Feb 15 〜 Feb 21 2021
今週のスノーストーム、ポリティカル・ストーム、ロイヤル・ストーム、Etc.
今週アメリカのメディアで最も報道時間が割かれていたのは、テキサス州を中心に襲った猛烈なスノーストームのニュース。
週末までに死者数が60人に達し、そのうちの11歳の少年は暖房が無い家の中での凍死。
というのもテキサス州では350万人が4日間に渡って電力を失っており、室内の温度がゼロ度という家庭が多かったことから
巨大なファニチャー・ストアが避難所になっていたような有様。
7日が経過しても電力が戻らないエリアもあるけれど、電力が戻っても深刻なのが水不足。
凍り付いた水道管とその破裂で1400万人が水道水が出ない状態。水が出ても水圧が低い、沸かさないと飲めない状態で、
水圧の低さは現地の火事の消火作業を極めて難しくしていたのだった。
人々は雪解け水でトイレを流し、それを沸かしてスポンジ・バスをするのが精一杯。また破裂した水道管のせいで 家の中が浸水状態になる家屋や店舗も多く、
不必要な水が溢れているのに、必要な水が無いという皮肉な状態。
嵐は去ったものの、凍り付いていた水道管が溶け出す段階で起こるダメージで事態が更に悪化するのはこれからのこと。
またテキサスの電力会社は 電力の需要によって電気代の価格が変わる料金システムを取っており、
そのせいで一部の家庭では通常1ヵ月40ドル程度の電気代が今月は9000ドル。
中には電気代が1万3000ドルを超える家庭もあることが報じられているのだった。
2人の政治家への批判の嵐
そのスノーストームの真っ最中の水曜日に家族でメキシコのカンクーンへのヴァケーションに旅立って大顰蹙を浴びたのがテキサス州上院議員で、超トランプ派で知られる
テッド・クルーズ。彼は猛烈なバックラッシュを受けて翌日にはテキサスに戻ったものの、ヒューストンの自宅前で待ち受けていたのは辞任を求める州民の抗議活動。
クルーズは「カンクーンへは、友達とヴァケーションに行きたがった娘を送り届けに行っただけ」と言い訳。しかし彼のチケットの復路が当初土曜日で
ブックされていただけでなく、彼の妻が「家の中が寒すぎる。カンクーンのリッツカールトンなら1泊300ドルで泊まれる。4:45分にダイレクト・フライトがある」と友人を誘って
ヴァケーションを計画していたテキストメッセージもメディアで公開されてバッシングは益々高まっている状況。そのテッド・クルーズは先頃、州民に自宅待機を呼び掛けながらプライベート・ジェットで
旅行をした民主党議員を猛批判したばかり。さらに愛犬家が多いアメリカだけに、寒い自宅に飼い犬のプードルを残して
家族全員でヴァケーションに出たことにも批判が集まっており、これについてはヒラリー・クリントンも
「Don't vote for anyone you wouldn't trust with your dog(自分の犬を任せれられないような人間に投票すべきじゃない)」と
シニカルなツイートをしているのだった。
一方、ニューヨークではパンデミック中に高齢者養護施設にコロナウィルス患者を送り込んだことで顰蹙を買ったアンドリュー・クォモ州知事が、
施設でのコロナウィルス死者数を故意に50%も少なくレポートしていたことが側近の証言で明らかになったのが今週。
クォモ知事はNY州司法長官による捜査まで高齢者施設での明確な死者数の公表を避け続けておきながら、
NYの感染率が下がってからは「自分こそがNYをパンデミックから救った英雄」とばかりに自画自賛状態。危機管理の本を出版し、州が財政難に瀕しているにも関わらず
自らの給与を大幅に引き上げているのだった。
しかし病院のベッドが足りないという理由で高齢者施設にコロナ患者を送り込んだクォモ氏の措置は、
当時緊急医療施設にコンバートされたジェイコブ・ジャヴィッツ・コンベンション・センターにベッドが多数余っている状況で行われたもの。
またこのスキャンダル発覚に際して、クォモ氏は民主党議員に自分をかばうようにと電話で脅しをかけており、
これを受けてNY選出の民主党若手下院議員、アレクザンドリア・オカジオ・コルテスが事態の全面捜査を依頼。
パターキ元州知事はクォモ氏のリコールを呼び掛けているけれど、本人は「死者数急増で州民を不安にしないために発表を遅らせた」、
「トランプ政権の司法省の不当な捜査対象にならないための措置」と主張。
テッド・クルーズ同様、いかにも政治家らしい言い逃れを展開しているのだった。
英国王室のMegxit ストーム
先週日曜のヴァレンタインデイに第二子妊娠をインスタグラムで発表したのがハリー王子&メーガン・マークル夫妻。そのニュースを祝福していた英国王室であるものの、
エリザベス女王の夫であるフィリップ殿下が入院するというロイヤル・ファミリーにとってデリケートな時期に、女王の許可を得ずに夫妻がオプラ・ウィンフリーとのCBSで放映される90分の
インタビューに応じることを発表したことから、週末になって突如大きな展開を見せたのがMegxitに対する英国王室の対応。
問題のインタビューは3月7日に放映予定で、前半はメーガン1人が結婚と英国王室入りについて、ロイヤル・メンバーとしての公務やアーチー出産、Megxitについてを語り、
後半はハリー王子と2人で今後の人生展開、アメリカでの生活等について語るというもの。しかし自分に無断で決められたこのインタビューで
何が語られるかを危惧したと言われるエリザベス女王が、3月31日のMegxitの期限を待たずして2月19日 金曜日付けの書面で発表したのが、
2人が正式に英国王室メンバーから外れることに加えて、ハリー夫妻2人合わせて合計11のpatronage/ペイトロネージの剥奪。
