Sep 29 〜 Oct 5 2024

Comb's Accomplice, Childless Dog Man, LVMH, Etc.
コムズと共に大物が性的虐待で訴えられる, 子無し犬男の悪あがき, LVNH新戦略, Etc.


今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのは、先週末フロリダ州からサウス&ノース・キャロライナ州にかけて大被害をもたらした超大型ハリケーン、ヘリ―ンの被害のニュース。
近年、大型ハリケーンの被害映像を見慣れている人々にとってもショッキングなほど壊滅的な被害は とても数ヵ月で復旧できるとは思えないレベル。 特にノース・キャロライナ州アッシュヴィルは幹線道路や橋の倒壊で、陸の孤島状態。そのため水と食糧が行き渡らず、個人や民間団体がドローンやヘリコプターで救援物資の輸送をサポートしている状況。
ヘリ―ンによる死者数は木曜の時点で215人を超えており、2005年のハリケーン・カトリーナ以来最悪の被害。行方不明者の捜索、電力復旧にもまだまだ時間が掛かる中、 最優先課題になっているのは、何と言っても水道水の供給復活。
現地の多くの被災者は、過去のハリケーンで受けた被害のせいで保険料が跳ね上がったせいで 保険に加入しておらず、災害保険が無い状態で 今回の壊滅的な被害を受けており、その経済的ダメージは計り知れない規模になっているのだった。



ショーン・ディディ・コムズの新たな訴訟で戦々恐々とするセレブリティ


今週3度目の保釈請求を判事に拒まれたのがセックス・トラフィッキング、恐喝を含む複数の容疑で拘留中のラッパー、ショーン・ディディ・コムズ。 その彼に対して今週起こされたのが120人の性的虐待被害者による新たな訴訟で、弁護団は虐待に加わった人物を共犯者として訴える意向を明らかにしており、 近日中に公開されるのがその被告リスト。
同じくセックス・トラフィッキングで逮捕され、拘留中に自殺を図ったジェフリー・エプスティーンに対する訴訟でも、エプスティーンが不正による有罪判決を受けてからも 融資を続けたJ.P.モルガンを含む金融機関に損害賠償が請求されていることから、コムズの組織的なセックス・トラフィッキングにおいても広範囲に渡る賠償責任が見込まれるけれど、 被告者リストには「良く知られた名前が含まれ、その数が決して少なくない」ことが既に弁護団によって明らかにされているのだった。
告訴対象となる性的暴行は1991年まで遡り、120人の被害者(原告)のうち半数は男性。最年少は当時僅か9歳の少年で、未成年として暴行を受けた被害者は25人。 性的暴行の大半は、コムズが毎年ホストしていた ”ホワイト・パーティー”で起こっていたようで、これはドレスコードがオール・ホワイトで、大量の白い粉(コカイン)が絡むことでも知られてきたイベント。 目下ハリウッドでは、このホワイト・パーティーに出席して 羽目を外したセレブリティが戦々恐々としており、インターネット上に溢れているのが過去のホワイト・パーティーのスナップ。 そこにはコムズと交際していたジェニファー・ロペスやコムズがアルバムをプロデュースしたマライア・キャリー、今は亡きシンガーのアーリア、多数のスーパーモデル、ロッカーのトミー・リー、デザイナーのドナ・キャラン、そしてトランプ氏の姿が見られるけれど、 このように数多くのセレブリティが姿を見せる理由は、その時々で旬のセレブリティや文化人に対して、コムズ本人が電話を掛けて直接招待する”リクルート活動”が行わていたため。 サラー・ジェシカ・パ―カー&マシュー・ブロデリック夫妻といった意外な顔ぶれが含まれているのも、TV版「セックス・アンド・ザ・シティ」が大ヒットになったのを受けてコムズ本人がアプローチしたからなのだった。
幅広い交友関係で知られるコムズながら、彼と共に被告リストに名を連ねる可能性が最も高いと言われるのは俳優のアシュトン・クッチャー。 一時極めて親しかった2人は、アシュトンがコムズについて「自分が喋ったら大変なことになるネタが沢山ある」とトークショーで語るビデオがネット上に出回っており、 MeTooムーブメントが起こる前の性的モラルが緩かった時代に、好き勝手に遊んでいた様子を2人が自ら暴露する様子が見られるのだった。
同様に自らの過去のビデオ発言でナーバスになっているのがジャスティン・ビーバー。 彼は15歳の時に「向こう48時間のジャスティンの後見人を引き受けた」と冗談で語るコムズと共に、 その48時間のパーティーで「15歳の少年なら誰もが夢見るようなクレージーな体験を楽しむ」と自慢気に語っており、 その後2016年、22歳になったジャスティンがコムズとパーティーを楽しむ映像も注目を集めたばかり。 ジャスティンはコムズの邸宅にFBIの家宅捜索が入って以来、激痩せし、精神状態が不安定であることが指摘されているのだった。
それ以外にも「訴追は無いだろう」と言われながらも 名前が挙がったのはレオナルド・ディカプリオで、彼は自分より20歳若いガールフレンドのパリコレ出演を追い掛けてパリ入りしてからも、 パパラッツィからコムズの容疑について質問攻めにされることから、外出時は表情を捉えられないように終始マスクを着用していたのだった。
コムズは現時点では訴追された全容疑に対して無罪を主張しているものの、もし有罪になった場合は終身刑の可能性があり、 彼が完全無罪の獲得が不可能と悟った場合に、パーティーと称して性的虐待に加担していた実業家やセレブリティが恐れているのが コムズが司法取引に応じること。 司法取引によって 「減刑と引き換えに、洗いざらい全てを証言する」ケースは多く、 コムズは既に「自分の無実を証明するために、裁判の証言台で何人かの名前を出す」と語っているのが現在。 そのため彼が何を言い出すかを恐れている人々は非常に多いとのこと。
もしその中に極めて大物が含まれている場合、「コムズもジェフリー・エプスティーンのように、刑務所で自殺したことになるだろう」という憶測が囁かれているのだった。



