Dec 3 〜 Dec 9 2023
節約バンドル, グーグル Gemini, プレBTCブル市場, Etc.
10月以降、イスラエルVS.ハマス戦争で報道時間が割かれてきたアメリカであるけれど、2023年も残すところ1ヵ月を切って、
年が明ければ始まるのが大統領選挙の予備選。
トランプ氏が引き続きトップを走る共和党は、水曜にトランプ氏不在のまま3回目のディベートが行われたけれど、
現在トランプ氏を追いかける2番手に浮上したのが元国連大使のニッキー・ヘイリー。
JPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモンやソーシャル・メディア、Linked Inの共同設立者で民主党の大口ドナーのリード・ホフマンなど、
党派を問わず、トランプ氏再選だけは避けたい人々が支持し始めたのがヘイリー。当初トランプ氏のライバルと見られたロン・ディサンティスは
支持率が一向に伸ばせないまま、大口ドナーが離れて久しい状況。
ジワジワと支持率を伸ばし、ディベートでも安定したパフォーマンスを見せ続けたヘイリーであるものの、トランプ氏を破る勢いは見られないのが実際のところ。
一方のトランプ氏にも以前ほどの勢いは無いけれど、そんな勢いや熱意が無いのは有権者、特に若い世代も同様。
以下は2023年11月6日にアメリカの18〜29歳、2098人を対象に行った世論調査結果。
イスラエル-ハマス戦争、気象変動、銃規制、ウクライナ戦争、治安維持といった問題で、バイデン大統領、トランプ氏の
いずれも信用できないという意見が最も多く、そう回答した人々は選挙で投票する意志も希薄であることが明らかになっているのだった。
しかし若い世代がこれらの問題に無関心かと言えば、その逆。若い世代ほど、学校で避難訓練と言えば火災ではなく、銃乱射事件のための訓練。
そして若い世代ほど自分達が将来生きて行く地球の環境問題には熱心。さらに大学のキャンパスでパレスチナ支持者とユダヤ支持者の対立が続いていることからも分かる通り、
政治や社会問題にしっかり関心を注いでいるのがこの世代。
そのため、2024年の大統領選挙がバイデンVS.トランプ対決となった場合、投票率が下がることが見込まれるけれど、
もし若い世代、特に党派を超えたアンチ・トランプ派にアピールする候補者が現れた場合は、例え立候補が出遅れたとしても当選の確率は十分にあると見込まれるのだった。
グーグルのジェミニ、xAIの資金調達
昨年の今頃にリリースされたのが2023年にセンセーションを巻き起こしたチャットGPT。リリース当初はAI関係者にその不完全さを指摘されていたものの、
一般に大きく普及し、AIブームを巻き起こしたのは周知の事実。
それまでAI業界をリードしていたグーグルが、チャットGPTによる市場独占を恐れて、2023年3月に慌ててリリースしたのが同様のチャットボット BARD。
そのグーグルが今週新たにリリースしたのが、チャットGPTに対して劣勢が伝えられるBARDを強化するためにデザインされた ”現時点で最強のAI” と言われる Gemini/ジェミニ。
ジェミニを開発したのはグーグルのAI子会社、DeepMind/ディープマインドで、「AI開発とグーグルにとって新たな時代の始まり」と銘打ってデビューしたジェミニは、
”Multimodal/マルチモーダル”と呼ばれる機能を搭載。これはテキスト、画像、ビデオ、オーディオ、コード等、様々な情報を
1つに纏めて理解し、操作、組み合わせる能力で、ジェミニは チャットGPTの最新バージョン、GPT-4を殆どの認知テストで上回るとのこと。
その機能には料理に火が通るタイミングをユーザーに知らせたり、飛行距離が延びる紙飛行機の折り方を提案したり、サッカー選手にコーチングまで行う万能ぶり。
特に優れているのは数学と物理学で、ジェミニがBARDに加わることによりその能力が大きく向上するのは言うまでもないのだった。
上のビデオはそんなジェミニの能力が分かるデモ・ビデオ。
ジェミニがデモンストレーターのスケッチにコメントをしたり、逆にクイズを出したり、デモンストレーターのコイントリックを見破ったり、2色の毛糸を提示されて 作れる物を提案したりと
人間とのインターアクティブなやり取りが描かれているけれど、当然のことながらAIは人間を遥かに上回る情報量を処理し、
その豊富な知識から 人間が思いつかない知恵を導き出すことが可能。
