このコーナーの大ファンです。もう何年も読ませて頂いて、秋山さんのアドバイスを自分に言われているような気持ちで読んでいます。
私は5年前に結婚し、一児を設けたのをきっかけに育児に専念するために2年前から専業主婦になりました。ですが実家が商売をしていることもあり、週に1~2回ほど実家で子供を見てもらい、
仕事を手伝うようになりました。 特に決まったお給料のようなものは貰っていませんが、定期的にお金を包んでくれます。
幸い実家は近くで、私の物や子供の物など何かしらのもらい物も頻繁にあって、帰る時には夕食のおかずを持たせてくれるので料理の手間も省けます。
だから私も気分転換が出来て、お互いのギブ・アンド・テイクが成り立っている感じです。
ある時、定年した義父が 趣味を通じた知り合いをパートナーにして、その趣味グッズの店を始めることになりました。
店舗は あるスペースを間借りするような形で 家賃は殆ど掛からず、
趣味を通じた知り合いも多い義父が仲間のたまり場になるようなお店を気楽にやっていこうというものでした。
その案には義父に一日中家に居て欲しくない義母は大賛成でしたし、義父が定年以降ボケてしまうことを心配していた夫も賛成でした。
ですが義父もパートナーも商売については殆ど経験や知識がなく、特に義父は会社の重役時代が長かったので、
自分では驚くほど何も出来ない人です。
準備の段階では、品物の仕入れ先でもある知り合いが かなり助けてくれたので、何とか開店までは漕ぎつけましたが、義父もパートナーもかなりのんびりしていて、
何が何処にあって、物が売れた時にどういう流れになるかなどの基本的なことをしっかり把握しておらず、開店前日と開店日にお手伝いに行った私は正直呆れてしまいました。
私は物心がついてから実家の商売を手伝ってきたこともあって、歯がゆさから日頃の実力(?)を出してしまい、いろいろなことを取り仕切ってしまったのですが、
それが裏目に出てしまい、開店日の翌日には義母から「これから週に何日なら来られるか」という打診が来てしまいました。
私は最初はお給料を貰える話なのだと思い込んでいたのですが、義父もパートナーも「趣味でやっている店だし…」とお給料を支払うつもりはなく、
専業主婦で時間が余っていると思しき私が「週2日くらい ちょっと手伝ってくれたら それで十分」なのだそうで、要するに義父のために無料奉仕をしろという話なのです。
義母は 「私は貴方くらいの年齢の時に、義理の父親の看病のために毎日病院に通ったけれど、一銭も払われることなんてなかった。家族とはそういう助け合いで成り立っているもの。貴方だって
仕事をしないで息子に養ってもらっている訳だし、ちょっと我慢してやってくれれば良いこと」という感じで、嫁いびりとは言いませんが 「毎日暇な専業主婦は実家のための手伝いは当たり前」的な言い方で、
二歳児の育児と家事がどれだけ大変だか分かっていません。
夫も最初は「軌道に乗るまで手伝ってやってよ」という感じだったのですが、今では「実家の商売はタダで手伝って、義実家にはできませんっていうのは うちの両親に対して角が立つんじゃない?」と言い出す始末で、
正直言って、私はそれが一番頭に来ました。
私が義父の店を手伝う時は、義母か 二世帯住宅で同居中の義姉が子供を見てくれますが、いろいろな部分で実家と違うので子供が嫌がっているのが分かります。
それに実家の店は忙しいので時間を忘れて働くことが出来ますが、義父の店は道楽でやっているので 開店休業状態で、私の仕事と言えば 店番、義父の知り合いが来た時のお茶くみ、会計、品物の整理などで、
1日が死ぬほど長く感じられます。義父は知り合いが来る日以外は、私が手伝いに来ると店を私に任せてどこかに行って、暫く戻りません。
一緒に居ると気を遣うので、私は義父が居なくなってくれる方が良いと言えば良いのですが、「何故義父が給料も払っていない私に店番を押し付けて出掛けるの?」と考えると腹が立ってきます。
それだったら店などやらずに、毎日1人で外に出掛ければ良いはずです。
大体、義父の店は 仕入れ先の知り合いに義理立てして、売上がさほど無いのに仕入れだけは続けているので赤字経営です。
