432 Park Avenue Skyscraper in NYC, The Most Unattractive Supertall Disaster!?
設計ミス、耐久性の問題、煩雑な施工&マネージメント、巨額の修繕費、 Etc.
地上96階建て、30億ドルを投じたビリオネア・レジデンスの悲劇

Published on 8/6/2026


 2010年代から世界トップクラスの富裕層が住むエリアとして話題になって来たのがNYの”ビリオネアズ・ロウ”。 セントラル・パーク・タワー、スタンウェイ・タワー、ワン57を含む7つのウルトラ・ラグジュアリー・タワー・レジデンスが集まるマンハッタンの57丁目エリアを指すのがこの言葉で、 これらのビル内の合計772ユニットのコンドミニアムは、低層階の低価格物件でさえ お値段は500~600万ドル。
 マンハッタンのビリオネア・ロウを中心としたエリアは、マンハッタン片岩、インウッド大理石、フォードハム片麻岩などの強固な岩盤層で構成され、重量のある高層ビルを安全に支える地盤で知られるエリア。 マンハッタンが高層ビル群とソーホーやウェスト・ヴィレッジのような低層ビル群で構成されるのは美観の問題だけではなく、地盤の固さを考慮してのもの。
 そのビリオネア・ロウの象徴的存在として2015年に完成し、いろいろな意味で物議と話題を醸してきたのが432パーク・アヴェニュー。 建築家や開発会社が「純白のコンクリート外壁」に強くこだわったビルは、高層ビルが多いミッドタウンの中でも飛び抜けて高い地上96階建て、高さ約425メートル、全125ユニットのコンドミニアム。 完成時にはNY市内でワン・ワールド・トレード・センターに次ぐ2番目の超高層ビルで、最上階96階のペントハウスはサウジアラビアのビリオネア、ファワズ・アルホカイルが約8,800万ドルで購入。
 しかし、完成から僅か数年で様々な問題が露呈。それを巡る住人とデベロッパーとの訴訟が続発、 かつて「富の象徴」と仰がれたビリオネア・ロウのシンボルも、今では欲にまみれた悲劇の象徴として捉えられる存在。 その修復工事が2026年7月からスタートしましたが、修復しきれない問題が山積しているのが432パーク・アヴェニューの実態です。



ラグジュアリーとは名ばかりのトラブル山積物件


 432パーク・アヴェニューの最も有名な住人と言えたのは、2018年に約370平方メートルのユニットを1,530万ドルで購入した当時婚約中のアレックス・ロドリゲス&ジェニファー・ロペス。 ジェニファーは購入後の新住居に初めてやって来た際、3年前に完成していた筈のビル内の多くのユニットが未だ建設中であるのを見て衝撃を受けたとのこと。 でも2人が1年後に物件を売却するに至った最大の原因は、トイレに座るアレックス・ロドリゲスの姿を432パーク・アヴェニューのトレードマークである巨大な四角い窓越しに撮影した近隣ビルのオフィス・ワーカーが その様子をSNSに投稿したため。ロドリゲスはカメラ・アングルから投稿者が務めるビルを特定し、プライバシーの侵害で訴える動きを見せたほど。 しかし2人の売却価格は、買値より220万ドル高い1,750万ドル。僅か1年で効率良く稼いだケース。
   他の多くのオーナーは、度重なるトラブル、物件価値を落とす報道によって資産価値を大きく減らしており、そのトラブルとは以下のようなもの。

  1. 数百か所に及ぶ外壁の亀裂とコンクリートの欠損、剥離: 適切な補修を行わなければ、将来的にコンクリート片が歩道へ落下したり、建物全体の安全性、付近を歩く歩行者に危険を及ぼすレベル。7月からスタートした修復は主にこの問題の対策。

  2. 外壁亀裂からの雨水進入による被害、水漏れ: 近年の悪天候により大雨の日の水被害は深刻。

  3. 強風による激しい揺れ: 高さと幅の比率が15対1という極めて細長いビルであるため、強風時の激しい揺れが居住者に乗り物酔いの症状ときしみ音の不快感を与える。

  4. 強風時の騒音: 強風時はビルがきしむ音が睡眠を妨げるのに加え、ゴミ投入口から爆発音のような大きな騒音が響き渡る。

  5. エレベーターの停止・不具合が頻発: 強風による建物の揺れでエレベーターやケーブルが損傷。時に強風時はエレベーターの運転がストップする。エレベーターの昇降路内の水漏れにより、一度に複数のエレベーターが運転不能になる事態も発生。

