Tin Building, The Latest Addition to the Seaport
by Jean-Georges Vongerichten

ピアー17にミシュラン3ツ星シェフ、ジャン・ジョルジュがオープンした
アップスケール・フード&レストラン・コンプレックス、ザ・ティン・ビルディング

Published on 10/6/2022


8月後半にソフト・オープニングを迎え、9月から本格営業に入ったのが、ここにご紹介する ”ザ・ティン・ビルディング・バイ・ジャン・ジョルジュ”。
ジャン・ジョルジュとは、同名のミシュラン3ツ星レストランを経営するフレンチ・シェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴォングリヒテンで、 彼はシェフとは言え、自らのレストランをNYだけで11軒擁し、それ以外にもマイアミ、ラスヴェガス、ロンドン、パリ、東京、上海、ブラジルのサンパウロ等に現時点で 合計29店舗を展開する傍ら、これまでに料理本を5冊出版するビジネスマン。
そのジャン・ジョルジュの最新のプロジェクトが食材店、レストラン、カフェ、バーのコンプレックスである ザ・ティン・ビルディング。
この建物は、1907年にイースト・リバーを臨むウォーターフロントに建てられたランドマーク・ビルで、直後にこのビル内に移転してきたのがフルトン・フィッシュ・マーケット。 東京の築地魚市場のような存在であったフルトン・フィッシュ・マーケットは1822年にオープンし、2005年にブロンクスに移転するまでの間、 ザ・ティン・ビルディングを拠点にしていました。
そんな歴史あるビルに大ダメージをもたらしたのが2012年にNYを襲ったハリケーン・サンディ。 ティン・ビルディングだけでなく、周辺エリアも大打撃を受けたことから、複数年を掛けた復旧プロジェクトが進んできましたが、 そのプロセスの2018年、気象変動がもたらす異常気象対策として行われたのが、ティン・ビルディングを建物ごと持ち上げて、現在の場所まで32フィート移動させる大作業。
ティン・ビルディングの中にはそんなフルトン・フィッシュ・マーケット時代に撮影されたモノクロ写真も展示されていますが、 現代建築とは異なる、独得の味わいと親しみ易さを感じさせるのがこの建物です。






NYではチェルシー・マーケットが1997年にオープンして以来、イータリー、ゴサム・ウエスト・マーケット、マンハッタンヴィル等、 食材店、カフェ、レストランのコンプレックスは今では決して珍しくありませんが、ティン・ビルディングはピアー17、サウス・ストリート・シーポートの ランドマーク・ビルディングに位置するとあって、ニューヨーカーと旅行者の双方のマグネットになれる存在。
2フロア、約5万平方メートルの床面積は、そんなフード&レストラン・コンプレックスの中でも群を抜く規模。 1階フロアにはサウスストリート・シーポートにショッピングに訪れる人々の休憩所や、週末のブランチ、朝の昼のコーヒー・ニーズを満たすための カフェとベーカリーがあり、オープン当初から最も込み合っているのがベーカリー。 焼きたてのフォッカッチャやベーグル、ペストリーとグルメ・コーヒーを屋外のテラスで味わうのは、天気が良い日のティン・ビルディングの醍醐味の1つになっています。




他に1階フロアにはフラワー・スタンド、キャンディ・ショップ、そして生鮮食料を扱うマーケットがあり、ここでは新鮮な肉、魚、野菜、果物が販売されていますが、 フルトン・フィッシュ・マーケットの面影を感じさせるのが、新鮮な生ガキやキャビア、ロブスターをウォッカやシャンパン等のドリンクと一緒に味わえるロウ・バー、 ”Fulton Fish Co./ フルトン・フィッシュ・カンパニー”の存在。
天井の高いインテリアは、鉄骨の古い建物の持ち味を生かしたディテールが随所に見られ、デザインという点でも興味深いスポットになっています。




2つのフロアの移動はもっぱら中央に位置するグリーンにライトアップされたエスカレーターで行うようになっていて、2階にもパッケージ・フードのマーケットや レストラン、ショップが並んでいます。
ティン・ビルディング内には、シーフードピザ、ヴィーガン・ディッシュ、スシ、チャイニーズ、ブラッセリ―(カジュアル・フレンチ)のフルサービスのレストランが6軒あり、 レストランに隣接して4箇所に設置されているのがバー・エリア。 ティン・ビルディングは、”スタジアム・ライセンス”を取得ていて、これはアルコール・ドリンクを飲みながら歩くことが許可されたビルディング。
欧米は飲酒規制が厳しく、公園、公道など屋外での飲酒は禁じられているだけでなく、レストランやバーを除く屋内の公の場所でも飲酒は許されませんが、 その例外になっているのがスポーツ・アリーナやコンサート会場。ティン・ビルディングでは、その”スタジアム・ライセンス”のお陰で レストランやバー以外の場所でもアルコール・ドリンクを飲みながら ショッピングやマンウォッチングが楽しめるのに加えて、ドリンクを飲みながら施設内のバー・ホッピング(バーのはしご)も楽しめるようになっています。




写真上は、今時のフード&レストラン・コンプレックスに欠かせないヴィーガン・レストランである ”Seeds & Weeds / シード & ウィード”。 ヴィーガン料理に苦手意識がある人でも、同店のマッシュルーム料理のセクションから1品選んで味わうことが推奨されています。 自然光が入るウッド・インテリアの店内もいかにもヘルシーな雰囲気です。




写真上はピザ店、ザ・フレンチマンズ・ドウのインテリアで、右側は塩漬けにしたレモンをトッピングしたレモン・リコッタ・パイで同店の名物。 ”フレンチマン”というネーミングながらも、しっかりしたイタリアンで、パスタやアペタイザーも優秀。
写真下はチャーニーズ・レストランの ” The House of the Red Pearl / ザ・ハウス・オブ・ザ・レッド・パール ”。 ネーミング通り、ゴージャスな真っ赤なインテリアのアップスケール・チャイニーズ・レストラン。 ティン・ビルディング内をざっと歩いただけだと何処にあるか分からない、隠れ家的に存在するレストランになっています。




写真上は唯一の和食店であるSikku/シック。落ち着いたミニマリズムなインテリアの中で、新鮮なシーフードを用いたお寿司が味わえます。
写真下、左は2階フロアにあるアジア系の食材店、中央はティン・ビルディング名物のキャンディ・ショップ。 英語ではキャンディにはチョコレート菓子も含まれるので、世界各国のチョコレートやキャンディのバラエティが楽しめるのが同店。 右側はキッチン・ガジェット・ショップで、ここではジャン・ジョルジュの料理本ももちろん販売されています。


サウス・ストリート・シーポートは、交通の便は今ひとつで、まだまだ全体的な開発のレベルアップが望まれるエリアではあるものの、 着実に人々のトラフィックに繋がるアトラクションが増えているエリア。 ザ・ティン・ビルディングはそんな中で、フード&レストランの目玉的存在として順調なスタートを切った印象になっています。


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