Aug 16 ~ Aug 22 2026

Natalie, the Human Printer?
トランプ氏の愛人説が流れる”人間プリンター”、ナタリー・ハープのサイコパス的献身


 アメリカでは11月の中間選挙に向けて毎週のように予備選挙が各州で行われているけれど、今週トランプ氏が推薦した3人の候補が敗れたことでMAGA候補の敗北は現時点で合計10人。 これはトランプ氏が2018年、2020年、2024年の選挙で推薦して敗れた候補者の合計に等しく、特に現在トランプ氏が居住し、 今後トランプ新リゾート施設とプレジデンシャル・ライブラリーの併設を目論むフロリダ州で2人の候補者が敗れたことは、共和党支持者の間でのトランプ・パワーの衰えを示すもの。
 でも今週のアメリカでメディアとSNSの話題が集中したのが、トランプ氏の愛人と目されるナタリー・ハープ。そのきっかけはジョージア州選出の上院議員で、2028年大統領選の民主党最有力候補、 ジョン・オソフが先週末に行った30分の演説の中で、「米軍がイランで厳しい軍務をこなす中、大統領は会議中に居眠りをしている、 ゴルフをしている。株の取引きをしている。彼は職務を遂行する気がない。ホワイトハウスのボールルームを建設し、カタール首長から贈られた無防備な”空飛ぶ宮殿(新エアフォースワンのこと)”でナタリーと旅をしたいだけなのだ」と語ったこと。
 直後にX上で500万回再生されたこのフレーズに登場した”ナタリー”とは、先週報じられたトランプ氏の”おとり機スキャンダル”で、 トランプ氏と共にケータリング・カーゴでイラン攻撃の危険が高いエアフォース・ワンから脱出したブロンドの特別補佐官兼トランプ氏の個人秘書、ナタリー・ハープを指すのは誰もが理解するところ。
 しかしオソフは”ナタリー”と言っただけで、それがナタリー・ハープであるとも、彼女が大統領の愛人とも言っておらず、トランプ氏への名誉毀損でもなければ、彼女を批判した訳でもなかったけれど、 これに過剰反応したのがトランプ陣営を含む保守右派。「オソフがナタリー・ハープをトランプ氏の愛人だと決めつけた」、 「オソフはホワイトハウスで働く有能な女性スタッフが、トランプ氏への性的アプローチでのし上がったかのように蔑視している」と、オソフのスピーチを勝手に拡大解釈。 それによってスピーチが更に拡散されただけでなく、ナタリー・ハープ愛人説を国民に知らしめる逆効果になったのが今週のこと。
 この手法は「ストライザンド効果」と呼ばれ、2003年にシンガーで女優のバーバラ・ストライザンドが、沿岸浸食調査のために航空撮影された彼女のマリブ邸の写真を差し止めようと訴訟を起こしたことで、 かえって注目を集める逆効果を生んだ事例からついたネーミング。すなわちオソフのスピーチを攻撃さえしなければ、ナタリー・ハープの存在がここまで大きく注目を集めることは無かったのだった。
 それを見越していたとも言われるジョン・オソフは現在39歳。ルックスが良く、スピーチの上手さに定評があり、この騒ぎで獲得したのが全米規模の知名度。 様々な報道番組から引っ張りダコになる一方で、これまでタブー視されてきたナタリー・ハープ関連報道を一気に解禁に持ち込んだけれど、 一部には「ナタリーの一言で、オソフがスピーチ全体をタブロイド・ネタにしてしまった」との批判があるのは事実。しかし「今はキレイな選挙で勝てた2008年じゃない。トランプとの闘いは 泥地獄でブタと闘うようなものなのだ。いつまでもキレイ事を言っていたら勝てない」という意見の方が広く支持を集めていたのだった。



