Nov. 28 〜 Dec. 4 2022

Phony Political Drama Continues, Etc."
共和党内トランプ崩しのシナリオと政治の茶番!?、ETC.


今週のアメリカでは年間最大のショッピング売上を記録するブラック・フライデーとサイバー・マンデーの数字が発表されたけれど、 その結果 ブラック・フライデーの売上は91億2000万ドルで 史上最高を記録。とは言ってもこの記録更新はもっぱらインフレによる物価高によるもの。 サイバー・マンデーも113億ドルの史上最高額であったけれど、こちらはインフレだけでなく、需要の拡大も伴っての記録更新。
ブラック・フライデーからサイバー・マンデーまでの4日間にショッピングをしたアメリカ人の数は1億9500万人で、ブラック・フライデーからクリスマスのまでの期間に アメリカ国内で発送・流通されるパッケージの数は毎日約9000万。たとえインフレでもアメリカの消費が一向に衰えない気配を示していたのだった。
そして金曜にはアメリカの11月の雇用統計が発表されたけれど、それによれば11月にアメリカで生み出された仕事の数は予測を大きく上回る26万3000。 11月にはフェイスブック、ツイッターの大量解雇を含め、IT企業200社がレイオフを行ったにも関わらず、失業率は10月に続いて3.7%と歴史的な低さ。 そんな雇用の堅調ぶりに加えて、給与も インフレ率で相殺されてしまうとは言え 5.3%アップ。 消費にも雇用にも陰りが見えないことは、利上げがこの先もまだ続くことを意味するだけに 決して朗報とは言えないのが現段階なのだった。



サンチェス擁立に向けて? 共和党内からのトランプ崩しのシナリオ


サンクスギヴィングの休暇直後から大きな物議を醸していたのが ラッパーで現在は”Ye”と名乗るカニエ・ウエストが、白人至上者 ニック・クエンテス(写真上中央)を連れて トランプ前大統領の私邸、マー・ラゴを訪れて ディナーを共にしたニュース。カニエ・ウエストは11月にアンチ・セメティック(反ユダヤ)の暴言を繰り返して、 アディダスや自分のエージェントを含む様々なビジネスから四面楚歌状態になっていたけれど、 その彼とホロコースト否定論者、タリバン支持者でもあるクエンテスという最強の反ユダヤ・コンビを自宅に招いたトランプ氏に対して起こったのが民主共和の党派を問わない猛烈なバックラッシュ。
カニエのマー・ラゴ訪問目的は、2024年の大統領選挙に出馬予定の彼がトランプ氏を自分の副大統領候補になるようオファーすることで、 当然のことながら 腹を立てたトランプ氏は自らのソーシャル・メディア、トゥルース・ソーシャルを通じて 「カニエが自分にアドバイスを求めたから会うことにしただけ。クエンテスはカニエの連れで、自分は招待していない。誰だか知らない」と弁明。 しかしクエンテスは2020年の大統領選挙の不正を猛烈に訴えた ”トランプ ワールド” のセレブリティ。 メディアも政界関係者も「トランプ氏が知らない筈はない」と断言する存在。やがてトランプ氏は問題のディナーについて “A total setup”、 “He tried to f#%k me”、すなわち「カニエに嵌められた」と語っていたことが報じられたのだった。

実際にトランプ氏が”嵌められた”のは事実だったようで、その仕掛け人として名乗りを上げたのが クエンテス同様に白人至上主義者として広く知られるミロ・ヤノプロス。 彼はトランプ氏の元アドバイザーだったスティーブ・バノンがトップを務めていた極右ウェブサイト、ブレイトバート・ニュースのエディター時代に知名度を上げ、 今年6月からは超トランプ派で知られる下院議員、マージョリー・テイラー・グリーン(写真上右)の事務所で働いてきた人物。
ヤノプロスはディナーをプランした目的について 「トランプが誰と接触を持つべきかを理解しない側近のせいで、逸材を見落としていること教えたかっただけ」、 「トランプを惨めにするためやった」とコメントしたけれど、彼はカニエの大統領選挙キャンペーンのマネージャーを務める予定。 しかも超トランプ派であるはずのグリーンが問題のディナーの計画を支持したという噂が流れたことから、彼女は突如トランプ派の間で”マージョリー・トレイター(裏切り者)・グリーン”と呼ばれるようになっているのだった。
グリーン本人はこの噂を否定しているものの、共和党内に決して少なくないのが2024年の大統領選ではフロリダ州知事、ロン・ディサンティスの支持に回りたいトランプ派。 というのもトランプ氏は76歳という年齢で既に政治家として先が見えている存在。一方のディサンティス州知事は未だ44歳の若さ。 通常大統領選のライバルになる存在に対しては、叩けるところで叩いておくものであるけれど、トランプ氏のマー・ラゴでのディナーについては、 ディサンティス州知事が不自然なほど沈黙を守っている点に着眼するメディアやソーシャル・メディアは決して少なくないのだった。



