May 17 〜 May 23 2021
ポストパンデミック・ライフでアメリカ人がもはやしない、やりたくない10項目
今週アメリカで引き続き最も報道時間が割かれていたのはイスラエルとハマスとのガザ地区での戦争状態のニュース。
11日間続いた爆撃がようやく休戦協定によって一時的にストップしたのは水曜のこと。しかし過去にも休戦協定が破られ、
それが解決に繋がった例が無いだけに、イスラエル国民は圧倒的に休戦協定には反対の立場。
ガザでの攻撃がスタートして以来、アメリカ国内ではアンチ・セメティック(反ユダヤ)のヘイト・クライムの40%アップが伝えられるのだった。
アメリカ国内で引き続き多発するアジア人ターゲットの犯罪に対しては、水曜にバイデン大統領がアンチ・アジアン・ヘイトクライム法に正式署名。
長きに渡って パシフィック・アイランダーやネイティブ・ハワイアンを含むアジア系を ”Un-American” と見なしてきたこれまでの風潮を改めることが謳われたのが今週。
同じく今週にはEUがワクチン接種を受けたアメリカ人に対する旅行規定を緩め、夏のヴァケーション・シーズンの観光収入獲得に動いているけれど、
アメリカ政府は今もインド、ブラジル等、80カ国以上を渡航禁止区域に指定しており、
ワクチンを接種しても旅行に際しては 飛行機搭乗の72時間以内のコロナウィルス・ネガティブ・テストの結果が必要。加えて
旅行先の国々が様々なウィルス規制を行っているケースが多いとあって、疾病予防センターは「コロナウィルスが落ち着くまで海外旅行は控えるのが望ましい」という見解を示しているのだった。
パンデミック中からスタートしていたポスト・パンデミックのニュー・ノーマル
さてパンデミックの後半から様々なウェブサイトやメディアが行ってきたのが「パンデミックが終わったら、先ず何がしたいか?」のアンケート調査。
若い世代の回答は圧倒的に「パーティー」であったけれど、全世代に共通していたのが「旅行」、「マスク無しで友達や家族に会うこと」、「日頃の人間関係とは異なる人達と会いたい、話したい」ということ。
それと同時に多数のメディアが行っていたのが、パンデミック中にすっかり変わってしまった人々の価値観を調査するための
「パンデミックが終わって、もはやしない、やりたくないこと」のアンケート。
ランダムで拾った5つのアンケート調査結果から そのトップ10項目を順不同で紹介していくと、
まずはバフェ(日本語で言うビュッフェ)やサラダバーの利用。NYのシングル族の中にはホールフーズの名物サラダバーが自宅ディナーの強い味方であった人は少なくないけれど、
そのホールフーズも今はバフェ・カウンターをクローズ。以前頻繁にサラダバーを利用していた人も「あんな不衛生な環境に置かれたものを食べていたなんて…」と振り返っており、
それほどまでに変わってきたのがアメリカ人の衛生意識。食べ物からの感染率は低いとは言え、他人がウィルスや雑菌を撒き散らしたかもしれない環境に置かれた食べ物は受け付けなくなっているのだった。
またアメリカではパンデミック前から、アパレルから生活用品までのオンライン・ショッピングが当たり前であったけれど、
パンデミック中にすっかりニューノーマルになったのがオンライン・グロサリー・ショッピング、すなわち食材の買い出し。
これには生鮮食料品デリバリー・サービスからオーダーをするケースと、食材買い出しアプリを利用して 特定の食材店でのショッピングを代行してもらうケースがあり、
自宅勤務になって散歩やエクササイズを含む外出全般を控えてきた人ほどグロサリー・ショッピングをしなくなる傾向が顕著。
そもそも食材のショッピングは時間も手間も労力も掛かるアクティビティで パンデミック中はそれが尚のこと。一度アウトソーシングに切り替えてしまうと、
「もはやスーパーや食材店での買い物は出来ない」というメンタリティになってしまうのだった。
ポスト・パンデミックを待たずしてバースデー・セレブレーションから消えたのは、バースデーケーキのキャンドルを吹き消す行為。
アメリカでは吹き消す前に「Make a wish!」と周囲に言われて願いかけるものだけれど、今ではウィルス感染を危惧して
これを行うのはカップケーキやシングルポーション・デザート。
キャンドルを吹き消すと 息と唾液がケーキに飛ぶのはもちろんで、キャンドルの数が増えれば増えるほど その量が増えるのは当然のこと。
そのため大きなケーキにキャンドルを立てて祝うことが出来ないことを味気ないと思うよりも、
「よく考えると気持ちが悪いことをしていた」と振り返る人々が多いのだった。
過剰なウィルス・ナーバスはポスト・パンデミックでは敬遠される!?
