Mar Week 2, 2025
Thoughts on Scandals in Japan...
フジ スキャンダル、米国資本のテコ入れで日本企業は変われるのでしょうか?


いつもサイトを愛読して、時折お買い物もさせて頂いています。
今、日本では元スマップのメンバーだった中居正広さんに、フジテレビが女子アナを「上納」していたというスキャンダルで大騒ぎです。 私は芸能界というのは ある程度そういう所だと思っていて、大学時代には 広告代理店勤務のOBから、もっとスゴイ芸能人裏話を聞いて呆れたことが何度もあります。 なので「上納」しや「枕営業」は最低だと思いますが、さほど驚きません。
ですが男性が自分の魅力や財力で浮気や遊びをするのならまだしも、会社によって与えられた地位や立場、職権を利用して 弱い立場の女性達を食い物にしているのには嫌悪感を覚えます。 表向きにはセクハラ、パワハラ撲滅を謳って社内コンプライアンスが存在しても、TV業界では悪しき時代の風潮が組織的にまかり通っていて、 しかも たかだかTV局に務めているだけの人達にそのパワーを与えているのが、国民の財産である公共電波だということにモヤモヤする思いです。

つい最近それと同じくらいウンザリしたのは、フェイスブックを見ていたら昭和の時代の風俗店の写真が出て来て、そこに書き込みしている男性のほぼ全員が 「良い時代だった」、「なんでコンプライアンスなんてものが出来たのか」、「この時代に戻りたい」と書きこんでいたことで、 男性が情けなくて、汚らしいものに思えてしまいました。 「日本の男性がこんなだから、アメリカの投資会社からのコンプラ圧力がなければ、フジテレビのような問題が先に進まない」と思えるのは私だけでしょうか。
YouTubeを見ていると頻繁に、日本人がいかに優れた民族かを自画自賛するショート動画が出て来て、自己肯定感に酔いしれる書き込みリアクションが見られますが、 たとえマナーが良くて、親切でも、外圧に頼らないと自国の問題が解決に向かわないのでは、日本人はただの気弱で扱いやすい国民性でしかないように思えてしまいます。

またインターネットを見ていると、中居さんのファンなのかもしれませんが、被害者女性を責める意見が根強く、 フジ社内でも事件のことが噂になっても、被害者女性のことは 「メンヘラ」、「ノリが悪い」と批判していたと言われます。 「上納」は他局でも行われていたようで、世の中に大きな影響を及ぼす力を持つTV業界が、いまだにこんな状態なのには呆れて物が言えません。
秋山さんは、こうした日本の状況をどう思われますか。
そしてアメリカの投資会社は 「物言う投資家」なので、企業に体制立て直しをさせるだけの影響力があると言われますが、 実際のところはどうなのでしょうか。私はテコ入れして欲しいという気持がある反面、それだと戦後のGHQによる日本統制が 企業単位で再び行われるだけのような気もしています。
最後になりましたが、秋山さんの文章は、アドバイスにしても、アメリカの政治について書かれている時でも、何となく「頑張れ!」って励まされているような気持になれて大好きです。 これからも頑張って下さい。

  ー N ー


「枕営業」、「上納」は無くならない!?


Nさんのように、世の中を正義感と鋭い視点で分析する女性にとって、今の世の中は疑問や、フラストレーション、将来への不安を感じることが多いものとお察しします。
外国に長く暮らして感じるのは、日本は一見、真面目できちんとした印象なのですが、欧米のように 宗教的道徳観が社会の根底に強く根差していないため、 性的モラルには極めて緩い社会だということです。
Nさんが昭和の風俗業についての男性達のリアクションについて触れていらっしゃいましたが、その昭和の時代には、 商社マンが外国のエアラインに搭乗し、用事を頼んだ外国人スチュワーデスの身体に当たり前のように触れたことで、目的地に降り立った途端に痴漢行為で逮捕されたエピソードがありました。 ですが当時は「外国に行くと、その程度のことで逮捕される」と言われていたのです。当時、日本に来日したミュージシャンは昼間のTV番組に女性のヌードが登場したことに驚愕していましたし、 平成に入った1990年代にも、日本のアダルト・ビデオ会社が経済的に困窮しているルーマニアの女子体操選手にお金と引き換えに、全裸で演技をさせたビデオを販売していたことが アメリカの報道番組で批判されていました。
こうした性的モラルの緩さの背景には男尊女卑の歴史もさることながら、セックスの産業化、ビジネスの一部として確立された性接待、そして何人もの女性達と遊んだ経験、もしくは遊べる立場が、時に仕事の成果や実力よりも自尊心を高める要因になる価値観などが複雑に入り組んでいます。 昭和のバブル時代は「性にモラルを持ち込むこと自体が間違い」という感じでしたが、その後時代の流れでセクハラが取り沙汰され、コンプライアンスが導入され、 ようやくここまで変わって来たのが企業レベルです。個人レベルでは コンプライアンスを疎ましく思ったり、「風俗店で心置きなく遊べた昭和の時代の方が良かった」というのが 多くの男性にとっての本音なのかと思います。

