2026年初夏頃からSNS上で広がった新語が「ブルードットフィーバー」。
ブルードットはチケットマスターなどのチケット販売プラットフォーム上の会場の見取り図の中で、チケットが大量に売れ残っていることを示す青いドットのことで、
ブルードット・フィーバーとは、主にコンサート等のアリーナ・イベントがブルー・ドットがあり過ぎて開催不可能となり、時にコンサート・ツアー自体がキャンセルになることを指す言葉。
2026年には、ポスト・マローン、メーガン・トレーナー、プッシーキャット・ドールズ、元ワンディレクションのメンバーからソロになって久しいザイアン・マリック等のツアーが
チケットが売れないためにキャンセルされていますが、その前年2025年にもジャスティン・ティンバーレイクやジェニファー・ロペス、チケットの売れ行きが芳しくないために
ツアーが途中キャンセルとなり、ビヨンセでさえ会場に空席が目立つ様子がSNSでレポートされていたほど。
チケットが売れなくなった理由は、ダイナミック・プライシングの影響で著名アーティストのチケット価格が大きく高騰したこと、反面インフレにより可処分所得が激減し、
気軽にコンサートに出掛ける風潮がなくなったことが挙げられますが、同時にアーティストの実力や人気と釣り合わない大規模な会場が選ばれていることも席が埋まらない原因と指摘され、
更に掘り下げると音楽業界の深い闇が見えて来ると言われるのがブルードットフィーバーです。
現代のアーティストはスポティファイに代表される音楽ダウンロードの影響で、アルバムが売れなくなっており、2010年以前はアルバムをプロモートするために
ツアーに出ていたのに対して、今ではツアーはアーティストにとってメインの収入源。
かつてツアーと言えばバンドがシンプルなセットや機材と共に開催地を移動するだけだったので、小さな町の小規模な会場でもコンサートを行い、
それがきっかけでファン層が広がり、アルバムが売れるという効果をもたらしていましたが、今やコンサートにはSNS映えするセット、巨大スクリーンが要求される時代。
そうなると開催運営コストを抑えるために、どうしても大きな会場を選んでコンサートの回数と移動を少なくすることになりますが、
それでも会場がある程度は埋まらなければ採算が取れないので、公演が中止に追い込まれるのが宿命。
チケットを購入するファンは、チケット・マスターの座席表を見て空席のブルードットが沢山あるのを見ると、ダイナミック・プライシングによって
ニーズの低いチケットはコンサート日程が近づけは近付くほど値段が下がって来ることを熟知しているので、その下落を待ってから買おうと思うのが人間心理。
なかなかチケットが売れない場合、興行側は日程の一部キャンセルして、1回のコンサートを満員にしようと努めるケースもありますが、
チケットが売れないコンサートが多い場合はツアーごとキャンセルするのは赤字を防ぐための常套手段。
音楽関係者の間では、興行側がアーティストのSNSフォロワーの数、ストリーミングの回数がそのままライブ・パフォーマンスの実力、もしくはライブの集客力だと思い込んで、
実力の無いアーティストに大きなアリーナをあてがっているのがブルードット・フィーバーの原因と指摘。
今も身の丈に合った会場とチケット価格でコンサートを行うアーティストは、きちんと興行成績を上げていることが指摘されています。
チケット・マスターのCEOは「NBAのNYニックスのコートサイドのチケットには7万ドルを払うファンがいくらでもいる。それを思ったらコンサートチケットは安すぎる」とインタビューで語り、
まだまだコンサート・チケット価格をつり上げる意欲満々。実際に現在ワールド・ツアー中のBTSのチケットは、行く先々の巨大スタジアムのチケットが完売で、
8月に行われたNY(NJ)公演のチケットの再販価格はアリーナで2000~5000ドルはザラ。
BTSのように巨大スタジアムをソールドアウトにしなくても、近年ツアーで確実に観客動員数を得ているのは若いアーティストよりも むしろ
ポール・マッカートニー(84歳)、ブルース・スプリングスティーン(76歳)、ライオネル・リッチー(77歳)、アース・ウィンド&ファイヤー、ボンジョビ、イーグルス、AC/DC等、往年のロッカーたち。
彼らのコンサートに集まるのばベビーブーマー世代やその下のジェネレーションX世代が中心で、ストリーミングが無い時代に育ったこの世代は、お金を貯めてアルバムを買い、
若い頃から彼らのコンサートに足を運び、ミュージシャンとその音楽に思い入れが深い世代。
彼らにとって往年のミュージシャンのコンサートに出掛けることは、音楽を楽しむだけでなく、自分の人生を振り返るノスタルジックなイベント。
しかもこの時代のミュージシャンは、ソーシャル・メディアでファンと繋がることが出来なかったので、本当に音楽の才能と実力が無ければ
ミュージシャンとしての仕事が不可能だったこともあり、年齢を重ねてもステージ・プレゼンスやパフォーマンスがやや衰えた程度。
それでも高齢による体調不良でコンサートがキャンセルになるケースはあって、ライオネル・リッチー、ボンジョビはこの夏、
コンサートの最中に体調不良によるキャンセルが決定する事態が起こっています。
こうした往年の叩き上げタイプのミュージシャンに比べると現在のアーティストは、親やプライベート・エクイティのお金の力でスターになったケース、キャッチーな音楽をSNSでバズらせて
実力とは無関係に知名度を上げたケース、歌唱力よりプロデューサーの力でトラックを仕上げているので
ライブ・パフォーマンスの実力どころか音楽の才能やセンスさえ持たないケースが多いと言われ、その音楽もミュージック・ストリーミングで再生数が増やせる時間内で短く作るなど、
マーケティング・プロダクトとして生み出されるもの。
Z世代、その後に続くα世代は「年齢を重ねて、自分の人生を振り返る時に頭に浮かべる音楽の質が歴史上最も劣悪になるだろう」とさえ言われるのが現在。
したがってブルードット・フィーバーは可処分所得激減と連動した消費動向ではなく、愛着、思い入れ、物事へのこだわりが無い若い世代をターゲットにバズ狙いの商業主義が蔓延した音楽業界が
生み出したファン離れ現象の一環として捉えられています。


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