Nov. 14 〜 Nov. 20 2022

Twitter, FTX Chaos Continue, ETC.."
今週も続くツイッター&FTXのトラブル、スウィフティーズの怒りに遂に司法省が…、ETC.


今週のアメリカは、破綻したクリプト取引所のCEO、サム・バンクマン・フリード(以下SBF)、イーロン・マスク、そしてドナルド・トランプの3人に報道時間が集中していたけれど、 火曜日に今回で3回目に当たる 2024年大統領選への出馬表明を行ったのがトランプ氏。 その63分に渡るスピーチは、かつてのトランプ・メディアの代名詞であったFOXニュースが ライブ放映中に2回も司会者とコメンテーターが遮っており、 遮った司会者は中間選挙前まで超トランプ派で知られたショーン・ヘネシー。 実際に「スピーチ内容が退屈になって、多額の寄付をしていたドナーや共和党現職議員が殆ど姿を見せなかった」と指摘されたのが今回のトランプ氏の出馬宣言。
これによって益々ロン・ディサンティス フロリダ州知事が共和党大統領候補として有力という印象が強まったけれど、 それでもトランプ氏に未だ可能性があるのは紛れもない事実。トランプ氏出馬表明のお陰で再選出馬がし易くなったバイデン大統領であるけれど、 民主党内で徐々に進んでいるのが世帯交代。今週には過去19年に渡って民主党下院のトップを務めて来たナンシー・ペロシが 議員は辞職しないものの、 議長の席を退くスピーチをしており、代わりに民主党下院リーダーの最有力候補として浮上したのがNYブルックリン選出のハキーム・ジェフリーズ(写真上、左上段 52歳)。彼は紛れもなく民主党の新しいスターと言える存在なのだった。
ところでトランプ氏の出馬宣言の会場に姿を見せず、選挙キャンペーンにも加わらない意向を表明したのが娘のイヴァンカ・トランプ。 「育児に専念したい」という理由が説明がされていたけれど、インサイダーによれば本当の理由は トランプ氏が任期を終えた後も イヴァンカがかつての友人達から村八分状態にされているためで、 子供達の将来のためにも人脈復活に取り組もうとしているとのこと。
金曜にはマーリック・ガーランド司法長官が、2020年1月6日の議会乱入、及び政府の最高機密書類をマー・ラゴに持ち出した容疑で 特別検察官を任命してトランプ氏に対する正式な捜査を開始すると表明。 元司法省関係者は特に書類持ち出しについては トランプ氏が刑事責任が問われる可能性が高いと見ているのだった。



ツイッター、メディアとしての重要性が増す中で内情はガタガタ!?


10月27日にイーロン・マスクによる買収が成立して以来、毎日のようにヘッドラインを飾るニュースに事欠かないツイッターであるけれど、 2週間前にEメールで3500人の従業員を解雇したのに続いて、週明けにマスクが解雇したのが数千人のコントラクター。 そして水曜日に残った全社員に送付されたのが、このままツイッターで働きたければ長時間労働を厭わず、毎日ハードに働く意志表示をするようにと求めるEメール。 木曜の午後5時までに意思表示をしなかった社員に対しては、3ヵ月分の給与支給と共に解雇を言い渡すという脅し文句も添えられていたけれど、 マスクにとって計算違いだったのは、予想より遥かに多くの従業員がこのEメールを無視、もしくは辞職を選んだことで、 ツイッター・インサイダーによれば週末の段階で残留の意志を明確にしたのは僅か1000〜1200人程度。
そんな社内のアンチ・イーロン・ムードを象徴するかのようにツイッターの本社ビル外壁のニュース・ティッカーには イーロン・マスクについて「bankruptcy baby」、「supreme parasite」 「apartheid profiteer (アパルトヘイト・プロフィッティアー:マスクはサウス・アフリカのアパルトヘイト時代、及びそれ以降に黒人層を奴隷扱いするエメラルド採掘ビジネスで 巨額の財産を築いたファミリーの出身)」、「space Karen」といった マスクに対する社員の不満をぶちまけるような内容が映し出されていたのだった(写真上左)。
そうなってしまったのは、8ドルの料金を支払った登録者にブルーの認証マークを付けるツイッター・ブルーのシステムが なりすましの偽者に悪用され、 「イーロン・マスクは自分が何をしているか分かっていない」と批判した有能なエンジニアを マスクが怒りに任せてあっさり解雇してしまい、 そのせいでプライバシー部門のエグゼクティブを含む マスクが目を掛けていたスタッフが辞職する事態を招いたことが1つ。 加えて火曜日には全社員へのメッセージでマスクがツイッター倒産の可能性を示唆して社内の不安を煽っており、それらが反発を招いた中で社員に迫ったのが「ハードワークを厭わない」という意志表示。 またマスクは身体が不自由な社員、在宅勤務を条件に契約した社員に対しても週40時間のオフィス勤務を義務付けたことで 今週には訴訟を起こされていたけれど、 木曜の段階で あまりに社員のからの残留の意志表示が少なかったことを受けて、「部分的な在宅勤務を認める」と珍しく妥協の姿勢を見せていたのだった。

