Sep 1 〜 Sep 7 2024

Parenting, Japan's Tourism Economy, Nostargia Trend, Etc.
親のストレス問題, 海外から見た日本観光経済, ノスタルジア・トレンド, Etc.


9月に入って大統領選挙まであと2か月となり、ディベートを来週に控えて 選挙関連報道が更に増えたのが今週。
現時点で、全米の世論調査でリードしているのはカマラ・ハリス副大統領。しかしスウィング・ステーツ、すなわち民主・共和のどちらが選挙人を獲得するかが分からない州では 僅かにトランプ氏がリードしているとのこと。 そんな中、「大統領選のノストラダムス」の異名を取る歴史家、アラン・リヒトマン教授(77歳)が発表したのがハリス氏勝利の予測。 彼は地球物理学者の友人と13のキー・ポイントで候補者をジャッジする独自のモデルを共同開発しており、このモデルは1984年以来、大統領選の勝者を100%正確に予測しているのだった。
多くのメディアは、未だ決心がつかないスウィング・ヴォーターが選挙の行方を決めるという意見で、その割合は全体の有権者の18%。 そして今回の選挙の鍵を握る州はフィラデルフィアとジョージアと言われるのだった。
そのジョージア州では今週、ハイスクールで2人の学生と2人の教師が射殺される銃乱射事件が起こっており、同事件は今年に入ってアメリカで起こった134度目のスクール・シューティング。容疑者のコルト・グレーは14歳で、成人として第二級殺人罪の裁きを受けることになっているのだった。



子離れできない親の新学期ストレス


9月に入って全米の大学が新学年を迎えたけれど、今年入学した ”クラス・オブ・2028”(アメリカでは卒業年度がその学年の総称)は、 連邦最高裁が昨年アファーマティブ・アクションを違憲としたことから、人種による入学枠が撤廃された最初のクラス。
その最高裁判決の原因となったハーバード大学を始めとする多くの名門大学は、現時点では今年の入学者の人種バランスのデータを公開していない状況。 データを発表した名門、MITことマサチューセッツ工科大学では 黒人学生が10%減少し、学年全体の僅か5%。ヒスパニック系の学生も近年の平均15%から11%に減少。 白人学生の割合は38%から37%に僅かに減少。逆にアジア系アメリカ人の入学者数は41%から47%にアップ。ただしこのデータには留学生は含まれておらず、それを含むと若干の誤差が出るのだった。
既にデータを発表している他の大学でも、黒人とヒスパニックの学生数が減少傾向にあり、これが毎年続くことで 危惧されるのが、人種間で学歴や生涯年収の格差が生まれ、異人種との関りがどんどん希薄になっていく社会。
その一方で、話題と物議を醸していたのが、”クラス・オブ・2028”の親達のクレージーぶり。 アメリカでは、一部の例外を除いて「子供の大学進学」が意味するのは、子供が親元を離れて別の州の大学で学び、寮に入り、 一人暮らしやルームメイトとの生活を始めて、親から自立すること。 それもあってアメリカでは「子育ては高校を卒業して、成人するまでの18年間」と考えるのが一般的。
しかし”クラス・オブ・2028”は、青少年のメンタルヘルスが大きく取り沙汰される時代に育ち、パンデミックで一時的に登校機会を奪われる中、 感染症と衛生問題にナーバスになり、それが原因の学力低下に繋がったことから、親達が多大なストレスを抱えて来たのは紛れもない事実。 その結果、「史上最も過保護でコントロール・フリーク」な親達になってしまったようで、「親子の距離が不健全に近い」と言われるのがが”クラス・オブ・2028”。
親達はテクノロジーを駆使して子供の居場所をチェックし、入学のオリエンテーションを細かく把握。 子供の寮に泊まり込んで、新生活スタートのサポートをするという前代未聞の光景を繰り広げているのだった。
ピュー・リサーチのアンケート調査では、親達の41%が、「自分の18歳以上の子供が 精神面でのサポートを必要とし、自分を頼りにしている」と回答しているとのこと。 その中には、幼児レベルの子供に対する関与を ティーンエイジャーになってからも続けて来た親も多く、 そういう親ほど、子供のキャンパス・ライフについて念入りなリサーチを行い、子離れできない様子を露呈しているのだった。
それに対する子供側のリアクションは、毛嫌いして猛反発するケースもあれば、それを当たり前と思って依存するケースもあり、 心理学者は、この過保護の背景にあるのは、子供が心配でたまらない親が、子供も「自分と離れて寂しい、不安でたまらない」と 思い込む心理にあると分析。
アメリカでは子供が18歳になって家から巣立った状態を「エンプティ・ネスト」と呼んで、取り残された両親が 改めてお互いを余生のパートナーと認識することで、 夫婦仲が向上する傾向が顕著であったけれど、”クラス・オブ・2028”の親に関しては、子供との物理的な距離が離れただけで、 スマートフォンで位置情報を把握しながらの子育てが継続中。
そんな現代の親達のストレスは、精神を消耗するほど危険なレベルと言われ、子供のいる親のほぼ半分に当たる48%が抱えているのが、 「自分では処理できないレベルの大きなストレス」。このデータを受けて 先月8月には、公衆衛生局長官が 「親のストレスは重大な公衆衛生問題である」と発言。子供達のメンタルヘルス同様に、親のストレスにも社会が向き合う必要性を訴えているのだった。



