Aug. 8 〜 Aug. 15 2022
トランプ氏のFBI先攻逆切れ勝利!?、ディズニー・テーマパーク好調の理由、アマゾンのクリプト AMZR50、Etc.
今週水曜のアメリカで発表されたのがCPIこと7月の消費者物価指数。それによれば6月に前年比9.1%の上昇を記録したCPIは7月には8.5%の上昇。
インフレには変わりないものの その上昇が一段落したことを好感して この日に大きく値を上げたのが株式とクリプトカレンシー。
S&P500は今週末で 昨年10月以来となる4週連続の上げを記録。経済メディアは現在の株式市場を「One of the best market timers」と表す一方で、
J.P.モルガン・チェースは「クリプト市場が既に底を着けた」と分析。明るい市場の見通しを語っていたのだった。
さらに今週にはガソリンの全米平均価格が5ヵ月ぶりに4ドルを割り、連邦準備制度理事会の次の会合(9月21日)まで利上げが無いのも明るい要素。
そのため2週間前に 2期連続のGDPマイナス成長を受けて「政府が認めないだけで米国経済はリセッションに突入した」という論調は影を潜め、
市場にはアップビートなムードが戻っていたのが今週のこと。
そんな株高を利用して8月5日〜9日にかけてテスラ株792万株を68.8億ドルで売却していたのがイーロン・マスク。
そのテスラ株は、もし今から10年前の2012年8月11日に1000ドルを投資していた場合、2022年8月10日には 14万5431ドルというハイリターンを生み出していたとのこと。
いずれにしても テクノロジー関連を中心に このところ企業エグゼクティブ等のインサイダーによる株式売却が相次いでいることから、
現在のマーケットはブル相場というよりはリリーフ相場、もしくは「インサイダーの売り逃げ相場」という慎重論が市場関係者の間で根強いのが実情。
しかしながらメインストリーム・メディアは一般投資家のFOMO(Fear of Missing Out/取り残されたくない強迫観念)を煽るような報道がこのところ目立っているのだった。
最高機密書類持ち出しのスパイ容疑罪がトランプ氏の追い風に!?
今週最大の報道になっていたのが、トランプ氏のフロリダ州の私邸、マー・ラゴにFBIの家宅捜査が入ったというニュース。
月曜に自ら設立したソーシャル・メディア、トゥルース・ソーシャルで この家宅捜査に抗議したトランプ氏は、
「捜査の抜き打ち」を強調し、「金庫まで開けられた」と FBIと司法省による政治的意図のある捜査によって、米国市民としての人権を脅かされたと主張。
現場に居合わせたという息子のエリック・トランプも捜査令状の提示は無かったと証言。
そのためトランプ支持者はFBI、司法省、バイデン政権に対する怒りを露わにし、その火に油を注いで「FBIを潰せ」、「中間選挙で議席を取り戻して、今回の捜査責任者の罪を問う」と
煽っていたのが共和党のトランプ派議員。
あまりに世論のFBI叩きが激しくなったことから マーリック・ガーランド司法長官は 木曜に捜査中の案件に関する異例の会見を行い、
捜査がトランプ氏によるトップシークレット・ファイル持ち出しに関するものであること、トランプ氏に対しては4月からその書類返還を求めていたこと、
6月にもトランプ氏立ち合いで書類返還請求が行われ、それらが再三に渡って拒まれたために令状を申請したこと、
家宅捜査の3日前には令状がトランプ氏に渡っていたこと、それでも協力が得られなかったために踏み切った捜査であることを語り、
決して抜き打ちではなく、通常以上の慎重なプロセスで行われたことを釈明。
そして捜査令状公開の判断を裁判所から取り付け、トランプ氏がそれに反対しなかったことから金曜午後3時に
令状、及びFBIがマー・ラゴから押収した11セットの最高機密書類のリストが一般公開される運びとなったのだった。
持ち出された書類の中には軍事機密や、フランスのマクロン大統領の個人情報等が含まれていたと言われ、FBIはスパイ容疑、違法に国家書類を持ち去った罪を含む3つの容疑で訴追を検討していることを明らかにしたけれど、
トランプ氏側は 「これらの書類は任期中に全て自分がディクラシファイド(最高機密文書の扱いを取り消すこと)した」と、書類の重要性を否定。
しかしそれが認められたとしても国家書類の持ち出しは既に重犯罪。
加えてトランプ氏は「オバマ元大統領が3300万ページの秘密書類をホワイトハウスから持ち出し、シカゴの施設内に所持している」とトゥルース・ソーシャルでクレーム。
これらの主張はナショナル・アーカイブによって否定されているけれど、