実家のしっかりした商売の中でいろいろなことを学んできた私には、素人が老後の道楽として経営のノウハウも学ばずに店をやって、分からないことや面倒なことを給料も払っていない人間に頼ろうとしていることが許せません。
義父の店を手伝うようになってからというもの、「何で私がこんなことに関わることになったのか…」という不満と 「せめて不要な仕入れだけでも減らす方向に持って行かないと」と心配する気持ちが交互に襲って来て、
考えているだけで擦り減ってしまいます。先日には子供の小さな粗相に今までにないような怒り方をしてしまって、このままでは子供のためにも良くないと思っています。
夫にも文句を言う機会が増えたせいで、夫婦仲も悪くなっているのを感じます。
どうやったら波風立てずに、義父の店の手伝いを断ることが出来るでしょうか。
何かアドバイスをお願いいたします。よろしくお願いします。
- C -
メールを拝読した私の憶測に基づく意見を申し上げると、今のCさんのクレームは 義理のご両親、及びご主人にとって
「時間が余っている専業主婦の理不尽なわがまま」、すなわち面倒でやりたくないから文句を言っているようにしか聞こえないのだと思います。
だからこそ「嫁いだからには実家のためにやっていることを、義実家のためにやってくれても…」という甘えをCさんに押し付けてくるように見受けられます。
私自身、最初は頂いた相談を ”ご義実家とのトラブル” という視点で拝読していました。
ですが文章が進むうちに、Cさんが書いて下さっているのは ビジネスの見地からお義父さまのお店の問題点や、経営者の甘えを指摘する客観的なご意見であり、
Cさんがどうやってその手伝いをお断りするか以前に、このままお店の経営を続けるべきでないことを 義理のご両親とご主人に理解して頂くべきと考えるようになりました。
そもそも商売は道楽で出来るものではありませんし、ビジネス、商売と名が付く限りは利益を上げるべきなのです。
お義父さまのお店は普通であれば開店まで行きつかなかった状況です。お義父さまとパートナーは 家賃を払う必要が無く、無料の労働力を頼りに出来ることを
これ幸いと思っているかもしれませんが、見方を変えれば家賃も人件費も捻出出来ないビジネスという事なのです。
しかもお二人は収支のバランスも在庫総額も、営業経費、見込まれる税金なども把握していらっしゃらないようですので、
そんな状態では知り合いの仕入れ業者さんから不良在庫を押し付けられて益々負債が嵩んでも不思議ではありません。
どんなにコストが掛からないビジネスでも、不良在庫を抱え続ければ損失が出ますし、儲けが出ない限りは損失は増え続けるのです。
ですからまずはご主人に このままお店を続けることは ご両親が老後の蓄えを減らすだけであること、道楽でも店として経営している限りは
トラブルが起こった時に それなりの責任を負わされるリスクなどを、家族としてではなく、
”経営の内情を知る善意の第三者” としてご説明されることをお薦めします。
その際には 赤字経営の実態が一目で分かるような 在庫額、出費等が提示できる資料を 適当でも良いので作成されることをお薦めします。
そうした資料が深い考察に基づく見解である信ぴょう性を高めてくれます。
ご主人が理解して下さったら、次はご主人と一緒にお義母さまに同じ説明をして、お店を続けることが如何に老後の金銭面にマイナスであるかを納得して頂ければ、
Cさんはその段階でお店の手伝いをする必要はなくなるはずです。
お義母さまとて、いくらお義父さまに毎日家に居て欲しくないとは言っても、店が毎月赤字で、今後それが膨らんだ場合のリスクを考えれば、
もっと別の事をしてほしいとお考えになるはずです。またお義父さまにしても Cさんに店番をさせてお店にいらっしゃらないのですから、行く場所はいくらでもあるはずです。
ご実家のお手伝いをして、商売が何たるかを理解していらっしゃるCさんなのですから、説得の際には
金銭的な損失を好んで続けるべきではないことを強調し、「無料奉仕をこれ以上続けるとストレスになる」というようなご自身の言い分や都合は一切持ち出さないようになさってください。