この夏の日本の観光ブーム、海外からの分析


夏のヴァケーション・シーズンが終わって、海外メディアや経済機関が分析していたのが日本におけるインバウンドの観光ブームのインパクト。
2024年に入ってからは、「インスタグラムでフォロワー数が多いインフルエンサーのほぼ全員が日本を訪れた」とも言われるけれど、 日本政府観光局のデータによれば、7月に日本を訪れた外国人旅行者は過去最多の330万人。その国別内訳は中国がトップで、 上位を占めているのは距離が近いアジア諸国。 同月のアメリカ人旅行者はそのうちの8%で、単純計算すると26万4000人。この数には在米日本人の里帰りが含まれていると思われるけれど、 それでもパンデミック前の2019年に比べて2%アップしているのだった。
米国からの旅行者数が過去最多になったのは今年6月で、その数は29万6000人。ちなみに欧米では庶民が休暇に入る7月、8月の前に ヴァケーションに出掛けるのが富裕層。欧米人が好む観光地では6月の方が客層が良く、7月に入って夏休み本番になると客層とチップの額が落ちることはホテル&レストラン業に 携わる人々による本音の分析なのだった。
これだけ多くの旅行者がやってくれば、旅行者が日本で遣っていくお金も増える訳で、その額はパンデミック前の2019年から約40%もアップ。 これは日本のGDP増加分の約10%を占める数字。 海外旅行者にとって日本に出掛けるモチベーションになったのは言うまでも無く円安で、 特に「今年の夏までに日本に行こう!」と考える人々が多かったのは、 日銀がゼロ金利を終了し、利上げの姿勢を見せていたため。 逆に世界各国の中央銀行は今年に入ってから利下げの姿勢を見せ、 既に行った国もあるけれど、それによって金利格差が縮まれば 円安の恩恵も小さくなると考えるのは当然のこと。 ちなみに同じ思考が、これまで金利格差で儲けるキャリー・トレードをしていた人々の危機感を煽った結果、8月5日の株価大暴落をもたらしたのは記憶に新しいところなのだった。
シンガポールを拠点とするキャピタル・エコノミクスは「インバウンド観光が、これまで何をやってもデフレに歯止めが掛からなかった日本の需要を大幅に押し上げた」とレポート。 しかし円安によるインフレと、旅行価格の急騰で日本人の国内&海外旅行がパンデミック前の水準を下回ることを予測しているのだった。
またデロイトのグローバル・エコノミスト、マイケル・ウルフは 「円安は対外的にはプラスだが、国内が犠牲になる可能性がある」として、 旅行ブームが続くことで 観光地に無秩序がもたらされ、ホテル、レストランを始めとするホスピタリティ業界が労働力不足に直面していることを指摘。 同様の労働力不足は2022年にポストパンデミック需要が激増したアメリカでも起こっていたけれど、それに移民で対応出来るアメリカと日本は異なる状況。
結局のところ「円安がもたらしたインバウンド観光需要は、経済成長とインフレを達成する原動力にはなったものの、 日本経済全体、日本国民全員がその恩恵を受ける訳ではなく、その歪みが新たな経済問題を生み出す可能性が高い」というのがその分析結果になっているのだった。



レトロ・ブーム新展開


世の中では、LPやそれを聴くためのレコード針の売り上げが伸び続け、 昨年からは久々のポロシャツ・ブーム。ヴィンテージTシャツ、ソックス&ローファーの足元がトレンディングになったりと、レトロ&ノスタルジア・ブームの真最中。
それを反映してデザイナー・ブランドも、あえて30年、40年前のバッグの復刻版を発売する傾向にあり、 今シーズン話題になっているのがボッテガ・ヴェネタのローレン・バッグ。 これは1980年に公開され、リチャード・ギアを一躍スターにした映画「アメリカン・ジゴロ」の中で、当時のトップモデルとして女優デビューをしたローレン・ハットンが持っていたバッグ。 ランウェイではローレン自身が映画に登場したのと同じワイン・カラーのバッグを抱えて歩く姿が披露されたとあって、多大なパブリシティを獲得しているこのバッグ。(写真上左から2番目と3番目)
同じくファッションの世界では、J・クルーがこの秋からカタログ・ビジネスを復活させるとのことで、 オンライン・ショッピングに押されて姿を消したはずのカタログがまさかのカムバック。 J・クルーのビジネス動向によってはヴィクトリアズ・シークレットもカタログを復活させると言われるのだった。
レトロ&ノスタルジー・トレンドはジェネレーションZ、その下のジェネレーションαに特に浸透しているようで、 彼らがこの新学期に買いこんだ文房具でトレンディングだったのが Bicのボールペンや昔ながらのノートブックやペンシル・ケース。 特に今年は電卓が売れていて、理由は教室にスマートフォンの持ち込みを禁止する学校が増え始めたせいで、スマートフォンを電卓代わりに使えないため。 またジェネレーションZとαは、ソーシャル・メディアから離れて精神の安定を保ちたいという理由で、ダム・フォン(直訳すると馬鹿電話、日本語で言うガラケー)の愛用者が多い世代。 そのためノスタルジー・トレンドとは無関係に、電卓を必要とするケースがあるようなのだった。
さらにはジェネレーションZとαはエアポッドよりも、大学に入学したばかりのスリ・クルーズ(写真上右2枚、トム・クルーズとケイティ・ホルムズの娘)のように 大きなヘッドフォンやコード付のイヤフォンを愛用する傾向にあり、 彼らの好奇心のお陰でカセット・テープまでカムバックし始めたのが昨今。 ファスト・フード業界では、タコベルが今年春から1970年代から2000年までの人気メニューを復活させていて、 ジェンZやαにとって今クールに映っているのが、親や祖父母の世代がリアルタイムで使っていたもの、聴いていた音楽、身に着けていた物。
そのため2024年のトレンドは「現在以外の時代のもの」と言われるほどで、逆のアップルのビジョン・プロのように最新のテクノロジーを掲げる高額品が売れない現象をもたらしているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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