そのため専門家の間では、「ジェミニのアドバイスにより、やがて科学的進歩に繋がる研究も行える」との期待まで高まっており、このリリースでグーグル株は翌日5%以上の上昇を見せたのだった。
今週にはイーロン・マスクがスタートしたxAIが、SEC(証券取引委員会)に10億ドルの資金調達を行う申請を出し、既にそのうちの1億3470万ドルが集まっていることが
明らかになったけれど、新たなチャットボット「Q」を発表したばかりのアマゾンも含め、IT大手の間で2024年も益々ヒートアップするのがAI開発。
2023年にはAIスタートアップのうちの200社以上が、最低5000万ドルの資金を投資家から集めているのだった。
xAIについては 広告主が離れて久しいX(元ツイッター)の救世主になる見込みで、それというのも Xは xAIの25%のシェアホルダー。
過去に寄せられた1兆のツイートが xAIでのAI教育に大きく貢献する見返りとして、XはxAIに集まる資金へのアクセスが可能になり、広告主ゼロでも運営費が賄えることになるのだった。
アメリカ消費者事情、高過ぎるアメリカン・ドリームと節約のためのバンドル
かつてアメリカン・ドリームと言えば、身一つでアメリカにやって来た移民や、裕福とは言えない移民の子供世代が、一代で成功と資産を築き上げること。
でも時代が流れるにしたがって、アメリカン・ドリームには「結婚し、家や車を買い、子供を育て、安定した老後を送る」という解釈が加わってきており、
それを実現するための現実的なコストを今週発表したのが、金融関連情報を提供するウェブサイト、インヴェストペディア。
それによれば、平均的な”アメリカン・ドリーム”を実現するために必要なコストは、殆どのアメリカ人の生涯年収を上回る345万5305ドル。
現在のレートで日本円に換算すると4億9796万8190円。
この金額が近年跳ね上がった要因は、パンデミック以降のインフレと高金利。
金利上昇は自動車ローン、クレジットカード・ローン、学費ローン等、全てのローンに余分にお金が掛かることを意味するけれど、
特に住宅金利は現在7.5%にまでアップ。ごく平均的な住宅を頭金 10%、金利 7.2%の30年固定ローンで購入した場合のお値段は 79万6998ドル、日本円で1億1478万4448円となるのだった。
アメリカン・ドリームを平均レベルで実現するために必要な345万5305ドルには、生涯の健康保険代は含まれていても 保険でカバーされない医療費や、家財保険、生命保険は含まれていないのはもちろん、
毎日の食費、衣料や生活用品を含む生活費、光熱費やインターネット料金、ストリーミングのサブスクリプション、ヴァケーション費用等が一切含まれておらず、実際のコストは
住む場所やライフスタイルに応じて、さらに跳ね上がるのだった。
現在のアメリカで顕著なのは、住宅を購入してローンを支払っている人々、住宅購入を考えて物件を探したり、ローンの頭金を貯めている人ほど 生活を切り詰め、
不動産購入を考えない給与が安い人々、将来に楽観的な若い世代の方が可処分所得を遣う傾向。
今年のホリデイ商戦の売り上げを引っ張っているのがこれらの人々で、どんぶり勘定で刹那的な経済感覚を持つ消費者の財布の口を開かせるために
小売店が行って功を奏しているのが例年よりも高いディスカウント率。
値引きが大きいと、お金を遣っているよりも節約している意識が高まり、お金を遣わない方が損に感じられるのは世界共通の消費者意識なのだった。
そんな消費者意識に働きかけ始めたのがストリーミング業界。現在ネットフリックス、アップルTV+、ディズニー+等、どんどん増えて来たサービスが凌ぎを削る中、
平均的なアメリカ人が毎月ストリーミング・サブスクリプションに支払う金額は50ドル。
これまでは上がり続けたサブスクリプション・フィーであるけれど、消費者側はインフレによる生活費カットのためにストリーミングの数を減らす傾向が顕著。
そこで始まったのが複数のストリーミングのバンドル、すなわち纏め売り。
ヴェライゾンは特別プラン加入者に対してネットフリックスとMAXを抱き合わせにして10ドルで提供。
これは消費者側にとって40%の割引で、アップルTVもパラマウント+とバンドル・サブスクリプションを割引で提供すると発表。
ライバルと手を組まなければならない背景にあるのは、ストリーミング市場の飽和化と、無い袖は振れない消費者の経済事情。
新規サブスクライバー獲得より、既存のサブスクライバーをライバルと奪い合う時代に入った訳で、この夏に行われた脚本家組合、俳優組合のストライキの影響で
