June 9 〜 June 15 2024

Apple AI, Armored Cars,Hotdog Chaos, Etc.
ハンター有罪, アップルAI, メガリッチ装甲車、早食い王者トラブル, Etc.


今週のアメリカで最大の報道になっていたのは、バイデン大統領の息子、ハンター・バイデンがドラッグを摂取していた時代に銃を不法入手した裁判で問われていた3つの容疑の全てで有罪になったニュース。
有罪判決はある程度予測出来ただけに、ハンターの継母であるファースト・レディ、ジル・バイデン夫人は、裁判中は毎日のように法廷に姿を見せて、彼へのサポートを示したものの、 判決が読まれた際は法廷内で立ち会っておらず、裁判所から出る際にハンターと合流。メディアに家族愛をアピールする様子がみられていたのだった。 バイデン大統領は判決を待たずして「ハンターが有罪になっても恩赦はしない」と宣言していたけれど、ハンター側は判決を不服として控訴をする予定。
現職大統領の息子が刑事裁判で有罪になったのはアメリカ史上初のことで、 今年の大統領選挙は 史上最年長候者の対決であるのに加えて、史上初めて刑事裁判で有罪になった元大統領と、史上初めての前科者の息子を持つ現職大統領の対決という 不名誉な肩書が加わっているのだった。
バイデン氏とトランプ氏は6月27日にCNNで、初のディベートを行うことになっているけれど、未だ夏の段階で大統領選ディベートが行われるのも史上初めてのこと。 開催のタイミングが早過ぎるとあって、このディベートは結果がどうあれ、さほど戦局には影響を及ぼさないという見方が有力なのだった。



アップル意外なAI展開


今週ビジネス分野で最大の報道になったのは、6月10日月曜からカリフォルニアのアップル・パークでスタートした毎年好例のアップル社のワールドワイド・デベロッパー・カンファレンスのニュース。 この席でアップルは チャットGPTを搭載したAIコンポーネント「アップル・インテリジェンス」、及びiOS 18の新機能を発表。
AI分野でマイクロソフト、グーグルに完全に遅れを取ったイメージがあるアップルであるけれど、チャットGPTがこなすような複雑な会話を同社のSiriに求めるのは不可能なようで、 この日に発表されたのがチャットGPTの親会社、オープンAIとのパートナーシップ。 オープンAIと言えば、マイクロソフト社から多額の資本提供を受け、ビジネスでも深く関わっている企業。それだけにオープンAIとの関係は、「スティーブ・ジョブスが生きていたら、絶対に成立していなかったパートナーシップ」として やや複雑に受け止められていたのだった。
新たなiOS 18の新機能としてはユーザーがジェネレーティブAIを使ってオリジナルのエモジならぬ、”ジェモジ” がクリエイト出来る一方で、プライバシーを守るために ホームスクリーンからアプリのアイコンを隠したり、アプリをロックする機能も加わるとのこと。 これによってアップル側は、子供が親の携帯で遊んでいるうちにアマゾンから多額の買い物をしてしまうトラブルや、何処の銀行を使っているかを他人に知られるリスクを防げるメリットを強調していたけれど、 メディアや一般の人々の間では、これによって伴侶やパートナーのメッセージ・アプリへのアクセスが不可能になることから「浮気がバレる原因が激減する」、「この機能があれば浮気はし放題」と解釈され、諸手を挙げて歓迎される機能では無かったのが実際のところ。
ここで気になるのは、自分が使っているアイフォンがiOS 18のAIオペレーティング・システムにアクセスできるかであるけれど、 AI機能と今パーティブルなのは最新のA17チップを搭載している アイフォン15 プロ と アイフォン15 プロマックスのみとのこと。
カンファレンスでは、それら以外のiOS 18の新機能が披露されたけれど、全体的なリアクションは今一つで、それを予見してかアップル社の株価は週明けに下落。 一時はつい最近3兆ドル企業に仲間入りしたばかりのエヌビディアに企業価値で抜かれる一幕も見られたものの、株価は程無く回復し、5ヵ月ぶりにマイクロソフト社を抜いて世界一の企業の座を奪還していたのが今週。 ちなみに現在3兆ドル企業となっているのは、マイクロソフト、アップル、エヌビディアの3社のみで、株価に着眼するとエヌビディアがダントツの伸び率。そのため4兆ドル企業に一番乗りするのはエヌビディアだと予測する声も多いのだった。
そんな中、アップルとオープンAIのパートナーシップに腹を立てたのが、イーロン・マスク。アップルCEOのティム・クックがX上にポストしたアナウンスメントに対して、「アップル社のディバイスから(オープンAIの)スパイウェアを除去しなければ、自分の傘下の企業では アップル製品使用を禁止する」と怒りのリアクションを示していたのだった。 マスクがそんなリアクションを見せたのは、彼がオープンAIとマイクロソフトとの癒着を不服として訴えを起こし、それに対してオープンAIがマスクにカウンター訴訟を起こす対立状態になっているため。 設立時にオープンAIに関り、その後ビジネス見解の相違で決別したマスクとオープンAI、及び同社CEO、サム・アルトマンの関係は 非常に複雑かつ拗れている印象を与えていたけれど、 そのツイートの翌日、今週水曜には、マスクは説明も無しに オープンAIに対する訴訟を取り下げて人々を驚かせているのだった。



