Feb. Week 3, 2023
“It Bags of Spring 2023”
2023年春、視覚インパクトのIt Bags
NYでは2月10日から6日間の日程で 2023年秋冬シーズンのファッション・ウィークが行われていたけれど、
ファッション・トレンドを担うジェネレーションZは、ランウェイよりもソーシャル・メディア上のトレンディングのフォローに忙しいとあって、
昨年秋のトレンドも ”バービーコア”(バービーのようなピンク色ファッション)、
”プラザコア”(プラザ・ホテルに住んでいた絵本キャラクター、エロイーズやNYアッパー・イーストサイドのお嬢様をイメージした令嬢ファッション)等、
TikTokから火がついたもの。
ファッション・トレンドの中で デザイナー・ブランドがイニシアティブを握っているのは、バッグとシューズのみと言えるほどで、
中でもバッグはトレンドが掴み易いアイテムとあって、引き続きファッション・メディアが 毎シーズン It Bag の特集を組んでいるのだった。
それによれば 2023年春のバッグトレンドは 光りもの、バスケット・ウィーブ、フリンジ・アクセント、デニム素材のカムバック、
パフィー素材等、テクスチャーやディテールで個性をアピールし、シェイプで言えばオーバーサイズ か ミニサイズ、
そして形は ハーフムーンのシェイプがメイン・ストリーム。
見た目のインパクトが勝負という印象なのだった。
実際に毎シーズン、ランウェイ・ショーにやって来るファッション・エディターやインフルエンサーのアウトフィットはさほど大きく変わらないけれど、
どのシーズンのスナップかが一目で分かるエッセンスを加えているのがもっぱらバッグとシューズ。
バッグに関しては、商品開発に時間と費用が掛かるとあって 定番スタイルを毎シーズン、流行りの素材や新しいディテールで焼き直しをするケースが多く、
定番スタイルを持っていれば それほど時代に取り残されることは無いけれど、
それでも定番と見なされるものが 徐々にシフトしてきているのもまた事実。
今シーズンに関しては、JWアンダーソンが過去数シーズン手掛けているバンパー・バッグ(写真上中央のオレンジ&クリスタルのバッグ)を好む
ファッショニスタが増えているのだった。
ファッション・メディアが こぞって It Bagを選出しているブランドは引き続き ロエベ、フェンディ、ヴァレンティノ、ボッテガ・ヴェネタ、ルイ・ヴィトン、シャネル、
セリーヌ、YSL、グッチといった王道ブランド。エルメスに関しては バーキン&ケリー以外に人々の関心が行かないのに加えて、
シーズン性を打ち出している訳ではないので、It Bagのセレクションからは常に外される存在。
そのエルメスは2023年1月にバッグを5~10%値上げしたばかりで、これは2022年の4%の値上げを遥かに上回るもの。
これによって7400ユーロだった25cmのTOGOバーキンのお値段が8140ユーロに値上がっているけれど、
同様の値上げはシャネルやフェンディ、ルイ・ヴィトンでも見られるもの。
これは、生産コストがアップしていることもあるとはいえ、貧富の差が開き、景気の先行きに不安がある現在では、
一流ブランドのバッグは地道にお金を貯めて買う物ではなく、いくらでも買える財力がある人々がシーズンごとに複数買い替えるものであることが、
消費データからも明らかになっており、
ブランド側も容赦なしの価格アップに出ているのだった。
春が近づいて来ると新しいバッグが欲しいとウズウズするのは誰もが同じであるけれど、
少し前に私が写真を見た途端に「欲しい!」と思ってしまったのが、写真上右から2番目のシャネルのバッグ。
バスケット・ウィーブになった部分はゴールドのメタルで、カジュアルなイヴニング・バッグの役割も果たすのがこのバッグ。
ところがサイズをチェックしたところ、横の長さが12.5cmでアイフォンも入らないサイズ。
私はウォレット・フリーになって久しく、荷物が常に少ないことを自慢にさえしているけれど、
さすがにアイフォンが入らないサイズでは困るということで泣く泣く断念。
その一方で、写真を見た時は良さが理解出来なかったけれど、つい最近レストランで
持っている女性を見かけて以来、心象を良くしたのが写真上左から2番目のロエベのGoyaバッグ。
最初はパフィー素材のプカプカしたシェイプが不思議に思えていたけれど、実際に持っている姿は
意外なほどモダンで スマート。何とも言えない存在感があって、
思わず持っていた女性に「それ、ロエベのGoyaバッグ?」と声を掛けてしまったけれど、
女性曰く、小脇に抱えたり、手で握りしめる時にプカプカした素材が心地好いのだそうで、
「こんなバッグ初めて」とのこと。妙にその言い分に納得してしまったのだった。
年末の大掃除で「バッグは売るほどある」と実感しながらも、「今持ちたいバッグが無い」と思っていたこともあり、
今シーズンは 「手元にないタイプのバッグ」という基準でバッグ・ハンティングを考えると思うのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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