June Week 3, 2023
My Old Friend Acts Weird...
友人が私の弟に婚活アプローチ!?


いつもこのコーナーを愛読する長年のCUBE New Yorkさんのファンです。
私の問題にもアドバイスをお願いします。

私はアラサーで、3歳下の弟が居ます。弟と私は同じ共学の私立校だったこともあり、私の友達は弟のことを学生時代から知っている人が少なくありません。
弟は、中学時代は背が低く、当時の可愛い男の子的な印象を覚えている友達は多いのですが、高校以降は身長がビックリするほど伸びて、 今では外資系に勤めてバリバリ仕事をし、身内びいきと思われそうですが、我が弟ながら かなりのイケメンです。 先日弟を含めた家族で久々に撮影した写真をインスタグラムにアップしたところ、友達がこぞって弟の成長ぶりとルックスを誉めてくれるコメントをくれたのですが、 そのうちの1人が弟に会いたがって困っています。
その友達をAさんとすると、Aさんは高校時代に何度か私の家に遊びに来ていて、弟と面識があります。 Aさんはその頃に 試験前の勉強で弟を助けてくれたことを持ち出してきて、「中学時代に私に憧れていた弟さんが、ハンサムに成長していたので、是非会ってみたい。 お互い社会人としてのコネクションも広がると思うし…」と言ってきました。 私もそのことは薄っすら覚えてはいますが、弟が覚えているかは分かりませんし、今更10年以上前に「憧れていた」と言われても困ると思います。
それに私自身、別の大学に進学したAさんとは疎遠で、正直なところ突然メッセージを送ってきたのには驚いたほどです。 Aさんは一部上場企業にお勤めをしていますが、彼女に久々に会ったとしても弟の社会人としてコネクションが広がるかも疑問です。
何となく 弟に近付きたがっているだけの雰囲気を感じたので、Aさんと同じ会社に勤める学生時代の友達に尋ねたところ、Aさんは1年ほど前に 長く交際して、結婚するものと思っていた男性が 別の女性に乗り換えて、婚約したことでショックを受けているらしく、それまでは婚活をしている同僚を馬鹿にしていたため、 今は周囲にバレないように婚活をしているらしいです。 そしてその友人も、私が疑っている通り 「Aさんが弟を狙っているに違いない」という意見でした。

私が 最後にAさんに会ったのは共通の友達の結婚式の2次会で、コロナ前のことです。 高校卒業以降の彼女がどんな生活をして、どんな人柄になっているのかなど分かりません。 アラサーで真剣に婚活をしている女性の中には、出会いや恋愛のチャンスを阻まれたと思うと感情的に復讐をするケースもあるようなので、 下手な断り方をして 私に怒りの矛先が向くのが怖くて、Aさんから来た3回のメッセージには未だ返事をしていません。 弟は私がインスタに写真をアップしたことさえ知らないので、もちろんAさんについて話すつもりはありません。
一番恐れているのは、Aさんが勝手な思い込みで弟に対してストーカーのようになってしまうことで、 相談した友人も私も、「いかにも普通の社会人コネクションを装って、恋愛目的ではないことを装っているところが逆に怖い」という意見です。 Aさんが 恋愛目的ではない様子を装っているので「弟にはもう婚約者がいる」という追い払い方も出来ません。
秋山さんだったら、こういう状況でどうされますか。 Aさんを無視し続けても大丈夫でしょうか。それとも「弟は忙しくて、私も暫く会っていなかったほど」とか軽くかわす返事をするべきでしょうか。
何かアドバイスをお願いします。

- F -


たとえ家族でも…


私がFさんであれば、先ずは家族でも、友達でも本人の承諾無しにはソーシャル・メディアには一切の写真は掲載しません。
アメリカでもフェイスブックが親の世代に普及し始めた頃に、親達が勝手に自分の子供の赤ん坊の頃の裸の写真や、 泣いている写真など、子供達が友達に見られたくない写真を勝手にポストしてしまうことが家族内のトラブルになり、 自分の写真を無断で掲載しない誓約書を親に書かせる事態が起こっていた時期がありました。
またソーシャル・メディアにアップした写真が身元特定の手掛かりになることから、子供達の誘拐を危惧する学校側と親が 子供や学校が写った写真のポストを禁じて久しい状況です。 それだけでなくフェイスブックやインスタグラムの写真やチェックイン情報のせいで、ヴァケーション中の日程が判明して、空き巣被害に遭うケース、 不在中の家が 勝手にパーティー会場にされて 器物損壊の被害を被る例もあれば、 ソーシャル・メディアの家族写真がきっかけで、母親の学生時代のボーイフレンドが 母親の若い頃にそっくりな娘のストーカーになったという事件もあります。 そうかと思えば、不用意にポストされた写真のせいで、体裁良く断ったはずの誘いや 行事欠席の ”アリバイ”が崩れたり、 一緒に写真に写っていた顔ぶれのせいでトラブルに巻き込まれるなど、 自分以外の人物の写真のポストは、相手に思わぬトラブルや災難をもたらすリスクがあります。

