June 23 〜 June 29 2024

Debate, Pet Booming, Mac Chatbot, Etc.
ディベート, ペット・ビジネス, マクドナルドの失敗チャットボット, Etc.


来週に建国記念日を控えたアメリカは、夏のヴァケーション・シーズン真只中で、メディア報道も夏休みムード。 そんな中、最も報道時間が割かれていたのは木曜に行われたプレジデンシャル・ディベートのニュースで、 秋を迎える前にディベートが行われたのはこれが初めて。 そして今回は史上最も高齢な候補者間のディベートであり、 現役大統領と元大統領による初のディベート。ホストはCNN、会場はアトランタで、オーディエンス不在のセッティング。
今週に入ってから伝えられていたのが、バイデン大統領が世論調査でリードされいてたトランプ氏との差を縮めた一方で、 トランプ氏が先月の有罪判決をきっかけに支持者から多額の寄附が集まり、今年に入ってから初めて月間寄付総額がバイデン氏を上回ったというニュース。 そうかと思えば、事あるごとにバイデン氏の痴呆を疑うトランプ陣営が、ディベートに際してバイデン氏が何等かの認知力を高める薬物を摂取する疑いを指摘してドーピング検査を提案するなど、 ディベートを待たずして茶番劇がスタートしていたけれど、蓋を開けてみればバイデン氏はドーピングの疑いを持てないほどの悲惨なパフォーマンスを披露。 呂律が回らず、声も弱く、あと4年の任期をこなすのは不可能という印象。だからといって有権者がトランプ氏に傾く訳ではなく、 現在増えているのは ”ダブル・ヘイター”。すなわち双方を嫌悪する有権者。その多くは投票を棄権すると宣言しているのだった。
さらに今週には トランプ氏との不仲が公然の秘密となっているメラニア夫人が、もしトランプ氏が再選されてもホワイトハウスに住む意思が無いと語っている様子が報じられており、 それほどまでに夫人はホワイトハウスもワシントンDCも毛嫌いしているようなのだった。



ペット・ビジネス、更なるBooming


アメリカでは2〜3年前から”DINKWAD”というライフスタイルがTikTok上でヴァイラルになってきたけれど、これは”Double Income No Kids With A Dog”の略。 すなわち夫婦それぞれに仕事をして、子供を産んで育てる代わりに犬を飼うのがこのライフスタイル。 夫婦仲が円満に保てて、幸福度が高いと言われるのがDINKWAGで、経済的な理由から子供を設けたがらないミレニアル世代、ジェネレーションZ世代にもてはやされているのだった。
犬に限らず、何等かのペットを飼うのはアメリカ人のライフスタイルと言えるほど一般的で、ピュー・リサーチの最新のアンケート調査によれば、アメリカ人の約3分の2がペットを飼っていて、 そのうちの97%は「ペットを家族の一員として捉えている」と回答。 更に51%は「ペットと人間の家族を同等に考えている」とも語っているのだった。
マッチング・サイトで交際相手候補と出逢う場合も、ペット・アレルギーが無いかをチェックし、相手にもペットが居る場合は、自分のペットとのコンパーティビリティが 相手の年収や人柄のチェックよりも優先してチェックされるとのこと。 そして既婚でも未婚でもアメリカのカップルが別れる際に、裁判沙汰になることが珍しくないのがペットの親権。 一定年齢になれば本人の意思が尊重される子供とは異なり、ペットには意思表示の手段がないとあって 親権の争いが激化するケースも多いようで、 子供の親権争い並みに掛かるのが弁護士費用。
実際に経済的な理由で子供を持たないDINKWAGのカップルが、犬を飼い始めて驚くのが人間の子供並みにお金がかかる実情。 ペット・フードは人間の食費以上の値上がりを見せており、特にドッグ・フード、キャット・フードは、近年誕生したスタートアップ企業が提供するオーガニック食材、それも人間の食材と大差が無いクォリティを用いた 高額ヘルシー・フードが登場。さほど裕福なでないペット・オーナーでも、「病気になったら医療費負担が高額」という理由で、健康的なペット・フードを購入する傾向が顕著であるという。
今では犬専用のベーカリーやアイスクリーム・パーラーまでが登場しているけれど、ドッグ・オーナー達が愛犬の誕生日にカスタム・メイドのバースデー・ケーキをオーダーし、 バースデー・プレゼントからクリスマス・プレゼントまでを与えて、子供並みにお祝するのはもはや当たり前。
またペット・オーナー達はヴァケーションに出掛ける場合も、ペットを連れて行って楽しめる旅行地、ペットの受け入れ体制が整っているホテルを選ぶ傾向にあるため、 ペット・シッター、ペット・スパ、ペット用ベッド等、ホテル側もペット・サービスを充実させて集客を図るようになっているのだった。 愛犬を旅行に連れていけない場合は、高額ドッグ・ホテルに滞在させて、そこで就寝時の寝かしつけから、プールでの水泳を含むエクササイズ、フェイシャル、マッサージ等の好待遇を受けさせるのが、 自分だけが出掛ける罪悪感を払拭する手段。高額ホテルほど予約が取れないほどの大盛況になっているのがヴァケーション・シーズン。
犬を始めとするペットのグルーミングの代金は、チップを含めると過去10年間で約50%アップ。 美容だけでなく、ペットのファッションにもお金が掛かるようになり、ペット・キャリー用のバッグも高額ブランド物になって久しいご時世。 富裕層になると、ペットの首輪やリードがクロコダイル、バックルが18Kゴールドでダイヤが埋め込まれていても誰も驚かないのが現在。
住居選びもペット優先で、公園やドッグランが近く、ペット用の医療施設があるなど、ペット・フレンドリーなエリアは不動産に買い手がつくスピードが速く、 デンバーでは新築ビルディングがドッグ・ウォッシュ・エリアを設けるのは当たり前。
そんなペット関連のビジネスやサービスは どんどん広範囲になり、専門性が高まり、高額化の一途を辿っているようで、 オーナーがペットを人間家族と同等という意識を持つことから、人間同等のありとあらゆるペット・サービスが、人間用サービスと同等の価格で提供されるようになっているのだった。



