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本日は妹のご相談でメールを致しました。よろしくお願いします。
妹は未婚でアラサーです。過去3年ほど 同じ業界の合コンで出会った彼と一緒に暮らしています。
妹は留学経験があり、キャリアもバリバリという言葉が相応しく、休日出勤も残業も厭わず、同じ業界で働く私の夫が「熱血」とからかっているほどです。
彼氏は妹よりもずっとのんびり派で 妹のように働くのはまっぴらのようで、料理が趣味で、掃除も厭わないキレイ好きです。
彼より高給取りの妹がローンを組んで購入した都心のマンションに家賃無しで住んでいますが、家事が苦手な妹には彼の存在がとても有難いようです。
妹は少し前に親友が正式な結婚式は挙げていないものの入籍したこともあり、彼氏と結婚する気満々です。
妹と彼氏は過去に何度か家に夕食に来たことがあり、私と妹がキッチンで話している時には 夫が彼氏と男同士の会話をしていますが、
妹たちが帰る度に夫が「彼氏は妹と結婚する気はなくて、今の時期だけ割り切って一緒に暮らしているのでは?」と言うことがあり、私も妹と彼氏の結婚に対する温度差は薄々感じていました。
妹は最近ではハワイでの挙式、そうでなければかつて留学していたLAで家族や親友だけを招いた小規模な挙式を真剣に考えるようになり、自分でリサーチしては
「海外の挙式に参列してもらう場合は御祝儀無しが普通なのかな?」などと言っています。「彼は何て言っているの?」と訊くと「いつも通り無関心。旅行も部屋の模様替えも、私がリードしないと何も先に進まないのよ」と言っていました。
ところが 少し前に妹が彼氏と家に夕食にやってきて 結婚の話題が出た時には、2人の会話があまりに刺々しくて驚きました。
妹が煮え切らない彼の言い分に腹を立てて、彼氏が冷めた、皮肉めいた口調で返す感じです。そして2人の共通の男友達が 10歳くらい年下の女性と結婚した話になった時には、
「仲間の間では ああいう夫に口答えしなくて、いつもニコニコしている女性がいいなぁ~って話していたんですよ」と言った彼氏に、
「ああいうのに限って実はとんでもない女だったりするのよ。これだから女を見る目が無い男は後で自業自得の酷い目に遭うのよ」と妹が感情的に言い返したので、私と夫は目を見合わせてしまいました。
2人が帰った後、夫は「彼氏の本音が出た」と言っていましたが、私は彼氏の「夫に口答えしなくて、いつもニコニコしている女性がいいなぁ~」というフレーズがやたらに引っかかって
「この人と結婚しても妹は絶対に幸せになれない」と思うようになりました。
多分、何年も前に離婚した私の知人の夫が 結婚した途端に「夫に口答えするな」と怒鳴り始めた話を聞いていたので、そう思ったのかもしれません。
夫は彼氏のことは人間的に好きなようで、妹よりも彼氏の味方の立場です。以前 妹のことを彼氏が「頼もしいを通り越して、強引に突っ走るタイプなんですよ」と困り顔で言っていたそうで、
「もし2人が結婚したら、妹に押し切られた彼の方が気の毒。幸い妹の仕事が忙しいから、家庭内離婚のまま夫婦生活は続けられるかもしれないけれど…」などと言います。
私は以前までは 妹が彼氏とゴールインすることを望んでいましたが、今は高額な式を挙げて 結婚に漕ぎつけたとしても、その前にダメになっても
妹1人が傷つくのが目に見えているので、その前に妹に現実と向き合って欲しいと思うようになりました。
ですが妹は彼との結婚を考えているだけでなく、「何年後を目途に子供を作る」といった人生計画まで立てています。
「他に良い人が出てきたらどうするの?」と尋ねると、「今の仕事のペースだと、別の人と恋愛を一からやり直すなんて無理無理」だそうです。
あまり反対すると妹の性格上、益々結婚したがることが分かっているので 遠回しに不安をほのめかすだけにしていますが、
