6月19日、ジューンティーンスのホリデイにオープンし、既に数か月先まで入場券が完売する大人気を博しているのがオバマ・プレジデンシャル・センター。
アメリカでは歴代大統領が任期終了後に自らの功績とその時代背景を歴史に残すための博物館、記念館を”プレジデンシャル・ライブラリー”として設立するのが慣例となってきたけれど、
オバマ氏はあえて”プレジデンシャル・センター”と名付けているとあってこれまでの概念を覆すもの。
19.3エーカー(約7.8ヘクタール)という歴代最大規模の敷地内にそびえ立つセンターが位置するのはシカゴ南部のジャクソン・パーク。
かつては中央を通る高速道路によって分断されていたパークを、道路撤去によって設計チームが再びつなぎ合わせ、見事にパークと一体化したのがこの巨大なセンター。
高さ225フィート(約68メートル)の博物館のタワーがシンボルとしてそそり立つものの、それ以外のフォーラムや図書館等の別館は、
新たに作り出された地形に上手く溶け込み、市民の憩いの場としてもデザインされているのがこの大型施設。
センター内には多くのプレジデンシャル・ライブラリー同様、大統領夫妻の所縁の品や趣味、大統領夫妻を描いたアートが見られるけれど、
オバマ夫妻の場合はファーストレディにしてトレンド・セッターであったミシェル夫人のファッションから始まり、
オバマ氏が多忙なスケジュールの合間にスタッフと楽しんだバスケット・ボールを反映して、NBAサイズの本格的なバスケットボール・コート、
そして2009年、第1回目の就任式パレードのオバマ夫妻を再現した銅像、夫妻の最新ポートレート等、バラエティとエンターテイメント性が豊富。
決して退屈な展示ではなく、モダンな近代建築もデザインの見地から興味深い仕上がり。
センターの目玉である花崗岩で覆われた箱型の博物館タワーは、「空に掲げられた4本の手のように見せたい」というオバマ氏の意向に沿ってデザインされたもの。
象徴的であるものの、どこか威圧的で窓が少ない独特な外観については建設段階から賛否両論で、オバマ+オベリスクを合わせた造語「オバマリスク」と揶揄されてきたもの。
完成&オープンに至った今も、センターが掲げる「民主主義、平等、希望ある未来のための開かれた世界」のメッセージとは裏腹に
冷たく、人を寄せ付けない独善的なイメージを抱く人々も少なくないのが実情となっています。
オバマ・プレジデンシャル・センターの目玉であり、政治家としてのオバマ大統領の軌跡が体感できるのはメディア・センター。
同センターは 歴代大統領図書館のように公文書を保管・研究することを目的とはしておらず、オバマ政権の公文書はデジタル化されて別の場所での管理。
代わりに「民主主義の基本(Democracy 101)を学ぶコーナー、大統領選のディベートや、オバマ氏の有名なスピーチ等をビデオやメディア報道で振り返りながら、
アメリカの近代史に思いをはせることが出来る展示。視覚的なアピールを重視た展示は、決して退屈ではなく、エンターテイメント性さえ感じさせるのは見事なかぎり。
博物館エリアには、オバマ政権下の大統領執務室を忠実に再現した展示もあり、オバマ第一期政権誕生時は、日本で言うリーマン・ショックの直後。
改装費を節約し、ブッシュ政権時代のインテリアをほぼそのまま引き継いだ執務室は、金ピカのオーナメントで溢れる現在のトランプ政権の成金趣味の執務室とは180度異なる印象。
もちろん施設内には図書館も設けられ、その書籍のラインナップは幅広いインクルーシブな文献。
そのライブラリーの屋上には「エレノア・ルーズベルト・フルーツ&ベジタブル・ガーデン」が設けられ、米国史上最も偉大なファーストレディの名前が付いたこの菜園から収獲された野菜や果物は、
センター内の飲食店の食材として使われるとのこと。また地元のファーマーズ・マーケットと連携し、地域の食のエコシステムを支援する方針で、
ファーストレディに就任直後から、ヘルシーな学校給食のためのプロジェクトに取り組んだミシェル夫人の「健康的食生活推進活動」を引き継いでいるのだった。
センター内で目玉となっているのが、多くの現代アーティスト、特にカラフルなバックグラウンドを持つマイノリティ・アーティスト達によるダイナミックなアートの数々。
巨大かつモダンなステンドグラスや、特大サイズの3Dアート、絵画、バスケットボール・コートや図書館の壁にもユニークなアートが溢れ、
それぞれがオバマ夫妻の人生、多様性、民主主義、市民参加といったテーマを表現。
随所に見られるアートも施設のメッセージを伝える重要な役割を担い、現代アート・ギャラリーとしての側面を持つのが同センター。
これだけの大規模のセンターの出現が、地元経済への投資や雇用の創出に繋がるのは言うまでもなく、今後
国内外からのヴィジターが多数訪れるのは、既に前売りチケットの売れ行きが立証する通り。
その反面、近隣の住宅価格と物価の上昇が懸念されるものの、緑溢れる穏やかな周辺環境を整えたオバマ・プレジデンシャル・センターが
市民の憩いの場となるのは確実視されているのだった。
敷地内には「子供達には太陽の下、緑の中で遊んでほしい」という意図が込められたプレイ・グラウンドも設置され、
親子でも楽しめて、人々の交友をもたらすように配慮されているとのこと。
NYタイムズ紙が「21世紀の大統領図書館とは何かを問い直す、新しい公共施設」と評したオバマ・プレジデンシャル・センターは、
「市民が集まり、学び、民主主義への参加を促す場所」というオバマ夫妻の構想を具現化した全く新しいアプローチ。
オープン前日に行われたセレモニーに生存する歴代大統領として唯一招待されなかったトランプ氏は、今もオバマ氏を猛烈に敵視し、
自身のプレジデンシャル・ライブラリー建設のために既に多額の寄付を集めているのは周知の事実。そのトランプ氏が構想中なのは、同氏にとって全く縁が無いマイアミの高層ビル群にひと際高くそそり立つタワー。
サイズと金力だけに注力するトランプ氏の大統領センターが仕上がった時には、オバマ・センターとの様々な対比が明確になることが見込まれています。


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