ペットのための高額医療と終活も…


医療費が高額なアメリカでは、ペットとは言え、病気になれば人間並みの医療費がかかることは珍しくなく、 ペット医療の費用は過去10年間に60%も上昇。
ペット医療が進化し、特にペット用の医療機器が人間並みにグレードアップされたことから、かつてならば飼い主が泣く泣く諦めたペットの命も、 お金さえ払えば救える命になったのが現在。ペット・オーナー達もお金に糸目をつけずに愛するペットの命を救おうとすることから、 ペット医療の世界で何が起こっているかと言えば、大型クリニックの参入と市場占有率の拡大。 かつて獣医と言えば小規模な個人経営が殆どであったけれど、今では最先端のMRI装置やICU設備を備え、 ペットの主な死因である腫瘍学と心臓学専門のドクターが常駐した大手医療機関がシェアを拡大して、個人経営のビジネスを圧迫。 ペット・オーナー達も医療施設やスタッフが充実した大手クリニックを好むことから、個人経営の獣医は大手クリニックが無い地方や郊外での開業が生き残りの手段。 ちなみに犬のMRIは、ケース・バイ・ケースで2500〜6000ドルという高額料金であることが伝えられるのだった。
その一方で、アメリカではメガリッチになればなるほど、あえて医療保険が効かない、会員制で豪華かつエクスクルーシブな医療機関で検査、手術、入院をするもの。 その流れを受けて、犬の医療でも高額メンバーシップ・クリニックが登場。人間のメンバーシップ・クリニック同様、豪華なインテリア空間や至れり尽くせりの待遇が提供されるのは言うまでもないこと。
そんなメガリッチは自分が死去した場合に、ペットの後見人を指定し、ペットに遺産の一部を相続させるので、裕福なクライアントを持つ弁護士に不可欠なのが、 遺書作成の際にペット関連の相談に対応するための知識。
もちろんペットが死んでしまった場合のビジネスも至れり尽くせりで、実際に近年、急成長を遂げているのがペット葬儀関連ビジネス。 今やペット用棺桶のデザインもモダンでスタイリッシュなものに代わり、ミニマリズムなインテリアの葬儀場も登場。 アメリカでは、人間の平均的な葬儀コストが8300ドル。葬儀ビジネスの市場規模は2016年の時点で142億ドルというのがレポートされている最新データ。 ペット用葬儀ビジネスは同じ2016年にようやく1億ドルの大台に達したところ。しかし、その後の8年間でペットを飼う世帯が増え、ペット用サービスの価格が軒並み大きく値上がっていることから、 見込まれるのがペット葬儀が急ピッチで市場規模を拡大している状況。 飼い主たちにとって、高額な葬儀をペットのために行うのは 愛する家族を失った悲しみに対するセラピー効果になっていると言われ、 セラピストの間では「ペットの死は伴侶を失った精神的ダメージよりも克服が難しい」と指摘されるもの。 すなわち高額セラピー料金が取れる案件と見なされているのだった。
スピリチャルの世界では亡くなったペットの霊と交信するという胡散臭いビジネスも存在するけれど、AIの世界では既にペットの意思表示を理解可能にするテクノロジーが開発中。
ペットが徐々に人間以上の扱いを受けるようになってきているけれど、実際に憎まれ口をたたく人間の家族よりもペットを溺愛するオーナーは非常に多く、 それだけにペット・ビジネスはまだまだ増え続け、伸び続けることが見込まれるのだった。



