秋山様、いつもこのコーナーだけでなく、キューブさんのウェブサイトを愛読しています。私にもご相談させて下さい。
10日ほど前に新婚の妹が私の家に転がり込んできました。
妹は夫(義弟)とパンデミック直前の合コンで出会い、昨年結婚したばかりで、
派手な喧嘩でもしたのかと思ったら「愛想が尽きた」のだそうで、婚前から同棲していた訳でもないのに、3年間以上一緒に暮らしたような言い分でした。
妹夫婦は共働きで、妹の職場は家から30分程度の場所にあり、義弟の職場は通勤時間が1時間くらいかかるようです。
専門職の妹の方が早く家を出て、残業が無いので毎日ほぼ6時には帰宅し、義弟は毎日7時半前後の帰宅になることから、
夕食は何時も妹が帰宅してから作るのが当たり前になっていたようです。
それだけでなく妹は、毎朝洗濯機を回しながら、お弁当を2人分作ってから出掛けるのが日課で、「自分でやった方が簡単」という理由で、
掃除やお風呂の準備など、家事全般を1人でこなしていたらしいのです。
義弟は不器用なお坊ちゃまタイプなので、下手に手伝ってもらうと逆に面倒なことになるようでした。
そんなこんなで妹は結婚して以来、仕事から帰ると夕食を作り、義弟は帰宅後に どっかり食卓に腰を下ろして、出来上がっているおかずをつまみにして、ビールで晩酌をしながら
残りの料理が出来上がるのを待って、妹が夕食を食べ始める頃にはビールを飲み終わり、そのタイミングを見計らって妹がご飯をお茶碗によそって、
ご飯を食べ終わる頃には、お茶と一緒にプリンやフルーツをデザートに出すというのが夕食のルーティーンになってようでした。
つまり妹は 料理を作るだけでなく、義弟の御給仕までして、家事全てをやるのが当たり前になっていて、しかも妹の方が高収入とあって家計は折半でした。
義弟にとってはパラダイスのような新婚生活ですが、感謝するどころかどんどん態度が大きくなる一方だったそうで、
文句は言っても「ありがとう」とは言わない、「ビール」、「タオル」、「風呂」みたいに、自分に必要な名詞だけをぶつけて、面倒なことは何でも妹に押し付けて来るのにも腹を立てていたようです。
家出をした夜は、暑い日だったので妹は夕食を作る前にシャワーを浴びたそうなのですが、洗面所に虫が入って来て、昆虫が大嫌いな妹は虫を退治するまで、殺虫剤を握りしめて30分以上格闘したそうで、そのせいで夕食の準備が遅くなってしまったそうです。
すると暑かったせいか、機嫌が悪い義弟が通常よりも早く帰宅して、妹が虫退治のせいで夕食の準備が遅れたことを説明したところ、「たかだか虫の1匹くらいで…、優先順位が間違っている」と言ってきたところで まず頭に来たそうでした。そして準備が遅れているのを知りながら、義弟がビールを飲むのに「つまみが足りない」と文句を言ったことにも腹を立てて、「私を一体何だと思っている訳?」という台詞が喉まで出かかっていたそうです。
結局、妹は大至急で夕食を作り終えて、日常のルーティーンに戻り、2人で夕食を食べていたそうですが、妹が冷蔵庫に何かを取りに行った時に、
うっかり冷蔵庫の中で液体をこぼしてしまい、その液体を拭き取っていた時に 義弟が「メシ!」という声が聞こえたそうです。でも見るとコップに未だビールが少し残っていたので、
「それを飲み干すまでは時間がある」と思った妹は、まずは冷蔵庫の中の液体を拭いしまうことにしたそうですが、すると突然義弟が「メシって言ったら、メシだ!」と怒鳴ったらしいのです。
妹が「まだビール残っているじゃない。今、冷蔵庫の中が大変だから、ちょっとだけ待って。待てないならご飯くらい自分でよそってよ」と言ったところ、
義弟がブツブツ悪態をつきながら渋々ご飯をよそったそうなのですが、妹は炊飯器の傍にご飯粒が落ちているのを見た途端に、
「こんな簡単なことも出来ない夫」に愛想が尽きたのだそうで、未だ食卓に居た義弟を残して パソコンや化粧品、着替え等、最低限のものをバッグに詰め込んで、