トランプ氏のためにロッカールームで寝泊まりし、SUVトランクに飛び乗る個人秘書


 現在35歳のナタリー・ハープは、2015年にステージ2の骨肉腫と診断され、トランプ氏が2018年に制定した「Right to Try(治療を受ける権利)」法のおかげで命が救われたと公言することで、 トランプ氏側近への道を切り開いた存在。
 「Right to Try」法は、末期がん患者にFDA(食品医薬品局)未認可の実験的医薬品を試すことを許可する法律であるけれど、ハープのがんは末期と言えないだけでなく、 彼女に投与されたのはFDA認可済の免疫療法薬。「Right to Try」法の恩恵を全く受けていないにも関わらず、2019年にFOXニュースに登場し 「今自分が生きているのはトランプ大統領のお陰」と熱っぽく演説。自分への賞賛、特に若い女性からの賞賛を好むトランプ氏は、 2020年の共和党党大会でも彼女にスピーチをさせ、同年の選挙でトランプ氏が敗れた際に極右ケーブル局 OANN(One America News Network)でキャスターをしていた彼女は、 不正選挙を証拠も無しにヒステリックに訴えたエレクション・ディナイヤー(選挙結果否定派)の1人。
 2022年に同局を去ったハープは、トランプ氏の選挙キャンペーン・スタッフとなり、それ以降彼女が見せたのがトランプ氏に24時間張り付く恐ろしい執着ぶり。それに危機感を持ったスタッフが、トランプ氏の選挙オフィスをマー・ア・ラゴから ニュージャージー州ベッドミンスターのカントリー・クラブに移した際、あえて彼女に宿泊用の部屋与えずにいたところ、ハープは暫しメイド・ルームに滞在。それではトランプ氏と距離があり過ぎると考えてからは、 女子ロッカールームに寝泊まりしてトランプ氏に付き添い、2023年10月にトランプ氏がNYの裁判所に出廷する際には、トランプ氏のSUVに彼女の座る場所が無いと説明するセキュリティ・ガードに対して 「自分はトランプ氏に同行を依頼された」と怒鳴り合いの大喧嘩を繰り広げたのち、SUVのトランクに飛び乗ったというエピソードがあり、「もしトランプ氏が拘留されることがあれば、自分が代わりに刑務所に行く」とまで宣言。
 さらにハープは事ある毎にトランプ氏のプライベート・スペースに "You are all that matters to me/私にとって大事なのは貴方だけ" 、 "I want to bring you joy./貴方に喜びをもたらしたい"といったラブレターのような手書きメッセージを残すことでも知られ、 シークレット・サービスの間では彼女の存在をトランプ氏にとってのリスクと見なす声が多かった一方で、 メラニア夫人が2024年の選挙戦で殆ど姿を見せなかったのも、四六時中ハープがトランプ氏にベッタリと同行している様子を夫人が嫌ったためと言われるのだった。
 やがて大統領に再選されたトランプ氏は2025年1月にハープを正式に自分の特別補佐官兼個人秘書に起用。ハープはトランプ氏のトゥルース・ソーシャルの ポストを代行しながら、海外首脳を含む要人とトランプ氏の面会をアレンジ。極秘ミーティングでもトランプ氏の傍を離れず、要人とのテキスト・メッセージのやり取りも彼女が代行。 もちろん週末のゴルフにも同行し、それを嫌ったスタッフが彼女のためのゴルフカートを用意しなかった際には、全力で走ってトランプ氏のカートを追い掛けた体力と熱意の持ち主。
 そんな彼女のニックネームは”ヒューマン・プリンター”で、理由は彼女が常にポータブル・プリンターを持ち歩き、トランプ氏のエゴを満たすような賞賛記事やSNSポストを見つけては、ペーパーレス時代にも関わらずそれらをプリントし、 ゴールドのクリップで留めてトランプ氏に差し出すため。
 トランプ氏も彼女のことを「他の連中は金稼ぎが終わったら自分から去っていくが、彼女は絶対に自分から離れない」と語っているけれど、 ハープは多くのトランプ官僚同様、何の実績や資格も無く国家安全保障に関わるポジションについた人物。しかも政府職員に義務付けられるセキュリティ・クリアランス(バックグラウンド・チェック)を拒み続け、 ようやく調査が始まったと言われるのが数週間前のこと。
 常に3つのスマートフォンと2台のラップトップと共に巨大なショルダー・バッグを常に持ち歩くハープであるけれど、バッグの中に入っていると言われるのがトランプ氏のおむつ。 第二期政権下の側近の間では、何事も無いかのように耐えるのが仕事の一部になっているのが汚れたおむつとガスの強烈な匂い。 そのおむつ替えを担当するのもハープの仕事と言われ、常にトランプ氏の傍に立ち、トランプ氏を見つめ続ける彼女をホワイトハウス・スタッフはサイコパス扱い。
 一部にはそれが演技で、実はハープがトランプ氏をコントロールするために派遣されたイスラエルかロシアの工作員と見る声もあるけれど、 ハープの米国大統領への執着はこれが初めてではなく、今週CNNのインタビューに応えた彼女と絶縁中の兄は、 ハープがティーンエイジ時代のイラン戦争の最中、ジョージ・W・ブッシュにも熱烈なファンレターを送付していたことを明かしていたのだった。



メラニア夫人の逆襲!?