さらにポスト・パンデミックで人々が抵抗を示すようになったのは家族以外でレストランに出掛けた際のフードシェアリング。
私自身、パンデミック中の外食はもっぱらブランチであったけれど、それはNYは一時アウトドア・ダイニングのみだったので、
寒い季節は昼間の食事を好む意見が多かったこともあるけれど、基本的にブランチ・メニューなら料理が1人分ずつ出て来るため。
カジュアル・レストランは大皿料理をシェアするスタイルが多いことから、料理が運ばれてきた途端に人数分の小皿に取り皿に分けるのが現在のニューノーマル。
食べたい料理を食べたいタイミングで自分のお皿に取るのは過去のマナーで、
中には サーバーが運んできた料理を個々のお皿に取り分けてくれるレストランもあるのだった。
またパンデミック中からタブーとなってきた握手、キス&ハグも 「引き続きやらない」 という人は多いけれど、どれを一番やらないかと言えば圧倒的に握手。
というのも握手はさほど親しくない人間同士でするものなので 簡単に省けるもの。
でも親しい友人や家族、親戚とのキス&ハグはアメリカでは大切なコミュニケーション。
NYのようにワクチン接種が行き届いてきた街では、久々に会った友達同士が、「I'm fully vaccinated!」「Me too!」と言い合いながら
ハグをする光景が少なくないけれど、ハグをするか否かが 徐々に友人関係を左右していくという声も聞かれるほど。
既にパンデミック中から外食に出掛ける、出掛けないで交友関係が リグループされる状況が伝えられる中、
ワクチンを接種し、衛生に気を付けながら元の生活に戻り始めている人々にとっては、
外食に誘ってもZoomチャットしかしたがらない人、直接会ってもハグを避けて マスクを着けたままなど、過度にナーバスな人は 最初のうちは個人の自由として尊重されても、
徐々に面倒で アンフレンドリーに感じられる存在になると指摘されるのだった。
さてパンデミック中には自宅にこもっている人達に運動が呼び掛けられ、ソーシャル・ディスタンスが保てて、ボディ・コンタクトが無いテニスの人気が高まったけれど、
逆に衛生面で「やりたくない」と敬遠され、それが続いていると言われるのがボーリング。そもそもボーリングはシューズからボールまでレンタル。
「ボーリングのボールの穴の中が、殺菌スプレーで完全にウィルスフリーになるとは思えない」、「ボーリング場は使ったボールは掃除をしていても、ボールを選ぶ時に来店客が触ったボールまでは掃除をしていない」など、
ジャーム・フリーク(潔癖症)であればあるほど ボーリングを嫌う傾向にあるのだった。
人生のプライオリティの変化
それ以外に多くの人々が「パンデミック以降やらないと決めた事」に挙げていたのは、体調が悪いのに無理をすること。
無理に仕事に出掛けるのは自分の健康だけでなく、周囲のためにならないという考えを新たにした一方で、
「体調が悪い人に仕事の締め切りを無理強いするべきでない」と考える人も増えたけれど、これは言ってみれば当たり前のこと。
加えてアメリカではパンデミック中にマスク着用を拒む来店客が、それを注意した店員や来店客に わざと至近距離から咳を吹きかける嫌がらせが横行したこともあり、
人前での咳やクシャミを マナー違反を超えた「暴力」、「ウィルスの撒き散らし」と捉える傾向が顕著。
そのため無理に出掛けて体調の悪さを人前で露呈すると、人格まで疑われてしまうのが今のご時世なのだった。
加えてパンデミック以降人々がやりたがらないのは映画館に出掛けること。
2020年はハリウッド映画のボックスオフィスの売上が激減したのは言うまでもないけれど、
映画業界関係者が危惧しているのは、ウィルス感染のリスクが無くなっても 映画館のビッグ・スクリーンで映画を観たいと考える人々が非常に少ないこと。
2021年はパラマウントからワーナー・ブラザースまでが、新作映画の劇場公開と同時にストリーミング・サービスでの配信を行っているけれど、
そもそもアメリカで両親と子供2人の4人家族が映画館に出掛けた場合の平均的なチケット代は28ドル。
これはストリーミング・サービスのサブスクリプション・フィーの約2ヵ月分。ホーム・エンターテイメント・システムがどんどん向上していることもあり、
映画館までドライブして行って、ソーダ&ポップコーン代に更に15ドルを払って1回しか映画が楽しめないよりも、自宅で何時でも何度でも新作映画が観られる方が簡単で便利と
考える人々が増えているのだった。
その一方で女性の多くが主張したのは、「パンデミック以降はもうブラを着けたくない」、「スパンクスを着たくない」等、身体を締め付けるアイテムへの拒絶反応。
とは言っても女性の間での”ブラ離れ”はパンデミックの遥か前から始まっていた傾向。
また男性、女性を問わず、自宅勤務をするうちに「オフィス・ウェアが如何に働き難い服装であるかを実感した」という声は多く、
男性のレザー・シューズや女性のミッドヒールといったキャリア・シューズについても「歩き難い、働き難い、足と健康に悪い」といった苦情が飛び交っているのだった。
「パンデミック以降にやりたくないこと」についての複数のアンケート調査全てで筆頭に上がっていたのは「通勤」、「週5日オフィスに出掛けること」。
自宅勤務をするようになって LAなら車の渋滞、NYなら混み合った地下鉄の通勤に 如何に時間とエネルギーを費やし、それがストレスになってきたかを実感した人々は多く、
「コロナウィルス感染危機が去っても、週に2〜3日以上はオフィスに行きたくない」、「週5日勤務に戻ったら、身体が持たない」と考える人々が殆ど。
さらには自宅勤務が続き 「時間に追われる生活」から「自分の時間が持てる生活」に変ったことで、パンデミック中に最も変化したと言われるのが人々の時間の使い方。
ある調査では「パンデミックが終わっても 好きでもない人間とのコミュニケーションは再開しない」という回答が含まれていたけれど、
時間の使い方だけでなく 人生のプライオリティも変わってしまったことを改めて実感させているのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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