メガリッチは今年、ハンプトンに装甲車で向かう!?


NYではデータ的見地からは、犯罪は減少傾向であるものの、15万ドルのBMWが奪われる事件等、ラグジュアリー・カーをターゲットにしたカージャッキングが増加したこと、 パンデミック以降、ラグジュアリー・ブティックが組織的なモブ強奪事件のターゲットになってきたことなどが意識にあるせいか、 セキュリティに極めてナーバスになっているのがNYの超富裕層。 NYでは2022年にリシャール・ミルの時計をした男性が1晩に2人、深夜にラウンジやレストランから出て来たところを襲われ、時計2つの被害総額が日本円で2億円を超える被害になったけれど、 これは明らかにラウンジやレストランのスタッフが窃盗犯と通じているからこそ起こった犯罪。
そのため富裕層の間では、自分やその家族が計画的な犯罪のターゲットになることを恐れる風潮が高まっており、お陰で大儲けをしているのがセキュリティ・コンサルタント。 そうしたエキスパートに依頼し、自宅や別荘はもちろんのこと、スーパーヨット、ヘリコプター等に数百ドルかけてセキュリティ強化をするのは超富裕層にとってはマストで、 今や高額インテリアよりも自慢になると言われるのが最新のハイテク・セキュリティ・システム。 それが自家用車にも反映された結果、今年ハンプトンで最もホットなラグジュアリー・カーになっているのが装甲車としてアップグレードされたレンジローバーやBMW 760i VR9、メルセデスGクラス。 郊外に出掛ければ たとえビリオネアでも運転中は無防備になる訳で、。防犯システムでは身を守れない」とばかりに、現在増えてきたのが計画犯罪にも無差別犯罪にも対応出来る装備を持つ 装甲車へのカスタム・アレンジなのだった。
装甲車と呼ぶには至近距離で爆発するパイプ爆弾に耐え、防弾機能はAK-47、AR-15といった半自動小銃や9mmピストルの弾丸に耐える必要があり、具体的には カラシニコフ狙撃弾を阻止できる厚さ3インチの防弾強化ガラス、弾道鋼、そしてガスや煙による攻撃にも対応出来る酸素過圧システム。 このシステムは車内の気圧を外よりも高く保つことで、ガスや煙が車の換気システムを通過するのを防ぎ、車内の酸素の安全が保てるというもの。
さらにはマイクロフォンが車外に設置され、窓を開けずに犯罪者の声が聞ける一方で、唯一開くのは運転席の窓。それ以外は開くことは無く、運転席にしても 書類等を手渡すのに最低限必要な10センチ幅しか開くことは無いのだった。 タイヤはパンクしてからも80キロのスピードで走れるようになっており、これらの装甲化に掛かる費用は25万ドルから150万ドル。 とは言っても 運転技術が伴わなかったり、攻撃される状況に不慣れであれば、宝の持ち腐れになるのは言うまでもないこと。 そのため装甲化を請け負う業者は、通常、車のオーナーに対して007映画のカースタントも顔負けのドライビング・レッスンを行っているのだった。
しかしながら、ここまで費用を掛けて装甲化した高級車は非常に価値が高まるので、乗り込む前後のセキュリティも強化しない限りカージャッキングのターゲットになりかねないのもまた事実。 超富裕層にとっては、こうした装甲化は富のひけらかしであり、セキュリティと言う名の娯楽でもあり、ハンプトンのような場所はそれを見せびらかすには最適なスポット。 果たして彼らの危機感が本当はどこまで高まっているかは知る由もないけれど、 ハンプトンには少々大袈裟な装甲車も、万一大統領選挙後に暴動等が起こった場合、その状況から脱出するには役立つかもしれないのだった。



