Oct. 12 〜 Oct. 24, 2021
ガヴィのフィアンセが遺体で発見、窃盗事件解決に貢献したキムK.
通報せず撮影する今時の事件目撃者, Etc.
今週のアメリカで遂にFDA、CDCによって認可されたのがジョンソン&ジョンソン社、モデルナ社のワクチンのブースター・ショット。
既にアメリカでは900万人以上がファイザー社のブースターショットを接種しているけれど、この認可と同時に認められたのがワクチンのミックス。
すなわちブースターショットで別の製薬会社のワクチンを接種すること。
特にジョンソン&ジョンソン社のワンショット・ワクチンを接種した人は、同社のブースターショットを受けた場合4倍にしか増えないアンチボディのレベルが、
モデルナのようなmRNAワクチンを受けた場合70倍以上に増えるというデータが得られており、ジョンソン&ジョンソン社のワクチン接種者は年齢を問わず、接種から2ヵ月以上が経過したした場合は
ブースター・ショットの対象になっているのだった。
さらにアメリカで認可目前になっているのが5〜11歳へのファイザー社のワクチン投与で、全米の2800万人の同年齢の子供達への投与は早ければ11月2週目からスタートする見込み。
ホワイトハウスは既にその準備に取り掛かっていることが明らかになっているのだった。
その一方で過去5週間に渡って巨費を投じた捜索が続いてきた ガヴィ・ペティ―ト失踪・殺害事件の重要参考人、ブライアン・ロンドリーの遺体が遂に発見されたのが水曜夕方のこと。
一緒にアメリカ横断旅行に出かけて消息を絶ったフィアンセの捜査に協力することなく、彼女の遺体発見を前後して行方不明となったブライアンは
家族にハイキングに出掛けるとバックパック1つで飛び出したと言われながらも、近隣の人々は出掛ける数日前の ブライアンが1ヵ月分はある食糧を車に積み込む様子を目撃しており、
彼が地元フロリダ州の広大なパークに逃げ込んだと見られたことから難航してきたのがその捜索。
水曜に発見されたのは頭蓋骨の一部を含むバラバラの遺体で、周囲にブライアンのラップトップを含む所持品があったことから 遺体が彼のものと見られていたけれど、
DNA鑑定を待たずして 翌日木曜にブライアンの遺体と断定されたのは 彼の歯科治療記録が遺体とマッチしたため。
遺体が部分的にしか見つからなかったことについては、事件に巻き込まれたというよりも 現地のパークの湿地帯に生息するワニなどの動物に襲われたものという見方が有力で、
その死因が判明するまでには まだ時間が掛かると見込まれるのだった。
今改めて指摘されるプロップガンのリスク
金曜に大報道になったのが、ニュー・メキシコ州サンタフェで撮影中だったウェスタン映画「Rust/ラスト」のセットで、
主演のアレック・ボールドウィンがブランク・ブレット(空弾)が入っていると思って発砲したプロップガン(小道具の銃)で 一児の母親であるシネマフォトグラファー(42歳)を射殺し、監督のジョエル・ソーザ(48歳)に怪我を負わせた事件。
皮肉なことに映画の中でボールドウィンが演じていたのは、誤って殺人を犯した13歳の孫をかばう開拓者時代に実在した有名なお尋ね者のラストで、彼は映画のプロデューサーも兼ねているのだった。
発砲直後にボールドウィンは「何故ホットガン(実弾入りの銃)が渡されたんだ」と語ったそうで、後に意図せずして人を殺害してしまったことを知らされ、多大なショックを受けた様子が伝えられるけれど、
事件報道直後のツイッター上では そんなボールドウィンを擁護する意見、プロップガンを扱うセットでのレギュレーションの見直しを求める声、
射殺されたシネマトグラファ―に対する追悼のメッセージに加えて、プロップガンの準備を担当した人物の過失致死を問うべきという意見がハリウッド関係者から寄せられていたのだった。
ハリウッド映画のセットでプロップガンによる死者が出たのは、1993年に公開された映画「The Crow/ザ・クロウ」の主演でブルース・リーの息子でもあるブランドン・リー以来のこと。
その後の調べによれば、「ラスト」のセットではこの事故が起こる少し前に 現場スタッフが数件のプロップガンのトラブルに抗議するウォークオフを行っており、
それを知らされていなかったボールドウィンは担当者から「プロップガンは安全」と言って銃を手渡されたという。
しかし例えブランク・ブレットを使っていても、撮影現場ではプロップガンの事故が頻繁に起こっており、それもあってプロップガンを使うシーンでは
