May Week 2, 2023
“Summer Bag as Fashion Status”
夏のステータス&ステートメントとしてのサマー・バッグ


TikTokやインスタグラムで 自分のスタイルやトレンディング・ファッションを公開するインフルエンサーは多いけれど、 現在のように世の中がすっかりソーシャル・メディア慣れして、見る側の目がどんどん厳しくなっているご時世だと、 せっかくご自慢のファッションを披露しても、逆に足元をすくわれるようなコメントが寄せられるケースは少なくないもの。
昨年私の知り合いが指摘していたのが、メキシコのスパ・リゾートでの滞在をインスタグラムにアップしていた彼女の友人の自称 ”リッチなインフルエンサー”が、 2年前から同じサングラスをしていて、リゾート地なのに日頃と同じ TOGOレザーの20cmバーキンを持っていたこと。
確かに欧米社会ではサングラスは財力を示すバロメーターの1つなので、私も何となくチェックする習慣がついていたけれど、 バッグについては 「”自称リッチ”を謳う限り、夏のウィークエンドやリゾート地では ラフィアやラタンのバッグを持つのが当たり前」というのが知り合いの指摘で、 「なるほど…」と妙に納得してしまったのだった。




以来、昨年夏シーズンには 女性達のバッグをチェックするのが習慣になってしまったけれど、 事実、完璧にペディキュアを施した素足に クロコダイルのサンダルを履いているような、お金の匂いをプンプンさせているような女性が 夏の間持っていたのが ラフィアのトートやラタンのバスケット・バッグ。
中には思わず欲しくなってしまう物もあったので その価格をチェックするようになったけれど、プラダ、フェンディ、サンローラン、ディオール等のデザイナー・ブランドでは ラフィアやラタンのバッグがレザー・バッグと同等、もしくはそれ以上のお値段。 それもあって私は昨年の時点で、ズタ袋のようなラフィアのブランド・バッグを持ってリゾート地を闊歩する女性達への考えをすっかり改めたのだった。
ハワイやマイアミなど、一年中温暖な気候の街とは異なり、ニューヨークは今も9月1週目月曜日のレイバー・デイを過ぎてから 白い夏服を着用していると ファッションに無頓着なイメージを持たれる傾向が顕著。リッチ・ピープルの間で ラフィアやラタンのバッグを持ち歩くのがスタイリッシュと見なされるのも、 5月4週目のメモリアル・デイ以降、9月のレイバー・デイまでの、アメリカで ”夏のヴァケーション・シーズン” と言われる期間。 すなわち6月~8月までの3ヵ月間の賞味期限付きのような扱い。
それを「夏の間のバッグが必要」と考えるか、「夏の間だけのバッグなんて要らない」と解釈するかに、 ファッションに対する考えや財力が現れると指摘されるのだった。




今ではコンバット・ブーツやニーハイ・ブーツを真夏でも履く女性が増えて来たのと同様に、ラフィアやラタンのバッグも 1年中持ち歩いてもお咎め無しと言われる世の中。特にアンソロポロジーや同系アーバン・アウトフィッターズのようなボヘミアン系のスタイルを好む女性になると、 1年を通じて足元はコンバットブーツやバーケンストック、バッグはラフィアの手提げか、バスケット・バッグ、もしくはシンプルなキャンバス・トートという、かつてならば「季節感が支離滅裂」と思われるような スタイルを貫いているケースは少なくないのもまた事実。
でもニューヨークでは、夏のコンバット・ブーツや膝丈ブーツは市民権を獲得しても、 冬のバーケンストックやラフィアのバッグは、どうしても季節に対応しない無精なイメージがついて回るのが正直なところ。 またラフィアやラタンのバッグを1年中持っている人は、エクストリームなヴィーガンであるケースが多く、そうした人は動物性食品だけでなく、 レザーを含む全ての動物性素材を拒むポリシーを掲げているもの。 そう考えると、今やファッションは季節感よりも キャラクターや個人のポリシーを反映するものになっていると言えるのだった。




いずれにしても、ラフィアやラタンのサマー・バッグは、夏らしいアウトフィットを引き立てる有効なアクセサリーであることは疑う余地がない事実。 なので1つ購入しておくと、素材そのものがシーズン・トレンドである性格上、毎年夏が来るたびに アウト・オブ・スタイルになることなく 持てるという点では、下手にレザーのトレンディング・バッグを購入するよりも コスト・パフォーマンスがベター。
特に昨今は 付け替え用のストラップや、バッグ・ハンドルに装着するミニバッグ等のチャームが充実しているので、 そうしたアイテムを使ったり、バッグ・スカーフを利用すれば、バッグの雰囲気はいくらでもアップデートが可能になるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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