Sep. 13 〜 Sep. 19 2021
更に増えるアメリカの超肥満、NYハイエンド・ダイニング復活、ヴァン・ガール失踪の謎、Etc.
今週、CDC(疾病予防センター)が発表したのが、過去2年間にいかにアメリカ国民の超肥満化が進んだかのレポート。
それによれば英語で”Obese(オビ―ス)” と呼ばれる超肥満の成人が 2020年の段階で人口の35%を超えた州は16。2018年にはこれが8州であったので2倍になった計算。
日本語の「肥満」に当たる「オーバーウェイト」はBMI(ボディ・マス・インデックス)が25以上、超肥満はこの数値が30以上、身長180pで体重92キロ以上の場合で、
最も超肥満率が高かったのはミシシッピー州の39.7%。それ以外にもアラバマ、アーカンサス、カンサス、ルイジアナ、テキサス、テネシー、オクラホマ、サウス・キャロライナ等、
揚げ物料理が多い南部の州が殆どで、奇しくも16州全てが共和党支持者が多いレッド・ステーツ。
肥満は学歴、収入レベル、人種に深く関わっており、大卒者、富裕層、アジア系が最も肥満が少ない人々。
逆に最も超肥満が多いのは貧困の黒人層で、彼らは健康的な食材にアクセスできない、
それを購入するだけの収入が無い、料理をする時間が無いほど生活に追われ、食生活のほぼ100%がファストフードとスーパーで売られているインスタントな加工食品。
すなわち超肥満の問題は健康問題と言うよりも 社会問題としての側面を帯びてきているのだった。
ちなみに2018年の段階でアメリカの成人肥満率は72%、そのうち超肥満率は42%。
BMIが40を超えた場合は ”シビアリー・オビ―ス”という更に別のカテゴリーとなり、その割合は9.2%。
肥満は子供や青少年の間でも深刻な問題になりつつあり、6〜19歳の超肥満率は17%、2〜5歳の子供の間では10%となっているのだった。
NY ハイエンド・ダイニングがカムバック
NYでは今週から多くの企業でオフィス業務が再開されたことから、火曜日の段階で地下鉄の利用者数はパンデミック突入以来最多の290万人を記録。
ピーク時の550万人には及ばないものの、街中に人混みと活気が戻り始め、それに連れてレストランでもランチやアフター・ファイブの来店客が大きく増えてきたところ。
でもその前から既にカムバックを果たしていたのがNYのハイエンド・ダイニング・シーン。
ミシュラン3つ星レストランで、パンデミック中には貧困層への食事を提供するスープキッチンの役割を果たしていたイレヴン・マディソン・パークは、
6月から業務を再開。リオープンと同時に ヴェジタリアン・レストランとして生まれ変わった同店は、
335ドル(チップ、税金、ドリンク代は別) のコース・メニューのみのサーヴィング。それを支払うのは予約時で、
返金は一切無しというポリシーにも関わらず、8月末の段階でテーブル予約のウェイティング・リストに5万人が名を連ねる大人気ぶり。
同じくミシュラン3つ星を獲得する日本食レストランで、ドイツ・バンク・センター(旧称:タイム・ワーナー・センター)内に位置するマサは、
そのディナー・コースの最低価格を495ドルから600ドルに値上げする強気のプライシングを打ち出したところ。
一方ファイナンシャル・ディストリクトの元AIG本社ビル内65階に鳴り物入りでオープンしたのがレストラン、Saga/サガ。
同店はイレヴン・マディソン・パークやデル・ポストといったNYの一流レストラン出身で、同じビルの1階に”クラウン・シャイ”という
実力派レストランを経営するチームが 新たに手掛けたプロジェクト。そのテイスティング・メニューは245ドルで、
こちらもなかなか予約が取れない幸先の良いスタートを切っているのだった。
庶民的なレストランが未だ苦しい経営を続ける中、ハイエンド・レストランにブームがカムバックしている理由として挙げられるのが、
まずニューヨーカーがパンデミック中のデリバリーやアウトドアのカジュアル・ダイニングに飽きてしまったこと。そしてその間に株価やクリプトカレンシーの値上がりで
しっかり儲けた人々が、NYらしいエネルギーと雰囲気の中で マンウォッチングを楽しみながら グルメフードを味わうという プレパンデミックのナイトアウトを
ワクチン普及と共に復活させたため。パンデミック中に貧富の格差が開いたのは周知の事実であるけれど、
それを受けてハイエンド・レストランも 裕福な客層にターゲットを絞り、彼らの舌とニーズを満たす経営になっているのだった。
女子体操チーム性的虐待を野放しにしたFBIの事情
今週水曜に上院で行われたのが、US女子体操チームのドクターとして200人以上の女子アスリートに性的虐待行為を行った
ラリー・ナッサーの事件捜査を行ったFBIに関する聴聞会。
ナッサーは既に有罪となり、現在170年以上の禁固刑で服役の身。
2015年に女子体操連盟から彼の性的虐待容疑の通報を受けたFBIは、数カ月間捜査に取り組むことは無く、
その間に70人もの新たな被害者を増やす結果となっているのだった。
聴聞会で証言を行ったのは、シモーヌ・バイルを含むUS女子体操のオリンピック・メダリスト達で、
彼女らによればFBIは厳しい質問で調書を取りながら 「そんなことは大した問題ではない、犯罪とは言えない」と
当時ティーンエイジャーだった彼女らに被害の訴えを取り下げるように説得してきたとのこと。
そんな加害者を保護し 被害者を責める姿勢について、US女子体操チームの元キャプテン、アリー・ライズマンは
「まるで性的虐待者に対して 少女達を銀のトレーに乗せてご馳走として差し出すような行為」と怒りを露わにしていたのだった。