妹に結婚を思い止まらせる良い方法はありますでしょうか。妹のような性格を説得するのに有効な方法をアドバイスして頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。これからもコラムやアドバイス楽しみにしています。
- E -
私の予想をズバリ申し上げると、彼氏は妹さんとは結婚することはありません。
私が知る限り、女性がイニシアティブを握って押し切ることが出来るのは交際、同棲までです。
結婚は男性がある程度積極的でない限りは、女性がどんなに頑張ったところで たどり着くことはありません。
結婚に踏み切る男性のドライヴィング・フォースは、相手に対する愛情だけではないのは言うまでもないことです。
家庭を持つという社会的ステータスを望んでいるケースもあれば、女性が資産家や高給取りである場合は経済的安定を求めているケースもあります。
中には高齢、もしくは健康状態に問題がある親や家族のための無料の介護&家政婦を探している場合もあるようですが、
こうしたメリット・ベースのモチベーションは、女性が経済的に裕福な男性との結婚を望むのと同じです。
それとは別に 「夢中」と言えるほどの恋愛感情が無い場合に、男性は結婚相手として「扱い易い女性」、時に「自分の言いなりになる女性」を選び、
女性は「一緒に暮らすのが楽で、自由にさせてくれる男性」を選ぶ傾向が顕著です。
すなわち恋愛感情が希薄であればあるほど 自分の保身を優先に考えるものですが、私は不必要な苦労や我慢を美徳とするような生き方は奨励しないので、これも悪いこととは思っていません。
Eさんのメールから私が受けた印象では、彼氏にとって妹さんとメリット・ベースで一緒に居られるのはパンデミック中の同棲までであって、
結婚相手として一生連れ添うには 妹さんは扱い難い存在と認識されていることです。
ですからEさんのご主人がおっしゃる通り、彼氏は妹さんと「今の時期だけ割り切って一緒に暮らしている」のだと考えます。
事実、感染問題が続くうちは新しい相手とのデートは難しかったですし、誰かと一緒に暮らすことを 万一自分が感染した場合の心の支えやある種の保険として捉える傾向はどの国でも顕著でした。
もし妹さんの都心のマンションが 彼氏の職場への通勤に便利であった場合は、妹さんが長時間勤務や休日出勤で家を空ける時間が多いだけに、
恋愛感情はほどほどでも一緒に暮らすメリットは十分にあったように思います。
一方の妹さんは結婚する気は満々かもしれませんが、彼を愛する気持も満々かと言えばそうでもないように思います。
妹さんが結婚に前向きなのは、単に「彼と結婚する」と心に決めているからで、
仕事のプロジェクトやノルマ同様の達成意欲や、人生におけるステップアップ欲に駆り立てられているだけのように見受けられます。
妹さんにとって同じ業界で働く彼氏は、自分の仕事の状況や忙しさを理解してくれる存在でありながら、自分のようにアグレッシブにキャリアを追求しないので、
競争意識など持たずにやって行ける上に、自分が苦手な家事を厭わない理想的な夫像に映っているはずです。
そして結婚してからも同棲中のように 彼が家事を積極的にサポートする生活が続いて、やがて子供が出来れば昼間はシッターを雇い、自分が残業や休日出勤の際には
彼氏が子供の世話もしてくれることを勝手に想像しているのかもしれません。
ですが Eさんが引っかかったとおっしゃる「夫に口答えしなくて、いつもニコニコしている女性がいいなぁ~」というフレーズが象徴する通り、
彼は妹さんが思っているような献身的な男性ではなく、むしろ結婚したら妻を自分より下の立場に捉えるタイプのように思います。
妻の言い分を「口答え」と表現する男性が 夫婦平等や妻へのサポートを実践するようには思えません。
ですから今、彼氏が家事を積極的にやってくれているのは そもそも料理が好きで きれい好きなのかもしれませんが、自分が家賃を払わずに
