Oct 27 〜 Nov 2 2024

Election Countdown
大統領選に勝利するのは本当にトランプか!?


今週のアメリカは、選挙のニュース一色であったけれど、既に今週末までに史上最多の7000万人以上が先行投票を済ませたことが伝えられる一方で、 設置された投票箱に危害が加えられる事件が3件起こっており、選挙日に投票所で見こまれるのが厳重な警戒。
特に前回2020年の大統領選、及び2022年の中間選挙の際には、不正投票を疑う共和党&トランプ支持者によって、投票所運営者や開票係のボランティア、その家族に殺人やレイプ予告が寄せられ、 実際に暴力、嫌がらせ、誹謗中傷のターゲットになった被害者が出たことから、選挙の行方を決めるスウィング・ステーツや過去の選挙で嫌がらせが多かった投票所で顕著なのが、防弾ガラスで開票所を仕切り、 パニック・ルーム(襲われた際に逃げ込む安全な部屋)やパニック・ボタン(トラブルが起こった際に、警備会社や警察に通報するボタン)を設置するというかなり本格的な防御策。 それと共に開票エリアでは、監視カメラを何台も設置して死角を作らないように配慮され、不正行為を疑われないための配慮が見られるけれど、 既にスウィング・ステーツであるフィラデルフィアでは、時間外に偽の投票用紙を持って押し寄せた人々を係員が受け付けなかったことに対して、 トランプ陣営が「投票所で支持者が不当に追い返された」と例によって証拠不在の訴訟を起こしたのが今週水曜のこと。
選挙関係者の間では「Truth doesn't matter to Trump supporters(トランプ支持者には真実は通用しない)」という認識が強く、 事実、ロシアがクリエイトしたトランプ氏への先行投票を破り捨てる映像を含むディープ・フェイク・ビデオで既に煽られているのがトランプ支持者の不正選挙への怒り。 現在スウィング・ステーツの選挙関係者が最も危惧するシナリオは、誤差の範囲と見なされる僅少差でカマラ・ハリス氏が勝利することで、 そうなった場合には 何十台のカメラ映像で正当性を主張しようと、トランプ支持者が暴徒と化すことが恐れられているのだった。



CEOがハリス支持を控える理由…


共和党の大口献金者と、保守派メガリッチが過去数ヵ月の間に水面下で進めて来たと報じられるのが、前回の大統領選後にトランプ氏が掲げた「Stop the Steal」のムーブメントの2.0。 既にトランプ氏が敗北した場合の訴訟準備が組織化されているだけでなく、ソーシャル・メディアからグラスルーツを装った様々なムーブメントが広範囲で計画される取り組みには、 トランプ氏を当選させる目的で結成された 約50の「選挙の公正性に取り組む団体」がネットワークで活動しており、流れ込んでいる資金総額は分かっているだけで1億4000万ドル以上。
隣国カナダでは春の段階でアメリカが大統領選後に内戦に突入したシナリオに対応するレポートが作成されていたけれど、これらの団体は実際に武力行使も視野に入れており、 トランプ支持者達が自主的に武器を持って立ち上がるようにデザインされたプランには、多数のプロのアクティビストが雇われているとのことなのだった。
ここへ来てトランプ氏優勢が伝えられ、既にトランプ氏のもとには「当選ほぼ確定」のレポートが届いており、リベラル・メディアも 「トランプ第二期政権が招くリスク」を記事にしているけれど、だからと言ってアメリカ国民の半分を占めるアンチ・トランプ派が 大人しくしている訳ではない様子を垣間見せたのが、リベラル・メディア、ワシントン・ポスト紙が オーナーであるジェフ・ベゾスの決断で、今回の選挙で特定の候補者の支持しない意向 (この場合ハリス氏への支持表明をしないという意味)を発表した途端、あっという間に20万人のサブスクライバーを失ったこと。 日頃、どれだけお金が無駄になっていてもサブスクリプションの対応に怠慢なアメリカ人が、電光石火のリアクションを示した背景には相当の怒りと失望があると判断すべきなのだった。 ワシントン・ポスト紙内でも、ベゾスの判断により「言論の自由を奪われた」と反発するジャーナリストが辞職をほのめかしており、今のご時世に新聞が20万人のサブスクライバーと優秀なジャーナリストを同時に失うのは経営上の大打撃。
今回の選挙ではベゾスだけでなく、これまで公に民主党を支持してきたビル・ゲイツやとJ.P.モルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモンいったビジネス界の大御所が、 ハリス氏に対する水面下の支持に止まっており、ジェイミー・ダイモンに関しては、彼が「トランプ氏への支持を打ち出した」というトランプ陣営によるデマは即座に否定したものの、 通常ならその際に語るべき 公のハリス支持は打ち出さず終い。
そうなるのはトランプ氏が「大統領に返り咲いた暁には自分の反対勢力を徹底的に潰す」と宣言し、自分を有罪にした司法関係者を含む一部を「刑務所送りにする」とまで脅しているため。 トランプ陣営は選挙活動前から、トランプ氏に忠誠を誓う超保守右派による政権の足固めを既に行っており、当選後に実現するのは時計の針を40年戻すと言われるスーパーコンサバティブ政権。 連邦準備制度理事会にもトランプ氏が発言権を持つ超中央集権が実現することから、CEOはそうなった場合にトランプ氏を敵に回すことを恐れているのだった。



