Mar 29 〜 Apr 4 2021
2021年最大のマネーメーカー、NFT
メジャーリーグ・ベースボールが観客を迎えての開幕戦を行った今週のアメリカでは、金曜に3月の雇用統計が発表されたけれど、
それによれば前月アメリカでは91万6000の新しい仕事が生み出され、失業率は6%に低下。そのうち最も増加が著しかったのは、ホテルやレストランなどの
ホスピタリティ系の仕事。
ワクチン接種者が1千万人に達したニューヨークでは、今週末からブロードウェイ・シアター、コメディ・クラブ、ライブハウスといったインドアの会場で、
33%のキャパシティでパフォーマンスが再開され、
昨年の今頃は僅か17%だったホテルのオキュパンシー・レイトも 今や50%を超えて 旅行者が確実に戻りつつある状況。
今週にはNY州政府が国内の旅行者に対する自主隔離期間を撤廃。
またCDC(連邦疾病予防センター)は、ワクチン接種者であればインターナショナル・トラベル後の米国での自主隔離の必要が無いとの見解を発表。
さらにワクチン接種者は航空会社が要求しない限りは 「搭乗に際してマスクさえ着用すれば、
ウィルス テストのネガティブ証明も必要無い」としているけれど、これは国内の旅行者のみ。
海外から米国に入国する際には、引き続き陰性証明が必要となるのだった。
デジタル・アセット、NFTとは?
今週にはVISAカードがその決済プロセスの一部をイーサリアム(英語発音はイサーリアム)のブロックチェーン上で行うことを発表し、
これまでクリプトカレンシーに極めてネガティブだったゴールドマン・サックスもそのウェルス・マネージメント部門がクライアントに
ビットコインを含むクリプトカレンシーのサービスを提供する意向を明らかにしたけれど、
目下クリプトカレンシーの中で 猛烈に投資マネーが流れ込んでいるのがNFT。
NFTはNon-Fungible Token(ノン ファンジャブル・トークン)の略で、直訳すれば代替不可能なトークン。
同じクリプトカレンシーでもビットコインやイーサリアム、その他のコインは今日買った1コインでも、明日買った1コインでもウォレットに入れれば
その区別がつかないもの。でもNFTは「そのトークンが世の中に1つしか存在しない」というコードが ブロックチェーンのスマートコントラクトに含まれているので、
希少性が保証され、ブロックチェーン上にオーナーシップも明記されることから認められるのがデジタル・アセットとしての財産価値。
NFTにはさまざまな可能性があって アートでも、ビデオゲーム・キャラクター、音楽、ビデオ、ベースボール・カードのような
スポーツ・メモラビリアでも、ファッションでもNFTにトークン化すればデジタル・アセットとして売買が可能なのが現在。
これまでデジタルと名がつくものはコピー&ペーストで全く同じものがクリエイト出来てしまう上に、フィジカルに存在しないことから
財産価値が存在しないと思われてきたけれど、
それを可能にしたのがブロックチェーンに前述のスマートコントラクトを加えたイーサリアムのテクノロジー。
そのため現時点ではNFTはイーサリアムのブロックチェーン上でクリエイトされるケースが殆どで、その価格も
イーサリアムを単位に表示されるのが通常なのだった。
NFTが最初にメインストリーム・メディアのニュースになったのは、今年2月25日にクリスティーズで行われたオークションで、
当初落札価格100ドルと見積もられた写真上左側の「the First 5,000 Days」とネーミングされたアートが 6930万ドルで落札されたこと。
オークション開始後僅か1分間に100ドルから100万ドルに値段が競り上がったこのアートは、自らを”Beeple / ビープル”と名乗るアーティスト、マイク・ウィンケルマンが
過去13年に渡って手掛けた5000のアートワークのモザイクで、早い話がJPGファイルの張り合わせ。
3Dのゲーム キャラクターを手掛けているようなデジタル・アーティストから見ると 稚拙なデジタルアートと言われるもの。
またインドの若手アーティストでそれまで自分の作品がどうやったら販売出来るかも分からなかったというアムリット・パル・シンも彼にとっての初のNFTアート(写真右側)を
2月にNFTアート専門のマーケットプレースに出品したところ、あっという間にフリーダ・カーロの3Dトイ・フェイスが3.9ETH (当時US$5,678)、ヴァン・ゴッホが3.7ETH (当時US$5,400)そして、
コンビ解消を発表したダフト・パンクの2人を描いた3Dトイ・フェイスが15ETH (当時US$24,800)で売れたとのこと。
今週末にはイーサリアムが値を上げてATH(オールタイムハイ)を更新したので、
その価格はさらに上がっているのだった。
セレブリティ、スポーツ選手、アーティストがこぞって手掛けるNFT
無名アーティストの作品にも買い手がついてしまうだけに、著名アーティスト、セレブリティ、スポーツ選手がこぞって手掛け始めたのがNFT。
