
少し前に夫が留学時に仲良くしていた友人の結婚式でアメリカに行きました。
新郎新婦ともにアイビーリーグの名門大学卒業の金融エリートで、複数日程の贅沢なお式でした。アメリカ人の結婚式は初めてでいろいろ驚くことが多かったのですが、
そのうちの1つがスマホ撮影とSNS投稿の禁止令で、「ウェディングの席でセルフィーを含む、勝手な撮影や投稿をしない」という合意書のようなものにサインしてからの参加でした。
出席していたアメリカ人の知り合いが 「今時インスタグラムに自分の生活を公開する人なんてインフルエンサーくらいでしょ」と話していましたが、
確かに日本でも以前のように高いレストランでの食事の写真や旅先の素敵な写真の投稿を控えるようになっていて、
それは貧困層が増えて「見せびらかしている」と僻まれないようにするためだと言われています。
でもアメリカではCUBEさんの以前の記事にあったリッチトックとか、日本人とは桁外れにお金がある様子を見せびらす人が多いですし、
自撮りやゲスト同士の写真だったら新郎新婦とは無関係だと思うので、何故あんなに厳しかったのか不思議に思っています。
プライバシーの問題でしょうか、それともAIで悪用されるとかなのでしょうか。もし何かご存知でしたら教えて頂けたら嬉しいです。
変な質門で恐縮ですが、よろしくお願いします。
ー C ー
アメリカの結婚式での撮影禁止は、きちんとした家柄のお式ほど珍しくありません。
新郎新婦がせっかくの結婚式という晴れの舞台で、写りの悪い写真を勝手にネット上に晒されるのを好まない傾向は顕著で、
そういうカップルは自分達が選んだ写真1枚のみを結婚のアナウンスメントに添えてSNSに投稿するのが通常ですが、そうしたアナウンスメントだけに止める方が良家である証しとして捉えられる傾向は否めません。
つい最近のアメリカのネット上では、ブライズメイドがタイトなドレスの後ろが割けて、Gストリングスを露出しながら踊り続ける様子がヴァイラルになっていましたが、
良家にとってはそんな様子が公開されれば、例え恥をさらしているのが本人や家族でなかったとしても不名誉以外の何者でもありません。
また昨今では何をネットに投稿すると問題があるかの常識が通じない人々も多いので、結婚式等が撮影禁止、投稿禁止になることは特に珍しくありません。
知人の話では葬儀の様子を無断でSNSに投稿したことで、喪主ファミリーから大顰蹙を買い、削除を求められ、以来絶交になったケースもあるようです。
加えて昨今のアメリカではちょっとした集まりでも、知らない人と一緒にグループ・ショットに収まらないことがお金と地位がある人の間では鉄則になってきました。
その原因の1つはセックス・トラフィッカー、ジェフリー・エプスタインの捜査ファイル公開によって、エプスタインの交友ネットワークが彼と一緒に写ったスナップよって辿られたことです。
トランプ氏とエプスタインがマー・ア・ラゴで一緒に撮影した写真はあまりに有名ですが、同じ服装のエプスタインと似たようなバックグラウンドで一緒に写っていたJ.P.モルガン・チェースの融資担当エグゼクティブや
他数人はエプスタインのプライベート・アイランドでの未成年少女と関係を疑われましたし、
クリントン元大統領は、娘チェルシーの結婚式でのスナップに、エプスタイン・マダムとして服役中のギレーン・マックスウェルが写っていたことで、彼女との交友の深さが否定できなくなりました。
エプスタイン疑惑など絡まなくても、世の中では地位とお金がある人ほど、自分が誰と親しく、何時誰と居たかを
ネット上に永遠に残る画像として晒されたくないと考えています。
人脈が広いと思われるのはプラスのイメージですが、具体的な名前と自分が紐づけられると、
その人物と敵対する人から避けられたり、そのせいで有利な儲け話が来なくなることもあります。
出掛けたパーティーでたまたま同じ写真に収った人物が麻薬等の捜査対象者であれば、そのせいで薬物購入を疑われるケースもあります。
今ではインターネットの影響で、写真や動画が一度アップされると、自分ではその情報をコントロール出来ない上に、
生涯のデジタル・タトゥーとして残り続けるのは周知の事実です。
アンチ・トランプ派の間では、トランプ氏が選挙集会で常軌を逸した発言をする背後で笑ったり、歓声を上げる支持者に対して、
「あの様子を動画で捉えられて平気でいる神経が信じられない」と言われていたりもします。
写真や画像の恐ろしいところは、話で聞く分には単なる噂話、デマとして片づけられることでも、一度視覚的に「それらしき様子」を見せられると、
途端にその話が信憑性を帯びて来ることで、事実をいくらでも捻じ曲げられるのが今の時代です。
弁明すれば「言い訳がましい」と批判され、その言葉尻を捉えた炎上も起こるので、ネット上の自分の足跡は少なければ少ないほど好ましいと言われます。
企業も採用の際にソーシャル・メディアのアカウントをチェックして、歪んだ思想を投稿していないか、
企業の品格を落とすような写真や画像が出回っていないかを必ず確認します。
もちろんCさんが書いて下さったように、生成AIが出回ったこともネット上に画像や情報を晒すリスクを高める要因になりました。
AIは僅か2秒の音声からその声を再現しますし、写真や動画は多ければ多いほどそれを使った偽写真、偽ビデオが精巧に仕上がります。
IDの悪用もさることながら、特に女性や子供が危惧すべきはディープ・フェイク・ポルノです。
今年初頭にxAIのチャットボット、Grokが女性や子供のスナップから衣類を除去して猛批判を浴びましたが、その生成AIポルノ・コンテンツは
既にネット上に溢れて消せない存在になっています。悪質なものになると、例えば女性がビーチ・バケーションに出掛けた写真やビデオをSNSに投稿した場合、
いかにもその時にプライベートに撮影したトップレス・フォトやセックス・ビデオを装った生成画像&動画があたかも本人の不注意、
もしくはボーイフレンドのリベンジでネット上に流出したかのように演出されます。
そうなると、たとえ画像はフェイクでも女性側の精神的ダメージ、周囲からの視線は写真が本物であった場合と何ら変わらないと言われるほどです。
ところでCさんがCUBE New Yorkの記事で読んで下さったリッチ・トックとして有名になったベッカ・ブルームですが、
彼女は自らSNS上に投稿した結婚式の写真や動画によって、その財力がビリオネア級ではないことがバレてしまいました。
理由は「式のゲストの顔ぶれや服装が大したことが無かった」、「式の規模やお金の掛け方が大金持ちのウェディングとは違い過ぎる」ためでしたが、
彼女がごく普通のエンジニア男性と結婚したことも家柄や生まれが大したことがないと疑われ始める要因になりました。
それほど今時の大金持ちは大金持ちとしか結婚しないもので、結婚は良家ほど資産と人脈を倍にするための手段です。
その意味ではCさんが出席されたウェディングは、新郎新婦がともにアイビーリーグの名門大学卒で、金融エリートですので、
今のご時世を反映したカップルと言えますし、そんなカップルにとっては撮影禁止、SNS投稿禁止は当然のルールと言えるかと思う次第です。
Yoko Akiyama
![]() |
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2026.