May 3 〜 May 9 2021
ビル&メリンダ・ゲイツの1300億ドルの”グレー・ディヴォース”
今週金曜にはアメリカの4月雇用統計が発表されたけれど、それによれば4月に新たに生まれた雇用は予想された100万を大きく下回る
26万6000。それを裏付けるかのように ニュージャージー州アトランティックシティでは、カジノ&ホテルの営業再開に当たり1800人のスタッフを募集したところ集まったのは僅か20人。
そうなってしまうのは多くの労働者にとって働きに出るよりも 失業保険を受け取った方が楽な生活が出来るためで、
バンク・オブ・アメリカの見積もりでは年収3万2000ドル以下であった労働者は失業手当の方が給与を上回るとのこと。
そのため共和党はバイデン政権のコロナ支援策を批判しているけれど、
仕事を探し続けている人々の言い分は 「パートタイムで何の保障も無く 生活が成り立たない給与の仕事しかない」というもの。
そもそもアメリカでは大企業のトップ・エグゼクティブのサラリーが ロウレベルのスタッフの300倍。
パートタイムの仕事しか得られないブルーカラー労働者は、ミニマム・ウェイジ(最低賃金)ギリギリの時給の仕事を複数こなしても生活費が稼ぎ出せない状況が何年も続いた訳で、
そして迎えたパンデミックで 失業手当を受け取ることによって 数年ぶりに出来るようになったのが人間らしい生活。
それだけに26週間支払われる失業手当を途中でギブアップする場合、それなりの時給や待遇を望むのは当然のこと。
モンタナ州では1200ドルの就職ボーナスの支払いをオファーし、サウス・キャロライナ州では毎週300ドルの失業保険上乗せ金支払いの停止を発表。
何とか失業者を仕事に戻らせようとしているけれど、エグゼクティブが上がり過ぎたサラリーをギブアップするはずがないだけに、
現在の労働者不足がきっかけでブルーカラー・ワーカーの給与や待遇が若干でも改善されるとすれば、それは確実にインフレーションに繋がるのだった。
ビル・ゲイツ離婚で浮上した2人の女性の名前
さて今週月曜にサプライズ報道されたのがビル・ゲイツ(65歳)&メリンダ・ゲイツ(56歳)の離婚のニュース。
アマゾンのジェフ・べゾス、テスラのイーロン・マスク、モエヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノーに次ぐ世界第4位の富豪であるビル・ゲイツの個人資産は
約1300億ドル。2019年に25年間の結婚生活に終止符を打ったジェフ・べゾス同様、
プリナプチャル・アグリーメント(婚前に離婚後の財産分与を決めておく協約)を交わしていなかったゲイツ夫妻であるだけに、
離婚報道直後にメディアと人々の関心が集中したのはその財産配分がどうなるか。
ちなみに2019年にジェフ・べゾスがマッケンジー・スコット夫人(写真上左)と離婚した時点の個人資産は1400億ドル。
夫人には結婚期間中に築いた財産の半分を求める権利があり、もしそうなっていればジェフ・べゾスは当時の世界長者番付の5位に転落する見込みであったけれど、
356億ドルの財産分与で離婚が成立。パンデミック以降のアマゾン株価急騰で、現在ジェフ・べゾスの資産は1920億ドル。
マッケンジー夫人の資産は614億ドルで、世界の長者番付では21位、女性のみのランキングでは第3位。
昨年には60億ドルを慈善活動に寄付し、世界一の富豪である夫よりも遥かに社会に貢献しているのだった。
ジェフ・べゾスの離婚にTVレポーター、ローレン・サンチェスとの不倫が絡んでいたのと同様、ビル・ゲイツの離婚でも
2人の女性の名前が浮上しており、そのうちの1人は夫人と結婚する前のガールフレンドでヴェンチャー・キャピタリストのアン・ウィンブラッド(70歳、写真上右から2番目)。
メリンダと結婚する際にビルが承認を求めたのが彼女とのことで、結婚後もビルはアンが所有するノース・キャロライナのサマー・ハウスで
ひと夏1回、2人きりの週末を過ごす長年の慣習を続けており、お互いに親しい友人関係であることをオープンにしてきた仲。
もう1人はゲイツ・ファンデーションの中国語通訳を長年務めてきたゼ・シェリー・ワン(36歳、写真上右)。
しかしこれは単なる噂という見方が有力で、本人も中国のSNS ウェイボーでこれを否定する声明を出しているのだった。
非友好的離婚の財産配分
今週月曜にビル&メリンダ・ゲイツがそれぞれのツイッター・アカウントで出した共同声明で説明されていたのが 「今後もチャリティの活動は一緒に続けていくものの、
人生の次の段階で これ以上カップルとして向上していく余地は無い」という離婚理由。
