Oct. 11 〜 Oct. 17, 2021

"Chaos of Supply Chain, NFL Cheerleaders & Homebuyers, etc."
空前の人手&物不足, NFLチアリーダーのトップレス・トラウマ, もう庶民には家は買えない?, Etc.


今週のアメリカで毎日のように報じられたのが、物流のサプライ・チェーンが崩れて全米各地で物不足が深刻になり始めた状況。 とは言ってもこれは決して新しいニュースではなく、主にアジアからの輸入品を積んだコンテナ船がロサンジェルスの港に入港できず、 何十隻も停泊状態が続いている様子は先月から報じられてきたこと。 ロサンジェルスはアメリカの輸入品の40%が運び込まれる港で、積み荷が降ろせない理由は届いたコンテナを国内に輸送するトラック・ドライバー不足で、 積み荷集積所がパンク状態であるため。 既にコストコやウォルマートでは、トイレット・ペーパーやおむつなどの購入制限が始まり、それ以外に在庫薄になっているのが 一般用医薬品、洗剤等の日用品。 加えてホリデイ・ギフトとして今後ニーズが増える子供の玩具やスニーカーもどんどん品薄になっていくことから、 ようやく水曜にその改善策としてロサンジェルス港の24時間営業を命じたのがバイデン政権。 そしてFedExなどの輸送会社が国内流通の手助けをすることになったけれど、 それでも入港待ちのコンテナ船をゼロにするには2022年の7月まで掛かると言われ、 その間の物不足によるインフレは避けられないのだった。



労働者の反撃!? グレート・レジグネーションとストライキ


失業率が下がっているアメリカで、毎月激増しているのが仕事を辞める人の数。 8月には400万人以上が仕事を辞めており、5ヵ月連続で過去最高記録を更新しているのだった。 アメリカは転職、再就職が当たり前の国であるものの、400万人の辞職者は例年に比べて10〜15%の増加で、 この現象が ”グレート・レジグネーション(膨大な辞職)”と言われるようになって久しい状況。
そのトリガーになったのは言うまでも無くパンデミックで、ロックアウトによって仕事に出掛けられない、もしくは一時解雇されて、 初めて暫く仕事をしない生活をしたのが多くの労働者。 そんな人々が 薄給で1日12時間働く生活や自分の人生について考え始め、 同時に高まったのがパンデミック中でも 働くことなしに膨大な資産を増やし続けた富裕層への不満。 加えてパンデミック中の失業手当に上乗せ金が加わった金額が、働いて得られる給与よりも多かった人々が、 自分の給与や待遇に疑問を持つようになっており、そんなメンタリティでは従来の仕事が続けられないのは容易に想像がつくところ。
アメリカでは昨今の労働者不足を受けて、各企業が給与と労働時間の改善を求める労働組合に譲歩する傾向が顕著で、 今年は1000人以上の組合メンバーを抱える労組のストが昨年現時点の17件に比べて9件に減っているけれど、 例え企業が多少の譲歩を見せたところで、辞めて行く労働者に歯止めが掛からないのが現在。