クルーが全員プレキシグラスでプロテクトされた状態で撮影を行うのが プロフェッショナルな環境。
映画やドラマのシーンでは、ブランク・ブレットで撃たれた人がすんなり立ち上がるシーンが見られるけれど、実際には実弾と空弾には写真右上のビジュアルに見る通り 大差が無く、
空弾には殺傷能力が無いだけで、撃たれれば身体にダメージを与える威力は十分にあると言われるのだった。
「ラスト」の撮影現場でプロップガンの準備をしたのは現地で雇われたスタッフで、ハリウッドのプロップマスター(小道具専門家)組合メンバーではないことから、果たして
中に実弾が込められていたのか、込められた空弾に不備があったのかは未だ不明。
さらにシネマトグラファ―のみが死去していることから、彼女が撃たれた銃弾のみが実弾であった可能性も指摘されているけれど、
プロップマスター組合は現場にメンバーを送り込んでいないにも関わらず、「実弾が使用された」との説明を事件直後にツイートしており、
何故ここまではっきり断言するのかについて不思議がる声も聞かれているのだった。
プロップガンの使用に限らずハリウッドの映画撮影現場では、スタントマンの死亡や怪我、火災シーンの撮影に待機していた消防士の死亡事故など、
人命に関わる問題が少なくないだけに、今週突入するはずだった裏方スタッフ組合IATSE(International Alliance of Theatrical Stage Employees)の
ストが回避されたとは言え、安全性の問題についてはまだまだ物議を醸しそうな気配なのだった。
キム・カダーシアンのヴァイラル・スナップが解決したアート盗難事件!?
今週イギリス人ジャーナリスト、ベン・ルイスが アート界の知られざるスキャンダルを解説するポッドキャスト”Art Bust/アート バスト”で明らかにしたのが、
キム・カダーシアンのヴァイラル・スナップがきっかけで メトロポリタン美術館に展示されていた古代エジプトの黄金の棺が盗品であることが確認され
エジプトに変換されていた事実。
キムのスナップは2018年のMetガラでのもので、彼女のゴールドのドレスとマッチするように写っていたのが古代アート略奪転売の国際組織によって2011年に盗まれた
紀元前1世紀の「ネジェマンクの黄金の棺」。以来エジプトでは捜査が続いたものの行方が分からず、
2013年からはニューヨークの司法省にも略奪組織に関する捜査依頼が来ていたとのこと。
組織は偽の書類を製作して棺をメトロポリタン美術館に400万ドルで売却しており、
キムのスナップを見たNYの司法副長官が それをEメールでエジプト側の捜査局に送付したところ、棺を掘り出した実行犯が 自分が盗んだ棺であることを確認しているのだった。
当時 美術館はエジプシャン・アート・セクションでこの棺をメインにしたエキジビジョンを行っていたものの、
その終了を待たずしてエジプト政府への返還に応じており、2019年からはカイロのグランド・エジプシャン・ミュージアムで展示されることになったのがこの黄金の棺。
日本円で4億円以上のアートを手放したとは言え、メトロポリタン美術館側はこのエキジビジョンで50万人以上の来館者を記録しており、
その入館料収入を考慮すると、十分元が取れていた計算になるのだった。
メトロポリタン美術館が盗品の疑いでアートを返却したのはこれが初めてではなく、約10年前には
1971年に略奪された ”エウフロニオスのクラテール” と呼ばれる2500年前の花瓶をイタリア政府に返却している他、
2017年にはギリシャの芸術家、パイソンによって紀元前4世紀に製作されたテラコッタの花瓶、
2300年前に描かれたと言われるブドウ収穫の神、ディオニュソスの肖像画がやはり盗品としてNY司法省によって押収処分になっているのだった。
他にも2018年にはヒンズー教の女神の彫刻、3世紀に創られた石灰岩を用いた神の彫刻の2点が盗品と判明して
インドに返却されるなど、近年だけでも7点の盗品を展示。
棺がエジプトに変換された段階での声明で 美術館側は
「今後は古代アートの買収のプロセスを見直す」としていたものの、
略奪転売の国際組織のビジネスが成立するのは メトロポリタン美術館側のような資金力のあるミュージアムが、
出所が怪しいことを知りながら、古代アートを高額で買い取り続けているからに他ならないと言われるのだった。
スマホをレイプ通報よりビデオ撮影に使う今時の目撃者心理
先週水曜にフィラデルフィアを走るSEPTAトレインの車内で起こったのがホームレス男性による女性乗客のレイプ事件。
