Aug Week 2, 2023
Dumped by a Guy My Father's Age
父とほぼ同い年の男性にフラれました


CUBE New Yorkさんのサイトは昨年友人に教わって以来、頻繁にアクセスしています。
友達や家族に相談出来ない悩みが出来てしまったので、アドバイスをお願いしたいと思ってメールをしています。

私は約2ヵ月前に30歳を迎えました。そして30歳の誕生日を迎えた直後に、過去2年半交際した 父とほぼ同い年の男性にフラれました。 昨年、彼の友達を交えて飲んでいた時に、友達が彼のことを「コイツは仲間の間で日本版レオナルド・ディカプリオって呼ばれてるんだ」と冗談のように言っていて、 顔は全く似ていないので 何かと思ったら、「ディカプリオはガールフレンドが25歳になったところで捨てて、新しくて若い恋人に乗り換える」のだそうで、 彼の友人はその時の私が29歳だと知って、「じゃあ、あとちょっとか…」と意味深なことを言われたのですが、 今から思うと彼は20代の女性としか付き合わないという話だったのだと思います。
私の30歳の誕生日は、彼が旅行に招待してくれて、近場でしたが高額ホテルで贅沢な時間を過ごしました。そして程なくして別れを言い渡されました。 理由は「私も30歳になったことだし、彼はもう今更結婚する気はないから、今後は真剣に婚活をした方が私のため」というものでした。 彼は既に2回離婚していて、2人の前妻との間には合計3人の子供が居るのは私も知っていました。 私は年齢差がある彼と結婚するつもりはありませんでしたが、彼のことはトランプみたいに老後に備えて 3回目の結婚をする気があるのだと勝手に思い込んでいました。 ですから彼との関係で 別れを言い渡すとすれば自分だと思い込んでいたこともあって、あっさりと別れを言い出したのには驚きましたし、ショックでした。 もちろん私には何も成す術など無く、後日彼の家に置いてあった私の私物が 彼のアシスタントによって送り返されてきた時はまるで解雇されたような気分を味わいました。 そして自分よりも30歳近く年上の男性に一時的に利用されてからフラれたことが人生の汚点のようにさえ思えてきました。

彼は裕福なので、私がその財力を利用していたのは認めます。恋愛感情は殆どありませんでしたが、 人前では彼を立てて、彼を若いとおだてては年齢差を感じさせないようにしてきました。 彼は自分では認めていませんが、ボトックスとかの美容施術や植毛をしているようで、服もデザイナー物で若作りにはお金を賭けていました。 年がずっと若い私を彼女として連れ歩くのも、彼が自分を若く見せるためにだと分かっていたので、それに合わせ上手くやって来たつもりでした。
だから私は彼との結婚は考えたことは無くて、私に同年代の好きな男性が出来たところで、私が彼に別れを言い渡して関係が終わるものだと思っていましたし、 彼とは別れてからも年齢が離れた友人として、時々食事をしたり、誕生日にはお祝いをして貰えるような付き合いが続くものと思っていました。 恐らくそれは彼が年齢のせいか あまり性欲が無く、友だちの延長のようなデートが多かったからかもしれません。

彼とのことを知っている私の友達からは 「良いわね、何処にでも連れて行ってくれて、何でも買って貰えて」と皮肉交じりに言われて、陰ではパパ活と同じと見なす人も居たようです。 でも私は、彼のようなお金も人生経験もある男性が私に惹かれてくれることにプライドを持っていましたし、 同年代の男性にない包容力と寛容さがあって、私の我がままを許してくれる彼が好きでした。 夢中になったことはありませんが、頼りにしていましたし、人生経験豊富な大人の男性だと思っていたいましたから、30歳になった途端に別れを言い渡すような 子供じみたことをしてきたことは今も信じられません。
彼と別れてからは心と予定表に大きな穴が空いたという感じで、以前はキラキラしていたように思っていた私の生活は途端に普通のアラサー・ライフになってしまいました。 そして別れを「契約終了」みたいに言い渡してきた彼の無感情で、事務的な様子を思い出しては、 「若い私は彼にとって自慢の彼女だから、絶対に捨てられることは無い」、「彼は私のことが可愛くて仕方がない」と彼との仲を知る友人に豪語していた自分が愚かに思えてたまりません。 「彼を次にどこかで見かけることがあったら、彼はきっと私より若い女性を連れているに違いない」、 「その時に彼は新しい 若い交際相手と私を比較して、やっぱりあの時乗り換えておいて良かった」と思って私を見るのだろうと思うと、悔しいやら情けないやらです。