この離婚は 財産分与等の大筋で合意した段階で公表されており、月曜の発表段階で メディアを避けて既にプライベート・アイランドのリゾートに旅立っていたのがメリンダ夫人と3人の子供達。
同じ日にはビル・ゲイツが所有する投資会社から18億ドル相当の株式がメリンダ夫人に譲渡され、木曜にも
約5億ドル相当の株式が更に譲渡されているのだった。
ビル・ゲイツが離婚に際して雇ったのはウォーレン・バフェットの友人として知られる
97歳の弁護士で、バークシャー・ハサウェイの元副会長、チャーリー・T・マンガーで、彼は離婚弁護士ではなくビジネスが専門。
子供が全員18歳以上で親権とは無関係ということもあり、ビジネスを含む財産配分にフォーカスした人選。
その財産は不動産だけでも世界中に所有しており、最も高額なのがワシントン州レイク・ワシントンのウォーター・フロントに位置する
”ザナドゥ”と呼ばれる1億2500万ドルの大邸宅(写真上左)。床面積だけで6131平方メートルで、150人の着席ディナーが出来るパーティー・ルーム、
30台以上の車が収納できるガレージ等、一家族が暮らす家というよりも大型リゾートのような造りで、ビル・ゲイツが自らの”ドリームハウス”として建て増しを続けてきた物件。
それ以外にもプライベートジェット、ガルフ・ストリームの最高額機種G650、ポルシェのコレクション、
レオナルド・ダヴィンチのコーデックスを含むアート・コレクション、
乗馬の競技選手である娘ジェニファーのための牧場施設など膨大な財産を所有しているけれど、
もしビル・ゲイツが財産の半分をメリンダ夫人に譲渡した場合、長者番付では17位に転落。
とは言ってもジェフ・べゾス同様、そこまでのダメージは被らないであろうというのが大方の予測。
でもべゾスのケースと異なるのは この離婚が決して友好的なものではないこと。
3人の子供達はメリンダ夫人側について、ビルに対して「非常に批判的で腹を立てている」と伝えられるのだった。
グレー・ディヴォース、配偶者に縛られずに自由になりたい願望…
メリンダ・ゲイツは2019年のインタビューで既に結婚生活が暗礁に乗り上げている様子を示唆するコメントをしていたけれど、
夫人は 未成年少女のセックス・トラフィッキングの容疑で逮捕され、2019年7月に刑務所で自殺を図ったとされるジェフリー・エプスティーン(写真上一番左)と
ビル・ゲイツが 2013年にチャリティを通じた交友関係をスタートした時に、エプスティーンのフロリダ州での前科を問題視して その関りを阻止するなど、
結婚生活後半では マイクロソフト会長、世界の富豪としてもてはやされるだけだった夫の手綱をひいてきた存在。
そのビル・ゲイツ夫妻は 現在アメリカ最大の農場所有者で、全米19州に24万2000エーカーの農地を含む約27万エーカーの土地所有。
ここで行うサステイナブルな農業にもゲイツ・ファンデーションが多額の投資をしており、2人の資産はアメリカの農産物にも深く関わっているのだった。
アメリカでは特にパンデミック以降、ゲイツ夫妻のように 50歳以上で離婚をする ”グレー・ディヴォース”が急増しているけれど、
事実 1990年代に比べると グレー・ディヴォースの数は現在2倍。
その背景にあるのは 高齢の離婚に対する社会のスティグマ(汚名)が無くなってきたのに加えて、
平均寿命が延びてて50歳、60歳から次の人生設計を考えるようになってきたこと、
その余生を「考えや価値観が異なる伴侶に縛られずに、自由に生きたい」 という願望が高まっていることで、
周囲にそれを実践して自由を謳歌している人が居ると、それに触発されると言われるのがグレー・ディヴォース。
男性側が離婚後に他の相手と再婚するケースが多いのに対して、女性は特にキャリアや財産がある場合は 結婚をせずにシングルで居るケースが殆ど。
そうしたケースでは離婚を切り出しているのは圧倒的に夫側。
でもミドルクラス以下のグレー・ディヴォースにおいては 経済的に不利と考えられるのが妻側。
ボウリング・グリーン州立大学の2016年の調査によれば、グレー・ディヴォースをした高齢シングルの貧困層の割合は男女含めて19%。夫に死に別れた高齢未亡人の貧困層の割合は13%。
そのため夫が死ぬまで面倒を見てからの貧困生活と、すぐに自由に開放されることを
天秤にかけて、たとえ離婚後の収入や財産、健康保険等の先行きが不透明なケースでも 離婚に踏み切る女性は決して少なくないようなのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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