Feb . 20〜 Feb. 27 2023
あれから1年、チャイナコイン・ブーム、ヴィーガン・ミートの終焉!?、Etc.
今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのがサウス・キャロライナ州の有力弁護士、アレックス・マードーグによる妻と息子殺害容疑の裁判(写真左上)。
ジョニー・デップVS.アンバー・ハードの名誉棄損訴訟以来の注目を集めるこの裁判は、2021年6月にマードーグの妻(53歳)と次男(22歳)が 彼の所有するハンティング・ロッジで
それぞれ別の銃で殺害されているのを発見したマードーグが警察に通報。事件当時、マードーグは痴呆症の母と死期を控えた父親と過ごしていたとアリバイを証言したものの、
付着した血痕から事件当時に彼が現場に居たことが確実視され、本人が弁護士にも関わらず多かったのが 証言の食い違いや 翻し。やがて2022年7月に
容疑が固まり 逮捕されたマードーグの裁判がスタートしたのは今年1月のこと。
事件捜査のプロセスで、彼がクライアントの多額の資金を横領していたことも明らかになり、妻と息子の殺害は そんな金銭トラブルから周囲の関心を反らすためであったという
疑惑が浮上。今週、証言台に立ったマードーグは自らの幾つものウソを認め、金銭トラブルは 彼が処方箋痛み止め薬の中毒であったことが原因と語り、無罪を主張。
裁判は来週にも結審する予定であるけれど、この裁判が全米の関心を集める理由は、殺害された次男が 2019年に当時ティーンエイジャーの女友達のボートによる事故死で
重犯罪に問われた際、マードーグの権力と根回しで無罪を勝ち取っていること。その前の年、2018年にはマードーグ家の長年のハウスキーパーが
不自然な死を遂げたにも関わらず、司法解剖無しの自然死で片付けられてしまったこと。 2015年にはマードーグの長男が当時通った高校で
ゲイ男子学生が不審死を遂げ、その事件にマードーグ家の人間が少なくとも1人は絡んでいると言われるなど、頻繁に事件の容疑が掛かっては逃れて来たファミリーであるため。
それが可能になる理由は、マードーグ家が1920年から100年以上 サウス・キャロライナ州14区の司法を取り仕切ってきた弁護士一家であるためで、
保守右派が多い現地では マードーグ家はアンタッチャブルな存在になっていたのだった。
あれから1年、これからの展開…
今週で1周年を迎えたのがロシア・ウクライナ戦争。週半ばにはバイデン大統領がウクライナをサプライズ訪問した様子が報じられていたけれど、
プーチン大統領が数日で陥落できると侮っていたウクライナが、1年もロシアの攻撃に持ち堪えたのは 開戦当時には考え難かったこと。
プーチン氏の思い通りにならなかった要因として 国際政治専門家が語る3つのポイントは、まずアメリカが早い段階からロシアのウクライナ侵攻の可能性を示唆し、
侵攻開始と共に 西側諸国が足並みを揃えたロシアへの経済制裁に踏み切ったこと。2つ目はヨーロッパ各国で、ロシア侵攻をきっかけに
「他国による侵略は過去の物」という意識が払拭され、大国に侵略される恐怖と危機感が蘇ったこと。
特にロシアによって破壊されたウクライナの街の映像や、空襲を逃れて地下鉄駅内で過ごすウクライナ国民の映像、
ロシア兵によるレイプや市民の連れ去り等の被害は、ヨーロッパ人の意識の中で ”戦争を歴史的恐怖” から ”現在の脅威” に変えたと言わるもの。
そのため燃料費が暴騰し、小麦や肥料の流通に問題が生じても ヨーロッパ諸国がウクライナ支援を継続する姿勢が保たれているのだった。
3つ目はロシア軍に対するウクライナの大健闘ぶりで、特にウクライナ国民の国を守ろうという硬い団結と愛国心は、目的意識が希薄で士気の低いロシア兵とは好対照。
そんなゼレンスキー大統領とウクライナ国民の闘う姿勢が、過去1年に渡る世界各国からの多額の支援と武器提供に繋がったのは言うまでもないこと。
その一方でイラク、アフガニスタン戦争で失策を演じて来た西側諸国は 、ロシアへの経済制裁とウクライナ支援によって 久々に協調関係が高まったという意識を新たにしているのだった。
しかしながら、アメリカ国内では もともとプーチンびいきのトランプ前大統領を始めとする共和党の一部から
これ以上のウクライナ支援を渋る声が上がっており、特に今年から共和党が過半数を占めた下院では、ケヴィン・マッカーシー議長が就任以前から
ウクライナ支援の減額を宣言していたほど。
そんな中、PBSが行った米国世論調査によれば、ウクライナ支援について 「適切な援助」という意見は42%。「不十分」という回答は23%。
「支援金を払い過ぎ」と回答したのは過去最多の32%で、その内訳は共和党支持者の約半分に当たる47%と 民主党支持者の16%。
ウクライナ支援は環境問題、中絶問題、銃規制、移民問題等と並んで、民主・共和党支持者の間で意見が分かれる問題になりつつあるのだった。
週末には中国のシー・ジンピン主席が和平案を提案したことも報じられているけれど、ウクライナ側はロシアによる全面撤退以外は応じない姿勢。
ウクライナ国民の間ではそれに加えて、プーチン大統領及びロシア軍に対する戦争犯罪追及を望む声が高まっているのだった。
クリプトカレンシー、チャイニーズ・アルファの時代!?