ツイッター今週の物議とドラマ


アメリカの大統領選挙は、民主・共和両党から1人の候補者が擁立されるまでのプロセスで、党内の候補者同士がアグリーな闘いを見せるのは全く珍しくないこと。 2016年の大統領選の際にはトランプ氏に有利に働いた様々な裏工作や根回しの矛先が、今度はトランプ氏に向けられて サンチェス候補擁立で共和党内が足並みを揃えようとしても 全く驚くべきではないのが実情。
それでも共和党内から危惧の声が聞かれるのが、その過程でカニエ・ウエストという反ユダヤ勢力の新リーダーを生み出している問題。 アメリカではトランプ政権誕生以降、人種差別が盛り上がっているのは周知の事実であるけれど、その矛先としてヘイトクライムが急増しているのがユダヤ人、アジア人、LGBTQ。 中でも反ユダヤ勢力は、カニエ・ウエストの反ユダヤ発言、その後の”キャンセル・カニエ”のムーブメントの反動で大きく盛り上がっているのだった。
そのカニエは今週、陰謀説論者で知られるアレックス・ジョーンズのポッドキャスト、Info Warに出演。ちなみにアレックス・ジョーンズは2012年のサンディフック小学校で起こった銃撃事件が狂言だと 主張し続けたことから、複数の名誉棄損裁判で有罪判決を受け、その10億ドル以上の賠償金が支払えないことから破産申請をしたばかり。 トランプ氏のツイッター・アカウント永久停止処分を解除したイーロン・マスクでさえ「アレックス・ジョーンズだけはツイッター復帰を認めない」と語ったほどの筋金入りの陰謀論者。 Info Warでヒットラーを賞賛するコメントをしたカニエは、その直後に自分の大統領選挙キャンペーンのロゴマークをツイッターで発信。それが事もあろうに ユダヤ教のシンボルである ダビデの星の中央にナチス・ドイツのスワスティカ(かぎ十字)をフィーチャーしたものであったことから、カニエの理解者であり友人であるイーロン・マスクがカニエのツイッター・アカウント停止を発表。 そのメッセージは 'I tried my best'というカニエへの温情が感じられるものになっていたのだった。
その一方で週末にイーロン・マスクが「これぞフリースピーチ」と言わんばかりに公開したのが、ハンター・バイデンの中国・ウクライナ政府との癒着疑惑などについて、2020年の大統領選挙前に報じたNYポスト紙の記事に関する マット・タイビ(ジャーナリスト、写真上右)のツイートがバイデン・チームの要請で削除されていた様子を証明する社内ファイル。これはハンター・バイデンが修理に出したラップトップが情報源であったことから、 当時のツイッターやフェイスブックでは「プライバシー・ポリシーに反するハッキング・マテリアル」の扱いで削除されたと言われていたもの。 ハンター・バイデンについては武器の不法購入と脱税については司法省が立件するに十分な証拠を握ったと言われ、2023年1月に共和党が下院で過半数を占めた直後から 追求が始まると見込まれるのだった。
ツイッター・ポリシーへの政府関与はイーロン・マスクによる買収のプロセスで既に明らかになっていたことではあるものの、 それをパブリシティ獲得に長けているマスクが”遂に公に暴露したヒーロー”的演出でスキャンダル性を煽っていたのがこの公開。 これが果たして民主党内のバイデン下ろしと関わっているかは定かではないけれど、2024年の大統領選でロン・ディサンティスが共和党候補として擁立された場合、 「バイデン氏では勝てない」という声が民主党内にも非常に多いのは紛れもない事実なのだった。



