Sep 15 〜 Sep 21 2024

New Cyber War, Sex Trafficking, Con Artists, Etc.
新サイバー攻撃, ショーン・コムズの性犯罪, 詐欺師復活, チートスの自然破壊, Etc.


今週アメリカで報道時間が割かれていたニュースは、レバノンの過激派組織ヒズボラのメンバーが身に着けていたポケベルが同時に爆発し9人が死亡、3,000人近くが負傷した事件。 翌日には同じくヒズボラのメンバーが携帯するウォーキー・トーキー(トランシーバー)が爆発する事件が起こり、 「これによってインターネットに接続されたあらゆるデバイスが 致命的な武器になる新たな戦争時代を迎えた」と言われたのが今週。 同じ手法は、スマートフォンを含むあらゆるインターネット接続デバイスで活用できるとのことなのだった。
ヒズボラはレバノンの携帯電話ネットワークに対するイスラエルの電子監視を回避するため。数か月前に5000台のポケベルを輸入しており、それに爆発物を仕掛けたと言われるのがイスラエルの諜報機関モサド。 レバノンの現地時間9月17日午後3時30分頃に、ヒズボラの指導部から発信されたように見せかけるメッセージを受信してから 熱くなり始めたポケベルは、爆発前には数秒間ビープ音を鳴らすようにプログラムされていたとのこと。 各ポケベルには少量の爆発物がバッテリーの隣に埋め込まれ、遠隔操作により爆発させるスイッチが装着されていたことをNYタイムズ紙が報じているのだった。
イスラエルの諜報機関は、当初このポケベルを ヒズボラと全面戦争になった際の奇襲攻撃として使う予定であったものの、 政府と軍の上層部が ヒズボラが仕掛けに気付く前に攻撃を仕掛けるべきと判断したことから起こったのが今週の事件。 イスラエルはこうした戦略に出る場合、アメリカに通達して行うのが常であるものの、今回の爆破はアメリカへの連絡なしに踏み切っており、 米国政府は同事件への関与を全面否定しているのだった。
いずれにしても、この事件によって 今後は中古ディバイスの購入や、会社から支給されるディバイスの所持をためらう人が増えても不思議ではない状況。 サイバー攻撃はハッキングだけでなく、直接人命を脅かす時代に突入したのだった。



ショーン・ディディ・コムズの奥深い犯罪


今週、全米ネットのトップニュースで報じられたのがラッパーのショーン・ディディ・コムズが9月16日月曜夜にマンハッタンのホテルで逮捕されたニュース。
コムズは5000万ドルの保釈金をオファーして、裁判までの自由を確保しようとしたものの、判事は「逃亡のリスクがある」としてそれを却下。 翌日コムズは二度目の保釈要求をしたものの、別の判事も「証人を恐喝するリスクがある」として却下。このまま保釈が認められない場合、裁判までの約1年をブルックリンの刑務所で過ごすことになり、 改めてその容疑の重さを痛感させていたのだった。
昨年長年のパートナーであったシンガー、キャシー・ヴェンチューラ(写真上中央の女性)にレイプ、虐待、他の被害で訴えられ、約3000万ドルの賠償金を支払って示談に持ち込んだと言われるコムズに対しては、 他の複数の女性達からも同様の訴えが起こされており、今年春には彼のマイアミとビバリーヒルズの邸宅にFBIの家宅捜索が入り、複数の戦闘用の銃、乱交パーティーのシーンを収めたビデオ等が 押収されていたとのこと。 その彼の容疑は性的人身売買、詐欺共謀、売春行為、恐喝等で、その手口は ファンの少女を洗脳してセックス・スレーブにしていたR&Bシンガー、R・ケリーと、 少女達を世界のVIPにあてがっていたジェフリー・エプスティーンを足して二で割ったようなもの。
音楽プロデューサーでもあるコムズは、若い女性を彼の恋愛対象として誘惑したり、シンガーとしてのキャリアをサポートするふりをして接近し、 一時的に華やかな生活をさせて、精神面でも経済面でも彼に依存させる一方で、彼が定期的に高級ホテルで行うセックス・パーティーでゲスト達と 関係を持たせ、そのパーティーは「フリーク・オフ」と呼ばれていたとのこと。フリーク・オフでは、プレイを長続きさせる目的でケタミンやエクスタシーといったドラッグが使用され、 時にホテル・ルームを著しく破壊することもあったとのこと。コムズはそのセックス・アクトをビデオに収めては、映像をネタに脅迫して女性達を服従させており、 女性達には日常的に口頭による虐待、暴力、強制労働やレイプが行われていたとのこと。 フリーク・オフはコムズとそのスタッフが企画とプロモーションを行い、彼が事実上セックス・トラフィッキングの組織を運営していたことが明らかになっているのだった。
これに対してコムズは罪状を否認し、彼の弁護士も 女性達が合意の上で自主的にコムズと関りを持ち、フリーク・オフにも参加したと主張。 「女性達とは必ずしも良好な関係でなかったし、コムズは完璧な人間ではないが、彼は決して犯罪者ではない」として 今回の逮捕を「根拠のない民事訴訟に基づいた魔女狩り」と抗議。裁判によって汚名を払拭する決意を語っているのだった。
しかしFBIは、このセックス・トラフィッキングがショーン・ディディ・コムズによる単独運営ではなく、 VIPの協力者、もしくは共犯者がいるとして捜査を継続しているとのこと。現時点で憶測を呼んでいるのが、コムズと交友関係があるジェイZ、俳優のアシュトン・クッチャー、ハリー王子、ジャスティン・ビーバーといったセレブリティや複数のビリオネア投資家、そして昨年コムズにNY市の鍵を授与したエリック・アダムスNY市長らが、フリーク・オフに参加したことがある、もしくは運営に出資しているのでは?という疑惑。アダムス市長は昨今、非公開の容疑でFBIの捜査対象になって久しい存在で、 コムズの逮捕がきっかけで、もっと大がかりな逮捕劇に繋がる可能性が高いと見られているのだった。