この時に避けなければならないのは、「もう少し様子を見てから決めよう…」と決断を先送りにされてしまうことです。
お義父さまのお店は 続けていても儲かる見込みがないビジネスです。
損をするだけのビジネスから手を引くのは早ければ早い方が良いのです。
ですから説得の際には やがて膨らむ負債や、店舗経営に伴う不慮の出費等、お金が減って行くことだけにフォーカスすることを強くお薦めします。
恐らくこの状況ではご主人、お義母さまへの説明や説得はさほど難しくはないのでは?というのが私の個人的な意見です。
というのもご主人とお義母さまがお店の経営をサポートしたのは あくまでそれぞれの都合であって、お店には一切思い入れが無いからです。
ですがお義父さまにとっては 趣味が絡んだお店ですし、お仲間への体裁もあるかと思います。たとえ全て人任せでオープンした店であったとしても
「せっかくここまでやったのだから…」というお気持ちから なかなか手を引く決断が出来ないものとお察しします。
そして「お金儲けは出来なくても、のらりくらり経営して自分や皆が楽しめれば…」などと、欲の無い考えで現状維持を望まれるかもしれません。
それが典型的な人間心理、もっとはっきり申し上げれば優柔不断な人間の心理なのです。
欲がなく、目指す目標が低ければ低いほど、それを止めさせたり、諦めさせるのは難しいものですが、
そのカンフル剤となるのが ”損を恐れる人間心理” です。
ある大学で学生にレジストレーションを早めて済ませて貰うために 「期限10日前までに済ませた人には50ドルのインセンティブを支払う」としたところ、
早めの申し込みをしたのは僅か12%の学生。期限前、期限後の申し込み数には殆ど変化がありませんでした。
ところが「期限日以降のレジストレーションは50ドルの罰金」と通達したところ、期限後の申し込みが驚くほど激減したとのことでした。
このことからも分かるように人間にとっては得をする喜びよりも 損をする恐れの方が 遥かにアクションを起こすためのモチベーションになるのです。
株式相場でも ロングよりも ショート取引の方が短期間に効率良く儲けられるのは、損を恐れる心理が株主を迅速な売りに駆り立てるからです。
ですからお義父さまへの説得も「このまま店をやっていても儲からない」ではなく、「このまま続けたら負債がどんどん膨らむ」と、危機感を強調して頂く方が遥かに効果的です。
最後に家族間というのは どうしても感情が絡むので、問題に直面した場合は その本質を見誤ってしまいがちです。
今回ご相談頂いた件も 先に申し上げた通り、Cさんがお義父さまのお店の手伝いから逃れることより、お義父さまにお店の経営を諦めて頂くことが問題の本質であり、
Cさんはその経営の問題点をしっかり把握していらしたのです。ですがノウハウを学ばずに頼ってばかりのお義父さまへのフラストレーションや、
Cさんの義実家への無料奉仕を当たり前と捉えるお義母さま、ご主人への不満のせいで、問題点から意識が逸れてしまったのが今回のご相談内容であったものと認識しています。
基本的に人間は厄介な事を誰かに押し付けようとする生き物です。
回ってきた厄介を逃れようとすれば、そのシワ寄せが自分に来ると恐れる人々の反発や反感を買うことになりますし、
厄介逃れを身勝手やわがままと解釈する人は多いのです。
厄介が生じた場合や 自分に回ってきた場合には、逃れるよりも むしろ”厄介の元”を断つ方が賢明な解決策です。
そもそも厄介を生み出すようなものは、余計なこだわりを捨てて 頭を冷やして判断すれば 存在する必要や価値が無いケースが殆どです。
”厄介の元”を断てば 厄介も消えることを今回のことで悟っていただければ、
その思考は 人間関係から不必要な行事や習慣まで、今後のCさんの人生の様々な局面で有益に活用できると信じています。
Yoko Akiyama
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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