐ろしい副作用は「自分や家族に起こっている体調不良を無視して、身体に良い事をしていると信じるカルト性」と言われるけれど、 アメリカではヴィーガンの親達が子供を栄養失調や生理不順に陥らせるケースは決して珍しくないのが実情。 またヴィーガンの親に育てられた子供が 友達宅で、用意された野菜料理を拒んで ピザを食べたことから、 ヴィーガンの親が友達の両親を訴えるという騒ぎも起こっているけれど、ヴィーガンもここまで来ると食生活ではなく虐待になってしまうのだった。

最後に私事ながら、安倍元総理は学校の先輩でいらっしゃることから 3回ほどお会いしたことがあります。 いずれも国連総会のためにNY入りされた際に、お時間を割いてNY成蹊会にいらして下さった時で、 さすがに一国の総理がお姿を見せると その場の空気がガラッと変わって、部屋の温度が上がる思いをしたのを覚えています。
そのうちの1回では総理のお隣に座る機会に恵まれましたが、私が「日本で税金を払っていないのに、お隣に座ってもよろしいのでしょうか?」とお尋ねすると、 笑いながら「いえいえ、どうぞ」と椅子を薦めて下さいました。 総理の時間が無く、主宰者から個人の2ショット撮影を禁じられていた際には、逆に恐縮して1人ずつ丁寧に握手して下さるなど、 とても気さくで良い方という印象を持ちました。こんな形で亡くなられたことは非常に残念な限りです。 心からご冥福をお祈りいたします。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2022.

PAGE TOP