詐欺師カムバックのシナリオ


先週のこのコラムで、TikTokのヴァイラル・ビデオが原因で、J.P.モルガン・チェースが見舞われた小切手詐欺事件について触れたけれど、 2017年に同じ手口でシティ・バンクから7万ドルのキャッシュを着服していたのが 後に詐欺罪で逮捕され服役したアナ・ソロキン(33歳)。 彼女の犯行はネットフリックスの「Finding Anna」でドラマ化された有名なストーリーで、自分をドイツの大富豪の令嬢と偽り、NYにアート・センターを設立すると謳いながら、偽造書類で銀行から多額の融資を受け、 高級ホテルにクレジットカードも提示せずに数ヵ月滞在。ホテル内の高額レストランでVIP待遇を受け続けたという強者。 父親はトラックの運転手、彼女自身も大学など出ていないにも関わらず、バークシャー・ハサウェイの株主総会にプライベート・ジェットで出向き、 銀行の融資担当者相手にビジネス・プランを語るという見事な詐欺をやってのけたのだった。 そのアナ・ソロキンは2021年2月に刑務所を出て、国外追放を免れただけでなく、インスタグラムのアカウントを復活させて、セレブリティと交友関係をひけらかす カムバックぶり。
そして今週にはABCTVの長寿リアリティTV「ダンシング・ウィズ・スターズ」の新シーズンにコンテスタントとして登場し、ファーストダンスを披露。 出所した直後からメイク・オーバーをして、リアリティTV出演を自ら交渉した彼女は、仮釈放中とあって足首にはGPSモニターを付け、本名のアナ・デルヴェイを名乗っての出演。 「番組を通じて、自分に対するネガティブなイメージをポジティブなものに変えたい」とコメントしているのだった。 しかしソーシャル・メディアでは、犯罪者をセレブリティ扱いしたことでABCに対して猛反発が起こっており、果たしてアナが一般大衆の意識が変えられるかは微妙なところ。
ちなみに「ダンシング・ウィズ・スターズ」は、2020年に報じられた大学入学不正スキャンダルで女優ロリー・ロクリンが50万ドルを投じて名門南カリフォルニア大学に不正入学させた2人の娘のうち、 インフルエンサーとして活躍していたオリヴィア・ジェイドも出演したことがあり、モラルより話題性が優先のキャスティングが問題視されるのはこれが初めてではないのだった。
時を同じくしてカムバックが報じられたのが アナ・ソルキンの詐欺事件と同じ2017年に、ソーシャル・メディアを通じてプロモートされたラグジュアリー・ミュージック・フェスティバル、”Fyre/ファイヤー”で 詐欺罪に問われたビル・マクファーランド。 カリブに浮かぶプライベート・アイランドで開催されるはずだった”ファイヤー・フェスティバル” は、ケンドール・ジェナーを含む複数のスーパーモデルを起用した派手なプロモーションによって、 多額の宿泊費を含むパッケージがあっという間に完売。しかし蓋を開けてみればフェスティバル・ゴーワーに宿泊施設として用意されたのは被災地用テント、食事は乾いたパンにスライス・チーズをのせただけのサンドウィッチという 刑務所より酷いコンディション。しかも開催当日にはストームに見舞われ、フェスティバル・ゴーワーは島から出られない事態となり、シャワーも簡易トイレも十分に無い島で地獄のような体験を強いられた様子は当時大報道になったのだった。
ファイヤー・フェスティバルについても ネットフリックスやHuluがドキュメンタリーを製作していたこともあり、人々の記憶に未だ鮮明であるけれど、 主宰者のビル・マクファーランドは詐欺罪で6年の懲役刑を受けながら、4年も経過していない2022年3月に出所。 彼には新しいバッカーが付いて、ファイヤー・フェスティバル2が企画され、そのチケット販売がスタートしたというのが先週のニュース。 彼の新しいバッカーの存在は伏せられたままで、「誰が何のために詐欺師に投資をするのか?」、 「詐欺師の2度目のフェスティバルに出向く観客が居るのか?」という疑問の声が聞かれたけれど、ビル・マクファーランド自身は、 「今度こそフェスティバルを成功させる」と語り、前回のフェスティバルも「準備が不十分で不運が続いただけで、決して詐欺では無かった」という主張を貫いているのだった。
この2人のカムバックは、「メディアに乗せて派手で記憶に残る形で罪を犯せば、後に新たなチャンスが巡って来る」というアメリカ社会の歪みを感じさせたけれど、 実際に全米ネットのニュースで何度もその事件と名前が報じられ、ドラマやドキュメンタリーにもなった2人のネーム・ヴァリューはソーシャル・メディアのインフルエンサーやB級ハリウッド・スターよりも上と言われるもの。
ちなみにこの2人の間には間接的なコネクションがあって、ビル・マクファーランドがファイヤー・フェスティバルを企画する前に使っていたウェスト・ヴィレッジのオフィス兼ラウンジに、 タダで寝泊まりしていたのが当時アメリカに来たばかりで行く当てが無かったアナ・ソロキン。 マクファーランドのオフィスで働くスタッフがどんなに頑張っても追い出せなかったと言われるのがアナで、実際に同じ詐欺師とは言え 彼女の方がスター性とふてぶてしさがあることは否定できないのだった。