ホットドッグ早食い王者のトラブル


7月4日、アメリカの建国記念日に行われる毎年恒例イベントと言えば、ネイサンズ・ホットドッグ早食い大会。 そこで過去16回王座に輝き、2016年から連続チャンピオン記録を更新し続けて来たのがジョーイ・チェスナット(写真上、一番左、40歳)。 ところが今週報じられたのが、彼が今年のホットドッグ早食い大会に出場禁止処分になったというニュース。
ジョーイ・チェスナットはX(元ツイッター)で、彼自身もこのニュースを報道で知ったことを明らかにしていたけれど、 突如そんな処分を受けた理由は、彼がヴィーガン・ソーセージのブランド、”インポッシブル・フード”と契約を交わしたため。 アメリカのトップ・ソーセージ・ブランド、ネイサンズと、ホットドッグ早食い大会を運営する メジャーリーグ・イーティング(MLE)は、過去数年に渡ってチェスナットとの何らかの契約を結ぼうと試みてきたものの、 それが先に進まないうちに、ミートレス・バーガーをバーガー・キングやハードロック・カフェに提供してきたことで知られる”インポッシブル・フード”とビジネス関係を持ったことは、 両者にとっては寝耳に水のニュース。
ジョーイ・チェスナットがコンペティティブ・イーターとして現在の世界的な知名度を獲得したのは、1972年にスタートし、50年以上の歴史を誇る ネイサンズのイベントで勝ち続けたためであることを考えれば、確かにインポッシブル・フードとの契約はネイサンズへの背信行為とも言えるもの。 しかしチェスナット本人は、まさか大会出場資格を奪われるとまでは思っていなかったようで、驚きを隠せない反面、 その判断に従う意向を見せているのだった。
ネット上では「ヴィーガン・ソーセージのスポークスマンになったジョーイ・チェスナットがネイサンズのコンテストで、ミート・ソーセージのホットドッグの早食いで記録を作る方が ネイサンズの宣伝になる」、「ネイサンズの早食い大会に出たことで、インポッシブル・フーズがジョーイ・チェスナットをクビにするのなら理解出来るけれど、 ネイサンズが大会のアトラクションになっている彼を出場禁止にするのはおかしい」という意見が飛び交っており、 建国記念日までには未だ時間があるので、ネイサンズが決定を覆す可能性も無きにしもあらずと言われるのだった。
チェスナットの前にホットドッグ早食いコンテストで王座を保っていたのは日本のコンペティティブ・イーター、小林尊氏(写真上、右から2番目)。 しかし彼もMLEとのエクスクルーシブ契約を拒んだために 2009年以降は出場不可となっており、その後起こったいざこざが原因でネイサンズは2011年に彼のイメージを大会の殿堂から除去しているのだった。 チェスナットは2021年には76本の世界記録を樹立し、昨年2023年には10分間に62本のホットドッグを平らげているけれど、女子部門で近年トップに君臨しているのが日本の須藤美貴氏(写真上、一番右、37歳)。 昨年が同大会9度目の勝利で、10分間に39.5本のホットドッグを平らげているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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