今後は番組製作コストがアップすることから、ライバルと競争をするよりも、手を組んでプロフィット・シェアリングに動いたのがストリーミング業界。
同じストリーミングでも、バンドルが出来ないミュージック・ストリーミングのスポティファイは、
株主に「ビジネス拡大より、利益を上げろ」と圧力を掛けられた結果、2023年で3度目にして、従業員の17%に当たる1500人のレイオフを今週発表しているのだった。
ETF狂騒曲序曲? 既に水面下で始ったクリプト、ブル相場
先週末から急騰したのがビットコイン価格。2023年に入ってから現時点までに価格が150%上昇したビットコインは、
メタ(フェイスブック)を抜いて 時価総額で世界第9位のアセット。
ビットコイン嫌いで知られるウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは11位となっているのだった。
ビットコインは来年4月に半減期を迎える見込みで、半減期とは 新たなブロックチェーンが生まれる度にビットコイン・マイナーに支払われる報酬(=新しいビットコイン)が4年に1度のペースで半分に減らされる時期を指す言葉。
ちなみに半減期を設けるのは、貨幣のようにインフレによる価値の低下を防ぐことが目的。
過去3回の半減期では、その1年前からブル相場が静かにスタートし、半減期直後からの18〜20ヵ月がブル相場になるのがこれまでのビットコインの市場サイクル。
特に今回のブル相場では、ブラックロック、フェデリティらによる合計12件のビットコインETF上場申請がSECに認可されるが見通しが濃厚であることから、
金融機関を巻き込んだ大相場になると期待されるのだった。
ビットコインのETFを期待して上がっているのはクリプトカレンシーだけでなく、12のETFのうち 最大手のブラックロックを含む5つのカストディアン(ETFためのビットコイン保管・管理)を務める取引所、コインベースの株価もしかり。過去1ヵ月で60%上昇したコインベース株は2023年中に277%アップしており、もしETFが全て認可された場合、現在の1株136ドル前後は完全にアンダーバリュー。
前回のブル市場では 2020年の8000ドルから、2021年11月にATH(All Time High / 史上最高値)の6万8000ドルまで上昇したビットコインであるけれど、実はブル市場の度にビットコインよりも
大きな上げ幅を記録するのがアルトコイン(ビットコイン以外のコインの総称)。2016〜2017年のブル相場ではXRP(当時のリップル)、2020年からのブル相場ではイーサリアム、ポリゴン(マティック)がビットコインを遥かに上回る価格上昇を見せており、クリプトカレンシーの取引に通じた人々の間で現在盛り上がっているのが、次のブル市場で1000%以上アップするアルトコインのサーチ。
メインストリーム・メディアでも、アルトコインへの注目は高まっていて、ブルームバーグが今週、突如”クリプトカレンシー・チェック”の画面にビットコイン、イーサリアムと共に加えたのがソラーナ。
ソラーナはイーサリアムよりも送金のスピードが速く、しかも手数料が安価。ゲームやNFT取引にも使われる用途が幅広いブロックチェーンとあって、次のブル相場を担うコインの1つと目される存在。
その価格も11月に2倍に跳ね上がったばかり。
しかしそれよりもハードコアなクリプトマニアが11月から夢中になっているのが、時価総額が低く、簡単に価格が大きく動くアルトコインの取引。
大手取引所が扱わないような小規模で安価なコインが、過去6週間ほどで600〜1200%上昇するとんでもない状態が既にスタートしているのだった。
その爆上げアルトコインの多くはゲーム関連で、今後のメタバース、バーチャル・ワールドへの移行を担うと言われるのがゲーム業界。
今週には大人気のビデオ・ゲーム、グランド・オート・セフトのトレーラーが公開されたけれど、マイアミをモデルにしたヴァーチャル・シティのリアリティは
かなりのもの。
金融、テクノロジー、エンターテイメントといった世の中の様々な異なる分野が、新時代に向けてどんどん動き始めている様子が感じられるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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