特にハリー王子に最もショックだったと言われるのが英国空軍名誉航空司令官を含む3つの英国軍名誉タイトルの剥奪で、
これによってハリー王子はこれまで公式の席で常に着用してきた英国空軍のユニフォーム着用が出来ないのはもちろん、それ以外にもハリー王子にとって思い入れがあった
ラグビー・フットボール・ユニオン、ロンドン・マラソンなどのペイトロネージも奪われており、自らが立ち上げたインヴィクタス・ゲームについてはキープが認められているのだった。
元女優であるメーガンにとって最大の打撃と言われるのはナショナル・シアターのペイトロンでなくなることで、彼女も自ら立ち上げたアパレル・チャリティ、スマート・ワークスを含む
2つのペイトロンはキープが認められているのだった。
昨年1月13日に発表されたハリー王子夫妻の英国王室離脱であるけれど、現時点まで2人が合計18のペイトロネージのキープが認められていた理由として説明されているのが、
バッキンガム宮殿が過去12ヵ月に渡ってハリー夫妻が経済的に独立できるかを慎重に見守っていたため。
その結果、夫妻のネットフリックスやスポティファイとの数十億円の契約は
「王室メンバーとしては商業的過ぎる」というのがエリザベス女王の判断。今回の声明は夫妻が王室メンバーとしての公務を商業活動と一緒に行うべきでないことを
明確にしたもので、これまでハリー王子をひいきにしてきた女王としてはかなり厳しい内容であることは
王室関係者も認めていること。逆にハリー&メーガン夫妻は剥奪されたペイトロネージがキープ出来るものと思っていただけに、その失望が大きいことが伝えられるのだった。
バッキンガム宮殿側は金曜正午にハリー&メーガン夫妻を'much loved members of the family'と表現する気遣いを見せながら
エリザベス女王のステートメントを発表したけれど、
その僅か3分後にハリー&メーガン夫妻が発表したのが「We can all live a life of service. Service is universal.」というカウンター・ステートメント。
すなわち「英国王室の後ろ盾が無くても社会に奉仕ができる」という声明であるけれど、これは明らかに女王の判断への失望と不満を露わにしたものと受け取られ、
王室関係者ならずとも「女王に対して無礼」という声が圧倒的。
既に悪化していたハリー&メーガン夫妻と英国王室の関係が、さらに過去最低レベルまでに悪化したと言われたのが今週なのだった。
コンテンツ有料法案におけるSNSへの反発の嵐
さらに今週には、オーストラリア議会で ソーシャル・メディア企業にとってマイナスとなる”Paid content law/コンテンツ有料法案”が提出されたことに反発して、
フェイスブックがオーストラリアのニュース・メディアによるポストの閲覧をブロック。
事実上、同社のパワーが一国の政府を上回ることを示したこの措置に対しては、世界中から非難が殺到。
ツイッター上では#DeliteFacebookがトレンディングになっていたのだった。
この法案はニュース・メディアの広告収入がどんどん減る中、グーグルやフェイスブックはそのユーザーがニュース・メディア・ポストにアクセスすることで
莫大な広告利益を得ていることから、ニュース・メディアが発信するコンテンツに対してはソーシャル・メディアが使用料を支払うべきと定めるもので、
もうすぐカナダ、アメリカでも導入が検討される法案。
しかしソーシャル・メディア側にしてみれば「自分たちのプラットフォームをニュース・メディアが無料で使用してコンテンツを発信して恩恵を受けている」という言い分。
社の利益を削ってコンテンツ料を支払いたくないフェイスブックが強硬手段に出た一方で、
グーグルは一足先にオーストラリアに本社を置くグローバルメディアで、ウォールストリート・ジャーナル、NYポスト、FOXニュース、
イギリスのザ・タイムス、ザ・サン等を傘下に収めるニューズ・コーポレーションとコンテンツ有料提供の複数年契約を発表。
ニューズ社のコンテンツをグーグル検索ページを離れることなく読める”News Showcase / ニューズ・ショーケース” という新しいフィーチャーを設けることにより、
コンテンツ有料法案を無意味にする手段に出ているのだった。News Showcaseは既にドイツ、ブラジルで
実用化されており、これによってグーグルは ニューズ・コーポレーションにはコンテンツ料を支払うものの、それ以外のニュース・メディアのコンテンツに対する
支払い義務を逃れることが可能になるのだった。しかしこれが広く導入された場合、グーグル検索をする人々は
これまでのように各メディアのページにアクセスしてニュースを読むのではなく、グーグルの検索ページ上で
ニューズ・コーポレーションが発信するニュースだけを拾う習慣がついてしまうことから、偏った情報や特定企業の視点が人々に植えつけられるとして、極めて危険なプロジェクトであることが
指摘されているのだった。
フェイスブックについては、週末までにオーストラリア政府との交渉に応じるところまで態度が軟化しているけれど、
今週政界から一般の人々までもが痛感したのがフェイスブックやグーグルが現代社会の中で大きな存在になり過ぎてしまったこと。
それだけに現在フェイスブックだけで全世界に27億人のアクティブ・ユーザーを持ち、それ以外にも
インスタグラム、ワッツアプを傘下に収めるフェイスブックに対しては、企業分割を求める声が益々高まることが見込まれるのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
★ 書籍出版のお知らせ ★
当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2021.