彼が言う通り私も30歳になったので婚活をすべきなのですが、今更同年代の男性を見ると 持ち物が安っぽかったり、お金の遣い方のセコい部分が気になってしまって、 恋愛感情を持つ以前にジャッジしている自分に気が付きます。 こんな気持ちを吹っ切って、新しい恋愛に向けて頭を切り替えるにはどうしたらよいでしょうか。 いつも目から鱗のアドバイスをしている秋山さんに是非伺いたいと思いました。 よろしくお願いします。

- J -


トロフィー・ガールフレンドの意味合い


私がJさんのメールを読み終えて最初に感じたのは、「交際相手との関係に沢山の思い込みをしていらした」ということでした。 それほどまでに「思います」、「思っていました」、「思い込んでいました」で終わるセンテンスが多いように感じられました。 このコーナーにメールを下さる方は、状況を的確に私に伝えて下さろうとするためか、詳しい状況説明で長文になるケースが多いのですが、 Jさんのメール内容は 交際相手との事実関係や彼の友人との会話が僅かに盛り込まれている以外は、 殆どがJさんの「思い=憶測」に終始していました。
私の目からは現在Jさんが精神的にショックを受け、傷ついていらっしゃる要因は、彼にフラれたからというよりも 「当てが外れたから」のように見受けられます。 人間は当てが外れると失望する生き物です。昇進すると思い込んでいた人が、代わりに別の同期が昇進したと知らされた時、 受け取れると思って、使い道まで決めていた遺産や大金が入って来ないと悟った時の人間の落胆ぶりはかなりのものです。 私が知っているJさんと似たケースでは、「プロポーズされたらどうやって断ろうか?」と頭を悩ませいた女性が 逆に交際相手から別れを言い渡されて、非常に落ち込んで暫く立ち直れなかったというエピソードがあります。
ですが一度当てが外れてからのJさんの状況の把握は極めて的確だと思って読ませて頂きました。 Jさんがご指摘のように、年上の彼にとってJさんとの交際は契約社員のような関係で、 Jさんは契約期間が終了して、何の感情も交えずに事務的に離職を言い渡されたのだと思います。 そしてJさんがお察しのとおり、契約期間は30歳をもって終了したように見受けられます。
交際相手の男性は、「日本版のレオナルド・ディカプリオ」とお友達に呼ばれて、20代の女性との交際をステータスに感じていらしたはずです。 彼の頭の中では 30歳と2ヵ月の女性と交際するよりも、”20代の彼女”と呼べる29歳11か月の女性と交際する方が、例え誕生日が3ヵ月しか違わなくても 価値があることと捉えられているのかもしれません。 男性という生き物は理論で説得することは難しくても、数字を突きつけられると理解する傾向があるのは周知の事実です。数字というものは男性にとって大切な基準であり、こだわりや競争のポイントでもあるのです。