市場関係者が大統領選を占う ”トランプ株”


かつてアメリカの大統領選挙の結果は、選挙前4ヵ月の株式市場の動向で占えると言われたものだけれど、それはもう時代遅れの指針。 大手投資家や有力ヘッジファンダーが先週あたりからトランプ氏勝利を予測した理由は、トランプ氏のソーシャル・メディア企業、トゥルース・ソーシャルの株価がジリジリとアップし、 加えてプライベート刑務所株が30%アップ。逆にハリス勝利で恩恵を受けるソーラーパネル会社の株価が下落していたため。
2016年の大統領選でトランプ氏が勝利した際も、その後3カ月ほどでプライベート刑務所株が100%アップしており、トランプ勝利を占う ”トランプ株”と言われてきたのがプライベート刑務所とトゥルース・ソーシャルの株。 特にトゥルース・ソーシャルは、先週のコラムでお伝えした予測市場が圧倒的に「トランプ氏勝利」に賭けていることを受けて大きく上昇したものの、今週半ばからはやや下降気味。 ソーラーパネルを含む環境関連株は、バイデン政権のIRA(インフレーション・リダクション・アクト)による助成金が 気象変動を否定するトランプ政権下では確実にカットされることから株価が下落。
その一方で、ビットコインも今週火曜日に史上最高値に迫る7万2000ドル台をつけており、これはトランプ氏が大統領になればクリプト・フレンドリーな政策が進むことが確実視されるため。 クリプト業界は今回の選挙で民主・共和の双方に最も選挙資金を提供した業界で、その目的は証券取引委員会による不当な扱いを改めさせ、通貨としての地位を確立するための規制を整えるため。 しかしトランプ氏の3人の息子が9月に立ち上げたクリプトカレンシーの新ベンチャーのパートナー2人は業界では詐欺師まがいで知られる存在。 しかもトランプ・ファミリーのビジネスがトランプ政権下の規制で恩恵を受けることは利益相反に当たることから、複雑な思いも寄せられているのだった。
株式市場&クリプト市場に最もダメージを与えると見込まれるのは開票に手間取ったり、選挙結果を不服とする訴訟等で、なかなか結果が出ない状況が続くこと。 市場と投資家は結果さえでればそれに反応するものの、何方に転ぶか分からない不確定状態を最も嫌うのだった。



選挙結果のXファクター


トランプ氏優勢が伝えられるとは言え、世論調査結果ではハリス氏とトランプ氏は全くの互角で、ポピュラー・ヴォートと呼ばれる総投票数ではハリス氏がトランプ氏を上回るとも言われるけれど、 過去の選挙において予測が外れる最大の要因となって来たのが、選挙人制度というアメリカ合衆国特有のシステム。
今回はこれまで民主党を支持してきた黒人・ヒスパニック系の男性票がトランプ氏に流れているけれど、 逆にこれまで圧倒的に保守共和党を支持してきた中年以降の白人女性達が、中絶問題を理由にハリス氏支持に回っており、 彼女らはマイノリティ男性よりも確実に投票所に向かう存在。
一方、今回初めて大統領選に投票し、未ださほど世論調査に引っ掛からないジェネレ―ションZは6割がハリス氏を支持。 しかしこの世代が本当に投票所に向かうかは蓋を開けて見なければ分からないのだった。
私は先週、カリフォルニアとフロリダに住むアメリカ人の親友達とそれぞれ選挙について話す機会があったけれど、どちらも昨今は 友人や仕事関連の人とは努めて選挙を話題にしないそうで、「早く終わって欲しい」というのが切実な思い。 同様に考えるアメリカ人は多く、理由はトランプ氏とハリス氏が共に国民に不人気であるため。 過去の選挙で2人より不人気だったのは2016年、2020年のトランプ氏と2016年の対立候補であるヒラリー・クリントンのみ。 未だ何方を支持するか決めかねている13%のスウィング・ヴォーターの大半は「どちらも支持したくない」という意見で、 彼らがラストミニッツで何方かに投票するか、もしくは棄権するかは今回の選挙で最後に残されたXファクター。
ワシントンDCでは既に幾つかのストアが入り口やウィンドウを板で覆い、暴動に備えるかのような体制で、国土安全保障省は今回初めて選挙人投票の認証を、 スーパーボウルや大統領一般教書演説に並ぶ国家特別セキュリティ・イベントに指定したと発表。 今週末の段階では、トランプ支持者も民主党支持者も共にトランプ氏の勝利をほぼ確実視すると同時に、もし当選しなければアメリカで大暴動が起こる可能性も危惧しているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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