Apr 30 〜 May 4 2024

Musk, Neko Health, Movie Theater, Etc.
イーロン不信感, ネコヘルス, 映画館サバイバル新展開, Etc.


今週のアメリカで最大の報道になっていたのは、引き続き全米の主要大学のキャンパスで起こっていた親パレスチナ学生による抗議デモが更に激化したニュース。 大学側は学生達の言論の自由を認めながらも、警察にデモ鎮圧を要請したことから学生達の反発が高まり、金曜の時点で逮捕者は2300人以上。NYの名門コロンビア大学では、 デモ学生が校舎占拠する事態も起こっていたけれど、ブラウン大学やノースウェスタン大学では、デモ参加者との交渉により キャンパス内に陣取っていたキャンプの撤去に成功していたのだった。
激化の一途を辿るデモの影響で、これから行われる卒業式をキャンセルする大学も出ているけれど、アメリカの大学の卒業式と言えば、政財界の著名人やセレブリティが 社会に巣立つ卒業生のために行うコメンスメント・スピーチがメイン・イベント。 そのため学生抗議グループは、バイデン大統領、著名コメディアンのジェリー・サインフェル、ビル・ゲイツ夫人で慈善事業家でもあるメリンダ・ゲイツ等、メディが取材にやって来るような 大物スピーカーを迎える卒業式で、大規模なデモを行う計画をしている様子が伝えられるのだった。



イーロン・マスクに、今更高まる不信感


今週月曜にテスラが発表したのが、予算削減の人員減らしのために スーパーチャージャー部門のほぼ全員に当たる約500人をレイオフしたニュース。
スーパーチャージャーは 最も速く、最も信頼性が高い充電ステーションとして高く評価されており、その評判と信頼度はテスラのEVを上回るもの。 テスラは環境問題への取り組みの一環としてEV普及を掲げるバイデン政権から、多額の補助金を受け取りながらスーパーチャージャーを全米に設置してきており、早ければ今年、 来年中にフォード、GMのEVがテスラのスーパーチャージャーを使用しての充電を可能にする発表があったのは昨年8月のこと。 フォード、GMは自社のチャージング・ステーションを設置せずに済む代わりに、テスラがチャージの際にそのドライヴィング・レコードを取得するという交換条件が成立していたのだった。 果たして今週のレイオフがフォード、GMとの関係にどう影響するかは不明であるものの、既にテスラはニューヨーク市で計画されていた 新しいスーパーチャージャーのリース契約を撤回する見込みで、スーパーチャージャー設置事業のスローダウンをイーロン・マスクが一方的に通達してきたのが今週。
そこで今更のように浮上したのが、果たしてイーロン・マスクは 国の予算が絡む複数の重要プロジェクトを切り盛りするだけの信用に値するのかという疑問。
例えば、イーロン・マスクが経営するスペースX傘下のスターリンクは、インターネットのインフラを失ったウクライナ軍にサテライトでネット環境を提供していたけれど、 昨年ウクライナが ロシア支配地域に進軍した途端に起こったのが、その通信が遮断される事態。 その捜査を行っていた国防総省当局者に対し、マスクは「自分はロシアのプーチン大統領と直接コミュニケーションを取っており、自社のテクノロジーが戦争に利用されているのを不快に感じている」 と語ったとのことで、多額の税金を投じても一向にウクライナ戦争が終わらないのはそのせいなのかと疑いたくなるような状況。
にも関わらず米国政府は、宇宙開発においてスペースXへの依存を強める一方で、スペースXは現時点で宇宙飛行士を月に送り込める唯一の米国企業。 2026年には国家予算を使って、その実現にチャレンジすることになっているのだった。
その一方でオーストラリア政府が今年に入って発表した報告書によれば、マスクがツイッターを買収して以来、コンテンツの信頼性やへイト・スピーチをチェックするエンジニアの80%を解雇し、 政治や国際問題にも影響を及ぼす陰謀説やへイト・スピーチに対応するフルタイム従業員が現在ゼロであるとのこと。
こうした事実の積み重ねから「マスクのように 行動力はあるものの、気まぐれで感情的な人物に、世界に影響を与えるビジネスの決定権が集中しても大丈夫なのか」というのが遅すぎる政府やメディア、企業の上層部から聞かれる声。 一般消費者は、既に「イーロン・マスクが嫌い」という理由でX(元ツイッター)から メタ傘下のスレッドに移行したり、テスラを買わない、もしくは売却することで「マスク離れ」を起こして久しいのが現在。
テスラは今後、ステアリングもブレーキ・ペダルもない無人車を使ったロボタクシー・ビジネスに進出する予定で、そのための規制緩和を政府に働きかけるところだけれど、 自動運転のオートパイロット・テクノロジーでさえトラブル続きとあって、こちらは難航が見込まれるのだった。



予防医療にスポティファイCEOが乗り出した”ネコヘルス”


