July 3 〜 July 9 2023

" Vacation, Thread, Money News, Etc."
気象変動下のヴァケーション、スレッド、今週のマネー・ニュース、 Etc.


今週は火曜日がアメリカの247回目の建国記念日とあって、事実上、先週金曜から火曜日までがロング・ウィークエンド。 この間、5070万人のアメリカ人が80キロ以上の移動をしたとレポートされたけれど、悪天候とオーバーブッキング、人手不足の影響で 空の旅は7月3日だけで4750便が遅れ、974便がキャンセル。 アメリカでは そんな空のダイヤの乱れを示す造語として、フライトとナイトメア(悪夢)をくっつけた”フライトメア”という言葉が生まれており、 それが頻繁にメディアのヘッドラインやソーシャル・メディアのハッシュタグになっていたのが July 4th ウィークエンド。
そのロング・ウィークエンド中に アメリカの17州で起こったのが合計22件のマス・シューティング(4人以上が撃たれる銃撃事件)で、 20人が死亡、銃弾を受けて怪我を負ったのは126人。 アメリカでは近年ホリデイ・ウィークエンドの度に見舞われるのが、フライトメアとマス・シューティングのラッシュであるけれど、 残念ながら改善のための試行錯誤が行われているのは前者だけとなっているのだった。



気象変動が影響、今年の夏のヴァケーション


今週の建国記念日を前後して、アメリカは本格的に夏のヴァケーション・シーズンに突入したけれど、 ヴァケーションにも影響を与えているのが気象変動。
これまでアメリカ人の夏の旅行先として人気を集めて来たイタリア、ギリシャ、フランス、スペインといった国々は近年記録的な高温や山火事被害を記録しているとあって、 これらの国々は暑さが一段落した9月、10月のヴァケーション先として好まれるようになっているとのこと。 逆に夏に人気を集めるようになったのが、アムステルダム(写真上左)やコペンハーゲンなどの比較的涼しい街。 昨年から続くドル高の影響で、この夏アメリカからヨーロッパに出掛ける旅行者数は記録破りになることは確実視されているのだった。
アメリカ国内のヴァケーションとしては、自宅勤務が可能な人々の間で顕著なのが、エアB&Bなどを利用して1ヵ月程度の長期滞在を海沿い、山沿いのエリアで楽しむ傾向。 しかし年々拡大する山火事被害を危惧して、山間部のロッジの人気が低下。フロリダやニュージャージーの海沿いの人気エリアは、海面水位が上がる "sunny-day floods/晴天洪水"の影響で やはり人気が下降線。 テキサス州、ニューオリンズがあるルイジアナ州などは、今年に入ってからの猛暑の影響、竜巻、ソフトボール大の雹の被害を恐れて、 計画していたヴァケーションをキャンセルする人々も少なくないのが実情。
ちなみにアメリカは9月が年度替わりで、9月から学校や職場の都合で 別の土地に移り住む人々が少なくないことから、 そんな人々の間で行われてきたのが、それまで住んでいた家やアパートのリースの最終月(8月)をエアB&Bで貸し出し、 その収入で自分達はヴァケーションに出掛け、そのまま戻らず新しい土地に引っ越すという移住。 ところが昨今ではエアB&Bの物件が多過ぎて飽和状態。そうなる原因は、住宅金利が安かった時代に2〜5軒程度の住宅やアパートを購入し、 エアB&Bで貸し出しながらローンを返済するビジネスを副業で営む人々が多かったためで、本業で営む人は20もの物件を抱える例も多いとのこと。 その結果、エアB&B物件が増え過ぎたために、今年2月にスーパーボールが行われたアリゾナ州では、旅行者が大挙して押し寄せても、開催エリアのエアB&Bが全く埋まらない様子がレポートされていたほど。そんな状態で、金利だけは上がり続け、その都度毎月のローン返済額が増えていることから、本来であればかき入れ時のヴァケーション・シーズンに エアB&B物件を売却し、ビジネス撤退を余儀なくされる人々が増えていると言われるのが現在。
その一方で、気象変動は旅行地の観光名所の自然を確実に破壊しており、 世界サンゴ礁監視ネットワークの推計によると、過去10年間で海水温度上昇により世界のサンゴ礁の約15%が失われているとのこと。 モンタナのグレイシャー国立公園(写真上中央)では、そのネーミングになっている氷河が 過去50年間で80%以上溶けてしまったエリアがある様子が報じられているのだった。 逆に気象変動が幸いしているのは これまで寒過ぎて旅行者が寄り付かなかったグリーンランド(写真上右)。気温の上昇に伴い、世界中からの旅行者が増えたことから、 現在国際線を受け入れるための新しい空港を3つ建設中であることが伝えられるのだった。