Jさんはご自分の我がままを許してくれる彼に大人の包容力を感じて、「30歳になった途端に別れを言い渡すような 子供じみたことをしてきたことは今も信じられません」と書いていらしたのですが、Jさんが大人の寛容さや包容力と思っていたのは 実際には”リミテッド・エンゲージメント”、すなわち期間限定の終わりが見えている関係にありがちな許容範囲だったように思います。 要するに辞職日が決まっていれば上司の嫌味が気にならないのと同じで、 婚姻関係にあって、その我がままに一生付き合わされるのであれば我慢できないことも、「相手が30歳になったら、別れるまでのこと」と思ったら許せたり、我慢が出来るのです。
もし彼が過去2回の離婚を通じて 「女性は一度妻になってしまうと、自分が稼いだお金を勝手に遣って、図々しく振舞うだけ」という経験をしていた場合は、 若い女性と取っ替え引っ替え交際することに「結婚より遥かに安上がりで、遠慮や気遣いのある交際が コミットメント無しで出来る」 というメリットを見出しているようにも思います。
そこにサディスティックな心理が介入している場合には、女性の我がままを聞いて許容する期間が長くなればなるほど、 女性は「相手は自分に夢中」という自信で舞い上がり、別れを言い渡した時のショックが大きくなる一方で、身についた「我がまま三昧の体質」のせいで、 その後はまともな男性との交際が出来なくなることを熟知しているだけに、心の中で 我がまま女性の行く末を楽しんでいるケースもあります。 Jさんはメールに 「彼に夢中になったことはありませんが…」と書いていらっしゃいましたが、それは恐らく彼も同様なのです。 Jさんは彼の自尊心を満たすための契約社員で、深い愛情が介在する関係では無かった分、 表向きとは異なるシナリオが裏で動いていたところで全く不思議ではありません。

Jさんは「彼を若いとおだてては 年齢差を感じさせないようにしてきました。 彼は自分では認めていませんが、ボトックスとかの美容施術や植毛をしているようで…」と書いて下さいましたが、 この部分を読む限り、 Jさんの何気ない言葉の端々や態度から 彼が 自分の老いを実感させられたり、 Jさんが自分に対して「若さの優越感」をひけらかしていると 感じることが度々あったように思われます。
30歳の女性と60歳が迫った男性が感じる年齢のセンシティビティには雲泥の差があるのです。親子や上司と部下の関係であれば 全く気にならないことでも、 交際相手という そもそも無理がある関係においては、若い側が知らず知らずのうちに 年上に対して 年齢を引き合いにした社会観、身体能力、外観についての 蔑んだ発言をしているケースは少なくありません。 男性が「自分は若い」、「自分には若い女性と付き合える魅力がある」と自覚していればいるほど、そんな言動が気になるはずですので、 内心「そんなことを言っても、30歳になったらこちらからお払い箱だ」と思いながら、それらの言動や態度を許していても不思議ではないのです。

Earning Powerの取り戻しを

Jさんのように、裕福な男性、それも年上で経済的に依存することが当然と思える相手と交際し、それに慣れてしまった女性が陥る傾向にあるのが、 Earning Powerが失われる状況です。 世の中には自分で大金を稼ぎながら、同時に誰かから多額の施しを受けるという状況はまず存在しません。 お金というのは非常に不思議なもので、全くお金に困っていない人が誰かに金銭的な施しをする場合、 施される側は お金をタダ取りしているのではなく、知らず知らずのうちに施す側に Earning Power、すなわち”稼ぐ力”を等価交換のように譲り渡しています。 その結果、人に施せる人はどんどんEarning Powerを増して豊かになっていきますし、 施される側はどんどん稼げない体質になって行きます。
ちなみにこれは豊かな人が施すケースのみで起こる現象で、お金に困っている人が借金をしてまで貢ぐようなケースでは、 貢いでいる側のEarning Powerがお金と一緒に出て行くことになります。 出て行ったPowerは受け取る側にEarning Powerがある場合は吸い取られ、受け取る側にEarning Powerが無い場合にはただ消えて行くことになります。

アメリカでは1990年代のクリントン政権下で、貧困層のシングル・マザーに対する国からの助成金を、仕事をして働く女性に支給する形に変わりました。 それまでは働くと国からの援助が貰えないことから、母親たちの労働意欲が失われ、その結果、助成プログラムから抜け出せない貧困母子家庭が増える結果を招いていました。 それを働くシングル・マザーへの助成に切り換えて以来、アメリカではシングル・マザー世帯の貧困率が大きく下がったことが報じられています。 要するに施されているだけで、それを当てにする生活をしていた時はEarning Powerが奪わるだけでしたが、 シングル・マザーが自分で稼ぐ意欲と力を持ったことで、経済的な自立が達成されるようになったのです。