 かつてトランプ氏が「もし娘じゃなかったら、絶対にイヴァンカとデートする」と語ったのは有名であるけれど、ナタリー・ハープはファッションも髪型もイヴァンカ・トランプを意識しており、噂では彼女に似せて美容整形までしたとのこと。 ハープの足元はゴルフ・カートを運転する際もベージュのパンプス一辺倒で、トランプ氏好みの容姿と病的な献身ぶりでハープが狙っていると言われるのがメラニア夫人の椅子。 トランプ氏が80歳という高齢で、様々な健康問題を患い、服用薬も多いことから、ホワイトハウス・スタッフは2人の間に性的関係は無いと断言。 しかし既に不仲なメラニア夫人との間に更なる火種をもたらしているのは明らか。
 メラニア夫人は第二期政権下ではホワイトハウスに住んでおらず、NYのトランプタワーで別居中。2026年にメラニア夫人が公の場に姿を見せたのはこれまでに合計38回で、その多くが アマゾンの大赤字ドキュメンタリー「メラニア」の試写会や、本の出版を含む自らのプロモーション。歴代のファーストレディとは比べ物にならないほど公務が少ないのは周知の事実。 不仲とは言え、トランプ夫妻の共通の関心事はお互いのイメージを守ること。メラニア夫人は”出演交渉”を経て、事前にコーディネートされたイベントだけに姿を見せる「契約上の妻」であり、 トランプ氏が最も恐れる人物の1人。

 現在トランプ陣営が危惧するのは、ナタリー・ハープの存在が国民の間で知れ渡ったことがメラニア夫人のトランプ氏への長年の怒りに火をつけること。 今年4月9日にはメラニア夫人が トランプ氏に通達しないまま、突然の声明発表を行い「私はエプスティーン被害者ではありません。 虚偽によってエプスティーンと私を結び付けることは今日で終わりにしなければなりません」とスロヴェニア訛りの英語で宣言。 「エプスティーン疑惑の真実を追求すべきです」と語ってスピーチを終えたことは、当時司法長官パム・ボンディをクビにすることでエプスティーン問題に終止符を打とうとしていたトランプ氏にとって、身内に背中から刺されたような出来事。
 この時夫人を声明発表に走らせたのは、1998年にトランプ氏とメラニアを引き合わせたことになっている元モデル・エージェンシーの社長、パオロ・ザンポーリの元妻で、メラニアとは長年の親友だったモデルの アマンダ・ウンガロが、メラニアの過去を暴露する時限爆弾を抱えていたため。現在トランプ政権でグローバル・パートナーシップ特別代表を務めるザンポーリは、エプスティーンとはモデル・エージェンシーを一緒に経営した仲で、 アマンダとの間に生まれた息子の親権を得るために、ブラジル出身の元妻を移民局に強制送還させたのが今年3月のこと。腹を立てたアマンダは「メラニアの秘密を暴露する」と宣言し、その秘密とは真偽は定かでないものの、 メラニアがエプスティーンのエスコート・サービスとしてトランプ氏に差し向けられたのが2人の出会いであるということ。 これはSNS上ではかなり前から囁かれていたものの、これまではそれを裏付ける証言や証拠が無かった噂で、メラニアのサプライズ声明は先手を打つことで、後に出て来るアマンダの暴露の信憑性を失わせる目的で行われたのだった。
 この前例があることから、ホワイトハウス内ではメラニアが「ナタリー・ハープのせいで自分が恥をかく前に、夫と愛人を陥れようとするのでは?」との憶測を呼んでいたけれど、 今週木曜に1カ月ぶりに満面の笑顔でホワイトハウスに姿を見せたのがメラニア夫人。夫人が登場したのはホワイトハウスの週間スケジュールにリストされていなかった里親制度に関する突如決まったイベント。 そこにファンデーションでアザを隠したトランプ氏の手を今までになく強く握って登場した夫人とトランプ氏の様子は、演技が見え見えの仲睦まじさで、当然その場にはナタリー・ハープが不在であったことはSNSではジョークのネタ。

 そんな沈みゆく泥船化したトランプ政権に見切りをつける政府職員は多く、先週辞任を発表したキャロライン・リヴィットに続き、スティーブン・ミラー政策副首席補佐官の秘書らが次々と辞任。 中でもダメージが大きいのが国家安全保障副補佐官、アンディ・パーカーの辞任で、彼はイランとの交渉を進めているように振舞うトランプ氏の娘婿、ジャレッド・クシュナーや、トランプ氏の不動産仲間、 スティーブ・ウィットコフという2人の特使の背後で実質的な交渉を担ってきた存在で、トランプ政権内ではかなりの実力者。彼が去ったことで政権内にはいよいよまともな人間が残っていないと言われるのが現在。
 それを証明するかのように、トランプ氏は現在ナタリー・ハープをリヴィットの後釜として年収15万ドルのホワイトハウス報道官に任命することを考えており、 その一方で今週アイオワ州に出向いて予備選挙の応援兼2028年大統領選への出馬準備を始めたと言われるのがFOXニュース・キャスターから国防長官に大抜擢され、アメリカ軍を崩壊させつつある ピート・ヘグセス。戦争中に国防長官が選挙キャンペーンに出向くというのは前代未聞の事態であるけれど、オバマ政権、バイデン政権であったら大バッシングになる状況が トランプ政権下ではニュー・ノーマルとしてまかり通るのは、歴代大統領には決して見られなかったトランプ氏の強みなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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