最初はビジネス・ホテルに泊まるつもりだったそうですが、思い直して私の家にやって来たそうです。
妹は離婚する気満々で、私も話を聞いた今では 妹がよくもそんな生活を何ヵ月も続けられたものだと思ってしまいます。
妹が言うには、義弟の会社の上司は 妹が専業主婦だと思い込んいて、義弟に「そのうち家事が手抜きになるから、新婚のうちから嫁さんに家事を徹底させろ」とアドバイスしていたそうで、
一度義弟の会社の同僚が何人か家に飲みに来たことがあったそうなのです。そうしたら同僚は、毎日愛妻弁当を持参して、家に帰ると夕飯が待っていると自慢している義弟の妻が、
「まさかフルタイムで仕事をしているとは思わなかった」と驚いて、妹の前で「普通の奥さんはこんなにしてくれない」と言ってくれたようなのです。
ですが義弟は何故かそれを 妹が「そこまでするほど自分にぞっこん」と勘違いしたらしく、義弟は日を追うごとに傲慢な亭主関白になって行ったようです。
妹は妹で、ご飯もまともによそえない以前に、洗濯物1つまともに干すことが出来ない義弟のことを、心の中で呆れるようになっていて
「こんなに何も出来ない夫と結婚してしまって、どうしよう…」と漠然と考えるようになっていたそうです。
義弟は、最初2日ほどは妹の家出にかなり腹を立てていたようですが、やはり周囲に説得され、しかも離婚は困るようなので かなり態度を軟化させてきました。
でも妹は離婚する気でいますし、私も強く反対できない立場ですが、妹がしっかり自己主張や家事分担の取り決めをせず、
義弟に良かれの体制で結婚生活を続けたせいで、義弟をつけ上がらせてしまったことにも問題があるようにも思いました。
それで「何でも言う通りにしていたら、犬でも人間を馬鹿にするようになる」という秋山さんの持論(?笑)をお借りして、妹にも問題があったことを指摘しました。
でも妹は「少なくとも結婚した直後はもっと夫が好きだったし、”良い妻と結婚した”って思って欲しくて頑張ってしまった」のだそうで、
しかも家事が全くできない義弟と家事分担をするよりも、自分でパッパとやってしまう方が早くて、ストレスにならなかったそうで、
「自分のやりたいようにやっていたら、結果的に相手のために何でもしているようになってしまった」と言います。
それで妹に「じゃあ私はどうするべきだったの?」と言われてみると、私も上手く返事が出来なくなってしまいました。
秋山さんのご意見とアドバイスを伺いたいのは、妹はどんな形で結婚生活をスタートしていたら、もっと公平な夫婦関係が築けていたかです。
本来だったらラブラブのはずの新婚生活がこんなに早く、あっさり終わるなんて、妹も私も驚いていますが、やはり相手を間違えたという事なのでしょうか。
キツイお言葉でも構いません。というかキツイくらいで妹には丁度良いと思いますので、ご意見とアドバイスをよろしくお願いします。
- S -
こんな言い方をすると大変失礼なのですが、Sさんの妹さんと義弟さんは違ったタイプの協調性があまり無いお人柄のように見受けられます。
協調性が無い人には2種類があって、まず1種類目は周囲に構わず、常にマイペースで物事を進める人です。
往々にして能力があるワンマン、もしくはローン・ウルフ・タイプで、妹さんはこちらに当たるように思います。
2種類目は自分が出来ないことや、面倒なことを他人に押し付けるためにチームで取り組むことを好むタイプで、
ムードメーカーやリーダーであるケースも少なくありません。ですがチームメンバーとの平等意識が希薄で、
美味しい所取りや、手柄の横取りをすることで協調を乱す傾向にあり、失礼ながら義弟さんはこちらのタイプに見受けられます。
この2タイプが管理職になった場合、妹さんタイプは 仕事は出来るものの、部下が育たないため業績が上がらない一方で、
義弟さんタイプは仕事をせずに部下を働かせるので、人材に恵まれた場合には業績を伸ばし、持ち前の自信と独りよがりで
出世街道を歩むケースは少なくありません。