後から出て来た事実には全く目を向けずに トランプ氏から出た情報だけを信じるのがトランプ支持者。
そのため2020年大統領選挙結果と全く同じシナリオが繰り広げられているのが現在で、「政府、FBI、司法省がトランプ氏を陥れようとしている」、
「ディープ・ステーツがトランプ氏の大統領選立候補を阻もうとしている」と、
トランプ支持者が一気に、そして またしても暴力的に盛り上がっているのだった。
事実、今週にはオハイオ州のFBI本部に銃とネール・ガンを持ったトランプ支持者が現れ、局員に怪我を負わせて逃走。
逃げ込んだ畑で射殺される事件が起こっているけれど、この男性は2020年1月6日の議会乱入にも加わり、以前から反政府過激派としてマークされていた人物。
事件前にトゥルース・ソーシャルに「これからFBIを襲う」とポストしていたとのこと。
この男性に限らず、トランプ支持者の間では今回のFBI捜査に抗議し、武装やFBI襲撃が呼び掛けられており、ガーランド司法長官が異例の記者会見を行ったのも
そんな過激なトランプ支持派によるFBI捜査官に対する殺人予告が相次いだため。
今週はFBI捜査を不当とするトランプ支持派と、手順を踏んだ捜査をトランプ氏が不当に捻じ曲げて被害者を演じていたことを批判する民主党&リベラル派の意見が真二つに分かれていたけれど、
この分裂は今に始まったことではない状況。
しかし人工中絶違憲判決を覆そうと盛り上がる民主党&リベラル派に対して、モチベーション不足が指摘されていた共和党、トランプ派が
今週の怒りで一気に盛り上がったのは紛れもない事実。
これを最も歓迎していないと思われるのは、それまで2024年の大統領選最有力候補と見られていたフロリダ州ロン・ディサンティス知事とも言われるのだった。
ディズニー・テーマパーク好業績を支えた ジーニー・プラス!?
今週水曜に予測を上回る最新四半期の好業績を発表したのがディズニー。
特にストリーミング・サービスで、ESPN、Huluを合わせたディズニー+バンドルのサブスクライバー数が ネットフリックスを抜いて世界最多になったことは
ウォールストリートのサプライズ・ニュース。一部のアナリストからは「かつてネットフリックスがブロックバスターを一時の独占状態から陥落させたように、
ディズニー+がネットフリックスを陥落させる日も近い」という声さえ聞かれたのだった。
でもディズニーの今四半期好業績の要因を担っていたのは、ストリーミング部門よりも ディズニー・ランド、ディズニー・ワールドといったテーマパーク事業の好調ぶり。
アメリカでは、「ディズニー・テーマパークの業績が国内の経済の重要な指針になる」と言われて久しいことから、今週経済界に歓迎されていたのがその好業績。
というのもディズニー・ワールドやディズニー・ランドは ヨセミテ国立公園のキャンプ等とは異なり、ライド、食事、グッズのショッピング、ディズニー・リゾート内のホテルへの宿泊と、
1日中のアクティビティ全てに出費が付きまとうヴァケーション。そのためディズニーのテーマパークが2019年のプレパンデミック・レベルに近い混み具合に戻ったことは、
子供を抱えたファミリーに経済的余裕があることを意味し、たとえインフレが進んでいても景気がさほど悪くないということ。
実際に政府がリセッションを宣言しなかったのも、失業率が極めて低いことに加えて、アメリカ人の消費が衰えていないことが数値に表れていたためなのだった。
その好業績を記録したディズニーのパーク、エクスペリエンス&グッズ部門の収益は 前年同期よりも30億ドルアップ、営業利益も18億ドル増加しており、
それを支えたのがテーマパークへの入場者数の急増、ディズニー敷地内ホテルの宿泊数急増、そしてパンデミック中には閉鎖されていたディズニー・クルーズの予約急増。
とは言ってもアメリカ国内のテーマパークに関しては、プレパンデミックの時点で入場者の20%を担っていた 海外からの旅行者が殆ど訪れないことから、
入場者数は2019年を僅かながら下回っているとのこと。
にも関わらず入場者1人当たりの売上は前年比で10%アップ、2019年と比べるとインフレの影響も手伝って40%もアップしているのだった。
その大きな要因を担っているのが、日本のディズニー施設でも今年から導入されているジーニー・プラス、ライトニング・レーンという
待ち時間短縮システム。1日15〜20ドルのジーニー・プラスと、個別のライド毎に予約をするライトニング・レーンを利用すると、
人気のライドやレストラン、アトラクションでの待ち時間が殆ど無く、時間を有効に使えることから 今やほぼ全入場者がジーニー・プラスの料金を支払っているのだった。