男性ばかりをやり玉に挙げてしまいましたが、性的モラルの緩さは遊ぶお金欲しさに新宿の街角に立ってアマチュア娼婦をしたり、 諸外国に娼婦として出稼ぎに行く一部の日本人女性にも見られます。外国への出稼ぎは円安になるずっと前から行われていて、 NYでは20年くらい前に、財務省も接待に使ったしゃぶしゃぶ風俗が 日本人駐在員相手にプライベートに運営され、 日本から観光でやって来た若い女性達が、そこで稼いだお金を滞在費やショッピング代にしているという噂が流れていました。 このことから言えるのは、男性のモラルの緩さが性欲を満たすことに特化しているのに対して、女性の目的があくまで経済的メリット(=お金)であることです。
アメリカにはネヴァダ州ラスヴェガスから車で1時間程度走った砂漠のど真ん中に、非常に有名な合法の売春宿があって、HBOがそこを舞台にリアリティTVを撮影していたこともありますが、 若い女性達が異口同音に自分の意志で娼婦として働きに来た理由として語っていたのが 「一生仕事をせずに生きられるだけの資産を手っ取り早く稼ぐため」でした。 性欲を満たしたい男性と経済的ニーズを満たしたい女性の交換取引は、メソポタミア文明時代に既に存在していた人類最古のビジネスで、 時代が流れても廃れなかった理由は、性行為が 何も持たない人間にも出来る元手ゼロのサービスである一方で、 それを金銭や優遇と引き換えに手に入れようとする需要が常に存在し続けたためです。 枕営業や、上納システムも、基本的には人類最古のビジネスです。

私個人の意見では、エンターテイメントやTV業界は、その特殊性から「枕営業」や「上納」が無くなることは極めて難しいように思います。 特にTVやエンターテイメントの分野でキャスティングの権限を握るということは、「電波や様々な媒体に乗せて発信し、売り込む力」を持っていて、 自分の一存で スターを目指す若く、ルックスの良い人々の人生を左右出来ることを意味します。 限られたキャスティング・スポットを多数が競い合う状況下では、自分を売り込むために「ある程度の犠牲は覚悟の上」という人が少なくありませんので、 ルックスの良い女性(時に男性)と身銭を切らずに関係出来る特権が与えられた形になります。
そしてその特権の行使によってエゴが満たされると、歪んだ自尊心が身につくので、 周囲と異なる価値観、道徳観、世界観で行動するようになるものです。
この問題は AIや去勢した人物など、性欲を持たない存在がキャスティングを行わない限りは、 取り締まっても、また沸き上がるモグラ叩き状態が続くように思います。

アメリカの実態、日本の特性

ハリウッドでも、MeTooムーブメントの発端となったハーヴィー・ワインスティンが、キャスティングを餌に、若い女優やモデルを食い物にしてきた話は有名ですが、 彼を追い込むまでの長年の壮絶な闘いは、中居氏に対する被害者どころの騒ぎではありませんでした。
特にワインスティンが社名を改める前の ”ミラマックス”時代は、アカデミー賞を毎年複数受賞するドル箱スタジオの経営者として 絶大な権力を持っていましたので、彼に関するスキャンダルは握り潰され、被害者が訴えようとしても弁護士に相手にされず、 訴えればヴィクティム・ブレーミングのターゲットになるシステムが出来上がっていました。 それを切り崩せたのは、ワインスティン・フィルムの業績が悪化し、ハリウッドでのパワーが衰えてからのことで、もしワインスティン・フィルムがヒット作を出し続けていたら、 MeTooムーブメントが起こっていなかった可能性さえあります。
セックス・トラフィッキングや性的虐待で逮捕された R&Bシンガーの R.ケリーにしても、ヒット曲やツアーで稼げた時代には、 ソニー・ミュージックやライブ・ネーションといった大企業に守られ、被害者の声は長きに渡って無視され、時に攻撃対象になっていました。 日本のYouTuberは フジテレビ・スキャンダルを語る際に、「アメリカはセクハラがきっちり制裁される社会」のように言いますが、 実際には、被害を把握していても「稼いでいる時には利害が一致する勢力に守られ、勢いが衰えた時が年貢の納め時」的なアプローチでした。