そんな中、先週から1400人の工場労働者がストライキに入っているのがシリアルのケロッグ社で、 労組側はケロッグが「健康保険、定年手当、有給休暇をギブアップしない限り メキシコに工場を移す」と脅しを掛けていると抗議。 これに対してケロッグ側は「ストの原因はあくまで組合の誤解によるもの」とコメントしているけれど、 ケロッグ社は2021年に記録的な高利益を上げており、CEOが1200万ドルのサラリーを受け取りながら、工場労働者の給与カットをしようとしていたのは事実。
さらに今週木曜にはトラクターや工事機械のメーカー、ジョン・ディアの1万人の組合メンバーがストに入っているけれど、 同社も57〜59億ドルといった過去最高レベルの利益が見込まれる好業績。 そのCEO ジョン・メイは就任一年目にして 平均的なジョン・ディアの従業員の年収の220倍に当たる1600万ドルのサラリーを受け取っているにも関わらず 従業員の6%の給与アップには応じない姿勢を見せているのだった。
そして週明け月曜からストに突入すると言われるのがハリウッドの映画やTV製作現場の裏方の組合 IATSE(International Alliance of Theatrical Stage Employees)。 長時間労働と薄給で知られてきたこの世界も、やはりパンデミックで番組や映画の製作がストップしたのをきっかけに、 労働者達が久しぶりに人間らしい生活をした結果、以前のような労働時間と待遇には戻れなくなったのがストライキの要因。 その改善要求の中には「食事の休憩時間を認める」という基本的労働規約と言えるものが含まれており、 撮影時間短縮のために 如何に彼らが犠牲になってきたかを窺わせているのだった。 加えてストリーミングが映画や番組のメジャーな配信手段になったことで 制作側と組合の契約内容が時代遅れとなり、そのせいで利益配分がフェアに行われていないことも ストライキの大きな原因。
ハリウッドではパンデミックでプロダクションをクローズしていた遅れから、 現在コンテンツ制作がストリーミングのニーズに追い付かない状況。 そのため組合の条件をある程度受け入れざるを得ないと見られるけれど、 いずれのケースもCEOやエグゼクティブが 上がり過ぎた自分のサラリーをギブアップするはずはないため、労働者賃金のアップは そのまま消費者価格に跳ね返ってくることが確実視されているのだった。



WFTの捜査でチアリーダーのトップレス・トラウマが再び


先週日曜にショッキングに報じられたのがNFLラスヴェガス・レーダースのヘッドコーチ、ジョン・グルーデン辞任のニュース。 理由はグルーデンが以前ヘッドコーチを務めたワシントン・フットボール・チーム(元ワシントン・レッドスキンズ、以下WFT)の 劣悪なワーク・カルチャーに対するNFLの捜査で、過去のグルーデンのEメールに著しい問題発言が含まれていたことが報じられたため。
WFTは 2020年のシーズン前に「先住民に対する侮蔑」と批判されてきたチームのニックネームをようやく取り下げたものの、 過去に幾度となくチーム内のセクハラや女性蔑視、人種差別等が問題視されてきたチーム。 NFLによる捜査では過去10年以上に及ぶ65万通のEメールの内容がチェックされ、チームには1000万ドルの罰金が科せられているけれど、 NFL側は捜査結果について一切の発表を控えており、グルーデンを辞任に追いやったのはNYタイムズ紙の暴露記事。
それによればグルーデンは、同じチームの黒人コーチの唇を「ミシュラン・タイヤより厚い」と言い、ゲイのプレーヤーや女性レフリーを馬鹿にした上、 リーグ・コミッショナーであるロジャー・グッデルをFワードで貶すなど、ありとあらゆる類の問題発言を繰り広げており、 中でも問題視されたのが チアリーダーのトップレス・フォトやビデオをチームのプレジデントらとシェアしていたこと。 問題の映像はワシントン・レッドスキンズ時代に行われたチアリーダーのスイムウェア・カレンダーの撮影中、 その現場のメイキング・ビデオと称して撮影した チアリーダーの着替えの様子を含めた裸の姿を集めたもの。
これについてはチアリーダー達が既にチーム内のセクハラ問題として訴訟を起こして 示談が成立していたものの、 WFTのスポーツチームというより ナイトクラブのような実態はインサイダーの間では有名な話。 チアリーダー達は自分達のヌード映像が、捜査という名の下に新たにNFLにまで流通されたことにショックを受けており、 既にチアリーダーを辞めて母親になっている女性等から、その映像のソーシャル・メディアへの流出を恐れる声が聞かれたのが今週。

