Apr Week 3, 2024
H&M Designer Collab With Rokh
H&M デザイナー・コラボ・ウィズ・ロク
世の中は過去10年以上に渡ってコラボ・ブーム。今ではコラボの数が多過ぎて、
どんなに価格帯やジャンルが異なるブランドのコラボレーションでも、全く驚かないご時世になったけれど、
コラボ・ブームの火付け役の存在と言えるのがH&M。
2004年秋に発売されたH&Mと故カール・ラガーフェルドのコラボ・コレクションは、当時あっという間に完売したけれど、
私の記憶ではリアクションは賛否両論。
「H&Mがクリエイトすると、たとえシャネルのデザイナーの作品でもチープに見える」といった批判も聞かれていたのだった。
しかしH&Mのデザイナー・コラボはその後、価格も質もアップし、縫製やデザイン・ディテールもアップグレードした結果、
デザイナー側がH&Mとのコラボを切望するようになって久しい状況。
今も昔も、ほぼ販売と同時に完売するのは、リセール目的で購入するバイヤーが多数含まれているためで、
「H&Mのウェブサイトで完売したアイテムは Eベイで 倍以上のお値段で見つかる」 といっても過言ではないのだった。
そんなH&Mの最新のコラボは4月18日からの発売で、今回チームアップしたのはロンドン在住の韓国人デザイナー、”Rokh/ロク”。
フルネームは Rok Hwang / ロク・ファンで、久々に私にとって 購買欲をそそられるコレクションに仕上がっているのだった。
Rokhというブランド自体がスタートしたのは2016年、パリのファッション・ウィークに参加してショーを行うようになったのは2019年からのこと。
それ以前は、クロエ、ルイ・ヴィトンで修行を積んだ経験があるロクであるけれど、彼に最も影響を与えたのはフィービー・ファイロがクリエイティブ・ディレクターを務めたセリーヌで
働いた3年間。この時期に、服に対する考えが変わったと語るだけあって、
Rokhの手掛けるトレンチコートはフィービーのシグニチャーの1つ、ダブルレイヤー・トレンチコートの影響を感じさせるもの。
今回のH&Mとのコラボ(写真トップ、直ぐ上と、直ぐ下)は、2023年春夏シーズンのロクのコレクションを叩き台にクリエートされたもので、
私個人の意見では、このシーズンは現時点でRokhのベスト・コレクション。
この頃から、Rokhの作品をいろいろなところで見かけるようになったので、Rokhにとってのブレイクアウト・シーズンだったかと思うけれど、
それをリクリエイトしたH&Mのラインは、多くのアイテムが200~300ドル台。
H&Mの中では高額であるけれど、Rokhオリジナルのお値段に比べれば、お手頃価格。
既にファッショニスタの間でもかなり話題になっているので、今回のコラボも売り出しと同時にあっという間に完売することが見込まれるのだった。
写真直ぐ上は、今回のH&Mのコレクションの叩き台になったと思しきRokhの2023年春夏コレクション。
彼は、以前にカナダ・グースとのコラボでカプセル・コレクションをクリエイトしたこともあり、まだブランド設立から10年も経たないうちに、
どんどん活躍の場を広げているのが現時点。
過去2年ほどの間に、アメリカのハイエンド・バイヤーがロクの仕入れバジェットを大幅に増やしたことも伝えられていて、
久々に登場したファッション業界のライジング・スターと見られているのだった。
Rokhの作品は、クラシックでありながらエッジーで、マスキュランとフェミニン、構築的かつ脱構築的という、対象要素のバランスが評価されていると同時に、
ボタンを外したり、袖を結んだりすることで、様々なシルエットや着こなしが楽しめる IQの高いアイテムに仕上がっているのも魅力。
Rokh自身、以前はスタイリストをしていた経験があり、着用する側がアレンジ出来る服を好んでいるとのこと。
素材は全て社内でデザインされているとのことで、Rokhが最も関心を注ぐのはフィット感。
そして身体の動きに伴う服のムーブメントや フィットをマニアックなほど研究しているのは業界では有名で、
10人の女性から成る フィードバック・チームからのアドバイスを服作りに反映しているのだった。
写真上は、一番左がRokhの2019年秋冬シーズン、左から2番目が2023年秋冬、中央から一番右までの3枚が最新の2024年秋冬シーズンからの作品。
正直なところ、私は最新コレクションがこれまでの彼のシーズンの中で一番好みではなくて、今後あまりこの路線に進んで欲しくないと願うばかり。
ところで、よく「今、NYでどのブランドが人気?」と尋ねられることがあるけれど、ニューヨークはドバイと違って、お金があってもロゴを前面に出すファッションを着用する傾向は無いので、
よほどアイコニックなスタイルでない限り、どのブランドを着用しているかは定かでないけれど、
バッグについてはよく見かけるのがボッテガやロエベ。でも私が注意して見ている範囲内で バッグや小物を含め ロゴを観る機会が最も多いのはプラダ。
シューズ、バッグ、サングラス、バケット・ハットといった広範囲のアイテムでロゴを見かける機会が多く、プラダのロゴ・アイテムを着たり、持ったりしている人達は
年齢層からファッションセンスまで本当にピンキリ。
近年のバケット・ハットと並ぶメガヒットと言えるのが、2022年春夏シーズンに登場した小さな逆三角形のプラダのロゴマークをセンターにあしらったシンプルなタンクトップ。
1000ドルを超えるお値段にも関わらず、2024年も引き続き メディアも取り上げるヒット商品になっているのだった。
総じて若い世代ほど一流ブランドへの固執が強く、数週間前にダウンタウンで行われたヴェルサーチのサンプルセールでは、行列客が喧嘩を始める騒動になっていたけれど、
それより年齢と収入が上のファッショニスタと呼ばれる人々は、Rokhのようなエマージング・ブランドの個性的なアイテムを好んで着用するようになってきているのは紛れもない事実。
2022年の夏に、ブラッド・ピットが映画プレミアにスカート・スーツで現れ、多くの人々が同じスーツを買い求めようとしたものの、そのデザイナーはウェブサイトさえなく、
紹介者のためのカスタム・メイドしかしていなかったというエピソードがあったけれど、ファッショニスタの間では そうしたエクスクルーシビティの方が、
一流ブランドを着るよりも プレステージが高いと見なされているのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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