昨年には試験的な試みとは言え、アシュトン・クッチャーなどのB級セレブが落書きなようなビジュアルをNFTとして売り出していたけれど、
今はそれよりも遥かにグレードがアップ。村上隆がトレードマークのフラワー・フェイスの8ビットのバージョンをNFTで手掛けたかと思えば、
ストリート・アーティストのバンクシーもクリプトカレンシー企業と組んでNFT製作を発表したばかり。
また写真上右はイーロン・マスクのパートナーでもあるシンガー、グライムスの56秒のミュージック・ビデオのNFTで、
約38万9000ドルで買い手がついたもの。彼女のみならずラッパーの間でも今や楽曲をNFTでリリースするのがトレンディング。
さらに3月21日にはツイッターのジャック・ドーシーの最初のツイートがNFTで290万ドルで落札されたけれど、
昨今スニーカーヘッドを夢中にさせているのがNFTスニーカー。写真上左は、若い世代のデジタルアーティストで構成されるNFTスニーカー・ブランドRTFKTが手掛けた
リミテッド1 OGエディション Atariスニーカーで10 ETH(今週末で約2万ドル) で買い手がついたもの。
RTFKTはつい最近にも18歳のクリプト・アーティスト、Fewocious/フューオシアスとティームアップした
リミテッド・エディションのスニーカー販売し、僅か7分で310万ドルを稼ぎ出したばかりで、今後もスコット・トラヴィス・エアジョーダン6などの目玉プロジェクトが目白押し。
もちろんスニーカーの本家のナイキも2019年にクリプトキックスというNFTのパテントを取得しており、
デジタル版とフィジカル版のスニーカー同時発売や、ビデオ・ゲーム内でのスニーカーのコピーライト等がそのパテントで謳われているのだった。
前述のようにスポーツ・メモラビリアもNFTの目玉であるけれど、欧州のサッカーリーグで進んでいるのがチームの方針に関する投票権をファンにNFTで販売する計画。
またディズニー、マーヴェル、ポケモンといったキャラクター物もNFTのドル箱アイテム。
でもNFTが最も利益を上げると見込まれるのはビデオゲームの世界。ここでは既にスキンと呼ばれるゲームの世界でしか使えない武器や装飾品に
ゲーマーが出費を惜しまないことで知られているけれど、それらのデジタル・オブジェはゲームのホストによってアカウントが閉鎖されれば
例え自分が購入したものでもアクセスできなくなってしまうのが現状。
でもそれがブロックチェーン上のNFTになれば、別のゲームに持ち込むことや 自分の財産として管理することも出来るようになるのだった。
投資対象としてのNFT
コレクティブル・アイテムに止まらず、ゲームを始めとするデジタル・ワールド内の不動産もNFTで販売されており、
ヴァーチャル・ワールドにNFTを通じてどんどん個人資産が流れ込むことが見込まれるのが今後。
そもそもアートやスポーツ・メモラビリア、ヴィンテージ・カーなど、人間は自分の富を何等かの収集に結び付ける傾向が顕著であるけれど、
それは財産の保有手段であり、投資の手段。でもフィジカルなアートやビンテージ・カーは
所有すればメンテナンス費用が掛かるだけでなく、購入・売却際しての保険料、セキュリティを含む輸送費用、盗難や破損のリスクも大きくなるけれど、
NFTであれば、これら全ての費用やリスクが掛からないのは言うまでもないこと。
仮想通貨が世の中に認められつつある現在では、仮想のものが財産になるというコンセプトは特に若い層にとっては
さほど抵抗はないもの。現代人のライフスタイルにしてもインターネットやゲーム等に費やす時間がどんどん増えている訳で、
デジタル資産を増やして、実生活は身軽にする時代に向かっているとも言われるのだった。
しかしながら現在はジャック・ドーシーのツイートなど、あまりに何でもないものに高額な価格がついていることから、
この状況を「バブル」と見なして、「やがてはブームが終焉する」という声が聞かれるのも事実。
とは言っても2001年に399ドルで売り出されたファースト・ジェネレーションのアップル社アイポッドのパッケージ未開封&未使用のものが、2019年のオークションで
1万9995ドルで落札された例からも分かる通り、初版リリースほど後に価値が大きく上昇する訳で、
NFTも今投資をすれば やがて陽の目を見るというのが これらに大金を投じている人々の読み。
でも2001年にアイポッドに399ドルを支払う代わりに アップルの株式に投資をしていた場合、2019年8月の段階でその株式の価値は5万8000ドル。
それを思うと私はEnjin Coin/エンジン・コイン、Chiliz / チリ―ズ、Decentraland/ディセントラランドといったNFT関連の優良クリプトカレンシーに投資をする方が、
20年近く待つことなく 今のブームで確実に利益が上げられるように思うのだった。
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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