今週水曜に予想通り0.25%更に引き上げられたのがアメリカの金利。
アメリカでは金利が1%上昇すると、連銀のポートフォリオから1兆5000億ドルが消える金融引き締めが行われる計算。
連銀は2023年に1兆1000億ドルのQT(Quantitative Tightening/金融引き締め)を見込んでいることから、年内にあと2回〜3回の利上げが行われる見通しになっているのだった。
逆に先週金曜日に 920億ドルを市場に投入する大規模な金融緩和に踏み切り、
コロナで落ち込んだ景気の建て直しに出たのが中国。
アメリカでも 2020〜2021年にかけての 株式とクリプトカレンシーの ブル相場を支えたのは、 コロナ感染の景気刺激策で政府によって ばら撒かれた助成金。
この時にロビンフッド等のアプリを通じて初めて投資をしたアメリカ国民が 若い世代を中心に非常に多かったのは周知の事実。
今、同じことが起ころうとしているのが中国で、特に今年6月1日からは香港市場で一般国民によるクリプトカレンシー取引が可能になるとあって、
今年に入ってからクリプトカレンシーの世界で起こっているのが中国ブーム。
中国では2019年からビットコインのマイニングに対する圧力が高まり、2021年9月からは
全てのクリプトカレンシーのトランズアクションが禁止されてしまったけれど、2017年のビットコインのブル相場をリードしたのは他でもない中国。
そのため2024年春に見込まれるビットコインの次の半減期以降に始まると見込まれるブル相場は、 再び中国、韓国、台湾、そして日本を含めたアジア主導になるという見方が非常に有力なのだった。
その期待感に火をつけているのが AI絡みを含む 中国関連コインの爆上げ状態。中でもCFX(Conflux)は今週半ばまでの過去1週間に 約600%も値を上げるパラボリック相場。
そんな中、欧米のクリプト・トレーダーが着眼し始めたのが 次にどのコインが上がるかを的確に発信する中国人インフルエンサー達によるツイート。
そのアドバイス通りにコインを買って本当に儲け始めた人々が その成果をツイートしたことから、
ここへきて 突如1000人単位でフォロワーを増やしているのが中国人インフルエンサー。
もちろん彼らのツイートは中国語なので、欧米人はそれをグーグル翻訳する必要があるけれど、ツイートされた数時間後にはコインが爆上げというケースが多く、
時差と翻訳の手間で 乗り遅れてしまう西側諸国のトレーダーは少なくないとのこと。
実は私も今週、中国人ツイートで お薦めの 聞いたこともなかった無名コインを 興味本位で 100ドル分購入してみたところ、3〜4日後には120ドル以上になったので、
情報にはある程度の信頼性があるようなのだった。
いずれにしても次のブル市場はアジアがリードするということで、今後のクリプト市場では メタヴァース、ゲーム、AIコインの中から 100倍以上に値を上げるメガ・コインが出ると期待されているけれど、
AI関連のコインについてはブームに乗って登場しただけで、稚拙なテクノロジーや実体が伴わないものが多いと指摘されるのが実情。
それでもブル相場になると、マーケット・キャップが小さいクズ・コインが 大きく値を上げることが決して珍しくないことから、
クリプトカレンシーの相場サイクルを理解している人達の間で 既に始まっているのが 未来の100Xコインの見極めなのだった。
このように中国がクリプト政策を転換させ、金融緩和に動いているのに対して、アメリカはFTXの破綻をきっかけにクリプトカレンシーに対する理不尽な規制の押し付け、及び金融引き締めで
正反対に動いているけれど、今やマネー・サプライはグローバルな時代。投資家の間では、
「ブル市場を迎えるための資金がアメリカから出ようと、中国から出ようと関係ない」とばかりに、中国及び 日本の引き続きの金融緩和政策を大歓迎の姿勢。
そしてマネー・サプライがグローバルであるだけに 聞かれるのが「中国や日本が金融緩和をし続ける限り、連銀がどんなに利上げをしようとアメリカ経済は減速せず、インフレが進む」との意見。
そのクリプト市場は、これまでは S&P500のチャートと連動して動くと見られてきたけれど、今では香港市場との連動性の方が 高まりつつあることが指摘されるのだった。