仕事帰りで疲れて座席で居眠りをしていた被害者女性に絡み続け、嫌がる女性の胸を触るなどの痴漢行為をしていた男性は
途中から服を脱ぎ始め女性を6分間に渡ってレイプ。
その30分にも渡るプロセスの間、車内に居た乗客は誰一人として警察に通報しなかっただけでなく、そのうち何人もが行っていたのがスマートフォンをかざしたレイプ現場のビデオ撮影。
結局、勤務時間外のSEPTA職員がその場に割って入り、彼が前の駅で遠目にレイプ犯が服を脱ぎだした様子を目撃して「車内で裸になっている男性がいる」と警察に通報していたことから、
次の駅で駆け付けた警察に犯人が逮捕されたけれど、レイプ犯の言い分は「セックスは合意によるもの」、「女性は嫌がらなかった」というもの。
もちろん被害者女性はそれをヒステリックに否定し、周囲が誰も助けようとしなかった様子を訴えていたのだった。
SEPTA側は後日記者会見を行い、「警察に通報しなかったのは罪ではないが、ビデオ撮影をしていたのは訴追されるべき行為」と語り、
「駅構内にも車内にもビデオカメラが何台も設置されているので、自ら名乗り出ない場合にはその映像からビデオ撮影をしていた乗客を割り出す」と宣言。
しかしこれについては後日フィラデルフィアの検察官が「人道的に恥ずべき行為であるものの、訴追はしない」と撤回しているのだった。
このレイプ犯は2015年に学生ヴィザが切れて以来 不法滞在をし、現在はホームレス・シェルターに暮らす35歳のコンゴ人。
その不法滞在中にドラッグや性的虐待で何度も逮捕されながらも、国外追放にならなかったのは 2017年に彼が犯した性犯罪の裁判を担当した判事が
「大した事件ではない」と軽視して国外追放を見送ったため。
当時は未だアメリカでMe Tooムーブメントが盛り上がる以前で、性犯罪が極めて軽視されていた時期なのだった。
この事件以外にも同じ週のアトランタでは、高層ビルで32歳の男性が銃を乱射してガールフレンドを殺害。銃声で駆け付けた警官と銃撃戦の末、自らに銃口を向けて自殺する事件が起こったけれど、
ここでも見られたのが現場の目撃者が誰一人として警察には通報せず、ガールフレンドの射殺を含む一部始終の犯行をスマートフォンでビデオ撮影する姿。
警察に通報すれば、その後の調書作成に立ち会う必要がある等の手間が生じることから、進んで行わない人が多いのは仕方がないとして、
レイプや殺人という犯罪現場を撮影する心理については、「その映像が何等かの助けになるかもしれないという正義感」という意見に加えて、
ヴァイラル映像を撮影したい欲望、近年アメリカで増えている一般人による事件解決ポッドキャストに影響された証拠映像収集癖によるものという指摘が聞かれるのだった。
その一方で心理学者によれば、パンデミックによって長くストレスや不安が続いた人々ほど、残虐なシーンや犯罪に対する感覚が鈍化してきているとのことで、
他人が危険な目に遭っている様子を見ることで 自分の安全を認識して安心や安定を感じる傾向にもあるとのこと。
ネットフリックスの「Squid Game / イカ・ゲーム」のヒットも、そんなメンタリティにマッチしたからこそ、残虐なシーンが多くても世界的な大ヒットになったというのが
心理学者の指摘。
そんな大衆心理は、政情不安な国を中心に世界的に起こっている惨事についても、その数が多過ぎるとあって どんどん鈍化し、その関心がすぐに他に移ってしまうのが現在。
先週末にハイチで 現地のギャング団に誘拐されたカナダ人1人、アメリカ人16人を含む17人のキリスト教グループについても、
現地では毎日50人以上が誘拐されていることを指摘して、ギャング団が要求した1人当たり100万ドルの身代金を支払うことに反対する意見が聞かれていたのが今週。
そうかと思えばネットフリックスが公開したデヴィッド・シャペルのコメディ・スペシャル「ザ・クローサー」にトランスジェンダーに対する極めて侮蔑的なジョークが含まれていたこと、
そのコンテンツをCEOが支持するコメントをしたことから、ネットフリックスの社員が勤務ボイコットのウォークオフを行ったのも今週で、
ヴァイオレンスに対する感覚は鈍化しても、言動に対するジャッジメントはどんどん厳しくなっているのが現在の一般大衆なのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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