”子無し猫女” より悲惨な ”子無し犬男”?


今週火曜日には、副大統領候補であるJ.D.ヴァンスとティム・ウォルツのディベートが行われたけれど、トランプ氏VS.ハリス副大統領のディベートよりも 遥かに友好的でありながら、退屈と言われたのが2人のパフォーマンス。 ディベート全体でバイデン大統領の名前が出たのは僅か7回で、バイデン氏が候補ではなくなったとは言え、現職大統領の影がここまで薄かったディベートは初めてで、 これにはバイデン氏もプライベートに不服を漏らしていたと伝えられるのだった。
視聴者の関心は「2人の発言内容よりも、キャラクターに注がれていた」と言われる中、インターネット上に溢れたのが J.D.ヴァンスがアイライナーで目力を増して登場したという憶測(写真上左)。要するに副大統領ディベートの有権者へのインパクトはその程度のものなのだった。
こうした指摘を見ているとアメリカの政治が如何に茶番であるかを痛感するけれど、今週それを更に印象付けたのが 共和党のヴァージニア州下院議員に立候補したデリック・アンダーソンが、 フェイクのファミリー・フォト(写真上中央)でイメージ戦略を行ったニュース。この写真は生成AIでクリエイトしたディープ・フェイクかと思いきや、アンダーソンが友人の妻と子供を借りて撮影したもの。 その事実を暴いたのはNYタイムズ紙で、アンダーソンの選挙陣営がそれを認めたツイートは600万回閲覧され、一躍ヴァイラルになったのがその写真。
人工妊娠中絶撤廃を求めるアンダーソン自身は、愛犬と暮らす独身者で、9月にフィアンセと選挙前の婚約に漕ぎつけたばかり。 J.D.ヴァンスが かの有名な ”子無し猫女発言” と共に語った「子供が居ない政治家には国政は任せられない」という主張を 犬に置き換えたのがデリック・アンダーソンなのだった。 今回の選挙でファミリー・ヴァリューと中絶禁止をアピールする共和党の候補者にとって、「子無し独身者」であることは よほど年齢が若くない限りはイメージが悪いのは紛れもない事実。
その共和党は かつて”ファミリー・ヴァリュー”をスローガンに女性有権者を獲得する傾向にあったけれど、時代は変わって現在このスローガンがアピールしているのは どんどんコンサバティブになっていく若い独身男性。 逆に女性達はどんどんリベラルに傾倒し、「結婚・出産はキャリアを確立して 独立した人生を歩んでからの選択」という考えが強くなっているのは周知の事実。 その結果、増える傾向にあるのが親元から離れられない25歳〜34歳のアメリカ人男性(上右のグラフ)で、特に高等教育を受けて居ないブルー・カラーの職業に従事する男性は、 収入増加という点でアメリカ社会から取り残された存在。 グラフでは女性も親元で暮らす25歳〜34歳が増えているけれど、これは婚期の遅れと、大学進学率が増えた結果によるものなのだった。
2023年にサーヴェイセンター・オブ・アメリカン・ライフが 5459人のアメリカの成人男女を対象に行ったアンケート調査によれば‥・、
「結婚して子供を持った男性の方が、独身の子無し男性より幸せである」と回答した男性は58%、女性は53%。
「結婚して子供を持った女性の方が、独身の子無し女性より幸せである」と回答した男性は49%、女性は32%。
すなわち これまで女性の幸せと思われてきた「結婚して、子供を持つ」ことが、実際には男性を幸せにするためのものという意識に変化してきたのが現在。
そんな結婚・出産を優先しなくなった歪んだ女性意識を政治と法律によって元に戻し、 「親元を離れて 母親以外の女性に面倒を見てもらいながら、子供も欲しい」という人生の希望を叶えようとしているのが保守右派男性と言われ、 この性別による政治観の二極化は今後さらに進むと見込まれるもの。 実際にミレニアル、ジェネレーションZは、「政治観の違いで恋愛相手と別れた」とアンケート調査に回答する人々が29%に達していると言われるのだった。