  6. 空調の故障: 空調が稼働している時も、時折住人は不快な匂いを感じる。

  7. ドアの建て付け不良: 扉がスムースに開閉出来ないユニットが複数存在。ビル内でも吹く強風が事態を悪化。

  8. 配管と浸水: 配管継手の破損や水漏れにより、個別ユニット内で被害額50万ドル~数百万ドルの被害が複数件発生。それに伴う賠償金請求裁判も発生。

  9. プールの長期閉鎖: 上層階にあるジムのプールは、高圧給水管の度重なる破損とメンテナンス不足で閉鎖が長引き、それを理由に外部のジムに通う住人もいるとのこと。

  10. プライベート・レストランの支払い: 有名シェフ、ショーン・ハーガットが運営を手掛け、住人とそのゲストだけが利用出来るレストランの維持費として年間1200ドルをチャージされ、レストラン利用時にも割高な飲食料を払わされるシステム。物件完成直後には「無料提供」された朝食ビュッフェが、有料の個別オーダーになったのも不満の要因。

  11. 構造的欠陥を隠蔽した開発業者(CIMグループおよびマックロー・プロパティーズ)との訴訟と嵩む訴訟費用
    居住者で構成される管理組合は開発業者を提訴し、1億6,000万ドル以上の損害賠償を求め、建物を調査した第三者機関も様々な居住不能な状態を招く危険性を警告。しかし開発業者は建物の安全性は万全と主張。訴訟による不動産価値の低下を非難して、全面対決中。

  12. 修繕に伴う共益費、保険料の高騰: 共益費は2019年だけで40%上昇。現在はパンデミック前に比べて約4~6倍。保険料は2年間で約300%上昇。共益費の”値上げ分”の支払を拒否した住人には延滞金とその利息として8万2000ドルが請求されているとのこと。




美観へのこだわりが突き付けたアグリーな真実


 上記の問題点から 432パーク・アヴニューの細長い超高層の建築が、強風によって地震のように揺れ、エレベーターとケーブルを損傷させ、ビル内にも強風が吹き荒れ、 ビルのきしみを含む不気味な騒音、高圧給水管の破損や雨水による浸水が、超高額ラグジュアリー・レジデンスの生活の質を著しく低下させる様子が見て取れますが、 同様の問題は他の60階を超える超高層&超高額ビルでも起こっている問題。
  432パーク・アヴニューの場合、これらの構造上のトラブルに加えて、外壁のダメージが著しい理由は、 前述のように建築家や開発会社が美観を優先し「真っ白なコンクリート外壁」に強くこだわった結果。 通常、高層ビルの構造用コンクリートは耐久性を最優先に考慮するもの。しかし432パーク・アヴニューでは純白の外観を実現するための特殊な配合を採用。 多くの技術者は建設当時から「この仕様では直ぐに耐久性に問題が生じる」ことを警告していたという。  さらにNYタイムズ紙のレポートで、432パーク・アヴニューは建物の機械・電気・配管設備の73%が、設計図通りに施工されていないことも判明。
 始まったばかりの修繕作業には約1億6,000万ドル(250億円超)が掛かると見込まれ、一部の住民は安全性を最優先し、外壁に止まらない大規模修繕を急ぐべきと主張。 しかし他の住民は、開発会社との訴訟に多額の資金を費やし、共益費が数倍に増加したことから、これ以上の費用を賭けた大規模修繕には消極的で、 足並みが揃わない状況。

 結局のところ、432パーク・アヴェニューは単なる施工不良ではなく、根本的な問題がデザインの段階から始まっており、 そこに耐久性や構造安全性より外観を優先させた開発会社の無責任な判断、物件を高額で売るための見せかけのマネージメント体制といった問題が重なり、 住人と開発業者の双方に継続的かつ終わりの無い出費をもたらすシステムで完成した悪夢のようなラグジュアリー物件。
 432パーク・アヴェニューは、投資目的、もしくはNY以外に住む富豪たちがセカンド・ホームとして購入したケースが少なくありませんが、 ここに常住しない住人にとっては建物の不具合のせいで、知らない間に浸水を含む様々な被害が起こっていても不思議ではない状況。 しかも今年5月にはマムダニNY市長が、500万ドル以上の投資物件、セカンド・ホームに対して、これまで購入時にしか掛からなかった税金を毎年請求する法案を纏めたことから、 売却が更に難しくなったのが432パーク・アヴェニュー。
 世間一般は「これほどまでの高額物件が購入出来る超富豪であれば、庶民のような金銭危機には陥らない」と考えがちですが、ラグジュアリー・レジデンスでは 庶民が暮らすアパートなら数万円で済むような浸水被害額も千万円単位。 それを開発業者に支払わせるための訴訟費用で更に千万円単位の出費。
 こうして考えると超富豪達が貪欲で誠意のない開発業者の物件購入で、資産を激減させる様子はある意味で社会のイコライザーのようにも見えますが、 裕福になればなるほど、金銭トラブルも桁違いになるのは紛れもない事実と言えます。

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