今週デビューのスレッド、イーロン・マスクが訴訟の構え


アメリカでは今週水曜夜にデビューを果たしたのが”Twitterキラー”の異名をとるメタのマイクロブログ・アプリ、”Thread/スレッド”。
既に著名なインフルエンサーやセレブリティを先行招待したプロモーションが行われていたこともあり、ダウンロード開始から24時間で5000万人のユーザーを獲得したスレッドは、 インスタグラムと連動したアプリで、仕組みやコンセプトはTwitterとほぼ同じと言えるもの。 Twitter上の ”ツイート” を ”スレッド” と呼び、”リツイート” を ”リポスト” と呼んで、ツイッターの文字制限280字より多い 500字のテキストと最長5分までのビデオ、 および写真の投稿が可能。スレッドを使用するにはインスタグラムのアカウントを持つ必要があり、スレッドの管理もインスタ・アカウントで行うけれど、 既にインスタグラムで確立されたIDでスタート出来るとあって、なりすましのリスクが無く、現時点で全世界に13億5000万人と言われるインスタ・ユーザーには簡単にシフト出来るのが魅力。 メタではTwitterユーザー数 4億5000万人の2倍以上に当たる 10億人のスレッド・ユーザー獲得を目指しているとのこと。
スレッド立ち上げの計画がメタ社内で浮上したのは、昨年イーロン・マスクが440億ドルでTwitterを買収した直後。 メタは過去にも インスタグラムの ”Story/ストーリー” のアプリで ポストしたビデオが消えるスナップチャットの機能を模倣し、 ”Reel/リール”のアプリで TikTokのショート・ビデオ・フォーマットを模倣するなど、ライバルのコンセプトを自社アプリとして取り込むのは既に行って来たこと。
スレッドの立ち上げは、Twitterが1日に閲覧出来るツイート数の制限を打ち出し、ユーザーに大顰蹙を買った直後という絶妙なタイミングで行われたけれど、 当然の事ながら 敵意をむき出しにしているのがイーロン・マスク。 既にTwitterは訴訟に動いており、同社弁護士は 「メタが数十人の元Twitter社員、それも企業秘密を含む極秘情報にアクセスしていた上層スタッフを雇用し、 Twitterの企業秘密や知的財産を使用しながら、Twitterそっくりのプラットフォームをクリエイトさせた」として、 知的財産権侵害を主張。 スレッドが州法と連邦法の双方に違反し、元社員が「退社後も継続するTwitterに対する守秘義務」に違反したとして、 スレッドに用いられたTwitterの知的財産使用を直ちに停止するように要求しているのだった。
イーロン・マスク本人も「競争は構わないが、不正は受け入れられない」とスレッドを非難するツイートを行っていたけれど、 そのTwitter上でトレンディングになっていた”スレッド”は、 現時点では 法規制の関係でEU圏内ではリリースすることが出来ない状態。 またメディアとしての実績を作るまでは広告も導入されないけれど、既にスレッドの動向に深い関心を寄せているのがTwitterでの広告掲載をストップした企業。 金融業界の見積もりでは、イーロン・マスクによる経営方針や問題発言によって広告主が離れたツイッターは、 現時点でマスクによる買収額の半分に当たる220億ドルにまでの企業価値が目減りしているとのこと。
イーロン・マスクは、インスタグラムのインフルエンサー達が自らを過度にリッチに演出するフェイク・ライフをひけらかしているのと同様、 スレッドも「Twitterを真似ただけの中身の無いフェイク・プラットフォーム」と批判していたけれど、 スレッドや、Twitterの創設者 ジャック・ドーシーがスタートしたブルースカイといった競合アプリの出現は、 Twitterユーザーがマスクによる経営を嫌って新しいプラットフォームを探していたタイミングであるだけに、少なからずTwitterの脅威になることが見込まれているのだった。