セックス・トラフィッカーとして、世界のVIPに少女達をあてがって来たジェフリー・エプスティーンにしても、散々悪事を働いた後、ようやく最初の逮捕に漕ぎつけたのが2006年。 しかし当時のフロリダ州司法長官アレクサンダー・アコスタが、少女達を「セックス・トラフィッキングの被害者」ではなく 「売春婦」と位置づけ、 エプスティーンをその「ピンプ(娼婦の元締め)」として訴追することで、僅か18カ月の服役に減刑するという 常識ではあり得ない司法取引が行われました。 しかも最も警備が緩い刑務所に送られたエプスティーンは、毎日ビジネスを目的とした12時間までの外出が許可され、服役とは名ばかりの待遇を受けていました。 そして有罪判決を受けてからもJ.P.モルガン・チェースを含む大手銀行は彼に融資を続け、その後10年以上に渡ってビル・ゲイツや英国王室のアンドリュー王子らと深い交友関係を続けていたのがエプスティーンです。
その間、彼への減刑で猛批判を浴びたはずのアコスタ司法長官は、何故かトランプ政権の労働省長官に大抜擢されていました。
やっとセックス・トラフィッキングの容疑で再逮捕されたのは、MeTooムーブメントが最高潮に達した2019年7月6日でしたが、エプスティーンはその約1カ月後の8月10日に 留置所内で首を吊って自殺したことになっています。しかし当時の状況は極めてグレーで、逮捕されたとは言え、正式な裁きを受けた訳ではなく、 セックス・トラフィッキングの恩恵を受けたVIP達のリストは現時点で未公開のままです。 日本のYouTuberが語るような「正義の裁き」など行われていません。
結局のところ、どの国でもパワフルな存在の悪事には隠蔽やごまかし、社会の上層部からの圧力が付き物と言えますが、 アメリカで これら一連の事件をリアルタイムで観て来た私の目からは、 日本の方が「右向け右」のカルチャーなので、結果はどうあれ、一度動き出すと騒ぎが大きくなるのだけは早い印象というを受けました。

それとは別に、Nさんは「大学時代には 広告代理店勤務のOBから、もっとスゴイ芸能人裏話を聞いて呆れたことが何度もあるので、 報道されている 「上納」や「枕営業」 は最低の行為だとは思いますが、さほど驚きません」と書いていらっしゃいましたが、 私自身も昭和時代に、当時かなり売れていた女性芸能人がCMにキャストされるために、その会社の社長を相手に枕営業をした話などを聞いたことがあります。 なので 私も 「仕事(=お金)のため」と割り切ってそういう事が出来る人でなければ、芸能人は務まらないのだと考えてきました。
こうしたことはNさんと私に限らず、日本の都市部で長く生活してきた人であれば、ジャニーズ問題を含む芸能・TV界の闇部分について ある程度は噂話として聞いて、そういう事が裏で起こっているであろうことは認識しているように思います。
日本はそんな裏事情を 「暗黙の了解」、「大人の事情」という言葉で、時に犯罪行為までもを曖昧に片付ける傾向にある社会です。 そしてその暗黙の了解の方が 書面で交わした契約や、明記された規約より優先され、「それはあくまで建て前であって…」という理不尽が まかり通ってしまうことがあります。 私の目からは、そうした理不尽の積み重ねこそが、正しいことを主張する人が組織で疎外されたり、仕事が出来てもYesマンでなければ出世しない社会を構築しているように見受けられますし、 現在既得権益を握る層はその社会構造の恩恵を存分に受けているように思えます。
したがって私は、外国投資家がフジテレビの経営に先進国のモラル・スタンダードを持ち込むことに一時的に成功した場合でも 日本社会が ビジネス上の理不尽や融通を改めない限りは やがて元に戻って行くように思います。 日本はチップを払わなくても、最高のサービスが受けられる素晴らしい社会ですが、 ビジネス接待に 全く無関係の女子アナでも同行させて当たり前という意識は、 「クライアントに対して、痒い所に手が届くサービスを進んで提供する」といった”おもてなし精神”に通じるものを感じてしまいますし、 性接待がはびこる要因も、「余計な気を利かせること」で、相手が喜ぶからだと思います。
フジテレビの「上納文化」も、最初はクライアントを喜ばせるための女子アナ同行で、それが続くうちに 提供する側、される側の意識が鈍化し、エスカレートした結果かもしれませんし、 それをサービスの一環、業界の暗黙のルールと考えていた側には、何処までが許容範囲で、何処からが問題になるかの判断さえつかなかったのかもしれません。

私はTV・エンターテイメント業界を除いて、今の日本でコンプライアンスが進んだ要因には、海外のMeTooムーブメントもさることながら、 日本が経済的に厳しくなってきた時代背景も大きく寄与していると思います。 楽しく遊べる経済的余裕が無くなってくれば、遊んでいる人間が不謹慎に見えるので、ルールを厳しく押し付けようとするのが人間心理です。
最後に 「日本は宗教的道徳観が社会の根底に強く根差していない」と冒頭で書きましたが、このことは性的モラルの緩さだけでなく、 日本が諸外国と「保守、リベラル」、「右、左」の概念がズレる要因をもたらしているとも思っています。

Yoko Akiyama



このセクションへのご質問は、ここをクリックしてお寄せください

プライベート・セッションはこちらからお申し込みください

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行

Q&ADV プライベート・セッション

★ 書籍出版のお知らせ ★





当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2024.

PAGE TOP