その他、今週のキャッチアップ


★ バレンシアガ・バックラッシュ
ここ2週間、猛然とバックラッシュを受けていたのがバレンシアガの2023年スプリング・コレクションのホーム&子供グッズの広告写真。見る人が見れば何が悪いのかが分からない広告フォトであるけれど、 子供がSMコスチュームを着用したテディ・ベアを手に持ち、アルコール・グラスを並べたテーブルの前に立つ不適切な演出に気付いたテキサスのインフルエンサー、ブリットニー・ヴェンティ(23歳)が その問題点をTikTokビデオで最初に指摘したのが11月21日のこと。そのビデオは320万のビューイングを記録。以来、山火事のようにメディア&ソーシャル・メディアで広がったのが 「児童をセクシャライズしている」というバレンシアガに対する猛批判。
その途端にツイッターとTikTokでヴァイラルになったのが#cancelBalenciagaのハッシュタグ。これについてはバレンシアガの広告に出演するキム・カーダシアンを含む複数のセレブリティも ソーシャル・メディアでその不適切ぶりを攻撃。バレンシアガは当初、セット・デザイン会社やフォトグラファーに責任を擦り付けていたものの、 今週クリエイティブ・ディレクターのデムナ・ヴァザリアが謝罪声明を発表しているのだった。 そこに行きつくまでに 反ユダヤ発言でバレンシアガとの契約が打ち切られたカニエ・ウエストが バレンシアガを批判した元妻キム・カーダシアンを批判し、バレンシアガの肩を持つ様子や、 バレンシアガ・ブティックに抗議と嫌がらせの落書きがされる事件などがヘッドラインを飾り続けたことから、獲得したパブリシティやブランド知名度向上については 広告業界で「プライスレス!」と言われる効果をもたらしていたのだった。

★ ウィリアム VS. ハリー の ケネディ・バトル in US
今週ボストンを訪れたのがプリンス&プリンセス・ウェールズことウィリアム王子&キャサリン妃。ところが夫妻の到着したその日に、ウィリアム王子のゴッド・マザーの人種差別発言が 英米メディアで大きく取り沙汰され、それと時を同じくして公開されたのがハリー王子&メーガン・マークル夫妻のネットフリックス・ドキュメンタリーの初トレーラー。 その内容は異なる立場から人種差別と闘うようになったハリー&メーガンが英国王室に根深い人種差別と向き合う姿。 そんなトレーラーを このタイミングでリリースされたことで、当然の事ながら眉を吊り上げたのがバッキンガム宮殿。
ウィリアム VS. ハリーの対決ムードはアメリカでも顕著で、それに微妙に関わっていたのがアメリカのロイヤル・ファミリー、ケネディ家。 ウィリアム王子は多忙なスケジュールの中、ジョン・F・ケネディ・プレジデンシャル・ライブラリーを訪れ、ケネディ大統領の娘で元日本大使の キャロライン・ケネディ・シュロスバーグ、及びその息子でいずれ政界デビューを果たすジャック・シュロスバーグと対面して、英米のロイヤル・ファミリーの協調をアピール。 さらにウィリアム王子は12月2日金曜に環境問題に取り組むアースショット・プライズのガラを英米のセレブリティを多数招待して自らホスト。これまで ソーシャル・イベントの主宰とは無縁だったウィリアム王子が見せた初の晴れ舞台になっていたのだった。
一方のハリー&メーガン夫妻は、12月6日に同じケネディ家でも ジョン・F・ケネディ大統領の甥に当たるロバート・ケネディJr. 及び彼の妹であるケリー・ケネディが主宰する ロバート・F・ケネディ ヒューマン・ライツのガラで、リップル・オブ・ホープ・アワードを ウクライナのゼレンスキー大統領らと共に受賞することになっており、NYで行われる同ガラのチケット代は最低で2500ドル、最高額は100万ドルという ファンドレイジング・イベント。ハリー&メーガン夫妻はその功績よりもチケット売上の話題作りのために受賞者に選出されたとも言われ、ロバート・ケネディJrは2人の選出について「自分の関知するところではない」とコメントしているのだった。 しかし妹のケリー・ケネディはハリー&メーガンをひいきにしているようで、ウィリアム王子とジョン・F・ケネディ大統領ファミリーとの対面は、そんなハリー王子とロバート・ケネディ家のコネクションを好ましく思わない バッキンガム宮殿によってアレンジされたと噂されるのだった。
ハリー&メーガンが住むカリフォルニアの超富裕層、及び政財界の重鎮は2人に対してかなり批判的であることが伝えられるけれど、 インサイダーの証言によれば ハリー王子&メーガンは、来年1月に出版されるハリー王子による英国王室暴露本と、ネットフリックスのドキュメンタリーの公開が終わった後には、 時間をかけて英国王室との良好な関係に取り組むとのこと。本人達は英国王室との関りが自分達の商品価値に重要であることを理解していると言われるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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