現在、AIと共にVC(ヴェンチャー・キャピタリスト)が積極的に資金を提供しているのがロンジビティ、すなわち長寿ビジネス。
ロンジビティに力を注ぎたいのは、スポティファイのCEO、ダニエル・エク(写真上左、左側)も同様のようで、 彼がスポティファイ創業以来、初めて黒字を計上した第一四半期業績報告後に発表したのが、新たなスタートアップ、ネコヘルスのビジネス。 ネコヘルスは、フルボディ・スキャンによって、これから見込まれる病気をいち早く察知するプリベンション(予防)医療で、 病気が身体を蝕む前に発病を防ぐことで、長寿を追求するロンジビティ・ビジネス。 プリベンション医療というと、数年前には”女性版スティーブ・ジョブス”として注目を浴びたエリザベス・ホルムズが、 セラノス社の自宅用血液検査機という存在しないテクノロジーをプロモートして、政財界のインベスターを欺き続け、ストーリーがドラマ化されるようなニュースになって以来、 あまり良いイメージが持たれて来なかったのが実情。そもそも現在の医療界は、製薬会社が医学部運営に出資し、カリキュラムに大きな影響力を持つだけに予防には消極的で、 かかった病気を薬で治すのが医療の根本。そのため医学生に対して健康的な食生活の教育などは一切行われず、 アメリカでは食品業界が中毒性のある加工食品を安価で生産し、それを食べて病気になった人々を高額処方箋薬で治療する、 もしくはダイエット産業が痩せさせるという構図が、長年システマティックに経済を支えて来たのだった。
しかしオゼンピックの登場により、不健康フードに対する食欲が落ち、ダイエット産業が潰れ、世の中のしくみや意識が変わって来たところで、登場したネコ・ヘルスは、 ダニエル・エクが 彼と同じくスウェーデン人のアントレプレナー、ヤルマール・ニルソンヌと共同創設した企業。 MRIを使うと約2500ドルの費用が掛かるフルボディ・スキャンを、僅か230ドルでやってのけるのがネコヘルスで、年に一度のチェックアップの際に気軽に行えるのが利点であり大きな魅力。 既に彼らのお膝元、ストックホルムでは、知名度こそ低いものの、実用化されているテクノロジーで、この夏にはロンドンに進出予定。 複数のVCのバックアップを受けているのだった。
フルボディ・スキャンの分野にはアメリカ国内でも Prenuvo/プレニューヴォ、 Ezra/イズラといった新興企業が登場しているけれど、 医療専門家だけでなく、一般人の間からも聞かれるのが 頻繁なボディ・スキャンが身体に与える影響。 それというのも医療費に糸目をつける必要が無い大金持ちが、頻繁に受けるMRIのせいで被ばくしているケースが伝えられるためで、 そうしたリスクも踏まえて、ネコヘルスが医療ビジネスとして 今後どうアピールしていくかが見守られるのだった。



映画館が体験型でサバイバル


先日ラスヴェガスで行われたのが、映画館のオーナーと映画会社のエグゼクティブが年に一度集まるシネマコン・コンヴェンション。 業界の方針や問題点、その取り組み等が話し合われるこの席で、今回最大のテーマになっていたのが、 映画館が映画上映に頼るビジネスから、イベント・ハブに生まれ変わろうとしている現状。
パンデミックのロックダウンで映画館のビジネスが大打撃を受けたとは言え、それ以前からネットフリックスに代表されるストリーミングに人気が移行したせいで、 既に始まっていたのが映画館落日の日々。 アメリカで100年の歴史を持つ映画館ビジネスは、 3Dのダイナミック映像を提供するIMAX、グルメフードやゆったりと脚が伸ばせるラグジュアリーな座席を提供する高額シアター等で、映画鑑賞を アップグレードさせてきたとは言え、もはや映画に頼っていては集客が出来ない時代。
そこに新風を巻き込んだのが昨年10月に公開されたテイラー・スウィフトの「エラス・ツアー」のムービー版。 これによって多くの映画館が、観客が立ち上がったり、歌って、踊り、拍手をするという本来映画館でご法度だったルールを緩めたことで、 来場者が味わえたのが、実際にコンサートに出掛けたような臨場感。 そもそも今時のスタジアム・コンサートでは、ビッグスクリーンに映し出された映像でしかパフォーマーの姿がクロースアップで見られないとあって、 ファンにしてみれば、盛り上がった館内で観るコンサート・フィルムは かなり楽しめるイベントになったようなのだった。
その後、公開されたビヨンセのコンサート映画もファンには大好評で、映画館で販売されたグッズの売れ行きも好調。 コンサート映画がアーティストにとっても、映画館にとっても大きなメリットになることが立証されたのだった。
それを受けて映画館側が今後増やそうとしているのが、この夏のオリンピックやスーパーボウルといったスポーツイベントの観戦、TVシリーズのファイナル・エピソードのウォッチ・パーティー、 カルト・ファンを持つ古い映画のスクリーニング等。 これまでスポーツ・バーや、大型スクリーンがあるレストランやクラブ等が行って来た企画を、映画館がベター・クォリティの画像と音響効果で打ち出そうというのが現在の動き。 映画を観るだけなら家で出来る時代に、”より体験型のエンターテイメントを提供するイベント・ハブ”になる、というのが映画館が新たに目指す方向性になるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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