May 10 〜 May 16 2021

"SHIB, New Instant Millionaire Maker?"
30日で32,513%アップ! SHIBが新しいインスタント・ミリオネア・メーカー?


今週アメリカで最も報道時間が割かれていたニュースは5月7日からサイバー・アタックによって、テキサス州からニュージャージー州までの東海岸の石油供給を担うコロニアル・パイプラインがストップし、 複数の州で緊急事態が発動されるガソリン不足に見舞われたこと。そのパイプラインが復旧したのは6日後の水曜日で、 コロニアル・パイプライン側は否定しているものの、ロシアの犯行グループ、ダークサイドに支払われたと言われるのが500万ドルの”身代金”。
近年世界中で増えているサイバー・アタックは、2020年にアメリカ国内で報告されただけで113の連邦&州政府機関、500の病院を含むヘルスケア機関、1600の大学が ターゲットとなっており、身代金の平均額は31万ドル。しかしサイバー・アタックは通報の義務が無いことから、セキュリティの甘さを露呈しないために 身代金を大人しく払って事なきを得るケースが多く、実際はこれらの数字以上の犯罪が起こっていると見込まれるもの。
今週にはバイデン政権が公的機関を中心に40ページにも渡るソフトウェア導入のための詳細なマニュアルを提示したことが伝えられるけれど、 こうしたサイバー・アタックは個人ユーザーのレベルでも珍しくなく、Eメールで送られてきたリンクを不用意にクリックするだけでウィルスに感染するのは周知の事実。 もっと幼稚なレベルなものとしては、単にEメールで「コンピューターの中のファイルを全て盗んだ。ソーシャル・メディアで公開されたくなかったら5万ドルを支払え」というような 脅迫だけを送りつけるケースもあるけれど、コンピューターの知識に乏しい人や、ハードドライブに児童ポルノ等 そのダウンロードが知られただけで 社会的地位を追われるようなコンテンツがある場合は、パニックに陥って 言われるままに身代金を支払ってしまうケースが多いことが指摘されるのだった。



インフレーションはパンデミックからのカムバック・プロセス?


アメリカでは今週水曜に4月の消費者物価指数が発表され、過去13年で最速ペースの4.2%のインフレーションが記録されたことから、 NYダウ工業平均株価が680ポイント下落する事態になっていたのだった。 実際に4月には中古車価格が21%アップ。航空チケットが9.6%、家具の価格が7.8% コーヒー1杯の価格が8.1%、ランチの平均価格が6.2%、パーキング料金が2.6% それぞれ上昇。 特に2021年に入ってから国民が痛感しているのが食材価格の上昇で、顕著なのは野菜、肉、そしてベークド・グッズ、すなわちパン類の値上がり。
経済の専門家は、ウィルスの影響で自宅勤務をして、旅行や外出を控える生活をしてきた人々が、 ワクチンが普及しパンデミックからのリエンタリング・タイムを迎えて 徐々にお金を遣うようになり、 需要が増えてきた一方で 工場生産、農産物の収穫、流通といった供給レベルがそれに追いつかないことがインフレの原因と指摘。 経済回復期のプロセスで一時的なインフレは避けられないと説明しているのだった。
事実、パンデミックからの経済のカムバックは確実に進んでいると言われ、特にNYではサマータイム入って日が長くなってからというもの、ホテルのオキュパンシー・レイトが急上昇。 レストランからのフード・デリバリーが減って、それに代わって増えているのが来店客。 引き続き人々はオンライン・ショッピングをしているものの、アパレルは外出着の売上が大きく伸び、 逆に業績不振が伝えられるのがネットフリックス、ディズニー+といったストリーミング・サービス。 すなわち人々が家でTVやYouTubeを観る生活に飽き飽きして、外出や旅行を望む様子が窺えるけれど、 前述のように旅行と外食にもインフレ傾向は顕著。特にこの夏に伝えられるのがレンタカー不足で、昨年倒産したレンタカーの大手、ハーツ等が、 多数の車両を売却してしまったのがその原因。今アメリカでは旅行に際して 飛行機よりもホテルよりも先に予約するように奨励されるのがレンタカー。 ハワイでは1日のレンタカー料金が700ドルに跳ね上がっていることがレポートされているのだった。