チートス1袋で環境が悪化する


ニューメキシコ州のカールズバッド洞窟群国立公園がFacebookに投稿したのが「チートス1袋で環境が悪化する」という警告。 それによれば、同公園の世界的に有名な洞窟に捨てられていた加工トウモロコシのスナック、チートスが原因で「洞窟の生態系には大きな影響が起こってしまった」とのことで、 無造作にゴミを捨てる旅行者に警鐘を鳴らしていたのがその投稿。
アメリカには63の国立公園があり、特に夏休には家族連れが訪れて、その観光収入が公園の運営費を支えているのは紛れもない事実。 しかし国立公園にやって来る人々が必ずしも環境保全に配慮している訳ではないようで、アメリカの国立公園で毎年回収されるゴミの量は3万5000トン。この中には ゴミ箱に捨てられたものと、自然の中に捨てられたり、放置されたものが含まれているけれど、国立公園はとにかく広いので、回収出来ないゴミが随所に存在するのは容易に想像がつくところ。
洞窟に捨てられていた問題のチートスは、その後洞窟内の湿気で柔らかくなり、微生物や菌類が生息するのに最適な環境を形成。すると洞窟内のコオロギ、ダニ、クモ、ハエが一時的な食物網を形成。 その栄養素が分散されると、今度はカビが発生、繁殖することで悪臭を放ち始めるという問題に発展。 旅行者が何の気なしに捨てたゴミのせいで、パーク・レンジャーが出動し、ゴミの回収だけでなく、付近に繁殖したカビの除去に時間を費やさなければならない様子を訴えていたのだった。
時間が経過しても風化や分解が起こらないゴミだけでなく、「腐って土に返るだけ」と多くの人が思いこんでいる食べ物でも 自然に悪影響を及ぼすことに驚いた人は多かったけれど、 国立公園が最も問題視するのは、やはりゴミ全体の約80%を占めるプラスティック製品。処分が大変なだけでなく、野生生物や生態系に有害なのがプラスティック製品で、 全米の国立公園は「使い捨てプラスティック製品を避け、リユーザブルな水筒や食器を持参すること、そしてゴミを持ち帰るように」と、本来なら国立公園を訪れる人々が当然実践しているべきことを呼び掛けて久しい状況。
ゴミ問題に止まらず 国立公園のヴィジターの中には崖から岩を落としたり、岩に名前を刻むといった自然破壊を、刑事責任を問われるとは知らずに軽い気持ちで行う人々も居り、 現在の空前の旅行ブームは自然保存の見地からはマイナスに働いていると言われるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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