では何故 通報を受けたFBIが動かなかったかと言えば、その理由の1つは 当時が未だMeTooムーブメントが盛り上がる3年前で、
性犯罪が軽視されていたこと。しかし最大の理由は、当時のFBI長官がUSオリンピック委員会(USOC)への天下りを狙っていたためで、
そうなると建て前上 行われた女子体操連盟による通報にしても 果たして本当に捜査の依頼であったのか、
それとも事を荒立てたくない体操連盟とUSOCが事態をうやむやにするための交換条件として 長官に天下りのオファーを提示していたのかは
定かでない状況。
当時の長官は既にポストを退き、聴聞会では現長官が彼女らに対して謝罪。
捜査に当たった2名の職員も1人は解雇処分、1人は早期リタイアとなり、同じことが二度と起こらない体制をアピールしたけれど、
女子アスリート達の主張は 虐待を行ったナッサーだけでなく、事件の揉み消しに加担し、捜査の遅れを招いたFBIの関係者にも
何等かの刑事責任が問われるべきというもの。すなわち「次の職場が用意された解雇やリタイアがその処分なのであれば、
隠蔽システムは変わらない」という不満を述べた訳だけれど、肝心の責任追及を担う司法省の関係者は聴聞会には欠席。
ラリー・ナッサーが200人以上に性的虐待を行うまで事態が野放しにされる背景には、
それだけのサポート・システムが存在していた様子を改めて感させていたのだった。
失踪したVan-Life Girlの報道フィーバー
今週、アメリカ中のメディアが報じ続けたのがNYのロングアイランド出身のガヴィ・ペティ―ト(22歳)の失踪事件。
7月2日からフロリダ州に住むフィアンセ、ブライアン・ロンドリー(23歳)とアメリカ横断のロード・トリップに出た彼女は、
バンの中で寝泊まりする旅を インスタグラムで ”Van-Life Girl”としてポスト。
しかしガヴィは8月30日に最後のテキスト・メッセージを母親に送って以来連絡が途絶え、
ブライアンだけがバンを運転してフロリダの実家に戻ったのは9月1日のこと。心配したガヴィの母親が警察に捜索願を出したのは その10日後の9月11日。
現在FBIが重要参考人と見なすブライアンは、ガヴィの家族の懇願を無視して捜査への協力を頑なに拒んでいるのだった。
ガヴィとブライアンは、インスタグラム上では仲睦まじく旅を楽しむカップルを演じていたのもの、
8月12日にはアリゾナ州で暴力的な喧嘩をして警察沙汰となっており、警官のボディ・カム映像によれば最初に暴力を振るったのはガヴィ。
その彼女の姿が最後に目撃されたのは8月24日、ユタ州ソルトレイク・シティのホテルで、この時はブライアンも一緒。
そしてここでも立ち寄ったストアで目撃されたのが2人の大喧嘩の様子。
その6日後に母親が受け取ったガヴィからの最後のテキスト・メッセージの発信場所はGPS情報によればサンフランシスコ付近。
内容はワイオミングのグランド・テトン・ナショナル・パークに行くはずだったのに「ヨセミテ国立公園には電波が無い」というもので、母親は「このメッセージがガヴィからのものとは思えない」と証言。
その翌日にはブライアンがバンを運転してフロリダに戻っていることを考えると、彼がガヴィのスマートフォンでそのメッセージの送った訳ではないことは確かなのだった。
にもかかわらず 一切を語らない彼の自宅付近では抗議活動が始まり、
ブライアンは弁護士を雇っているけれど、その弁護士は金曜に「ブライアン本人も消息が掴めない」とコメント。
それを受けてフロリダ警察は雲隠れをしていると見られるブライアンを、ワイオミングのパーク・レンジャーはガヴィを それぞれ捜索していたのが今週末。
一方ユタ州ではガヴィとブライアンの大喧嘩の現場となったストアの店員が、2人が訪れた6日後に殺害される事件が起こっており、
時を同じくして同エリアで起こったのが 女性キャンパー2人の殺害事件。
キャンパー殺害事件の容疑者は既に逮捕されており、彼が滞在していたテントから押収されたのが日本刀やクロス・ボウを含む
30ものマニアックな武器。
その異常性から現地の警察が疑い始めたのが、その容疑者がキャンパー2人と店員を殺害し、
ガヴィの失踪にも関わっている可能性。
そうかと思えばガヴィの親しい女友達を名乗る女性が、ブライアンの嫉妬心の強さやガヴィをコントロールしたがる性格など、
彼にとって不利なキャラクター・ウィットネス証言をソーシャル・メディアでポスト。また別の女性TikTokerは
ヒッチハイクをしていたブライアンを車に乗せたと証言するなど、ソーシャル・メディアのアテンション・シーカーがどんどん名乗りを上げており、
今週の同事件報道は NetFlixの犯罪ドキュメンタリー・シリーズを毎日1エピソードずつ見ているような雰囲気。
この失踪事件は様々な不審点に加えてソーシャル・メディアが絡むことから全米で大きなニュースになっていると言われるけれど、
アメリカで大きく報じられる失踪、殺人、誘拐事件の被害者は常に白人女性。若くブロンドである場合は更にニュース性がアップし、
世論の関心と同情が集まることからメディアが熱心に報じるだけでなく、警察も大々的な捜査をする訳で、
これもアメリカに根強い人種差別の一環。もしフィアンセがアフリカ系アメリカ人であったならば、
その風当たりはブライアンの比ではなかったことが見込まれるのだった。
追記:
米国東部時間9月19日6時過ぎにガヴィ・ペティ―トと思われる遺体がワイオミング州で発見されています。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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