しかし好業績が発表された同じ日に、ウォルト・ディズニーの孫娘に当たるアビゲール・ディズニーがローリング・ストーン誌とのインタビューで強烈に批判したのが、
#MeTooムーブメントのきっかけになった長年のセクハラで 現在服役中のハーヴィー・ワインスティーンの悪事を知りながら、ディスニーが業績優先の立場から見て見ぬふりをし続けたこと。
ディズニーは1994年から2010年までの17年間に渡って ワインスティーンが設立したミラマックス映画を傘下に収めており、
2005年〜2020年まで同社CEOを務めたボブ・イガ―は、今もディズニー取締役のトップとして権力を握っているのだった。
しかしこのアビゲール・ディズニーによる攻撃は現CEOのボブ・チャペック(写真上右)にとっては、決して悪いニュースではないというのがインサイダーの見解。
というのも前CEOのイーガーは経営の実権を握ったまま、CEOとしての雑多な役割をチャペックに押し付ける形で取締役トップに退いたものの、
チャペックを後継者に選んだことを後悔するほど 2人の間に確執があることは業界では有名な話。
そのためチャペックにとっては好業績と共に、目の上のタンコブ的存在であるイーガーのCEO時代の問題が露呈するのは、自分が社内の実権を握る好機会。
LGBTQ問題をめぐってフロリダ州と対決するほどWOKEカルチャーに傾倒するディズニーだけに、ここでチャペックがイーガー排除に動くかが見守られているのだった。
アマゾンのクリプトカレンシー、AMZR50
前述のように今週水曜に発表されたCPI数値が、予想よりも好ましいものであったことから
その直後に大きく価格が跳ね上がったのがビットコイン、イーサリアムを始めとするクリプトカレンシー。
また今週にはイランが1000万ドル相当の輸入品の支払いを初めてビットコインで行ったニュースが流れたけれど、
そんな中 メタCEO、マーク・ザッカーバーグが発表したのが 5月から試験的に行っていたNFT販売がテスト期間を無事終了し、
世界100カ国以上の企業やユーザーがインスタグラム上でNFTをシェアできることになったニュース。
インスタグラムでNFTを公開するには、まずメタマスク、レインボー、コインベース・ウォレットといった互換性のあるデジタル・ウォレットをアカウントにインストールする必要があり、
サポートされるブロックチェーンとしてイーサリアム、ポリゴンに加えてFLOW/フロウの採用を発表したことから、その日のうちにFLOWのクリプトカレンシーは50%近い値上がりを見せていたのだった。
クリエーターはNFTをフィード、ストーリー、メッセージなどインスタグラムの全ての機能で公開することが出来、ポストの手数料は無料。
インスタグラムをクリエーターのショーケース兼マーケット・プレースにすることにより、ファンとコレクターのコニュニティ形成を目指すとしているのだった。
でもソーシャル・メディアがNFTを導入したのは これが初めてではなく、
ツイッターでは今年1月からプロフィール・フォトにNFTが使用できるようになっており、Redditもプロフィール・フォトに使うNFTアバターのマーケット・プレースをオープンしたばかり。
YouTubeも現在NFTを含むWeb3テクノロジー対応を急いでいる真最中。
そして今週、静かに報じられたのが遂にアマゾンが自社クリプトカレンシーAMZR50のプレセールを行ったニュース。
プライベート・インヴェスターを中心にインヴィテーション・リンクが送付されたこのプレセールでは 1AMZR50=1ドルというお値段。購入額に応じて最高200%までのボーナスが付くことになっているのだった。
一般への販売は2022年第3四半期からで、実際の使用は第4四半期からの見通し。
AMZR50はプライム・アカウントに連動したウォレットで管理され、クリプトカレンシー上位20位までのコインとの取引が可能。またアマゾンでのショッピングの支払いにも使えるというもの。
アマゾンという企業規模から、値上がり必至と判断して AMZR50コインを買い溜めした人々は多いようだけれど、
これによってアマゾン・プライム・メンバーが 取引所よりも手軽にクリプトカレンシーの売買をし、クリプトで支払うショッピングをアマゾンのアカウントで出来るようになるのは時間の問題。
アメリカは成人の70%がアマゾン・プライムのメンバーであるだけに、これをきっかけにクリプトカレンシーの普及が大きくスピードアップすることが見込まれるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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