社内はガタガタとは言え マスクによる買収が決まってからというもの、ツイッターのユーザー数自体は増え続けており、人種差別やヘイト・メッセージと共に増えて来たのが メインストリーム・メディアでは決して報じられない事実や内情を暴露するツイート。 YouTubeやフェイスブックでセンサーシップに引っかかるような内容でも、 ツイッターであれば大丈夫と考える人々が どんどん情報を発信し始めているのが現在のツイッター。
先週破綻したFTXについても、社内スタッフや CEO サム・バンクマン・フリード(以下SBF)を個人的に知る人々がその内情を暴露するツイートがヴァイラルになる一方で、 大手メディアがFTXとSBFに同情的な記事を掲載する様子には 若い世代を中心に怒りの声が上がっており、 今週すっかりメディアとしての信頼を失墜していたのがNYタイムズ紙やフォーブスを始めとするメインストリート・メディア。 「ツイッターの方が情報が早くて、正確」という認識が一気に高まったけれど、 にも関わらずツイッターが存亡の危機に瀕していることを露呈していたのが今週の顛末。 社員の間では#RIPTwitterのハッシュタグがヴァイラルになり、 ツイッターを沈み行くタイタニックに例えるツイートが溢れていたのだった。

しかしパブリシティ獲得に長けているイーロン・マスクは、金曜夜から 「トランプ前大統領のツイッター・アカウント停止処分を解除するか否か」のアンケート調査を ツイッター上で開始し、土曜日夜に復活させたのがトランプ氏のアカウント。 数ヵ月前には「アカウント停止が解除されてもツイッターには戻らず、 自らスタートしたトゥルース・ソーシャルでの発信を続ける」と宣言をしていたトランプ氏であるけれど、トゥルース・ソーシャルのユーザーは僅か100万人。 大統領選挙で勝つには、どうしてもツイッターへのカムバックが不可欠と言えるのだった。



まだまだ出て来るFTXの問題、不祥事、どうしようもない内情…


今週もメディアのフォーカスが集中していたのがFTXとその元CEO、SBF。今週には破産管財人としてジョン・ジェイ・レイが新CEOに就任。彼は2001年に粉飾決済で破綻したエンロンを始めとする多数の企業倒産を扱って来た 40年の経験を持つベテランであるけれど、その彼が「未経験で無知な小人数グループが、これほどまでの多額の資金をいい加減に扱ったケースは見たことが無い」と声明を出したほど資金管理がされていなかったのがFTX。
「FTXには最低55億ドルのキャッシュがある」というSBFの言い分とは裏腹に、実際のキャッシュは僅か5億6400万ドル。FTXには資金の流れを証明する資料が殆ど残っていないだけでなく、 多額のエクスペンスの申請が絵文字を交えてチャットで行われるのは当たり前。果たして社員が何人いるかさえも企業として把握していないという驚くべき状況。 SBFは自閉症を患っていたことがNYタイムズの記事で明らかになっているけれど、日頃からその治療薬アドデラルやアンフェタミンを手が震えるほどヘビーに服用していたようで、 まともな決断や判断を下せる状況では無かったとも言われるのだった。

