Dec Week 4, 2024
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世界市場を拡大すべき日本のソフト・サイド
近年久々に会う友人と話題にするのが「最近、どんな音楽を聴いている?」ということ。
アメリカではストリーミングが主流になってから、ビルボードを始めとするヒット・チャートを意識する人がめっきり減ってしまい、
多くの人々にとって最新の音楽トレンドを知る手段になっているのはスポティファイの最新ヒット・プレイリスト。
以前であれば、流行っている曲はTVのバラエティ系番組のBGM、小売店のBGMで流れていたので、
曲名やアーティストを知らなくても、何となく聴いたことがあるものだったけれど、今ではTVを観ない人が増えて、
買い物もオンライン・ショッピングが殆ど。誰もがイヤホンをつけているご時世なので、多くの商業施設がBGMをカットしたり、控えめの音量にしているのが現在。
コンサート以外で同じ空間で誰かと同じ音楽を聴く機会が激減しているのは驚くばかりなのだった。
スポティファイ同様に、現在音楽のトレンドに多大な影響力を持つのがTikTok。特にジェネレーションZ、その後に続くジェネレーションα は
TikTokが音楽の情報源で、ビルボードだとグローバル・チャートにしか入らないような日本のアニメ主題歌が知られる要因になっているのだった。
ちなみにビルボードは「ホット100」がアメリカのヒット・チャート、グローバル・チャートは音楽市場の半分を売り上げるアメリカを除いた残りの世界のチャート。
アップル・ミュージックやアイチューンに関しては、アップル社内でさえミュージック・ビジネスに関わることに疑問の声が聞かれるとあって、
チャートが今も存在することさえ知らない人が多いのが実情。
かつては世界最大の音楽市場であるアメリカに進出するための足掛かりを人為にクリエイトするには、
金を払ってオンエア率を上げてビルボードで上位を付けることだったけれど、今やヒット曲を発信しているのはTikTokとスポティファイ。
この2つを情報源にするジェネレーションZ&α は、アメリカの上の世代とは異なり、歌詞が英語以外の楽曲にさほどアレルギー反応を示さない世代。
その意味で、CD売り上げにこだわってデジタル配信を控えて来た日本のアーティストはグローバル・シーンで遅れを取ったことは否定できないのだった。
かく言う私は、小学校の頃から外国アーティストが好きで、私の外国かぶれが始まったのは紛れもなく音楽から。
渡米してからも全く日本の音楽シーンをフォローして来なかったので、カラオケに行くと中国人の友達のJポップのレパートリーに驚いているような有様。
でも最近は日本音痴を反省して、Jロック、Jポップを時々聴くようにしていて、そうなったのは外国人の友達から日本人アーティストを教えてもらうケースが出て来たため。
リナ・サワヤマやカゼ・フジイ、ケンシ・ヨネズなどは、アメリカのメディアやアメリカの友人からの情報で知った日本人アーティスト。
ヨーロッパの友人と話すと日本人アーティストというと One OK Rockの名前が出て来るけれど、
彼らはスポティファイで2021年に日本人アーティストとして初めて10億回再生を突破した存在。アメリカより欧州で人気がある印象。
以前にもコラムで書いたことがあるけれど、私個人の考えでは、日本は神業的伝統工芸以外、物の生産や最先端テクノロジーといったハード面で世界と渡り合うのはもはや厳しいと思っていて、
それよりもソフト面、早い話がアニメやキャラクター、その延長線上にあるメタヴァースが日本経済復興の鍵を握ると真剣に考えて久しい状況。
現時点でアメリカを含む諸外国の若い世代をうならせることが出来るメイド・イン・ジャパンと言えば、食べ物を除けば断然アニメ。
そしてアニメを通じて日本的なセンチメンタリズムやエモーションが浸透してきた現在、
アニメ主題歌等を糸口に日本人ミュージシャンが世界にアピールできる可能性が大きく広がったと思っているのだった。
そんな私が昨今、ワークアウトの際に好んで聴いているのが日本人7人のガールズ・グループ XG。私はKポップ、Jポップと言われて違いが分かるほど双方に通じていないけれど、XGはどちらにも属さない
独自の路線を貫いているようで、楽曲は全て英語で、歌唱もラップもネイティブ並み。
9月頃からSNSを通じて XGの「Something ain't right」が盛んに流れてきたのをきっかけに、「IYKYK」、「Shooting Star」、「Woke Up」等が私のプレイリストに入っていて、
先日アメリカ人の友達に教えてあげたところ「ブラックピンクよりずっと良い!」と喜んでくれたのだった。
それにしても、昨今は音楽もさることながら、日本の若い世代がカッコよく踊るようになったのは驚くばかり。
先日も昭和生まれの友達と 「まさか自分達の目が黒いうちに、日本人のダンスがこんなに上手くなるとは思わなかった」と話していたけれど、
ダンスのリズム感は、英語を話す際のリズムにそのまま繋がるもの。
かつてはそのリズム感の無さが英会話におけるディスアドバンテージだったけれど、これからの世代は英会話のテンポ向上が期待できるだけに、
是非英語の楽曲でインターナショナルな成功を目指して欲しいというのが私の偽らざる気持。
正直なところ 日本人ミュージシャンの英語の歌詞は、文法的には間違っていないけれど、
「普通そんな風に言わないでしょ」という変なセンテンスが時折混じっているのが実情。
なので真剣に世界を目指そうという日本人ミュージシャンは、日本の事情に通じた外国人や、以前外国に住んでいた日本人ではなく、
売り込みたいと思う国に実際に住んでいるネイティブ・スピーカーにリリックのコンサルテーションを仰ぐべきだと思うのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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