クリプト・インスタント・ミリオネア・ブーム


先週土曜日にはテスラCEOのイーロン・マスクが「サタデー・ナイト・ライブ」をホストし、アメリカ国内で710万人の視聴者を獲得。 今シーズンのエピソードの中では3番目に高い視聴率であったけれど、その放映中に約30%価格を下げたのが イーロン・マスクが一押しすると同時に、 番組内のジョークのネタにもなっていたドージコイン。 また今週にはイーロン・マスクが 突如ビットコインのマイニングに消費されるエネルギーを問題視するツイートを行い、 ビットコインでテスラを購入するプログラムの停止を発表したことからビットコイン価格が大暴落。 しかしながら「イーロン・マスクがビットコインのマイニングの大半がリユーザブル・エナジーで行われていることを知らないはずはない」、 「ビットコインよりもスペースXの方が遥かに環境を害している」といった指摘が相次ぎ、イーロン・マスクが意図的にマーケットを操作するツイートを行ったというのが クリプト界の意見。その翌日にはイーロン・マスクはダメージ・コントロールのツイートをしており、特に彼がひいきにするドージコインについては その価格を押し上げているのだった。
ドージコインはMemeコインと呼ばれるジョークで誕生したクリプトカレンシー。何の機能も無いコインであるものの、 イーロン・マスクの後押しや、Reddit、TikTockを通じたジェネレーションZへのアピールで、 爆上げをしてきたコイン。今年1月には0.8セントだったコインが、5月8日には最高値の64セントをつけて、その後も50セント前後を推移。 したがって今年初めに2万ドル以上をドージコインに投資をしてきた若い世代が あっという間にミリオネアになっているのだった。
でもそれを上回るインスタント・ミリオネア・メーカー兼、”ドージコイン・キラー” として登場し、今週メディア報道を独占してしたのが SHIBことシバイヌコイン。SHIBの爆上げぶりはドージコインとは比較にならないほどで、5月11日の段階で過去7日間で1,839%アップ、 過去30日では32,513%アップという クリプトの世界でも過去に例を見ない上昇を見せているのだった。
シバイヌコインは、ドージコイン同様のMemeコインで「ジョークコインのジョーク」として登場したもの。しかし ドージコインよりも遥かに興味深い点が沢山あって、 まずそのコインの50%、現在のヴァリューで84億ドル分をイーサリアムのクリエーターであるヴィタリック・ブテリンにギフトとして与えていること。 加えてドージコインとは異なり 独自の分散型取引所、ShibaSwap / シバスワップを作るなど 展開プロジェクトがあること。そのため「現在の爆上げが打ち上げ花火で終わる」と警告していたクリプト専門家達が こぞって 「無くなっても構わない程度の資金をつぎ込むのならば面白いコインだから、今後の動向を見守るべき」とその意見を翻しているのだった。



Easy Come Easy Go?


今週には前述のヴィタリック・ブテリンが所持している約84億ドルのSHIBのうちの10億ドルを COVID-19に苦しむ インドへの寄付を発表。それを受けてインドのクリプトカレンシー取引所がSHIBの取り扱いを開始しており、インドでもSHIBが広まることが 期待されているけれど、 今週 アメリカで大きく報じられたのが、SHIBに投資した7900ドルが 900万ドルに膨れ上がった兄弟のストーリー。 38歳と43歳の兄弟は ウェディング・ビデオ撮影のビジネスを営んでいたものの、パンデミックの影響で結婚式キャンセルが相次いだことから ほぼ倒産状態に追い込まれていたとのこと。そんな2人にクリプトカレンシーに詳しい友人が 昨年12月に購入を勧めたのがSHIBで、当初半信半疑だった2人は100ドルずつを出し合って 200ドルを投資。 程なく価格が上がってきたことから妹、両親がそれに加わり 投資額は7900ドルに増え、それが過去1ヵ月の爆上げで900万ドルになっているのだった。
これを最初に報じたのはCNNであったけれど、あっという間にそれが各メディアに波及し、 同じようなスーパー・ハイリターンを狙って 現在下がっているSHIBの価格動向に目を光らせている人々は少なくないと言われるのが現在。 でもクリプトの専門家はMemeコインの爆上げに惹かれてクリプトカレンシーの取引をスタートした場合でも、 最終的にその投資金の行先になるのはビットコインとイーサリアムであると予測するのだった。
写真上右側は以前にも紹介したことがあるビットコイナーの間で有名な2011年のツイート。 僅か6セントで1700のビットコインを購入し、30セントで手放した男性が その後ビットコインが8ドルをつけた段階で後悔している様子であるけれど、 もしこの男性が5万ドルまでホードル(Hodl/クリプトの世界のホールドのスラング)した場合、 僅か102ドル(1万1118円)の投資が 10年で8500万ドル(約92.7億円)になっていた計算。でも持ち続けるのが難しいのもクリプトカレンシーで、 特に短期間で大金を求める人は相場の動きに振り落とされるのが常なのだった。
その一方で、昨今増えているのがクリプトカレンシーの詐欺被害で、アメリカで2020年10月からの半年間にレポートされた被害は7000件、被害総額は8000万ドル。 その手口はフェイスブックを通じたビットコインの投資プログラムを謳って 先ずは500ドル程度を支払わせて、徐々にその金額を増やさせるものや、 イーロン・マスクを装ったメールで偽のウェブサイトからドージコインへの投資をさせるもの、過去のビットコインの上昇データを示して「必ず短期間で儲かる」と多額の投資金を振り込ませるもの、 また「ハーフ・ビットコインを特定のアドレスに送付すると2倍から4倍になって戻って来る」というプロモーションを装い、実際にビットコインが倍増した人々の喜びの声を掲載して その気を煽るものなど様々。被害者の多くは20〜49歳で、クリプトカレンシーのビギナー。
要するにそう簡単に儲けられるチャンスは転がっていない訳だけれど、運良く一獲千金を達成した場合も 「Easy Come Easy Go」という言葉通り、簡単に手に入れた富ほどキープするのが 難しいと言われるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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