CosMc Aime at the TikTok Generation
マクドナルド期待の新業態、TikTok世代をターゲットに、
スターバックスと市場を争う ”Cosmc’s / コスミックス”
Published on 12/12/2023
12月9日にシカゴ郊外のボーリングブルックに鳴り物入りでオープンしたのが、マクドナルドのスピンオフ・コンセプト、”Cosmc's / コスミックス”。
このコンセプトが発表されたのは2023年初頭で、その際にマクドナルド側から「マクドナルドのDNAを備えた小型フォーマットのコンセプト」と説明されていたのがコスミックス。
実際にオープンした第一号店舗は、店内のイーティング・スペースが無く、4レーンのドライブスルーによる販売のみ。
メニューにはハンバーガーもフライドポテトも、コカ・コーラもなく、代わりにあるのはカラフルなデザイナー・アイスティーやスモア・コールドブリュ―などのカストマイザブル・ドリンク。
すなわち、マクドナルドのDNAと言いながらも、コスミックスは限りなくスターバックスに近く、
従来のマクドナルドとはフードとドリンクのバランスが逆転したコンセプト。
スターバックスのようにドリンクを買うために立ち寄って、ついでにスウィーツやスナックを購入するストアとしてデザインされているのだった。
ちなみにネーミングのコスミックは、1987年に登場したマクドナルドの宇宙円盤から飛び出たようなマスコット・キャラクター。
宇宙開発が益々話題になるご時世で、これまでマクドナルドがクリエイトしてきたマスコットの中で
最もモダンで若い世代にアピールするキャラクター。
とは言え、コスミックスはまだ試験段階の新業態であることから、今後全米で展開する前に、ネーミングが替わる可能性もあり、
マクドナルド側が既に取得しているトレードマークの中から、最も適切なものを選んだ という声も聞かれるのだった。
マクドナルドがコスミックスをスタートした最大の理由は、現在スターバックスとダンキンが大きなシェアを占めている
1000億ドルのビバレージ(ドリンク)市場に乗り込むため。
ダンキンにしても、かつてのドーナツ・チェーンから、コーヒーやドリンクを中心に販売するビバレージ・チェーンに転換し、
ネーミングを ”ダンキン・ドーナツ” から ”ダンキン”に改めているけれど、フードを売るよりも遥かに利益率が高いのがビバレージ・ビジネス。
スターバックスがデザイナー・コーヒーを普及させて以来、フレーバーやトッピングなど、殆どコストが掛からないものを加えるだけで、どんどん追加料金が取れる
カストマイズ・ドリンクは、ハンバーガー類と同等、もしくはそれ以上のお値段。
ドリンクの方が、材料の在庫管理がし易く、従業員のトレーニングにも費用が掛からないとあって、フランチャイズ展開をするにも最適。
かつては「レストランを経営するよりも、ファストフードのフランチャイズを経営する方がオペレーションが楽で利益率も高い」と言われてきたけれど、
そんなファスト・フード・チェーンよりも、経営が楽で確実に儲けられるのがビバレージ・チェーン。
今、アメリカではオレゴン州発祥の新しいチェーン、”Dutch Bro / ダッチ・ブロ” が
TikTokerの間で人気を集めて急成長を遂げている最中で、
コスミックスも競争が益々激化する前に、マクドナルドの資金力を生かして ビバレージ市場に食い込もうという目論みなのだった。
コスミックスはオープン初日には、ドライブスルーに何マイルもの行列が出来て、待ち時間は4時間以上。
いきなりメガ・サクセスを収めたけれど、その要因としてまず挙げられるのが、マクドナルドが資金力とメディアへの影響力に物を言わせて、
事前にパブリシティを獲得していたこと。またコスミックスが位置するのは郊外の目抜き通り沿い。
そこでオープン前の準備期間中も、ロゴをフィーチャーした看板をライトアップして「何か新しい、ビッグなものがオープンする」ことを
地元の人々にアピールしており、オープン秒読み段階になってからは、ライトアップした看板で写真入りメニューを公開。
通り掛かった人々が、その看板のスナップをソーシャル・メディア上でポストしてくれたお陰で、
同店に関する情報がインターネット上でどんどん拡散された影響は非常に大きいのだった。
実際にコスミックスがターゲットにしているのは、そんなソーシャル・メディアでブランド情報を拡散してくれるジェネレーションZ世代、
特にTikToker。
パンデミック前までは、プロダクトやフードのトレンドを生み出すソーシャル・メディアと言えば圧倒的にインスタグラムであったけれど、
今やビューティー、ファッション、フード、ドリンク、レストラン等、様々なトレンドが生まれるのがTikTok。
時代のトレンドを担うTikTokerをターゲットにするには、もはや従来のブランド・イメージでは力不足であることを悟ったマクドナルド社が、
ブランドの若返りと若い世代へのアピールを目的に開発したのがコスミックスで、
写真映えがする鮮やかなカラー・ドリンク、ボリュームのあるバーガーよりも スナックを好むジェンZの世代の嗜好が反映されたメニューになっているのだった。
前述のようにコスミックスのメニューには、ビッグマックやチキンナゲット、フライドポテトといったマクドナルドの人気商品は不在。
代わりにラインナップされているのがクリーム入りのドーナツ ”マックポップ”、一口サイズのプレッツェルやハッシュブラン、
ソフトクリームやキャラメル・ファッジ・ブラウニーのデザートやスナック類。
フードとカテゴライズされるのは、クリーミー・アヴォカド・トマティヨ・サンドを含む2種類のサンドウィッチで、どちらもバンズはスクエア・シェイプでモダンなイメージ。
それに加えてブレックファスト・マフィンのサンドウィッチが3種類用意されているだけ。
従来のマクドナルドを好む年上世代にとっては、コスミックスのメニューは「腹持ちが悪いフードに高額を吹っ掛けている」という印象で、批判的な意見もあるようだけれど、
逆に若い世代のリアクションは、少なくとも現時点では極めて良好。
先ずドリンクの味が良いことが大歓迎され、それと一緒に、食事ではなく、軽く摘まめるメニューが揃っていることが高く評価されているのだった。
そもそもスターバックスに代表されるビバレージ・チェーンは、ファストフード・チェーンに比べればコスト・パフォーマンスが悪いとあって、
住宅ローンを支払っていたり、インフレの影響で生活費が嵩んできた人にとっては、真っ先に切り捨てる出費。
それでもビバレージ・チェーンが伸び続け、利益が上がり続けるのは、ファストフード・チェーンには決して足を運ばない富裕層や、
1日1杯のデザイナーズ・コーヒーやカラフルなドリンクをその日の楽しみや贅沢にしている若い世代が毎日のように通い続けるためで、
マクドナルドがコスミックスを通じてターゲットにしているのは まさにそんな客層。
さすがにマクドナルドは、何度もテストをした上でドリンクやフードを開発をするとあって、早速トライした人々からの味のリアクションは上々。
今後コスミックスは、2024年にテキサス州等にあと10店舗をオープンする予定で、前述のようにまだまだ試験展開の段階。
全米に展開するまでには、メニューや店舗デザイン等が、消費者のリアクションやフィードバックを反映させて、まだまだ変わっていくことが見込まれるのだった。
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