そもそもNFLチアリーダーは、ダンスレッスンの給与は支払われず、試合当日も長時間拘束されて、ウォルマートのレジの時給さえ支払われないことが問題視されていたほど 劣悪な待遇。近年、若干の待遇改善は見られたものの、チームのエグゼクティブやインベスターのゴルフ・コンペに肌を露出したユニフォームで駆り出されて、 ゴルフカートで移動の際には、男性陣の膝の上に座らなければならないという娼婦やホステスまがいの仕事を無料でさせられるというセクハラ兼労働法違反行為が 複数のチームで公然とまかり通ってきたのがその実態。 規定の体重を少しでもオーバーすれば なじられた挙句、クビにされるのも日常茶飯事で、 そんな酷い扱いを受けながらも 美女たちが露出したコスチュームでダンスをしたがる様子はNFLにおける女性蔑視カルチャーの根源と言われてきたもの。
WFTのEメール問題は それ以外にもメディアとチーム上層部の癒着暴露にも発展しており、 各方面からNFLに対して高まっているのが グルーデンだけをスケープゴートにするのではなく、捜査結果全ての公開を求める声。 でもそれを本当に公開した時には、リーグの面目が丸潰れになる可能性が極めて高いのもまた事実なのだった。

 

投資会社の買い占めで、庶民はもう家を買えない!?


今週報じられたのがNYのワンベッドルーム・アパートの価格が前年比で30%以上値上がりしているというニュース。昨年春から夏にかけては NYから郊外に移住する人々が増えて、不動産価値とレントが大きく下がったNYであるものの、今やその逆転現象が起こっていて、 NYに戻ろうとする人々がアパートが見つからないのが現在。 レントも不動産価格もすっかり以前の強気価格に戻っているのだった。
そんな不動産価格の上昇はNY以外のエリアではパンデミック突入直後からずっと報じられてきたことで、特に自宅勤務が可能な人々が 通勤の便を考えることなく物価や不動産価格が安いエリアで、現在の低金利を利用して家を購入する傾向は極めて顕著。 その結果、不動産は全米規模で完全な売り手市場となり、売りに出せばあっという間に買い手が付くだけでなく、複数の購入希望者が競り合うケースも多く、 予算を30%前後オーバーして購入に至るホームバイヤーが多い様子も報じられているのだった。

でも実際にはそんな不動産ブームに拍車を掛けているのは ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドを後ろにつけた投資会社による買い占め。 こうした投資会社は不動産が売りに出された途端に、キャッシュ払いの買い入れオファーをしては、僅か数日で売買契約を結んでしまうとのことで、 コンピューターのアルゴリズムを駆使して、高額のレントが取れる好物件のみを凄まじいスピードで探し出しては買い漁っているのだった。 そのためジョージア州アトランタ、テキサス州オースティンなどパンデミック以降、都市部の人々が多数移住している街で起こっているのが、 新築物件の約半分が投資会社によって買い占められる現象。 投資会社が買い占めをすればするほど、それを貸し出す際にはレンタル市場のコントロールが可能になる訳で、 借りる側は投資会社が定めたレントを払い続けるしかないのが今後見込まれる状況。

このビジネス・モデルはコンピューターのソフトウェアと同様と言われ、かつては消費者がそれぞれにソフトウェアを購入していたけれど、それがサブスクリプション・ベースになってからは 提示される価格を自動更新で支払い続けるのは庶民がすっかり慣れ親しんだ状況。 すなわち家も買うのではなく、サブスクリプションのように毎月レントを払い続けるシステムにして、永続的な収入源にしようというのが投資会社のシナリオ。 予算オーバーの家を購入した人々は、今後金利が上昇し、景気が悪化するという2008年のファイナンシャル・クライシスが再び起こった場合に 家を失うリスクが高まるけれど、そうなった際の差し押さえ好物件を全て買い漁ろうとしているのもそんな投資会社。
ちなみに現在アメリカでは、貧困層の方が割高なレントを支払う状況。 それと言うのもパンデミックが原因で失業した人々、収入が減った人々が より安いレントを求めてアパートのダウングレードをした結果、これまで貧困層やミドル・ローワー・クラスが住んでいたアパートの借り手が増えて 家賃が上がる現象が起こっており、逆にダウングレード組が出て行った後のミドルクラス用のアパートが埋まらないことから必然的に下がったのがその家賃。 そのため治安、間取り、アメニティ、交通の便等、全ての条件が悪い貧困層のアパートほど割高になってしまい、 貧しい人々ほど社会のシステムによって財産をむしり取られる構図がここでも顕著になっているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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