ルイ・ヴィトンの時代に対応した新戦略


LVMH (モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が今週発表したのが、来シーズンから向こう10年間に渡るF1レースのスポンサー契約を獲得したニュース。 F1には数多くのスポンサーがついてきたけれど、この契約が通常と異なるのはその規模の大きさ。 傘下に数十のブランドを持つLVMHは、時計、ユニフォーム、トロフィー・ケース、そして優勝者がスプレーするシャンパンまで、F1レースのありとあらゆる側面をカバーするもの。 同様の広範囲に渡るスポンサーシップはパリ五輪の際にも見られたけれど、LVMHは10年前からF1スポンサーを検討していたようで、 多額の契約に踏み切る後押しになったのは Netflixの人気シリーズ「Drive to Survive」を通じてF1の20人のドライバー達がスーパースターのステータスを獲得したこと。 ドライバーのルックスやスタイル、ガールフレンドのステータスまでが急上昇し、スポーツとエンターテイメントの境界がなくなってきたのもLVMHが大金を投じる大きな要因になっているのだった。
もう1つ今週LVMHが発表したのが、高級ノンアルコール・シャンパンで知られる”French Bloom / フレンチ・ブルーム”の株式30%を買収したニュース。 買収額は未発表であるものの、2021年に誕生したフレンチ・ブルームは、若い世代のアルコール離れが顕著な中、毎年売り上げを倍増させてきたブランド。 ノンアルコール・ドリンクは2023年から最低5年間は毎年7%以上の売り上げアップが見込まれ、2027年にはアルコール市場全体の4%を占める見通し。 逆にワインやスピリッツの需要は世界的に低迷中で、2024年上半期はドン・ペリニヨン、クリュッグ、ヴーヴ・クリコ等のシャンパン、シャトー・ディケムやシャトー・シュヴァル・ブラン等の一流ワインを傘下に収める モエ・ヘネシーはLVMHの中で最悪業績の部門となり、その売り上げは12%ダウンしているのだった。
ノンアルコール分野への進出を狙っていたLVMHが飛びついたフレンチ・ブルームは、シャンパンの老舗テタンジェ一族の マギー・フレレジャン=テタンジェとモデルのコンスタンス・ジャブロンスキーが、「社交の場で洗練されたノンアルコール飲料の選択肢が不足している」ということでスタート。 現在のテタンジェ経営者の従兄弟に当たるマギーの夫、ロドルフがワイン・メーカーを担当し、 高級ワイン同様にブドウ選びのこだわりからスタート。その結果、日照時間が長くアルコール度数と糖度が高いラングドック地方のブドウを調達しているのだった。
「高級ワインの本質は味の複雑さと深みでアルコールは二の次」でありながらも、アルコールを除去するプロセスでフレーバーが60%失われることから、 フレンチ・ブルームでは冷真空蒸留という ワインをゆっくり加熱する技術を取り入れ、ワイン愛好家にもアピールするノンアルコール・シャンパンをクリエイト。 その結果、フレンチ・ブルームのスパークリング・ホワイトは米国価格39ドル、スパークリング・ロゼは44ドルで、 生産量が少ないラ・キュヴェ・ヴィンテージ2022年ものは1本119ドルと、ノンアルコールとは思えない高額ぶり。
従来のノンアルコール・ドリンクには望めない味わいと高級感をウリにしてきた同ブランドは、LVMHによる買収でステータスと資金力が一気に高まっているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2024.

PAGE TOP