義弟さんは結婚前の遠慮がある関係のうちは、妹さんが遣ってくれたことにある程度の感謝をしてくれたと思いますし、
それ以上に誉めて、評価をしてくれていたものとお察しします。
義弟さんのようなタイプは、例え自分に同じ事が出来なくても その道のエキスパートのように誉めたり、評価をすることは得意なのです。
妹さんも恋愛感情を持つ相手が自分を評価し、自分のしたことで喜んでくれる様子に満足感や幸福感を覚えていたはずで、
ご自身の能力や良さを評価して欲しいという気持ちが新婚生活当初まで続いていた様子は、妹さんが語っていらした通りです。
このお2人は ある程度の距離や遠慮がある状態で、”自己肯定を求める世話焼き & 依頼心の強いオーソリティ気質”の歯車が噛み合っている時は、
マッチメイド・イン・ヘブンのように感じられるので、結婚まで行きついても不思議ではありません。
しかし実際には 妹さんは自分に対する評価を獲得するために頑張っていて、義弟さんはそれを自分に夢中だから尽くす様子だと勘違いしている訳ですので、
やがて歯車が噛み合わなくなるのは当然と言えます。
義弟さんは 妹さんの献身ぶりの背景を知らずに、「自分が何をしても相手の許容範囲内」と考え、徐々に妹さんに何をして貰っても当たり前と思うだけでなく、
時にイライラをぶつけたり、遣って貰ったことに文句を付けたりという サディスティックな感情さえも目覚め始めていたようです。
そもそも義弟さんは御礼や挨拶など、きちんとしたコミュニケーションを心掛けるタイプでは無かったように思われますが、「ビール」、「タオル」、「風呂」というセンテンスにならない要求は、
そんなサディスティックな感情の現れで、これがエスカレートした場合はDVや浮気に発展することも珍しくありません。
一方の妹さんは、義弟さんから徐々に自己肯定感を得られなくなり、それに伴って恋愛感情も下火になってきたとは言え、フルタイムで働きながら愛妻弁当を持たせ、家事全般をこなすスーパーワイフぶりを
義弟さんの同僚に驚かれることなどが自尊心を満たす要因になっていたと思います。
ですが結婚生活が続くうちに、それまで根拠も無しにオーソリティを認めていた義弟さんのメッキが剥がれて、
「実は洗濯物1つ干せない夫だった」ということを悟ってからは、
エグジット・ストラトジー、すなわち出口戦略を考えるのがストレス解消法や現実逃避の手段になっていたのではないでしょうか。
義弟さんに怒鳴られた妹さんが、寝室等に閉じこもるのではなく、荷造りをして飛び出してきたというところからして、
妹さんは 以前から別居や離婚のプランを煮詰めていたように思われます。
いくら新婚で、「夫婦の家庭=自分の家」の意識が希薄でも、いきなり家を飛び出すというのは他人が思い描くほど簡単なことではありません。
妹さんのお仕事にリサーチが絡む場合、恐らく妹さんは既にインターネットで、他人の離婚経験談やその経緯などを調べて、
義弟さんと一緒に問題に向き合うよりも、例によってご自分のペースで離婚に向けての下準備をしていらしたのではないかというのが私の憶測です。
お問合せの「どんな形で結婚生活をスタートしていたら、もっと公平な夫婦関係が築けていたか」についてですがです。
Sさんのご質問がそのまま回答であるというのが私の正直な意見です。
すなわち結婚生活をもっと公平な夫婦関係でスタートするべきだったと思います。
社会における男女の立場が今も異なるとは言え、公平な夫婦関係は目標ではなく、結婚の大前提です。
共働き夫婦で、家事全般を妹さんがこなして、家計費折半というのは、どう考えても公平ではありません。
そして私もSさんがおっしゃる通り、妹さんが「手を出されるとかえって面倒」という理由で、家事を1人で行っていたことが、義弟さんの亭主関白を悪化させたと考えます。
Sさんはそこで 「何でも言う通りにしていたら、犬でも人間を馬鹿にするようになる」という私の持論を引用して下さったのですが、
