Vol.15 July 28 2026
Rise of New Trends in NYC Dining
レストラン不振のNYで進む二極化、イベント系&ソロ・ダイニングがトレンドに


 NYのアパートは往々にしてキッチンが小さいことで知られるけれど、理由はニューヨーカーが頻繁に外食をしてキッチンをさほど使わないため。  とは言っても物価高、レント高騰で可処分所得が減少しているとあって、過去2年ほどで外食頻度を抑えるニューヨーカーが急増。レストランでの食事をテイクアウトやデリバリーに切り替え、 レストランではドリンクや前菜をオーダーせずに会計額を抑えるなど、今や外食代節約をオープンに実践するのは全く恥ずかしくない時代。
 見栄を張る人の中にはオゼンピックに代表されるGLP-1ドラッグ服用を理由に小食にする人も居るようだけれど、アメリカの成人8人に1人の割合でGLP-1ドラッグを服用するようになってからは、スナック業界、ファストフード業界、そしてレストラン業界が大きな打撃を受けているのは紛れもない事実。   かつては製薬会社と食品業界と言えば、「中毒性の高いスナックやフードで国民を太らせ、それに伴う糖尿病や心臓病の薬で製薬会社が儲ける」という一蓮托生の関係であったけれど、 その仕組みを崩壊させつつあるのがGLP-1ドラッグ。

 レストラン業界は来店客が減少する一方で、食材、レント、人件費、ガス光熱費といった運営コストが増大し、老舗や有名店さえ閉店に追い込まれているのが昨今。 ミシュラン・スターが集客力になった時代はとっくに終わり、高級店が凌ぎを削って獲得を争っているのは上位10%の来店客。 上層部をターゲットにすればするほどレストランは排他的になるもので、パンデミック以降始まったのが来店客のライフスタイルやルックスをあらかじめSNSでチェックして、着席させるテーブルを決めるルーティーン。 またレストランを会員制にして有名人以外のメンバーから高額のメンバーシップ・フィーをチャージすることで、一般大衆を受け付けないケースも増えているのだった。


予約システム減少とウォッチパーティー・フィーバー


 
 昨今のNYで徐々に広がっているのは、予約システムを廃止する傾向。これは近年、予約しても来店しない人々が増えたためで、そんな人々にペナルティをチャージする店もあるけれど、 チャージされた人々は二度とその店を選ばなくなるのは必至。すっぽかされる可能性がある予約のためにテーブルを確保するより、予約を一切取らない、もしくは予約無しのウォークインの来店客を受け入れるエリアを増やす レストランが徐々に増えており、もちろん予約サイトに払うフィーを節約する目的もあるようなのだった。
 そんなダイニング・シーンが移り変わる中、5月からNYで始まったのがNYニックスのNBAチャンピオンシップまでの大フィーバー。 53年ぶりの優勝まで道のりは、手に汗握る逆転ゲームの連続であったけれど、そんな中で飲食店の明暗を分けたのが店内にラージ・スクリーンTVがあるか、ないか。 通常ラージ・スクリーンTVがあるのはスポーツ・バーや、週末に欧州のサッカー・リーグのゲームを見ながらブランチが楽しめるネイバーフッド・レストランやアイリッシュ・パブ。 でもニックス戦の集客力に目を付けた店が、続々とラージ・スクリーンTVを導入し、店頭にニックスのフラッグやロゴを飾って、店内でゲーム観戦が出来ることをアピール。 中には店の前に駐車したトラックにラージ・スクリーンTVを置いて、インスタントなスポーツバーにしてしまう店も出現。
 するとニックスのウォッチ・パーティーをしている店をマップ付きで紹介するアプリが登場。ニックスがプレイオフに入ってからチャンピオンに輝くまでの5週間は、 レストランで食事をしながら観戦する人々、食事は自宅で済ませ、ファンが集まる店に観戦&ドリンク目的で出掛ける人々が急増。 ニックスが劇的勝利を収める度に、興奮したニューヨーカーが遅くまでドリンクを楽しみ、チップをはずんだことから、 空前のニックス景気に沸いたのがNYのカジュアル・レストランなのだった。



アメリカでも増えるお1人様ダイニング

 ワールドカップが始まってからも、レストランはラージ・スクリーンTVをキープ。 そしてNYのシンボル、リンゴをサッカー・ボールに見立てたNY市がクリエイトしたステッカーやポスターを店頭に飾ることで、 ワールドカップ旅行者の集客にも成功。
 そんなニックス&ワールドカップ景気を通じてNYの飲食業界が改めて悟ったのは、料理よりドリンクを沢山売る方がコストが低く、利益が上がること。 生活を切り詰めるご時世でも人々はエキサイティングなイベントにまだまだ財布を開くこと。そしてエキサイトメントを求める人々は、混み合う店に敢えて足を運ぶこと。 後者2点はドット・ケーキSuka Sushiのように、 人々が味やクォリティとは無関係のTikTokヴァイラル・スポットに行列する様子にも共通しており、 多くの中小レストランがメニューの品数を減らし、ドリンク中心、エンターテイメント性をもたらすコストダウン&経営効率化の道を模索し始めているのが現在。 その結果レストラン業界も上位10%の客層を狙う高額グルメ派と、一般大衆を狙うカジュアル業態の二極化が進んでいる真っ最中で、ミドルクラスが社会から消えているのと同様、中間の客層を狙ったビジネスの 生き残りが厳しくなっているのだった。

 その一方でアメリカ全土では日本で言う「お1人様」ダイニングが増える傾向。理由は気が向いた時に、自分が行きたいレストランで自分のペースで食事が楽しめること、話し相手が居ない方が料理をしっかり味わえるというもの。1人で食事に行けば長々と興味が無い話に付き合う必要がなく、頼みたくない料理のシェアを提案されることも、飲みたくなくても1杯は付き合うといった煩わしさが無い訳で、特に頻繁にスマートフォンをチェックする相手とは、一緒に食事をする意味が無いと考える人々は非常に多いのだった。
 1人客はレストラン側にとって意外にも歓迎される存在で、同伴者の料理と同じタイミングでテーブルに運ぶ必要が無いのでオペレーションが楽であること、長居をしないのに加えて、1人客の単価は全米平均で90ドル。2人以上の客単価の平均60ドルを上回っているのだった。
 1人客はアメリカで前年比23%増とのことで、特に多い街はニューヨーク、シカゴ、ラスヴェガス、サンフランシスコ、そしてワシントンDC。1人客が多いのは断然木曜日で、時間帯は6時が最も人気。でも昨今では3時の来店も急増中。このようにディナー・タイムが早まっているのもパンデミック以降のアメリカで続いている現象。
 かつてはディナータイムを早めると、帰宅時間も早まるので、就寝までドラマを観たり、翌日の準備や瞑想をしたり、ゆっくり入浴するなど、時間にゆとりが生まれることが指摘されていたけれど、 今では早めに帰宅をすればにタクシーやUberを使わずに済むので、それだけで15~30ドルの節約に繋がるメリットが指摘されているのだった。    

Yoko Akiyama

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行

NY Dialogue, Yoko Akiyama NY Dialogue, Yoko Akiyama NY Dialogue, Yoko Akiyama

★ 書籍出版のお知らせ ★





当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2024.

PAGE TOP