TikTokに葬られたマクドナルドのチャット・ボット



アメリカではカリフォルニア州が春からファスト・フード店従業員の最低時給を法律で$20と定めており、NYを始めとするその他の州でも上がり続けているのがファスト・フード店員の最低時給。
そのため昨今益々拍車が掛かっているのが人員削減のためのテクノロジー導入。この取り組みが最初に積極的に行われるようになったのはパンデミックの最中で、 主に導入されたのは店員とのコンタクト無しにオーダーが可能になる、写真上左のようなタッチスクリーンのキオスク。 今ではこのキオスクがアメリカの国内のファストフード店、特に郊外の大型店には必ずと言って良いほど設置されているものの、 現時点では有人カウンターとのハイブリッド展開。キオスクのみの店舗は存在しないのだった。
その利用パターンの分析によれば、品数が多い多額のオーダーほど 来店客はキオスクのスクリーンを使ってオーダーするとのこと。 逆に2〜3アイテム程度の小さいオーダーは有人カウンターでオーダーする人々が多いという。 そうなってしまうのは、ファストフード店員はチップが貰えない職業、しかも歩合制でもないことから、簡単に処理できるシンプルなオーダーを好み、 複雑なオーダーや、多額のオーダーに嫌な顔をするケースもしばしば。 また来店客側も アイテム数が多い場合、店員相手に何度も確認をしたり、されたりするのは面倒とあって、キオスクから自分で入力するのを好み、 逆に「少ないオーダーであれば口頭で店員に伝える方が手っ取り早い」という意識が働いているのだった。
そんな中、今のご時世を反映して登場しているのがAIチャットボットを使ったオーダー・システム。 これをいち早く導入していたのがマクドナルドで、2021年からIBMとのパートナーシップで開発したチャットボットが 既に100店舗以上のドライブスルーに設置されているとのこと。 しかし今週マクドナルドが発表したのが このパートナーシップの打ち切りと、2026年を目途に設置したチャットボット全てを撤去する意向。
そうなったきっかけの1つは、来店客がマクドナルドのチャットボットと闘う姿を収めた複数のショート・ビデオがTikTok上でヴァイラルになったこと。 いずれもチャットボットが来店客のオーダーを正確に聞き取れず、勝手に全く異なるアイテム注文リストに加えて行くため、来店客が「No」を連発。 アイテム名を言い直しても、まるで嫌がらせのように全く違うアイテムがリストされる堂々巡り。ビデオではチャットボットの対応に呆れたり、怒ったり、爆笑する来店客の様子が収められているのだった。 中でも、チャットボットにチキンマック・ナゲットを2000個以上オーダー・リストに加えられて大爆笑する来店客のビデオは、メインストリート・メディアにも取り上げられていたけれど、 オーダーをしていたのは全員ネイティブ・スピーカー。チャットボットがきちんと聞き取れるはずの英語。
チャットボットを搭載したメニュー・ボードはタッチスクリーンになっていないので、チャットボットが正しく聞き取ってくれない限りはオーダーが出来ないシステム。 そのためチャットボットとの闘いに敗れて、オーダーせずに去っていく来店客が居る中、逆にチャットボットと闘う気満々で訪れる人々も居るようだけれど、 さすがにマクドナルドも そこまで無能さを露呈したチャットボットを放置する訳には行かないようで、約2年を掛けての一斉撤去が決まったようなのだった。
チャットボット導入ではアマゾン・ドットコムも一度失敗をしてから、新たに仕切り直しをしたばかり。 AIの進化は日進月歩で、人件費は高くなる一方だけに、マクドナルドもこれに懲りずに新たなAIパートナーを模索すると見られるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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