Should Be Taken Seriously?
2022年ワールド50ベスト・レストラン、
お決まりの判断基準と高額志向に どこまで信ぴょう性があるか?
Published on 7/29/2022
7月4週目にロンドンで発表されたのが、毎年恒例のワールド50ベスト・レストランのリスト。
「毎年のようにリストの半分以上がヨーロッパのレストランで占められ、トップを占めるのは常にイノベイティブで、
時に 食べ物とは思えないプレゼンテーションをするノルディック・レストラン」と批判を浴びながらも、
世界のレストラン・ランキングを出すという大掛かりなプロジェクトをする機関が他に無いとあって、
最もプレステージの高いレストラン・ランキングとしてもてはやされてきたのが同リスト。
しかしレストラン業界を見る目がパンデミックを通じた価値観の変化で徐々にシフトしつつあること、フード・クリティックの世界に長々と君臨する重鎮の視点が
時代遅れになりつつあること、そして何より「世界中のレストランを正当に評価してそのランキングを決めることなど不可能」ということが今さらのように指摘され、
リストの信ぴょう性や意味合いが いつになく取り沙汰されたのが2022年。
今年の1位はこれまで長くトップに君臨してきたデンマーク、コペンハーゲンの
ノーマに代わって、同じコペンハーゲンの ジェラニウムが輝いていますが、ベスト50のレストラン・メニューのコンセプトの基軸になっているのは日本の懐石料理。
にも関わらず アジアのレストランの最上位が20位にランクインした東京の傳というのは 首を傾げる人が多かったポイント。
特に東京は過去10年以上に渡って最もミシュラン・スター・レストランが多い街であっただけに、ワールド50ベスト・レストランのジャッジが
アジアまでしっかり足を延ばして調査していないと指摘されているのが実情。
また世界各国の食通が ランクインしている自国のレストランについて納得しないケースが決して少なくないと言われるのがこのランキングで、
それについて業界誌では、「ニューヨーカーならピーター・ルーガーがNYで最高のステーキハウスでないことを認識していても、
海外から来たリサーチャーがピーター・ルーガーで満足すれば、ピーター・ルーガーがベストということになってしまう。それと同様のことがワールド50ベスト・レストランの
ランキングで起こっている」と説明されています。
ここではその物議を醸すワールド50ベスト・レストランのランキングと、今年のトップに輝いたレストラン、ジェラニウム、
そして33位にして、ニューヨークのトップ・レストランであるアトミックスにフォーカスすることにします。
ワールド No.1 コペンハーゲンのジェラニウム
昨年のNo.2からワンランク・アップし、複数年No.1 に輝いた同じコペンハーゲンのNoma/ノーマに代わってトップに躍り出たのがジェラニウム。
ちなみにノーマは今年は100位以内にも入っておらず、選考対象から外れたのかなどの詳細は不明。そのノーマの
ディナーのプリフィックスのお値段は約435ドル。ワインのペアリングは更に280ドルのプラス、
ノンアルコールのドリンクのペアリングは155ドルのプラス。
ジェラニウムのディナーもノーマとほぼ同額の440ドル。ワインのペアリングは ランク付けがあって最も安いペアリングで280ドル、
次いで550ドル、825ドル、そして最高額のレア&ユニーク・ワインのペアリングは2480ドル。
予約は1人約200ドルのデポジットを支払って成立というルールになっています。
落ち着いたインテリアで高級感漂う同店は、ナショナル・フットボール・スタジアムの8階に位置するため、パノラマ・ビューが楽しめるセッティング。
コース料理はミート・フリーで、
ノーマ同様、小さなポーションで イノベイティブなプレゼンテーションのスナック、料理、デザートが約26皿、3時間以上を掛けてサーヴィングされます。
特に有名なのが、写真左上の”フローティング・スフィアー”で、発酵させたキャロット・ジュース、カニ、ミルク、シーバック・ソーン・オイルで
作られた化学の実験のようなディッシュ。その下のスプーンに乗っているのは蜜蝋、花粉、蜂蜜とクラウドベリーのアイスクリーム。
左下の緑色の石のようなディッシュは、「緑の石だけをお召し上がり下さい」という台詞と共にサーヴィングされる”ディル・ストーン”で、やはり名物ディッシュ。
ホースラディッシュ(西洋わさび)のクリームとディルのピクルスジュースのグラニテで独得の食感。
中央トップはドライフラワー&アップル、中段下は樹皮とクリームチーズのスモークで、いずれも手と時間を掛けて
食べ物というよりもテーブルを飾るオブジェのように精巧に仕上げられたディッシュ。
グルメの間では大絶賛されるレストランですが、「食欲が沸くというより、知的興味をそそられるレストラン」とも言われる存在。
同店のディナーは ドリンク、他を含め1人最低800ドル見当。これはアメリカの平均世帯の1ヵ月の食費よりも遥かに多い金額で、
この値段でディナーを味わっても問題ない人々の価値観にアピールする料理とプレゼンテーションを提供しているのがジェラニウムと言えそうです。
Geranium
Per Henrik Lings Alle 4, 8. DK-2100 Copenhagen
ウェブサイト:https://www.geranium.dk/en
NYの No.1 Atomix / アトミックス
アトミックスは、人気コリアン・レストラン、Atoboy/アトボーイに続いてシェフのジュンヒュン・パーク、マネージャーのエリア・パークがオープンした
10コースのテイスティング・メニューをサーブするアップスケールなコリアン・レストラン。
トラディショナルなコリアン・キュジーヌに基づいたメニューで、カジュアルで安価なアトボーイのディッシュとは異なり、
プレゼンテーションからメニューの組み立てまでもがオーセンティックでクラッシー。
それでいて、モダンでエッジーなシェフの持ち味が発揮されていると評判。
コリアン・フードに馴染みが無いアメリカ人には日本食とフレンチのフュージョンのようにも感じられるようです。
ちなみに両店のネーミングに使われているアトとは韓国語でギフトの意味。
オープンするやいなや、NYで最も予約が取り難いレストランの1つになっています。
ワールド50ベスト・レストランのランキングでは昨年の42位から今年は33位に躍進し、NYのトップであると同時にアメリカ国内でもトップのランキング。
ミシュランでは2つ星、NYタイムズでは3つ星を取得しています。
ジェラニウムに比べると庶民的な分、食欲をそそるディッシュの数々は、アーティーなオブジェではなく、料理としての美しいプレゼンテーションがなされています。
食材の鮮やかなカラーをふんだんに生かしたディッシュは、同時に食材の組み合わせの妙が光るものが多く、
それが訪れた来店客にはアジアの繊細な食文化としてアピールしているよう。
またサービスもワインリストのセレクションも極めて優秀。
店内はモダンなミニマリズムなカウンター・テーブルで、キッチンのビューとマンウォッチングを同時に楽しみながら、
如何にもNYらしいディナーが楽しめるセッティングになっています。
ジェラニウムのようなノルディック・レストラン、かつてこのランキングでNo.1に選ばれたイレブン・マディソン・パーク等、高額のコース料理のレストランが
このところ肉のサーヴィングを控える中、
アトミックスは鶉(うずら)のグリルや和牛のサイコロ・ステーキがメニューに盛り込まれ、加えてキャビアや刺身など野菜以外の食材が
複数のディッシュで味わえることから、満足度が高いテイスティング・メニューとして高く評価されています。
Atomix
104 E 30th St. New York, NY 10016
ウェブサイト:https://www.atomixnyc.com
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