ハンサムで未来を嘱望される弟さんの姿を披露したいお気持ちは理解できますが、弟さんがご自身のアカウントで、ご自身の意志で ご自身のフォロワーに写真を公開するのと、 Fさんが弟さんの許可無しに Fさんのフォロワーに弟さんの写真を発信したケースでは、それがきっかけでトラブルが起こった場合の意味合いが全く異なります。 前者は言わば自業自得で、ご本人の意志と責任で問題を解決するだけの 極めてシンプルな状況です。 しかし、後者は弟さんにとって、自分の意志とは無関係に Fさんによって巻き込まれたトラブルですので、 弟さんは迷惑を受けても解決の術を持ちません。何等かの被害が生じれば 、弟さんは Fさんに対して不満や責任追及意識、引いては怒りや不信感を抱いても不思議ではありません。
ソーシャル・メディアの拡散力は、田舎町の噂話どころではありませんし、今の時代は「まさか」というようなことが起こっても不思議ではないご時世です。 Fさんには写真を含む個人情報の取り扱いに際して、もっと慎重になられることをお薦めする次第です。

最も重要な社交テクニック 

Aさんに対するリアクションですが、Fさんにとって Aさんは 10年以上殆ど会う事が無く、今はどんな生活をして、どんな人柄になっているかが分からない高校の同級生です。 突然メッセージを送ってきて、一緒に高校時代を過ごしたFさんではなく 「弟さんに会いたい」と言って来た訳ですから、 「Aさんが弟を(恋愛対象として)狙っているに違いない」と疑われるのは当然のことです。
そんな人物に対してするべきことは、「距離を置くこと」、「これ以上寄って来ないようにすること」であって、 返事を返したり、その扱いを間違えた場合の心配をすることではありません。 「逃げる」、「避ける」、「距離を置く」というのは立派な社交術であり、 限られた時間を良い人間関係と過ごし、悪い人間を遠ざけるためには最も頻繁に用いるべき手段です。

私の考えでは、日本社会とアメリカ社会を比べると、日本の方が八方美人の社交術がもてはやされる社会で、 日本では敵を作らないために、嫌な事を我慢して付き合うことが未だに美徳とされる傾向が強いように思います。 それに対してアメリカは、敵と味方がもっとクリアで、社交で我慢をする場合は 縁を切って、それ以上関わらないようにするための一時的な我慢です。 そして敵とは関わらずに距離を置く反面、利益や共通の敵を倒すためには ビジネスライクにあっさり手を組む傾向も顕著です。
要するに相手に合わせるよりも、各人が自分本位の社交をしながら 人間関係を築いている訳ですが、 その方が相手に余計な期待をせずに、自分に余計な気遣いや我慢を強いることなく、何より時間や労力を無駄にせずに生きられると思います。

私がFさんの立場であれば、Aさんからのメッセージを読んだ時点で、「この人とは関わらない」というスタンスを自分の中で明確にして、 共通の友人にAさんの近況を尋ねないのはもちろん、Aさんからメッセージを貰ったことも他言せずに無視を貫きます。 そうすれば、たとえAさんが興信所を雇うなどして弟さんに対してストーカー的な行為に出たとしても、それはインスタグラムを見て 勝手に舞い上がったAさんだけが悪いという結末になります。
ですが一度第三者、このケースでは共通のお友達が関わると、その人物のせいでAさんとの関りが間接的にも続くことになります。 お友達は 悪意は無くても、職場でAさんが弟さんを狙っていることを世間話、噂話として必ず語ります。そして、それは尾ひれや羽ひれが付いた形で必ずAさんの耳に入ります。 そうなればAさんは気分を害するはずですし、「Fさんが自分を警戒して、会社の同僚に探りを入れて 変な噂を流した」と悪意のある解釈をしても不思議ではありません。 そうなった時には、Aさんが弟さんに恋愛的興味を抱いていたのが事実であったとしても、「私は単に弟さんに勉強を教えた思い出が懐かしくて、今は社会人としてサポート出来るかもしれないと思っただけ」と 自分の行いが ”善意のアクション” として脳内変換されて、そんな自分を悪者にしようとするFさんと共通の友人に対する悪感情が高まるのはありがちなシナリオです。 ですから関わりたくない人、縁を切りたいと思った人のことは、言葉にさえするべきではないのです。

世の中には 人の陰口を言う人は少なくありませんが、もし本人の耳には入らないと思って話しているとすれば、それは浅はか以外の何物でもありません。 誰かの悪口を言ったり、悪い噂を流した場合、それはたとえ時間が掛かっても 必ず本人の耳に入りますし、その噂の出所も明確に伝わります。 その段階では、実際に語った以上の悪口や悪い噂になっていますし、語った側の悪意も同時に取り沙汰されるケースも珍しくありません。 口止めをしながら 悪口を語った場合には 「○○さんに口止めをされたけれど」という前置きと共にその内容が広まることになります。 それほどまでに 人が人の話をすることは 誰にも止められないのです。

同じ噂話でも、共通の友人の近況を話題にするのは 交友関係内のニュースでありコミュニケーションですし、そんな近況の噂が 交友やビジネスのネットワークを広げることは珍しくありません。 ですが情報というものは毒にも薬にもなるもので、毒の方が遥かに早く広がります。 過去の偉人の語録に「真実が靴を履いている間に、悪い噂は世界を5周する」という言葉がありましたが、 余計なトラブルを避けるためには 悪い噂に繋がる言動、関わりたくない人間に関する言動は努めて控えるべきなのです。
人生のトラブルや不幸の殆どは、自分以外の人間が運んで来ます。 そして他人を 自分のトラブルや不幸の原因に駆り立てるのは、常に言葉や情報なのです。 そのことを肝に銘じて、今後は実生活でも、不特定多数の人々に情報を発信するソーシャル・メディアでも その拡散インパクトを考えながら、慎重に振舞うことをお薦めする次第です。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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