先週から徐々に明らかになってきたのがSBF、及びFTXが政界の強力なバックアップに支えられていた様子。SBFは2020年の選挙でジョージ・ソロスに次ぐバイデン大統領の大口ドナーであったけれど、 SBFの両親 バーバラ・フリード、ジョゼフ・バンクマンは共にスタンフォード大学法律学校の教授であり弁護士。ジョゼフ・バンクマンは 民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員が提出した課税法案の起草を担当した税金の専門家でもあり、 そんな両親とSBFの兄、ゲイブ・バンクマン・フリードは 複数のPAC(Political Action Committee)を設立しては、 民主党に多額の寄付をしてきた政界では有名なファミリー。伯母のリンダ・フリーマンはコロンビア大学メールマン公衆衛生学部長であり、ワールド・エコノミック・フォーラム(以下WEF)のメンバー。 毎年スイスのダヴォスでビリオネアを集めた会合をすることで知られるWEFは、”パートナー”であるFTXから多額のキャッシュを受け取っておきながら、FTX破綻以降は そのウェブサイトからFTX絡みのコンテンツを全て削除しているのだった。
FTXはそのトップ・エグゼクティブのライアン・サラメを通じて共和党にも2400万ドルの寄付をしており、このように民主共和両党にお金をばら撒くのは特に大手企業にとってはごく一般的なこと。
そのFTXの顧客資金を不当にハイレバレッジのトレードに流用していたアラミダ・リサーチのCEOで、SBFの元ガールフレンドと言われるキャロライン・エリソン(写真上左、28歳)はスタンフォード大学卒で、 SBFがMIT卒業後に努めたジェーン・ストリート・キャピタルのトレーダー仲間。 彼女の父親は MITの経済学部長 グレン・エリソンで、現在のSEC(証券取引委員会)会長 ゲーリー・ゲンスラーの元上司。 バイデン政権誕生以降、ゲンスラーをSEC会長にするための根回しをしたと言われるのがSBFのファミリーで、ゲンスラーの娘が現在働いているのは前述のエリザベス・ウォーレン上院議員のオフィス。
下院でクリプトカレンシーへの政府規制について証言を行うほど業界の第一人者と見なされていたSBFは、ゲンスラーと規制についてのフェイス・トゥ・フェイスのミーティングも行っており、 本来一般投資家を守らなければならないSECとゲンスラーが SBFやその家族と親しくするあまり、不正を野放しにしていたことについては 当然のことながら批判が殺到していたのだった。

現時点で 危惧されているのはFTXの破綻が何処まで大きく影響を及ぼすかで、シンガポール政府が所有する投資会社 セマテクがFTXに投じた2億7500万ドルを始め、シリコン・ヴァレーのVC セコイア・キャピタルが 投じた2億1000万ドル、 プライベート・エクイティ、トーマ・ブラボーが投じた1億3000万ドル、カナダのオンタリオ州教員年金プランの9500万ドル、それ以外にも世界最大のアセット・マネージャー、ブラックロックや日本のソフトバンク、 アブダビ・インヴェストメント・オーソリティ等が それぞれに認めていたのがFTXに行った投資が今やゼロに等しいこと。 またクリプト融資会社の最大手、ジェネシス・グローバルもFTXに投じた1億7500万ドルの回収不可能によるキャッシュ不足に陥り、今週引き出し停止と新規貸し出し停止を発表したばかり。 このジェネシス・グローバルの親会社、デジタル・カレンシー・グループ(通称DCG)は、クリプトカレンシーのニュース・メディアで、FTX破綻のきっかけとなった記事を発信した ”コインデスク” を運営。 それ以外にも世界最大のクリプト・ファンドを運営するグレースケール・インヴェストメントなど、数十社を傘下に収めるコングロマリット。 ソフトバンクのヴィジョン・ファンド2やグーグルの親会社、アルファベットを含む 数多くの大手企業&投資家からの出資を受けているけれど、月曜までに10億ドルの資金を調達しなければジェネシス・グローバルが直面するのが倒産の危機。
ジェネシス・グローバルの問題は フェイスブックのアイデアを盗んだとしてマーク・ザッカーバーグを訴えた賠償金、6500万ドルをビットコインに投じてビリオネアとなり、 自らクリプトカレンシー取引所をスタートしたタイラー&キャメロン・ウィンクルボスにも飛び火。彼らが経営するジェミニ・エクスチェンジの融資プログラム、 すなわちユーザーが所有する暗号通貨を貸し出して利息収入を得る ”Gemini Earn”のパートナーになっていたのがジェネシス・グローバルなのだった。