貧困生活をしていなかったとしても、親のスネをかじっていた人など、他人のお金を当てにする習慣がついている人は生産性とEarning Powerが失われていますので、 自分で稼ぐという行動が人生のビジョンに含まれていません。お金をごまかすことは考えられても、お金と向き合うことが出来なくなってしまうのです。
Jさんは「彼と別れてからは心と予定表に大きな穴が空いたという感じで、以前はキラキラしていたように思っていた私の生活は途端に普通のアラサー・ライフになってしまいました」と書いていらっしゃいましたが、”キラキラ”という表現からお察しして、彼に連れて行ってもらった高額リゾートや高額レストランの写真等をインスタグラムに定期的にアップしてして、それでご自身の優越感とプライドを高めていらしたかもしれません。 ですが彼と別れた今では、そんな贅沢のスポンサーが居ないので、行きたい場所を見つけても行くことが出来ない、楽しみにする予定が無くなってしまった毎日を寂しく感じていらっしゃるとお察ししますし、 彼と同等の贅沢をさせてくれる男性を婚活で探すことが如何に難しいかを痛感していらっしゃるご様子はご自身でも書かれていた通りかと思います。
こう申し上げると失礼ですが、Jさんはお金、もしくはお金が使える生活にブレインウォッシュされて、物事の判断がズレてしまっています。 婚活に際して「今更同年代の男性を見ると、持ち物が安っぽかったり、お金の遣い方のセコい部分が気になってしまって、 恋愛感情を持つ以前にジャッジしている自分に気が付きます」と書いて下さったのですが、 他人の持ち物のクォリティの見極めなどは誰でもやっていることです。またお金の遣い方には人柄が表れますので、それを観察してセコいと思ったところで全く問題はありません。 それを「恋愛感情を持つ以前にジャッジしている自分に気が付きます」という考えに持って行くところに問題があるのです。
そうやって「やっぱり私はお金がある人を探さないとダメ」、「もうお金が無い人を受け入れない体質になっている」といった勝手な思い込みに 自分を誘導して、あえて視野や選択肢を狭めるメンタリティが問題なのです。 今のJさんを支配しているのは、彼にフラれたショックや落ち込みではなく、彼が与えてくれていた豊かさを取り戻したい願望や焦燥感です。 そんな状態で婚活をスタートしても、相手が自分にさせてくれる生活だけが基準になるので、相手が見つからないうちにどんどん年齢だけを重ねて行くことになりかねません。
Jさんは 年上の彼との交際中に ご自身の若さを相手の裕福さに負けない魅力だと自覚し、時に優越感を抱いていらしたのですから、 「お金が一番」、「お金が無ければ…」という思考から離れて、お金に負けない人間の魅力や価値にフォーカスして、ご自身もそれを磨いて、アピールするように心掛けるべきです。 明るさ、スマイル、ユーモアのセンス、良い聞き手であること、体力や行動力、ビジネス・センスなど、何でも構いません。 一度価値観をお金からシフトさせてみると、お金の方がついて来ることは珍しくありませんし、豊かさや幸福の概念が広がって、 本当に自分が求める幸せ、理想とする人生のビジョンがクリアになります。
お金や贅沢はドラッグやアルコール同様に人間を変えてしまうものです。 年上の彼と交際中のJさんはオーバードースとは言わなくても、オーバーエクスポーズの状態であったことは否めません。 ですからこれから暫くはリハビリと思って、美しい夕陽を眺めたり、自然と触れ合うことなどにより、 お金と自分を切り離して、生活全般と精神面をリセットするところから始めてみて下さい。
ココ・シャネルの語録にも “There are people who have money and people who are rich.” とある通り、 お金よりも真の豊かさを求めるべきなのです。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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