ヴィーガン・ミート・ブームが早くも終わっている これだけの理由
アメリカで2018年を前後して販売がスタートし、2020年に売上のピークに達したのがヴィーガン・ミート。
”プラント・ベースド・ミート”、”アルタナティブ・ミート”、”フェイク・ミート”と
呼び方は様々であるけれど、ヴィーガン・ミート・ブームの目玉になっていたのは ビヨンド・ミート と インポッシブル・フードの2社。
それぞれにファスト・フード・チェーンと提携して、ビヨンド・バーガー、インポッシブル・バーガーを展開。
大きな話題を集めていたけれど、ここへ来て冷め始めたのがヴィーガン・ミート需要。
それは株価にも反映されていて、2019年春に上場されたビヨンド・ミートの株価は ピーク時には250ドルを付けたものの、2021年夏から徐々に下落が進み、
今週末の価格は ピーク時の10分の1以下の19.21ドル。
売上の見地から ヴィーガン・ミートがピークに達したのは2020年、コロナウィルスとロックダウンの影響で、肉がスーパーの棚から消えてしまった際。
ヴィーガン・ミートは肉の2〜4倍の価格であるものの、当時景気刺激策で支給された補助金で日頃より家計が潤っていた人々が
お値段を気にせずヴィーガン・ミートを購入していたのがこの頃。
同時にファスト・フード・チェーンと提携したヴィーガンバーガー・メニューも人気を博したものの、
2021年に入ると 売上が前年比で10%ダウン。
2022年にはビヨンド・バーガーが 従業員20%を解雇。インポッシブル・フードも
昨年10月に従業員6%を解雇。さらに今年中に20%の人員削減を計画中で、
両社ともコスト削減に余念がない状況なのだった。
ヴィーガン・ミートの将来がさほど明るいとは言えない要因は大きく分けて5つで、1つ目は現在のインフレ。
物価高が家計を圧迫しているので、本物の肉よりも遥かに割高なヴィーガン・ミートは真っ先にショッピングリストから外される存在。
2つ目の要因はアメリカでヴィーガン人口が増えていないこと。米国内のヴィーガン&ヴェジタリアン人口は2012年の段階で
全人口の2%。それが2020年までには5〜6%に増えたと言われるけれど、その中に多数含まれているのが
「フェイクであろうと肉を食べない」というハードコアなヴィーガンや、
ヴィーガン・ミートに含まれるケミカルを嫌う人々。そのためヴィーガン・ミートを定期的に購入するのはヴィーガン&ヴェジタリアン人口の
半分程度と言われるのだった。
3つ目の要因はそのケミカルの影響で、長期的にフェイク・ミートを食べ続ける健康上のメリットが定かでないことから、健康志向の人々にさほどアピールしないこと。
4つ目は畜産業を農業に切り換える際に環境に与える悪影響が明らかになり、環境問題の見地からヴィーガン・ミートを支持していた人々の熱が冷めてきていること。
そして5つ目の要因は、ブームが去って頭を冷やしてみると 「やはりフェイク・ミートは味が悪い、物足りない」ということに誰もが気付くこと。
そもそもヴィーガン・ミートのブームを支えたのは、ヴィーガン人口よりも ”フレキシタリアン”と呼ばれる
肉を食べるけれど、その摂取量を減らそうとしていた人々。
フレキシタリアンはお酒を飲むけれど、飲む機会を減らしている”ソーバー・キュリオス”と同じコンセプトであるけれど、
フレキシタリアンがフェイク・ミートへの関心を失いつつあることは業界にとっては大きな打撃。
同じ植物ベースでも一足先に登場していた乳製品に関しては アーモンド・ミルク、ココナッツ・ミルク、ソイ・ミルク等がすっかり市場に定着してシェアを拡大しており、
チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、生クリーム等の関連商品、及びそれらを使ったクッキー、マフィン等のベイクド・グッズも着実に売上を伸ばし続けているのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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