今年5月にFTXが経営危機から救って買収した ブロックファイも現在倒産申請秒読みの段階。そもそもFTXがブロックファイを救済したのは、 FTXがいくらでも発行できるFTTコインを使って ブロックファイを表面的に救済することにより、FTXがブロックファイの顧客資金を自社運営に流用するのが目的だったと言われ始めたのが今週。
元トランプ政権の広報部長でゴールドマン・サックス出身のアンソニー・スカラムーチが経営する投資会社、スカイブリッジ・キャピタルにしても 今年9月にFTXからの4500万ドルの融資と引き換えに FTXが発行するFTTコイン1000万ドル相当を購入しているけれど、これもFTXがスカイブリッジのキャッシュを狙っていたという見方が有力。 FTTコインの価格は9月の段階で28ドル、今週末の段階では95%値を下げて1.4ドルとなっており、スカイブリッジが投じた1000万ドルは僅か50万ドルになっているのだった。
それとは別に先週末にFTXがハッキングの被害に遭い、FTXが所有していたクリプトカレンシーの3〜5億ドル相当が消えてしまったけれど、 これをSBFに命じて行わせたことが明らかになったのが 現在彼の身柄を拘束しているバハマの証券委員会。バハマ政府はハッキングで獲得したFTXのクリプトカレンシーを全てイーサリアムに替えており、 現在バハマ政府は世界最大のイーサリアム・ホルダー。食うか食われるかという状況が政府レベルにも波及しているのだった。



SBF、政財界がクリプト業界に送り込んだ刺客?


今となってはクリプト界の輝くライジング・スターではなく、政界からクリプト界に送り込まれた刺客とさえ見なされるようになったのがSBF。 事実、政界と深く関わっていたSBFは今後のクリプトカレンシーに対する政府規制のドラフト案提出を請け負っており、 その内容はディセントラリゼーションのブロックチェーンを政府の管理下に置き、FTXの利益を守る というクリプトカレンシーの存在意義を完全否定するもの。 そのため今回のスキャンダル以前から、クリプト界からの大顰蹙を買っていたのがSBF。加えて彼が未だに逮捕されず、メインストリーム・メディアが彼に対して手温い批判で済ませていることもあり、 「SBFが政府の差し金で クリプト界に対する一般大衆の信頼を失墜させ、政府による厳しい規制を押し付けるためのお膳立てをした」という声は日に日に高まっている状況。

そんな中浮上していたのが 「政界に深く関わるファミリーの一員だからと言って、何故経営の素人で 未だ30歳のSBFに対して 会計資料の提出も求めないまま 大企業が次々と多額の資金をFTXに投じたのか?」、 そして「政治家やVC、セレブリティらが 何故彼を盲目的に信頼したのか?」という疑問。 その最大の理由と言われるのが アメリカ人であるSBF、及び彼が経営するFTXを 業界最大手のバイナンスに替わるクリプト界のメジャー・フォースに仕立て上げようという政財界の目論みと、そうなるであろうという憶測。 CBDC (中央銀行が発行するデジタル・カレンシー)試験段階を目前に控える米国政財界では、デジタル・カレンシー時代もドルが世界の基軸通貨となるのは暗黙の了解事項。 そこで邪魔になって来るのが中国生まれで現在カナダ国籍を持つチャンペン・ザオ(以下CZ)がCEOを務める世界最大のクリプト取引所、バイナンスの存在。
これほどまでにSBFとFTXの不祥事が明らかになっても、今週のNYタイムズを始めとするメインストリート・メディアでは 今回の破綻の直接的なきっかけを作ったバイナンスとCZを攻める論調が多く、 ロイターのように中立に見えるメディアでも 過去に何度となく行われてきたのがバイナンスとCZに対するバッシング。 バイナンスがこれまでに米国司法省や国税局からの取り調べの対象になってきた経緯も SBFや彼をバックアップする勢力によるバイナンス潰しの一環。 逆にSBFとFTXが恐ろしいほどいい加減な経営状態でも 盲目的に信頼されてきたのは、寄付や献金と引き換えに 後ろ盾から根回しや賞賛、人脈を獲得してきたため。 しかし実際にはバイナンスはFTXより遥かにまともで 資金力があるビジネス。少なくともクリプト界においては今回のスキャンダルで益々信頼が増しているのだった。