実際には妹さんは、自分にとっての効率を優先させて、相手に歩み寄る気持ちが無く、相手の成長、改善、向上を望んだり、それを促す気持ちが欠落しているように見受けられます。
これは見方を変えれば、相手が嫌になったところで 見切りを付けることが分かり切っている関係です。
妹さんは過去の交際でも、相手と向き合って お互いの関係を高めようとはせずに、嫌になったところで見切りを付けで別れていらしたかもしれません。
単に恋人として交際している分には それが別れる原因になったところで何ら問題はありませんが、結婚となると財産や家族・交友関係、生活全般が関わる契約関係であると同時に、
忍耐、許容、助け合い、支え合い、歩み寄り、協調、理解をお互いにしながら長く連れ沿い、絆を深めながら築いていく人生のサポート・システムです。
今の妹さんからは、そんな忍耐、許容、助け合い、支え合い、歩み寄り、協調、理解を示す姿勢が感じられませんので、
結婚生活だけでなく、職場で後輩の指導をする際にも、相手がどうやったら理解し、習得し易いかなどを考えるよりも、
通り一遍のトレーニングをなさっているだけかもしれません。またミスが起これば 根気良くミスの原因や再発防止策を教えるよりも、
ご自身であっという間にそのミスをカバーするだけで、成長の機会を摘んでいらっしゃるかもしれません。
ですがスタッフはきちんとトレーニングすれは、やがては自分を支える組織やシステムになり、そこからステップアップをする余力がもたらされます。
同じ事は夫婦間にも言えることで、トレーニングと向上があるからこそ、継続と進化が望めるのです。
妹さんは今離婚をすれば、別の相手との再婚はさほど難しくないと考えていらっしゃるかもしれませんが、現時点での妹さんの体質では再婚は出来ても、
その継続は望めません。この機会に妹さんには「たとえ自分に能力があっても、相手を攻略する術と協調する忍耐を持たなければ 何事も達成できない」ことを悟って頂いて、
まずは離婚を急がず、義弟さんを相手に攻略と協調の練習をすることをお薦めします。
未婚の女性ほど「男性を攻略して結婚する」という意識を持っていますが、実際には戦略を持って攻略すべきなのは結婚後の長い人生においてです。
義弟さんも、今となっては妹さんが 「実は離婚を考えるほど 自分に夢中ではなかった」ことに気付いて態度を軟化させていらっしゃるようなので、
妹さんには 「この私でさえ、こんなに短期間に嫌気が差したのだから 貴方の夫としての態度は酷い」、「再婚したところで、絶対に新しい妻にも逃げられる」と、
義弟さんがこれまでを反省せざるを得ない伏線を張ってから家庭に戻って頂いて、まずは家事分担について話し合って頂きたいと思います。
そして分担はいきなり実践するのではなく、まずはトレーニングから始めて、これまでとは異なる計画性を持ったアプローチをしながら、相手との駆け引きを学んで頂きたいと思います。
たとえそれが上手く行かずに離婚になったとしても、現状で離婚をするよりは妹さんにとっても、義弟さんにとっても遥かに将来のための改善が見られるはずです。
人間は不完全で当たり前、ミスや過ちをしても当たり前の生き物です。大切なのは失敗や問題から学ぶことで、何事も学ぶ前に放り出すべきではないのです。
最後に、文中で妹さんにとって自己肯定感が大切な様子を何度も指摘させて頂きましたが、
そういう人ほど 他人の実績を認め、評価することで視野が広がり、成長します。それが妹さんのコミュニケーションに欠けていた部分かもしれませんので、
今後は努めて周囲にポジティブな目を向けて、評価する姿勢を心掛けて頂きたいと思います。
Yoko Akiyama
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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