自分の年収よりも商品単価が高い商品を売る職業と言えば、不動産エージェントやアート・ギャラリー、高給宝飾品のセールス等が挙げられるけれど、 仕事探しのウェブサイト、グラスドアの調べによれば ドルチェ&ガッバーナやグッチといった高級ファッション・ブランドの販売員もそのうちの1つ。 一流デザイナー・ブランドの販売員の基本給は年収で平均約3万7000ドル。これに売上のコミッションが若干加わるものの、返品されればコミッションが消えるのは当然のこと。昨今ではデザイナー・ブランドの価格が著しくアップしたことから、4万ドルのバッグやコート、5万ドルのジュエリーといった価格は特に珍しくない状況。 それが販売員の精神面に「これだけの高額品を売っても、この程度の給与」という形で影響しているようで、このところ辞職者が増えているのが高級デザイナーの販売。 自社ブランド品の割引優遇があったとしても、従業員の給与では手が届かないお値段。高級ブランドになればなるほど接客スキルが必要になり、 ブランド・イメージを守るためにある程度のルックス・レベルが要求されるけれど、そんな人材であれば もっと割の良い高額給与の仕事を選ぶもの。 そのため昨今高級ブランドは販売員確保に極めて苦戦を強いられるセグメントになっているのだった。

チャットGPTのクリエーターであるオープンAIが今週発表したのが新たな給与体系。それによれば 従業員ほぼ全員に一律30万ドルの年収と、年間50万ドルの株式報酬が支払われ、ボーナスは無し、一切の給与交渉には応じないとのことで、これはIT業界としては極めて珍しいスタイル。一律給与というと経営側の一方的な強気姿勢の押し付けと見られがちであるものの、このモデルに従っていれば 従業員は数年以内にミリオネアになれることがレポートされているのだった。

安価な製品を大量に生産しては、その売れ残りが環境破壊を招く産業廃棄物になっていることが問題視されて久しいファスト・アパレル。 その代名詞であったZara、H&Mに対して、価格面でも、市場シェアでも優位に立って久しいのが中国のSheinアパレル。 H&Mは今週、4.99ドルで売り出したクロップ・トップを70%割引の1.70ドルで販売し、同等商品を1.99ドルで販売するSheinに対抗する様子を見せていたけれど、 そうせざるを得ないのは 昨年1000億ドルに達していたH&Mの企業価値が、今年に入って660億ドルにダウンしているため。
アメリカのSheinの常連客はもっぱらミレニアル、ジェンZ世代で、毎月Sheinのオンライン・ショップから平均で100ドルを購入に費やしており、これは平均的なアメリカ人女性が毎月アパレルに投じる40ドルに比べると2倍以上。 しかし早くもSheinを脅かす存在が登場しており、それが中国の”ダラー・ストア/100円ショップ”に当たるTEMU。ブルームバーグ・ニュースによれば、今年5月の段階で米国内でのTEMUの売上がSheinを20%上回ったとのこと。TEMUの商品はファッション以外にも広範囲に及ぶとは言え、H&Mにとっては益々苦しい戦いを強いられる様相を呈しているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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