FTXにアカウントを持っていた一般投資家の間では今週、FTXをプロモートしたセレブリティを相手取った大規模な集団訴訟が進んでおり、 そのターゲットにはFTXのCMに登場したNFLクォーターバックのトム・ブレイディ、モデルのジゼル・ブンチェン、コメディアンのラリー・デイヴィッドや、グローバル・アンバサダーを務めた元NBAシャキール・オニール、テニスのナオミ・オオサカ等が含まれているのだった。 その被害者グループの代理人を務めるのは、アメリカの法曹界で最も大きなパワーを持ち、エプスティーン・スキャンダルでアンドリュー王子を訴えた被害者、ヴァージニア・ギフレの代理人も務めて 多額の賠償金を勝ち取ったデヴィッド・ボイス。 このことからも言えるのがFTXのスキャンダルは規模が大きいだけでなく、何から何までオールスター・キャスト。 今後も 未だどんな展開になるか分からない要素を多々秘めているのだった。

スウィフティーズの怒りに遂に動いた司法省

今週火曜日に発売がスタートしたのが、テイラー・スウィフトの全米20都市を回るツアー・チケット。2018年以来のコンサートとあって、スウィフティーズと呼ばれるテイラーのファンは発売前から チケット入手に命がけの様子をソーシャル・メディアにポストしていたのだった。 ちなみに火曜日に販売されたのはスウィフティーズを対象にした優先チケットで、日頃からテイラーをサポートしているファンがIDコードを使って購入することにより、転売業者のロボットにチケットを取られないように 配慮されていたはずのシステム。ところがファンのアクセスが殺到してダウン、もしくはスローダウンしたのが 米国内でのチケット販売を独占的に牛耳るチケットマスターのウェブサイト。
それだけでなく ファンの入力したIDコードが認識されないトラブルが続出。加えてチケットマスターで導入されているのが ダイナミック・プライシングと呼ばれるチケット販売が行われている最中でも その需要に応じて価格が吊り上がるシステム。 そのせいで 買おうとした直前に価格がアップした場合に起こるのが 購入がペンディングになったり、前の価格の別エリアのチケットに たらい回しされるケース。 あるスウィフティーズは、購入手続きを簡略化するために事前にクレジット・カードを登録したことが裏目に出てしまい、 600ドル台のチケットのペンディング・チャージが10回以上行われた結果、1枚もチケットが買えなかったにも関わらず 1万ドル近いチャージが行われて、限度額オーバーによるカード使用停止処分になってしまったとのこと。
多くのスウィフティーズがチケットマスターのウェブサイトと6〜8時間に渡って格闘しても チケットが入手出来なかった間に リセール業者はしっかり入手していたようで、 水曜以降 2万ドル、最高で3万3000ドルという、低所得者の課税後の年収のようなお値段で再販されていたのがテイラーのチケット。
ちなみに今回のテイラーのツアー・チケットの平均的な価格は3668ドル。数ヵ月前に販売されたブルース・スプリングスティーンの5000ドルよりマシとは言え、 過去約10年の間に1000%以上の値上がりを見せたのがコンサートやスポーツのチケット。 そしてチケットマスターで 人気のアーティストのコンサート・チケット販売が行われる度に起こるのが サイトがダウンし、いつの間にか再販業者でプレミアムを支払わなければチケットが購入出来ない状況。 その状況は昨年11月のBTSのSoFiスタジアムでのコンサート、アデルのラスヴェガスのレジデンシー等でも起こっていたけれど、今回のスウィフティーズ達の猛烈な怒りのメッセージを受けて遂に 司法省が動いたのがチケットマスターに対する独占禁止法違反の捜査。そもそもアメリカでチケット価格が高騰したのは、 チケット販売の最大手であるチケットマスターと、興行の最大手であるライブ・ネーションという本来ならあり得ない最大手同士の合併が2010年のオバマ政権下で成立して以来のこと。 チケットマスター側は、テイラー・スウィフトのファンの需要が予想を遥かに上回っていたことを理由に同社のシステムには非はないと弁明したものの、金曜に予定されていた一般向けのチケット販売を延期しているのだった。
価格の値上がりはさておき、チケットが再販業者に渡らないようにするだけでも ファンは馬鹿げた価格を支払わずに済むけれど、 これについては「チケット転売業を違法にするべき」、「プレミアムに上限を付けるべき」とこれまでにも様々な改善案が浮上していた問題。 しかし こうした問題でも転売業者が民主共和両党の政治家に献金をばら撒く結果、たとえ司法省が捜査を行ったところで 早急に改善策が打ち出されることは無いのだった。

来週はサンクスギヴィング・ウィークエンドにつき、勝手ながらこのコーナーをお休みさせて頂きます。次回更新は12月4日となります。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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