妹さん宅に滞在している引き換えのバランシング・アクトと判断するのが妥当だと見受けられます。
本人には夫として 生涯それを続ける意志は無いはずですし、それ以前に彼氏は妹さんとの結婚を望んでいないと思うので、
妹さんがこのまま一人で突っ走って結婚の計画を本格的に進めようとすれば、彼氏はそれに流されるよりもストップを掛けるはずです。
そもそも妹さんに結婚を諦めさせることが出来るのは彼氏からの結婚拒否しかありません。ですから、この状況でEさんは何もする必要はありません。
あるとすれば、彼氏が別れの意志表示をして妹さんが落胆した際に、彼が実際には妹さんが思っているような献身的な夫になるタイプでは無かったこと、
妹さん自身も彼との結婚にマインドセットされていただけで、実際にはさほど彼に愛情を注いでいた訳ではないことを気付かせてあげることです。
世の中には放置しておけば、なるようになることは沢山ありますし、それが最善の方策であるケースは多いのです。
私がEさんのメールを拝読している最中に思い出したのが、もう何年も前の「60ミニッツ」という報道番組で特集されていた心理学者兼マリッジ・カウンセラーのセオリーでした。
それによれば 「日頃の会話に”怒り”、”競争心(嫉妬)”、”皮肉”、”蔑み” という4つの要素のうち2つ以上が確認される場合、そのカップルは3年以内に離婚する」というもの。
報道番組では新婚カップルの4組の会話を録画してカウンセラーに分析させましたが、そのうち彼が離婚を予言したのは3組。
それを聞いた当人達は一様に驚き、気分を害しており、中には「絶対に自分達は離婚しない」と豪語した夫も居ましたが、3カップルとも2年以内に別れたというのがそのセグメントの結末でした。
私がこのセグメントを忘れられない理由の1つは、カップルの映像の会話だけでなく、その目線やボディ・ランゲージ等にも不協和音が感じられるにも関わらず、本人達が全くそれを認識していなかったことです。
「愛は盲目」という言葉は相手の欠点が見えない状態を指す言葉ですが、
実際には恋愛や結婚の相手を間違える場合、本当は相手のことが好きではない自分に気付かない、自分が相手を好きだと思い込むなどして、
相手よりも 自分自身を見誤っているケースの方が多いのです。
別れた後に「どうしてあんな人が良く思えたのだろう」と反省して、「相手を見る目が無かった」と嘆く人は少なくありませんが、
深く掘り下げて振り返ると、実際には交際を始めたばかりの頃や結婚の前の段階で相手の欠点や問題点に気付いているのです。
そんな欠点や問題点の不安を無理に良い形で解釈したり、「今の時期さえ乗り切ったら ちゃんとしてくれるに違いない」、「結婚したら変わる」、「子供が出来たら変わる」、「親との同居を解消すれば全てが上手く行く」、
などと 時間の経過や状況の変化に期待して、本当は好きでもない人間、自分を不幸にする人間と一緒に居る努力をする人は驚くほど多いのです。
Eさんは妹さんと彼氏の会話に 妹さんの怒りやフラストレーション、彼氏の蔑みや皮肉を感じられたと書いていらしたので、
そもそも このお2人は結婚するような相性ではないように思いますが、人間には実際に経験をしなければ学べないことは沢山あるのです。
特に妹さんのように 周囲を気に留めずに強引に突っ走るタイプの場合、教えられるよりも自分で問題に直面する方が有効な学びが得られるはずです。
留学経験があり、お仕事もバリバリこなす妹さんには 様々な問題を乗り越えるだけの力量や精神力が備わっているはずなので、
余計な口出しをするよりも 1人の大人として判断や生き方を尊重して、優しく見守って差し上げるのがベストなのだと思います。
Yoko Akiyama
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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